建設業界における人手不足の対策|人手不足の原因や政府の対応も解説!

現在、建設業界では人手不足が深刻です。かつて建設業界は「3K職場(きつい、きたない、きけん)」などと呼ばれ、不人気でした。最近はそういう言葉はあまり聞かなくなったのですが、依然、人手不足の状況は変わりません。
今回の記事では、人手不足の原因や政府の対応、解決方法などについて解説していきます。建設業界に興味のある方はぜひ最後まで読んでみてください。

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建設業界における人手不足の原因

まずは建設業界における人手不足の原因をみていきます。以下に6つの原因をあげそれぞれ分析しましたが、実態はまだ「3K職場」の要素が残っているようです。

原因1:若者の少なさ

日本における労働人口は、少子化の影響でその「若年労働者割合」は年々減少しています。全労働者における29歳以下の労働者割合を1997年と2020年で比較してみると、以下のとおり建設業の減少割合が高いことがみてとれます。
・全産業:23% ⇒ 17%
・建設業:22% ⇒ 12%
この数値から、建設業界は若者から「魅力ある業種」とはみられていないことが推察されます。
参照:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」(R3)

原因2:労働者の高齢化

少子化と対比して語られる「高齢化」についても調べてみましょう。前出の国土交通省資料からです。全労働者における55歳以上の労働者割合を1997年と2020年で比較してみます。
・全産業:24% ⇒ 31%
・建設業:24% ⇒ 36%
やはり高齢化率も、全産業平均より高いことが分かります。この要因として、「若年層が業界に入ってこない結果として高齢化率が向上した」「若年層が入ってこないから、歳をとっても辞められない」などの理由が考えられます。

原因3:定着率の低さ

厚生労働省調査によると、2019年春に高校卒業し建設業へ就職した生徒の、3年以内離職率は42.2%と、全産業合計の36.9%を上回っています。
特にこの時期は、新型コロナウイルスの影響で、宿泊業(60.6%)や娯楽業(57.2%)が高率となり、全体合計の数値を引き上げているにもかかわらず、建設業の離職率は平均を超えるものとなっています。
参照:厚生労働省「新規高卒就職者の離職状況」(2022.10)

原因4:不況による給料の減少

厚生労働省の資料によると、建設業の2021年賃金は月33万3,200円、10年前の2012年が32万2,500円となっており、増加率は3.3%です。この時期には、東日本大震災復興需要やオリンピック需要があったのにもかかわらず、意外に低い感じがします(需要に関しては、次のセクションで解説します)。
もっとも他産業でもほぼ同様の増加率であり、日本のデフレの影響かとも思われます。
参照:厚生労働省「賃金構造基本調査『産業、性、年齢階層別賃金』」(R3~H24)

原因5:需要の拡大

建設需要を測定するために、国内の建設投資額をみてみます。建設投資額は「政府投資額」と「民間投資額」に分類されます。政府・民間の合計額は2011年に42兆円程度だったものが、2020年には56兆円程度に増加しています。
それに対し、この間の建設業従事者の数は約500万人で横ばいとなっています。つまり一人当たりの労働負荷が1.3倍になっているということになり、これが定着率の低さにつながっているのかもしれません。
参照:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について

原因6:肉体労働

建設業界イコール「重労働」という先入観を、多くの人が持っていると思います。実際、ホワイトカラー労働者よりは、確かに肉体使用の割合は高いのでしょう。そして残念ながら、日本では「肉体労働者」のイメージは良くありません。
またそのような状況から、高校生が就職先に建設業を選択しようと思っても、「両親が反対する」というケースも聞こえています。このあたりにも、人手不足対策のキーワードが潜んでいそうです(後述します)。

建設業界における人手不足の解決方法

建設業の人手不足対策に、国もいろいろな施策を打っています。しかし建設業界や個別企業は国に頼ってばかりではなく、独自に対策をとる必要もあります。以下に5つの方策とその効果をみていきます。

