電気工事士は不足している?人手不足の原因や会社レベルでできる対策もご紹介!

建物に付随する電気系統の点検や工事を行う電気工事士ですが、昨今高まる需要に対して供給不足の声が挙げられることも少なくありません。この記事では、意外と知られていなかった電気工事士として活躍できる仕事現場や、人手不足といわれている背景、人手不足解消のための対処法についてご紹介します。
現在電気工事士として働いている方も、これから働くことや経営を検討している方も、これを読んで動向をさぐり、未来のあるべき姿について考えていきましょう。

電気工事士の活躍する仕事現場とは

あなたは電気工事士が働く現場といえば、どのようなシーンをイメージするでしょうか。電気工事士について詳しくない場合、背の高い電柱に上って行う電線の復旧工事や、エレベーターなど狭い空間でのメンテナンス作業などを想像する方が多いのではないでしょうか。実は意外と知られていない電気工事士の活躍する現場について、行う仕事内容とともに5種類紹介していきます。 これから電気工事士として働こうと考えている方は、こちらを見て働き先のイメージをつかみましょう。

メーカーの工場保守

メーカーで稼働している工場で機械の保守点検を行う部門に所属する働き方です。メーカーは自動車や楽器、食品や日用品など非常に多くの業種があり、大きさや種類も様々な機械が日々異常なく物を生産し続けるために動いています。自社工場を持つ会社では、物の生産が途中でストップすることのないよう、機械を点検したり、誤作動が起きた場合の対処ができるプロが必要とされています。商品生産の一端を担うことができる仕事のため、自分が貢献したいものや好きなものの生産現場で働きたい方におすすめです。

鉄道の電気工事

鉄道における電気工事に参加し、線路や駅のホーム、踏切など電車まわりの電気系統を点検し管理する仕事です。鉄道工事は作業や現場によって部門が分かれており、電気工事士が活躍するのは電車や駅の電線の張替えや電灯の点検、信号システムの点検作業などを行う電気設備部門です。精巧に作られた電気系統を扱い、電車を利用する多くの人の命に関わる職場であるため、1級・2級電気工事施工管理技士や第一種・第二種電気工事士などの専門的なスキルと経験が求められます。

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防犯設備の設置

ビルのセキュリティ管理や個人宅の在宅警備システムなど防犯設備の施工や保守点検を行う仕事です。大手のセキュリティ会社と契約しているビルや住宅における防犯設備の管理を行うため、定期的に案件が見込まれる仕事です。仕事内容はおもに防犯カメラの設置点検、警備システムが作動するための電気系統を新しく取り入れたり点検を行ったりするものです。最近では日本でも深夜の窃盗事件や白昼の強盗事件などが度々起こっており、大事な資産を守る防犯設備の需要が高まっています。

電話やインターネット回線の工事

企業や住宅での電話回線やインターネット回線の工事や保守点検を行う仕事です。
企業であればオフィスに沢山ある電話の回線が壊れていないか点検したり、インターネット回線をつなぐためのLAN構築を行ったりという仕事があります。住宅であれば電話回線の故障に対する修理や、インターネット通信をより速くさせるための光回線の導入などを行います。インターネットが生活に必要不可欠な時代となった今、都市部のオフィスだけでなく、山間部における通信工事も求められており、今後ますます需要が高まる業界です。

ビルの保守・メンテナンス

企業のビルにおける電気設備の管理を行う仕事です。入口のドアやエレベーター、ダムウェーター、電子錠で管理された倉庫など、企業の様々な資産が守られているビル内の電気系統の保守点検を行います。テレワークの一時的な増加で仕事が減った業界もありますが、最近はオフィスへの出勤による仕事が回復しつつある点や、都市部に新しく建てられる高層マンションでの受注が増えている点で、定期的なメンテナンスが求められる現場が多いため、安定した案件が見込める仕事です。

電気工事士が不足している原因

日本国内における電気工事士の不足は年々緩やかに進んでおり、経済産業省によれば第一種電気工事士は2022年前半で想定される需要に対して約2万人の不足がみられ、今後も減少していく状況にあります。第二種電気工事士に関しては第一種ほどではないものの2030年頃から不足していくと考えられており、2045年で2千人ほどの不足が推計されています。
では、電気工事士が不足していく原因はどこにあるのか、4つのポイントに沿って解説します。

原因1:需要が急速に拡大している

インターネットの急速な拡大に加えて、様々な災害における自治体を挙げての復興、オリンピックや万博など国際的なイベントの開催など、電気通信事業は社会のインフラとなり、私たちの生活とは切り離せないものとなっています。また大都市だけでなく地方や山間部でもインターネット通信技術の需要が高まっています。一方で日本国民の人口は減少を続けており、経験のある高齢者層の退職や、作業に専門性が求められる電気工事士への新規就職が不足していることにより、需要に対し供給が不足している状態です。

