建設業の職に就いていても人手不足のため、自分の技術を発揮したくてもできないことがあるのではないでしょうか。そのため自分で独立や起業したいと考える方もいるでしょう。しかし、始めるにはどうすれば良いのか、どういう準備が必要なのかわからない方も少なくありません。建設業で起業するための準備や、手続きなど始める前に知っておくべきことや必要なことを解説いたします。
建設業で起業するのはアリ?
建設業は、長期間にわたって職人不足という問題を抱えています。職人が足りないために個々の仕事に大きな負担を与えているため、辞めてしまうのです。そうなるとさらに職人が不足してしまうという悪循環に陥ってしまいます。このような状況だからこそ、起業のチャンスと言えるのです。建設業は職人を求めています。工事の内容によって種類も違いますが、自分が持っている職人としての技術を発揮できるチャンスです。自分ひとりでも起業は可能です。まずはどうすれば企業ができるのか、確認していきましょう。
建設業で起業する前に抑えておきたいポイント
建設業の独立は一般的に一人親方から始めます。建設業にはさまざまな業種があるため、1人で独立する場合が多くあります。大工、塗装、左官、クロス貼りなどがありますが、いずれも手に職があるため独立しやすいのでしょう。仕事の内容は新築だけではなくリフォームや修繕ということもあります。また、ある程度の仕事が見込めるようになると従業員を雇うことも一般的な流れとなっています。独立には資金が必要ですが、フランチャイズを利用して本部のサポートを受けながら資金繰りを学ぶという方法もあるでしょう。さらに、建設業は工事に対して危険が伴う環境にあります。安全管理の面でも十分な注意が必要ということも抑えておきたいことです。
建設業の起業には2種類ある
建設業で独立するには、2つの種類があります。ひとつは「個人事業主」です。一人親方から始め、軌道にのってから職人を雇っていくという少人数で経営していきたい場合は「個人事業主」が一般的です。もう一つは、「法人化」です。事業をできるだけ拡大していくことを目的とした場合は「法人化」にするのが望ましいでしょう。それぞれ費用や手続き、税金なども異なるため、どちらが自分にとってやりたいことなのか、メリットやデメリットなどを検討して決めるようにしましょう。
建設業で起業するまでの流れ
建設業で独立するためにはどのような準備が必要でしょうか。職人という技術があれば独立できると考える方もいるでしょう。しかし、独立には技術も欠かせませんが、仕事を請け負うための人脈や営業力、賃金などさまざまな準備が必要です。会社に勤めることでノウハウを学ぶことも可能でしょう。まずは、作業員や会社員などから始め、独立するまでの流れや必要な準備についてご紹介していきます。
企業で働き下積みをする
自分が職人として専門としている技術のスキルを磨いたり、経験したりすることが建設業で独立するためには重要なことになります。建設会社や下請け会社の作業員などをすることによって必要な経験が身につきます。いきなり独立してしまうと、いくら技術があっても現場の経験がなければわからないこともあるでしょう。人脈を得ることもできるため、まずは企業で働いて下積みを経験することから始めるのが大切です。
資格を取得する
建設業で独立をするなら専任技術者になれる資格を取得する必要があります。この資格があると請負金額が500万円以上、建築一式工事の請負金額1,500万円以上、延べ面積150平方メートル以上の木造住宅工事を請け負うための建設業の許可を取得できます。個人事業主で1人でも資格があれば建設業の許可を取得できるのです。専任資格者になれる資格として、施工管理技士(土木・建築・電気など)建築士、技術士などの国家資格や職業能力開発促進法に基づいた技能検定などがあります。また、10年以上の実務経験、学歴と実務経験の要件などもありますが、早く専任技術者になって建設業の許可を得るには、資格を取得することが一番の近道と言えるでしょう。
資本金や事務所を準備する
独立するには事務所の準備や備品の購入など開業資金が必要です。一般的な独立に比べて建設業の場合は多くの資金が必要と言われています。建設業の許可を得ると500万円以上の工事を受注できるため、500万円程度の資本金が望ましいと言われています。事務所の立ち上げは自宅にしても問題はありません。賃貸の場合は、賃料は経費になります。事務所にはデスク、椅子、電話、FAX、パソコン、ネット回線などの準備が必要です。作業に必要な工具も揃えなければなりません。現場に行くための車も必要です。その全部を購入するのではなくリースという方法もあるでしょう。また、独立のための手続きにもお金がかかり、従業員を雇う場合も給与の支払いがあります。具体的には500万円程度の資本金としましたが、場合によってはそれ以上を用意する可能性もあります。