方法1:労働水準・待遇の改善

上記でも説明したように、建設業に対しては「肉体労働」や「きつい、汚い、危険」といったネガティブなイメージを持っている人も多くいます。人手不足を解消するためには、まず労働水準・待遇の改善をし、そのようなイメージを払拭することが大切です。具体的には残業時間を減らすことや、給与アップ、福利厚生の充実などがあげられます。給与面では、技能面に合わせた給与水準を明確にし、昇給制度がどのようになっているのか働き手に分かるようにするのも良いでしょう。労働水準や待遇を改善し、それらをアピールすることで新規雇用も促しましょう。

方法2:社内のIT化によって業務効率化を進める

IT化やAIの活用により、業務改善を進めることも重要です。人手不足の解消のためには、少ない人員でも現場を回していくことも重要になります。建設業におけるIT化としておすすめなのは、会計ソフトや業務管理ツールなどの導入です。このようなツールを活用することで今まで手作業で行っていた積算やスケジュール管理、日報報告などが簡単にできるようになります。うまくITを取り入れることで、働きやすい、働きたいと感じるような環境にしていきましょう。

方法3:多様な採用手段の活用

どうしても人手が足りず、働き手をより多く雇用したい場合は、様々な手段を使って採用活動を行うようにしましょう。ひとくちに求人媒体といってもIndeedや求人ボックス、エンゲージなど多くの種類があります。一つの媒体だけで募集するのではなく、より多くのものをつかって採用活動を進める方が効率的です。また求人内容を考えることは、社内の給与や待遇を見直す良い機会にもなります。求職者が「働きたい」と思えるような魅力的な求人内容を作成することで応募人数を増やしましょう。

建設業の従業員を増やす方法についてはこちらの記事で解説しています。

建設業 従業員 増やす方法建設業の従業員を増やす方法は?人手不足になる理由や解消方法を徹底解説!

方法4: 1.2を積極的に社外に発信する

社内での労働環境の見直し、IT化を進めると同時にそれを社外に積極的に発信するようにしましょう。求人媒体の採用ページに記載することはもちろんのこと、SNSなどを使って発信するのも良いでしょう。SNSを活用する際にはInstagramやFacebookなどがおすすめです。社内のメンバーや現場の様子などを写真や動画で紹介し、より多くの人に会社のことを知ってもらうようにしましょう。認知度を高めると同時に、会社の魅力を知ってもらえれば応募にもつながります。

若手採用にはtiktokが効果的

情報発信する手段は多くあります。なかでも「若手を中心に採用したい」と考える場合は若年層のユーザーが多いtiktokがおすすめです。tiktokは自社の雰囲気や実際に働いている様子などを伝えやすく、求人採用媒体として高い効果が見込めます。

「tiktokの運用方法が分からない」「採用に力をいれたい」という場合は採用に特化したサービスを利用するのもおすすめです。バズステップ採用は、tiktok採用に特化したサービスで、2か月で10人の採用に至ったという実績もあります。

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方法5:外国人労働者の方の採用

日本では年々外国人労働者の数が増えており、すでに建設業でも多くの外国人労働者が活躍しています。また2019年には特定技能制度が始まったことでより外国人労働者を採用しやすくなりました。さらに現在では、特定技能外国人の採用に特化した支援サービスもあるため、どの企業でも外国人労働者の雇用がしやすい環境になりつつあります。
外国人労働者の方を採用する際には、まず在留カードでどのような資格を持っているかを確認するようにしましょう。あわせて在留カードの有効期限のチェックも忘れずに行いましょう。永住者や技能実習生でない場合、採用後に外国人雇用状況の届出を厚生労働大臣に提出する必要があります。

外国人採用なら「Guidable Jobs」がおすすめ

Guidable Jobs(ガイダブルジョブズ)は外国人採用に特化した求人サイトです。永住者や定住者に絞った採用を行っているため、言語の壁の不安や離職のリスクが低く、定着率が高いのが特徴です。一度の掲載での採用決定率は72%で、採用が決まったら掲載をストップ、募集再開したいときには再開ができるので無駄なコストもかかりません。

