解体工事業者におすすめの保険は?加入するべき保険の種類と注意点を解説!

解体工事では、予期せぬ事故やトラブルが発生することがあります。日頃から解体工事に伴うリスクに注意を払い、予防することが最も大切ですが、万が一損害賠償が発生するような事態になったとしても、速やかに対応できるよう、損害賠償保険に加入しておくことは大切です。この記事では、解体工事業者が加入するべき保険の種類や、その注意点について解説します。

解体工事業者にとってなぜ保険が大事?

解体工事は、建物を解体する際に重機で隣家を傷つけてしまったり、瓦礫が落下して作業員が怪我をするなど、第三者へ被害や損害を与えるリスクが高い工事だといえるでしょう。まずは事故や怪我が起こらないよう対策することが大切ですが、トラブルが発生し、第三者へ損害が及んでしまったときには、損害賠償責任を負うのは解体工事業者です。重大な事故などの場合は、損害賠償額も膨大になりますが、もしも保険に加入していなければ全額を自己負担することになってしまいます。場合によっては事業の継続が困難になることもあるため、解体工事業者にとって、損害賠償保険に加入することは非常に大切です。

解体工事の事故やトラブル例

解体工事では、実際にどのような事故やトラブルが発生しているのでしょうか?ここでは具体的な事故やトラブルについて解説します。

重機などの車両の横転・衝突

解体工事では、重機を使用して建物を解体し、廃棄物を運搬します。解体する際に重機がバランスを崩して横転し、従業員が怪我をしたり、運搬車が廃棄物を運び出す際に、一般車両や通行人と衝突するような事故が発生しています。

近隣建築物の破損

建物を重機で解体する際に、操作ミスによって近隣住宅のブロック塀やフェンスを壊してしまうというトラブルも発生しています。また直接接触していなくても、解体時の振動により近隣建築物が破損してしまうこともありますが、そのような場合であっても、賠償責任は解体業者が負わなければなりません。

外壁の崩壊・転倒

解体工事中に不安定になった外壁が崩壊したり、転倒することがあります。静岡県では平成15年に、解体工事中の建物の一部が道路へ崩落し、信号待ちの乗用車が下敷きになるという事故が起こりました。4名の死者と2名の負傷者を生んだこの事件をきっかけに、国土交通省は「建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドライン」を取りまとめています。

近隣住民とのトラブル

解体工事中には、騒音や振動、粉塵の発生はやむを得ません。防音シートや粉塵対策を万全に行っていたとしても、場合によっては、近隣住民から工事の音や振動が気になる、粉塵のせいで洗濯物を外に干せない、といったクレームがくることも考えられます。このようなトラブルを防ぐためにも、事前に近隣住民への挨拶を行うなど、細やかな配慮が必要とされます。また、建物にアスベストが使用されていることに気づかず工事を開始してしまうと、アスベストの飛散により近隣住民に甚大な健康被害を及ぼしてしまう可能性があります。内容によっては、警察沙汰や裁判に繋がることも十分に考えられます。

足場の崩壊や転落

解体工事を含めた建設業の労災事故では、墜落・転落がもっとも多く発生しています。墜落や転落の要因としては、足場が適切に設置されていなかった、安全帯を着用していなかった、などの理由が挙げられます。また足場自体が強風などの影響により倒壊してしまう場合もあるでしょう。解体する建物が大きくなればなるほど、足場も高くなり面積が増えるため、崩落の危険性が高まります。足場の崩落や足場からの転落により、周囲の建物や道路などにも二次被害が出る可能性があるため、足場の設置や足場での作業には、万全の注意を払わなければなりません。

解体業に関わる損害賠償保険の種類

解体業者が加入できる損害賠償保険には、3つの種類があります。ここではそれぞれの保険について、詳しく解説します。

年間単位の保険

解体業者が加入できる損害賠償保険として、まずは会社として年間単位で契約する保険があります。保険料は、会社の年間売上によって決まります。そのため、売上が低迷している会社であっても、保険料は売上に見合った金額となるため、比較的加入しやすい保険であるといえるでしょう。また一年を通じて保険へ加入しているため、年間単位の保険へ加入している解体業者は、施主側からみても長期的に安心してお付き合いできる業者だといえるでしょう。

工事単位の保険

次に、工事ごとに加入できる損害賠償保険をご紹介します。こちらは年間単位の保険とは異なり、工事1件ごとに加入する保険です。こちらは保険料が工事の請負金額によって決まるため、規模の大きい工事になれば、保険料も高くなります。大型ビルや大型マンションの解体工事や市街地の建物の解体工事など、リスクの高い工事現場の場合にのみ加入したり、年間単位の保険と併用して加入することも可能です。ただし工事単位の保険ですので、加入している工事以外で問題が発生しても、保険は適用されません。

車両単位の保険

解体業者が加入できる損害賠償保険として、工事で頻繁に使用する車両や重機については、個別で保険へ加入することも可能です。こちらの保険では、車両や重機の誤操作などにより発生した損害について、補償を受けることができます。

解体業者を選ぶ場合

解体工事で発生した損害は、民法により解体業者が損害賠償責任を負うことが定められています。しかし、工事を依頼した解体業者に賠償金の支払い能力がない場合、施主側もトラブルに巻き込まれる可能性があるため、解体業者の保険加入有無については、施主側もきちんと確認しておかなければなりません。ここでは、解体業者を選ぶ際に、施主として注意すべき3つのポイントについて解説します。

解体業者が保険加入しているかどうか確認

まずは、解体業者が損害賠償保険へ加入しているかを確認しましょう。口頭確認では心配だという場合、保険証券のコピーを提示してもらうという方法が最も確実です。こうすることで、損害賠償保険への加入状況だけでなく、賠償金額の支払限度額や、補償内容などについても正確に把握することができます。

未加入の人には加入を促す

解体業者が保険に加入していれば問題はありませんが、もしも保険へ未加入だった場合は、必ず保険に加入してもらうよう、施主側から促すことも大切です。未加入の理由として、保険料が高いという解体業者もいるでしょう。そのような場合は、保険料を見積りへ上乗せ可能にするなどの対応をとると、解体業者にとって保険加入への負担感が減り、加入しやすくなるでしょう。

短納期などトラブルの元や事故の元は避ける

解体工事がもとで発生した事故やトラブルの損害賠償は、解体業者が負うこととなりますが、場合によっては施主も損害賠償責任を負う場合があります。それは、施主側が解体業者に対して無理な納期や見積もりで工事を強いたり、悪天候のなかで工事を強行させるような場合です。施主が損害賠償責任を負わないためにも、無謀な指示や注文は行わず、解体業者にとって無理のない範囲で工事を行ってもらうことが大切です。

事故が起きてからの対策は遅いため、保険には必ず加入しましょう!

この記事では解体工事で起こりうる事故やトラブル発生の危険性と、万が一の事態が起きたときに補償を受けるための保険やその重要性について、ご紹介しました。保険の加入有無は、解体業者はもちろん、施主にとっても解体業者を選ぶ際の大切なポイントとなります。
解体工事において、事故やトラブルの危険性をできるだけ減らすことは大切ですが、ゼロにすることは不可能です。保険へ加入していなかった場合、損害賠償費用は全額自己負担しなければなりません。大切な事業を守るためにも、かならず工事を行う前に保険へ加入するようにしましょう。