一人親方が提出する安全書類とは?種類や作成方法を徹底解説!

一人親方として事業を営んでいると、現場仕事だけでなく書類作成のような事務作業も自身でする必要があります。
特に安全関係の書類は、必ず提出しなければならないものも多く、ないがしろにはできません。
必須書類の提出を忘れたり遅れたりすると、業務が続けられなくなる恐れがあります。
この記事では、一人親方が必ず提出しなければならない安全書類の種類や、書き方を解説します。
ぜひこの記事で解説した内容を覚えておいて、不備・不足のないように書類を作成してください。

一人親方が提出する安全書類とは?

安全書類とは、現場の安全を確保するために作成・提出する書類のことです。
「グリーンファイル」や「労務安全書類」ともいいます。現場作業員の安全に関わる大切な書類です。種類によっては法人だけでなく一人親方も提出しなければなりません。
工事の内容、管理体制、現場作業者などの情報を申告することで、適切な安全管理に役立てます。また、責任の所在が誰にあるのかを明確にしておくことで、万が一の事故の際に、下請けが不利益を被ることを防げます。

一人親方が出す安全書類の種類は?

一人親方が提出する安全書類の種類がいくつかあります。
再下請負通知書、契約書、作業員名簿の3つそれぞれについて詳しく解説します。

再下請負通知書

再下請負通知書とは、下請契約を締結していることを元請に報告する書類です。一人親方を含め、一次下請以下の工事業者それぞれが作成しなければなりません。工事現場では多くの業者が協力して作業をしており、規模が大きくなればなるほど下請業者が増えていくでしょう。様々な業者が集まっている中で適切に安全管理をするために、再下請負通知書が用いられます。契約内容や監督員名などが記載された再下請負通知書によって、各作業員の業務内容を元請が網羅的に把握して、安全を管理できます。

契約書

一人親方の場合、口頭で仕事を頼まれることも多いでしょう。口約束のみで業務をすると、万が一の事故が起こったときや報酬の支払いが遅れたときなどにトラブルになりがちです。
必ず「請負契約書」、「基本契約書 + 注文書・請書」、「基本契約約款 + 注文書・請書」のいずれかを作成しましょう。
また、成果に対して報酬が支払われる「請負契約」ではなく、労働時間に応じて報酬が支払われる「常用契約(単価契約)」を一人親方が締結することは法律で禁止されています。
必ず請負契約として書類を作成しましょう。

作業員名簿

下請ごとに作業員名簿を作成するように、建設業法で義務付けられています。一人親方ならば自身の情報だけ記載します。臨時で作業員を雇っている場合は、その作業員の情報も記載しなければならないため注意しましょう。
社会保険の加入状況や保有資格、最近の健康診断日などを記入してください。
万が一の事故に備えて、緊急連絡先も忘れずに記入しましょう。
元請はこの作業員名簿を用いて、作業に当たる人員を把握し、安全管理します。

作業員名簿の書き方についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

作業員名簿 書き方作業員名簿の書き方をわかりやすく解説!作成の目的や注意点も紹介

一人親方が案件や状況によっては提出しなければならない安全書類は?

提出が常に必須ではありませんが、場合によって一人親方にも提出を求められる安全書類があります。案件や状況によって一人親方でも提出が必須な安全書類をいくつか詳しく解説します。

建設許可証

一人親方でも建設許可証の提出が求められることがあります。
1件あたりの請負契約の金額が500万円を超える場合、受注するためには建設業許可が必要です。請負金額には材料費や消費税も含まれるため、一人親方に依頼される案件であっても500万円を超えることは珍しくありません。
また、建設業許可を得た場合、請負金額が500万円未満の案件であっても主任技術者の設置が義務付けられます。主任技術者の証明書も一緒に提出しましょう。

一人親方特別労災加入証明書

一人親方でも、労災保険への加入を証明する書類の提出を求められることが多くあります。
安全管理を義務付けられている発注者は、作業員が労災保険に加入しているか確認しなければなりません。
下請に社会保険の加入を促すように、国が元請に対して指導しているため、一人親方は労災保険に加入していないと現場に入れないことがあります。
万が一の事故や労働災害があった際、一人親方は、労災保険に入っていないと十分な補償を受けられません。
一人親方でも加入団体を通じて労災保険に特別加入できるため、自身の身を守るためにもぜひ労災保険に加入しましょう。

必要な資格

現場で作業するために資格が必要な場合は、その資格を保有していることを証明する書類を提出してください。
クレーンを運転するためにはクレーン運転士や移動式クレーン運転士などの免許、電気工事をするためには第一・二種電気工事士や認定電気工事従事者などの免許が必要です。
玉掛け、フォークリフトの運転、ガス溶接などの作業も資格が必要ですが、適切に技能講習を受ければ高確率で取得できます。
石綿(アスベスト)の取扱業務や巻上げ機(ウィンチ)の操作をするためには、特別教育を受講しなければなりません。
認定電気工事従事者とは?メリットや申請方法も解説!認定電気工事従事者とは?メリットや申請方法も解説!