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建設業界における人材不足に関する政府の対応

上記のようにさまざまな問題点を抱えている建設業界ですが、政府も手をこまねいているわけではありません。ここでは、「労働法制の変更」と「新システムの導入」について解説します。

残業規制の導入

2024年4月1日から、時間外労働の上限規制が建設業にも適用されます。
これまで、時間外労働に関して、36協定(次章で説明します)を締結してさえいれば、その上限を超えて時間外労働をさせても罰則はありませんでした。これが法改正により、大企業は2019年から、中小企業(建設業等を除く)は2020年から、そして建設業は2024年から法規制が始まります。具体的には、月45時間、年360時間の時間外労働に納めなければなりません。

建設業では、2024年問題とよばれる課題があります。こちらの記事では、2024年問題について解説しています。

建設業の2024年問題とは?ポイントや対策をわかりやすく解説!

36協定

36協定とは、労働基準法第36条に規定されている「会社と労働者代表による、残業に関する合意書」です。この協定がなされていない場合、労働時間は1日8時間、1週40時間以内に規制されます。
前章「残業規制」により36協定も影響を受けています。具体的には、36協定「特別条項」を締結した場合でも、以下の時間数の範囲内にする必要があります。
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、「2カ月平均」~「6カ月平均」のすべてが1カ月当たり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6カ月まで
このような規制により、違法な時間外労働の削減が期待され、ひいては建設業界のイメージアップにもつながるものと思われます。
【出典】厚生労働省 石川労働局パンフレット

建設キャリアアップシステムの導入

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、建設業従事者が保有する技能の資格や社会保険加入状況、就業履歴などを登録・蓄積し、建築技能者の適正評価や業務負担軽減を図ろうと、国土交通省が推進している仕組みです。これにより、以下のメリットが考えられています。
・技能者キャリアの見える化:適正な処遇につなげます。
・建設業経営者の負担軽減:資格状況が確認できることにより、建設業許可の専任技術者選定などに役立ちます。また社会保険加入状況を確認できることにより、事務作業の軽減にもなります。

建設業界にICTを取り入れるメリット

ICTはInformation and Communication Technologyの略で、情報通信技術と翻訳されます。通常「ICTによる施工」という風に使用される用語です。建設業に導入されれば、どこがどう良くなるのかをみていきます。

メリット1:ストレス軽減効果

現場には、膨大な量の設計書類がありますが、それを紙管理からクラウド管理にしたことにより、迅速な対応ができるようになりました。
ビルなどの建設では、全体を取り仕切るゼネコンとの綿密な打ち合わせが欠かせません。施工上の問題や設計図面の整合性など、ゼネコンと調整しながら進めます。また施工段階でも、実際の建物が設計図と微妙に異なることもあり、その都度調整が発生するため、以前は現場の負担は大きかったのです。
クラウド化により、紙のハンドリング負荷や管理の手間の減少など、ストレス軽減となっています。

メリット2:業務引き継ぎの効率化

レポートの最初で触れましたが、建設業界の高齢化率はかなり高いものがあり、ベテラン作業員のノウハウを若手社員にどうやって早急に引き継ぐかが大きな課題です。さもないと、社内の技術が消滅してしまいます。
ICTを使った事例として、これまで社内でマンツーマンで行っていた指導作業を、「若手は現場で作業し」「ベテラン指導者は社内から遠隔でチェックして」技術を引き継ぐことができるようになっています。これにより、一対一のみでなく多対一の指導も可能となり、技術の移転速度が格段に上がりました。

【まとめ】建設業界の人手不足は省人化やICT活用で解決!|政府の働きかけも今後要チェック

ここまで建設業の人手不足の現状について、詳細にみてきました。2024年には時間外労働の法規制も適用になり、いまのまま何もしなければ、今以上の苦境に陥る可能性が高いです。しかし人手不足や労働環境の改善にはICT化や政府の対応など、変化の兆しも見えてきています。今後も建設業の動向をしっかりとチェックし、人手不足改善に向けて対策を考えていきましょう。

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