建築士が独立前にすべき7つの準備|設計事務所の開業を失敗しないためには?

建築士として独立・開業を考えている方のなかには

  • どうやって独立すればいいのか分からない
  • 独立に必要な準備を知りたい
  • 独立に失敗しないか不安

という疑問や安を抱えている方もいるでしょう。
そこで今回は建築士として独立するためのステップや必要な準備を紹介します。
また、設計事務所の開業で失敗しないための対策や建築士として独立する前にできることも解説しているのでぜひ参考にしてみてください。

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建築士として独立するために必要な3ステップ

建築士として独立するために必要なステップは以下の3つです。

  1. 1級・2級建築士試験に合格する
  2. 実務経験を積む
  3. 実務経験を活かし独立する

それぞれについて具体的に見ていきましょう。

1.1級・2級建築士試験に合格する

建築士として独立するためには、1級や2級建築士の試験に合格しなければなりません。建築士の資格は、公益財団法人の建築技術教育普及センターが運営しており、1級建築士、2級建築士、木造建築士の試験が受けられます。2級建築士や木造建築士の受験資格を得るためには、建築設備士の資格取得者、建築専門学校卒業、建築関係の実務経験が必要です。
1級建築士の受験資格を得るには、上記の条件のほかに2級建築士の資格を取得する必要があります。実務経験を積みながら資格に合格することもできるので、まずは実務経験を積むのが良いでしょう。
建築士の試験は、筆記試験と図面作成の実技試験に分かれており、別日に行われます。開催期間は1年に1回で1級建築士は17,000円、2級建築士、木造建築士は18,500円の受験料がかかります。

一級建築士試験の難易度についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
一級建築士 難易度一級建築士試験の難易度が高い理由や合格率・勉強法などを解説

2.実務経験を積む

1級、2級建築士の資格を取得するためには、実務経験も必要になります。令和2年に建築士試験の受験要件が変わっています。新しい建築士試験では、2級建築士を受験するための実務経験は最低7年です。また、従来では建築に関する科目を勉強して大学卒業した方が1級建築士を受験する場合は、大学卒業後に建築関係の実務経験が2年以上必要でした。しかし、新しい建築士制度では大学を卒業した直後に実務経験がなくても、1級建築士の試験が受験できます。
さらに、試験に合格して大学卒業後に実務経験が2年以上あれば、1級建築士として登録が可能になりました。建築士の資格を取得して独立した場合、業務を一人でこなす必要があります。効率よく業務をこなし、取引先の方とスムーズに対応できるようにするためにも実務経験は必要です。

3.実務経験を活かし独立する

1級建築士の資格を取得して実務経験を行うと独立ができます。建築士として独立する場合、社員を雇ってから会社を作る方法や、雇わずに個人事業主として仕事を行う方法があります。
社員を雇ってから独立する場合、人件費、オフィスの機材などさまざまな経費が発生します。また、独立したばかりのときは、継続して仕事があるわけではないので、事業が安定するまでの期間を見越してある程度の貯金が必要になります。独立する場合、十分な資金をしっかり確保しましょう。

建築士として独立すると決めた後に必要な7つの準備

建築士として独立をする場合、準備が必要になります。独立をするための事前準備を7つ紹介するので参考にしてください。

建築士事務所に登録をする

建築士として独立するためには事務所の登録が必要になります。
・1級建築士事務所
・2級建築士事務所
・木造建築士事務所
建築事務所は取得している資格によって変わります。

そして、事務所として登録できる要件が3つあります。
①事務所として使える場所があること
②管理建築士が在籍していること
③税金を納付している証明がとれることです。
自分の家を事務所にすることも可能ですが、社員を雇う場合は、ある程度広さがある事務所を借りるのがおすすめです。登録せずに業務を行うと刑罰になる可能性があるので、必ず登録を行いましょう。

また、登録するにあたっては下記の書類が必要になります。
①事務所の登録申請書
②所属している建築士の名簿
③代表者の歴書
④業務概要書(既存の場合)
⑤管理建築士の歴書
⑥定款の写し
⑦誓約書
⑧申請して3カ月以内の履歴事項全部証明書
⑨事務所の賃貸借契約書の写し
⑩管理建築士の住民票
⑪建築士の免許書
⑫法人税の納税証明書
⑬定期講習修了証の写し
⑭管理建築士の退職証明書、専任証明書、講習修了証など
このほかにも提出を求められる書類などが発生する可能性があります。管理建築士を専門で雇う場合、管理建築士についての書類が必要になるので用意しておくと安心です。