原因2:認知度が高くない

現時点で、電気工事士の仕事における認知度が高くないことも原因のひとつです。経済産業省の令和元年度の調査にて、電気工事士や技術者として労働している人のうち、電気工事士の仕事を認知したきっかけとして最も多く挙げられたのが「親族等の身近に電気工事士がいた」で、全体の約45%が該当しています。次いで多いのも就職活動や学校での職場体験などで、身近に電気工事士の仕事がない方にとってはあまり知られていない業界と言えます。

原因3:工業高校が減っている

全国の工業高校や認定校の数が減っていることも、電気工事士の新規採用不足に影響していると考えられます。日本全体の若年層人口が減少していることに加え、技術者になるための認定校からの入職率も15%程度にとどまっており、新たな電気工事士の育成が需要に追いつかない状況にあります。これまで工業高校など専門科出身の学生に就職の大半を依存していたこの業界では、電気以外の専門科や普通科の学生に対するアプローチができておらず、新しい人材の供給不足が続いています。

原因4:離職率が高い

電気工事士の業界では離職率が高いことも、人手不足の一因です。電気工事士の高齢化や退職が加速するなか、入職時のOJT機能がうまく働かず教育が不十分のまま業務についてしまったり、気候に左右される屋外や狭所などの過酷な労働環境によって疲労やストレスがかかったりという要因から、仕事が定着せず離職してしまうことが考えられます。専門性の高い学校での教育が十分に見込まれない今、入職後のOJT強化や、職場環境の改善などは人手不足解消の喫緊の課題と言えます。

こちらの記事では、建設業がやめとけといわれる理由について解説しています。

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電気工事士の人手不足に悩む会社の対処法

経済産業省の調査でも懸念されている通り、インターネット通信における最先端のシステムが導入されれば、今後さらに電気通信技術における需要と供給のギャップは開いていくと思われます。電気工事士の人手不足の現状について分かったところで、現在人手不足に悩んでいる企業において、人手不足の問題を解決するために実践できる対策はあるのでしょうか。今後の人材供給をアップさせるための対処法を、3つのポイントでご紹介していきます。

対処法1:SNSを活用する

TwitterやInstagram、TikTokなどを活用して電気工事士としての仕事内容や、職場での雰囲気を発信することも、仕事や企業について認知してもらえるきっかけ作りになります。実際に大手警備保障会社でも、TikTokで社員の普段の様子や休憩中の様子を発信したことにより、それまで平均年代が50代だった会社にも新卒の若手社員による応募が集まったという効果が見られています。SNSであれば新たな設備も必要ないため初期費用がかからず、電気工事士の存在を認知していない人にも親近感を与えることができて便利です。

対処法2:ホームページを活用する

自社のホームページを整え、外部の人から見ても分かりやすい状態にしておくことも効果的です。就職活動や転職活動では、就職サイトで情報を確認するのと同時に企業のホームページを閲覧することが多く、自社ホームページの体裁が整っていることで洗練された印象を与えます。また、単に事業の概要や仕事内容を紹介するだけでなく、職場での教育体制や事業の社会に対する貢献についても提示しておくことがオススメです。電気工事士として企業への就職を検討している人に「ここで働くことでこのように社会に貢献できるんだ」という実感を持ってもらうことが、企業のファンを増やす上で重要となります。

対処法3:労働生産性を向上させる

深刻な人手不足解消のためには、最新システムを取り入れて労働生産性の向上を図ることも検討しましょう。電気工事士の仕事自体は高い専門性が求められますが、勤怠・休暇などの労務管理や見積書・請求書の発送業務については、一部でITシステムを活用して効率化を図ることが可能です。初期費用はかかりますが、事務作業においての安定かつ持続的な労働力が得られるため、電気工事士などの専門職確保を優先させたい場合はその他のコスト削減に有効な手段です。

【まとめ】電気工事士は需要増に加えて人材難によって人手不足に!認知力の向上で人材の安定的な確保に尽力しましょう!

以上、電気工事士の活躍できる職場や、人材不足の原因と対処法などについて解説しました。上記で紹介したように、電気工事士が活躍できる現場は多岐に渡っており、従来のイメージにとらわれない働き方ができる企業も存在します。人口減少によりどの業界でも人手不足が叫ばれる時代ですが、SNSやホームページの活用を通して電気工事士の仕事への認知度を向上させたり、職場内での教育やIT化を強化させたりすることによって対策が可能です。業界全体を盛り上げるためにも、電気工事士について多くの人に知ってもらい、今後の安定的な人材確保に尽力しましょう。