自宅兼事務所にするメリット・デメリット
1人で独立する場合は、事務所を自宅にすることで通勤時間もなく、賃貸料もかかりません。もともと自宅が賃貸であれば、賃料の一部は経費にできます。また、自宅にあるデスクや電話、ネット回線なども使用できるため、準備のための資金も安くなるのがメリットです。しかし、私生活との区別がつかなくなる可能性もあります。家族がいる場合は、自宅にいても落ち着かないといったデメリットも考えられます。
自宅以外の場所を事務所にするメリット・デメリット
事務所を自宅以外にする場合、事務所を購入して起業するような資本金があれば良いのですが、ほとんどが賃貸の事務所となります。事務所を持っているだけで信用度が上がり良い印象を受ける点がメリットです。しかし、賃貸の事務所は経費になるのですが、賃料がかかります。事務所内の備品も準備しなければなりません。備品の購入やリースにお金がかかることがデメリットとなります。
税務署に開業届を提出する
個人で独立する場合は開業届を税務署に提出する必要があります。開業届を提出することで助成金の申請なども行えます。事業用の銀行口座開設にも必要です。申請自体は難しくなく、書類に必要な情報を記入して提出します。添付書類等もいりません。簡単な手続きとなっています。法人になると登記や定款といった必要書類が必要になります。
案件・仕事を受注する
仕事の受注は元請けの会社から受けなければなりません。大きな会社であるゼネコン、ハウスメーカーの下請けや地元の建設会社、工務店などの1次下請け、2次下請けなどがあります。もちろん自分で仕事を受注することも方法のひとつです。独立した後、仕事を受注するには人脈や、営業力を身につけていたほうが有利といえるでしょう。建設会社などで働いて評価を得ることが人脈を作ることに役立ちます。会社勤務をしているなかで横のつながりを築くことが独立後の仕事の受注に役立つポイントとなります。
【種類別】建設業の起業に必要な手続き
どんな業種でも起業には手続きが必要です。会社設立で一般的に準備しなければならないものが会社の設立登記や定款、開業届などになります。提出先も法務署や税務署などで手続きの種類によって提出先も異なります。ここからは個人事業主と法人の手続きの違いについて解説します。
一人親方の場合
建設業で、「一人親方」という言葉はよく使われます。一人親方とは、個人または家族で仕事を請け負っている個人事業主のことを言います。個人で起業している場合、開業届を提出しなければなりません。提出先は税務署になります。届出用紙に必要事項を記入するだけで受理される書類です。開業届のあとに屋号名義で金融機関の口座を開設しましょう。会計ソフトの導入も収支の管理ができ、確定申告がスムーズに行えます。一人親方は怪我や病気になってしまうと収入が無くなります。労災保険へ特別加入することも重要なことです。
法人の場合
法人として建設業の起業をする場合は、会社の定款が必要です。定款には会社の名称、所在地、事業目的や、事業年度、役員についてなどが書かれています。定款の認証を受けてから定款と設立登記申請書を法務局へ提出します。税務署へは定款と法人設立届出書を提出しましょう。従業員を雇い入れる場合は、給与支払事務所等開設届出書も必要です。また、健康保険、厚生年金保険、介護保険の加入手続きを年金事務所に届け出してください。法人の銀行口座も開設しましょう。お金の動きを知ることができます。その他、経理ソフトや給与ソフトを導入することで事務作業も軽減されるでしょう。
管理責任者と専任技術者は同一人物でも可
建設業の起業には建設業許可を得なければなりません。許可の条件として管理責任者と専任技術者が必要となります。しかし、1人がどちらの要件にも当てはまる場合は、兼任しても問題はありません。管理責任者の要件は建設業に関して一定以上の経営業務経験があることです。また、専任技術者の要件は建設業に関する国家資格か10年以上の実務経験となっています。起業しようとするならば当たり前な要件となっています。
【まとめ】起業できてからが本当のスタート!届出に必要な書類をしっかりと準備して起業を目指そう
建設業は専門的で技術的な面が必要となる業種と言えます。起業したいと考えるのならば、始めは会社に勤めて経営のノウハウや営業力、人脈など起業してから必要になるものを身につけることも重要です。起業する資金、各種手続き、建設業許可を得るための要件である専任技術者の資格取得など、準備することが多いでしょう。起業してもすぐに軌道に乗るわけではありません。安定した経営ができるようにしっかりと準備を整え、起業を目指しましょう。