管理建築士講師の受講をする

建築士法第24条によると、建築士の事務所を開業する場合、建築士事務所を管理する常駐の建築士を置かなければならないと記されています。管理建築士として在籍するためには、国土交通省大臣が定めた登録講習を受講する必要があります。1級、2級建築士、木造建築士の資格を取得している方、建築士として3年以上の実務経験がある方が講習を受講できます。また、建築事務所には専門の管理建築士を1人常駐させなけらばならないので、注意しましょう。

独立・開業時とその後の資金を貯める

建築士として独立・開業する場合、機材や事務用品が発生する可能性があるので、独立・開業する際は可能な限り多くの資金をためておくと良いでしょう。建築士で独立するためには、具体的には500万円程度の資金が必要になります。また、仕事が軌道に乗るまでは時間がかかるので、その間の給料などの支払いに使える資金も確保しておくと安心です。

お金に関する知識を身につける

建築士として独立する場合、経理や経営など、お金に関する知識を身につけておくのもおすすめです。独立すると自分が会社の責任者になります。経理や経営の知識がないと、確定申告時や納税時に対応ができなくなったり、取引先との会話がスムーズに進みません。売上や経費の計算、業務の効率化、事務所の運営方法など細かい部分もしっかり確認する必要があります。経理や経営の知識をしっかり身につけて、新規顧客を獲得しましょう。

クレジットカードを作成する

独立前に必ず行っておくべきなのがクレジットカードの作成です。独立した直後はクレジットカードの審査に通らない可能性があります。
必ず独立前にクレジットカードを作成しておきましょう。
法人用のクレジットカードは作成できる場合もありますが、あくまでも法人用でしか使用できません。
ベストなのは法人用のクレジットカードと個人用のクレジットカードを作成し、使い分けることです。
カード会社から送付される利用明細書を経費の明細としてそのまま使用すれば、経費作業が楽になるのでおすすめです。

立地的に必要な場合は車を購入する

立地的に車が必要な場合は、独立前に購入の準備をしておきましょう。
特に作業車は値段も高価で、一括で購入するのは難しいことがほとんどです。
仮に一括で購入できる現金があったとしても、開業独立後のことを考え手元に現金は残しておくべきです。
車のローンもクレジットカード作成と同様、独立直後は審査に通らない可能性が高くなります。必ず独立前に車をローンで購入する手続きを済ませておきましょう。

HPを事前に作って起業したタイミングですぐに公開できるようにする

最近はどの業種でもホームページをもつことは当たり前となっています。ホームページは会社の顔ともいえるもので、持っているだけで信頼感にもつながります。
しかし、会社の魅力を最大限に伝える工夫や、検索サイトの上位に表示されるためのSEO対策など、集客に役立つホームページを作るには知識がないと難しいでしょう。

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建築士の独立に必要な費用

建築士で独立するためには、500万円程度の資金が必要になります。
・オフィス、事務所
・無線LAN(Wi-Fi環境)
・電話回線など
・パソコン
・業務用デスクやイス
・CADなどの建築時に使うソフト
・ボールペンなどの文房具
・複合機
・名刺
・登録手数料
・人件費
・福利厚生費など
これらの経費や機材を購入すると、500万程度の資金が必要ですが、社員の雇う人数やオフィスの大きさによって必要なお金が変わってきます。事務所を登録する際の登録手続きにも手数料が発生します。1級建築士は18,500円、2級建築士、木造建築士は13,500円です。

独立を有利にすすめられる建築士に関する資格3選

建築士として独立したあとにスキルや資格を取得すると仕事の幅が広がります。建築士として関連のある資格を紹介しますので参考にしてください。

宅地建物取引士

建築士と一緒に取得しておきたい資格は宅地建物取引士です。宅地建物取引士は不動産業に関わる法律や税金などの知識が身につく資格です。建築士試験でも勉強する建築基準法などの知識も勉強内容に含まれているので、入り込みやすいでしょう。建築のほかに法律にも強くなるので、仕事の幅がさらに広がります。宅地建物取引士の需要が多く給料も高い傾向にあるため、収入を上げたい方におすすめです。

1級建築施工管理技士

1級建築施工管理技士は施工時の計画、工程、安全、品質の管理を担う資格です。1級建築士は設計管理に特化していますが、1級建築施工管理技士は施工管理のプロになれる資格です。しかし近年では、1級建築施工管理技士を取得している方が年齢を重ねてしまっている会社が多く、定年退職をしてしまい、人手不足が目立っています。1級建築施工管理技士は1級建築士の資格だけではできない現場でも活躍できる資格なので、取得しているだけで重宝される資格です。

インテリアコーディネーター

インテリアコーディネーターは住居に特化した資格です。家具、住宅設備などを過ごしやすい位置に配置したりデザインを考えたり、プライベート空間をより良いものにできる資格です。家を建てたり特別な空間を作ったりする場面で知識を生かせるので、競合他社と差別化が図れる資格になります。

建築士で独立するメリット

建築士で独立するとさまざまなメリットがあります。独立した場合自分の仕事量を自由に調整できます。今までとは違い、会社の制約も自分で決められるので、家での時間を大切にしている方は仕事時間を調整し、休みを多くとることも可能です。その一方で年収を上げたい方は仕事量を増やして実績を増やすこともできます。社員の場合は仕事量や収入に制限がありますが、独立すると自分で仕事を獲得できるので、自分なりの会社を作ることが可能です。

建築士で独立するデメリット

建築士で独立をすると多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。独立すると仕事を獲得するのが難しくなるので、自分の生活が不安定になるデメリットが発生します。会社員の場合は月単位で決まったお金がもらえますが、独立・開業は仕事がなくなると収入がありません。日ごろから仕事に対するプレッシャーを抱えながら過ごさなければならないため、常に仕事が頭から離れません。しかし、正社員と同じような集中力を持ちながら業務を行えばしっかり結果が付いてきます。何ごとにも前向きな姿勢をもち、しっかり業務を行いましょう。

安定的に仕事を取るために建築士が独立前にできること3選

建築士が独立後に安定して仕事をとるためにできることは以下の3つです。
・SNSアカウントを作り人脈づくりする
・独立・フリーランス向けの案件紹介エージェントを活用する
・建築コンペに参加して賞を受賞する
それぞれについて以下詳しく解説していきます。

SNSアカウントを作り人脈づくり

今や営業や集客に必須なのがSNSです。
SNSで顧客を獲得したり、案件を受注したりするケースが非常に増えているのをご存じでしょうか?
SNSアカウントをまだ作っていないという方は、さっそく作って会社の運営に役立てましょう。

  • 企業理念
  • 企業情報
  • 料金設定

などを掲載しておけば、顧客から問い合わせや案件の依頼が来やすくなります。
SNSアカウントをしっかり作り込むことで、集客の手助けとなるツールになるでしょう。
SNSからホームページに誘導すれば、より見込みのある顧客からの問い合わせや案件依頼が期待できます。

独立・フリーランス向けの案件紹介エージェント

建築士で独立をして仕事を探す場合、フリーランス向けのエージェントを使うのもおすすめです。エージェントではさまざまな仕事を受け持っているので、仕事を獲得するための大きなメリットになります。エージェントが間に入って取引が行われるので、お金の交渉や自分のスキルにあった仕事を紹介してくれます。営業の手間がなくなり、将来お得意様になる可能性がある仕事に関われるチャンスにもなるので、フリーランス向けエージェントは積極的に使いましょう。

建築コンペに参加して賞を受賞する

独立後の案件獲得につなげるために、積極的に建築コンペに参加することをおすすめします。応募しても選ばれるとは限りませんが、もし受賞できれば大きな実績となります。
実績ができれば営業する際に強みとなり、今後の案件受注に役立つでしょう。
「いつか大きな案件を受注したい」「大手の企業と関わりたい」「大規模な建設事業に携わりたい」と考えている場合は実力を証明する手段として、建築コンペに参加することを検討してみてください。

【まとめ】独立後はスピードが大事!1つずつ順番に準備をしていこう

建築士は建築士試験に合格して実務経験を積むと独立ができます。独立すると仕事内容や時間が自由に決められ家族や自分の時間を優先することが可能です。しかし、仕事は自分で獲得しなければならないので、仕事に対して常にプレッシャーが発生します。独立するには開業資金、事務所登録、管理建築士の配置などやることが多いので、1つ1つ着実に進めていきましょう。

建築士と設計士の違いとは?年収や仕事内容、資格の違いを解説

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