新規入場者調査票

一人親方が初めての現場に入るときには、新規入場者調査票を提出しなければなりません。
作業員の経験年数、健康状態、健康診断の受診状況、保有資格などの情報を記入します。
現場では初対面同士が協力して危険を伴う作業をすることも多いため、作業員の情報を十分に知っておくことは元請にとって非常に重要です。
現場のルールや慣習を知らない新規入場者は事故を引き起こすリスクが高いとされ、新規入場者教育の実施が元請に義務付けられています。

建設業退職金共済証紙交付辞退届

現場によっては、建設業退職金共済の掛金が代金に含まれていることがあります。
建設業退職金共済に加入していないのであれば、証紙交付を辞退する届出をしなければなりません。他の退職金制度があるという理由で辞退する場合は、その制度に加入していることを証明する書類も併せて提出してください。単に加入意志がないだけでは、現場に入れない可能性があります。建設業退職金共済は、国が運営する、建設業者向けの退職金制度です。
一人親方でも団体を通じて加入できる貴重な制度なので、ぜひ加入を検討してください。

その他

その他にも、特定の機械設備や工具を用いる際に使用届の提出が必要です。
クレーンや建設車両などの重機、電動丸ノコや電気溶接機といった電気工具、サンダー、グラインダー、溶接機などの火気使用にあたる工具が届出の対象です。工事車両だけでなく通勤車両も含んだ車両届を提出しましょう。有機溶剤や特定化学物質を持ち込む際にも届出が必要です。一人親方は少ないかもしれませんが一次下請である場合は、施工体制台帳の作成を求められるでしょう。

一人親方が再下請負通知書を執筆するときの書き方

一人親方が再下請負通知書を執筆するときの書き方を解説します。基本的には法人向けに作られたフォーマットなので、書き方がわからなくなる場面があるかもしれません。詳しく解説するので、参考にしてください。

企業や工事などの情報記入

まず企業や工事などの情報を記入します。
「報告下請負業者」の欄に自社の情報を記入する必要があります。
「会社名」の欄には、一人親方の屋号もしくは自身の名前を記入してください。
「工事名称及び工事内容」の欄には、例えば「〇〇マンションの新築工事に係る型枠工事」というように、工事の名称と内容を簡潔にわかりやすく記入しましょう。
「注文者との契約日」欄には、現場入りの日付ではなく、契約書に記載されている契約日を記入してください。

建設の許可の記入

建設業許可を得ているならば、必要事項を記入してください。
500万円未満の工事で、建設業の許可を得ていないのであれば、記入不要です。
「許可番号」欄には、国土交通大臣許可なら「大臣」を、都道府県知事許可なら「知事」を丸で囲みます。
「特定建設業」の許可は、直接工事を請け負った業者が、合計4,000万円以上の工事を下請に出すときに取得するものです。
一人親方は「一般建設業」を選んで丸で囲みましょう。
「許可(更新)年月日」欄には、許可の開始日を記入してください。

加入保険の記入

「保険加入の有無」の「健康保険」、「厚生年金保険」、「雇用保険」はすべて法人向けです。
一人親方は基本的に「適用除外」を丸で囲みましょう。
国民健康保険、国民年金保険について記入する必要はありません。
ただし、健康保険組合に加入している場合、以前勤めていた会社の健康保険を任意継続している場合、勤め先の会社で社会保険に加入し副業として一人親方を営んでいる場合などは、加入を丸で囲みましょう。
すべて「適用除外」ならば、「事業所整理記号等」の欄は空欄で構いません。
何かの保険に加入している場合は、「事業所整理記号等」の「営業所の名称」欄に自身の名前を記入します。
健康保険、厚生年金保険に加入している場合は、保険の事業所整理記号と整理番号を、雇用保険に加入している場合は、労働保険番号を記入してください。

工事の担当者情報の記入

一人親方は、「現場代理人」、「安全衛生責任者」、「雇用管理責任者」欄に自身の名前を記入してください。他の担当者欄は空白で構いません。
ただし、建設業許可を得ている場合、請負金額が500万円未満の案件であっても主任技術者が必要なため、忘れずに自身の名前を記入しましょう。
「権限及び意見申出方法」欄には、多くの場合「契約書に準拠する」と記入すれば問題ありませんが、指摘されたときには「口頭及び文書による」というように権限の取り決めや意見のやり取りの方法を具体的に記入してください。

外国人の情報記入(必要あれば)

基本的に一人親方の場合は不要ですが、一時的にでも下請に外国人がいる場合は、その外国人の情報を記入してください。
特定技能1号を持つ外国人を雇っている場合は「一号特定技能外国人の従事の状況(有無)」欄に有と記入してください。特定産業分野の知識や経験を持つ外国人には「特定技能1号」の在留資格が与えられ、受入れ機関の支援の実施が求められています。技能実習を終えた外国人を雇っている場合は「外国人建設就労者の従事の状況(有無)」に有を、外国人技能実習生がいる場合は「外国人技能実習生の従事の状況(有無)」欄に有を記入しましょう。

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一人親方が安全書類を作成する際のポイント

一人親方が安全書類を作成する際には当然ながら自分一人で様々な情報を調べて、記入しなければなりません。
安全書類の作成にあたってはエクセルなどのツールの使用がメジャーではありますが、なかにはエクセルの使用に不慣れな方もいることでしょう。そのような場合は、建設業に必要な安全書類を一括で作成・管理できるソフトの導入がおすすめです。

管理・作成ソフトを導入することのメリットは
・PC上で書類を管理できるため書類紛失の心配がない
・ペーパーレスでコスト削減が可能である
・ソフトによって様々な安全書類を一元管理できる
などが挙げられます。

ソフトによっては、作成した書類をクラウド上で保存できる機能や、期限が切れる書類を自動でリマインドしてくれる機能といった便利な機能を備えたものがあります。
自身での安全書類の作成に不安がある方や自身一人ですべての書類作成をしなければならない一人親方の方は作成・管理ソフトの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

【まとめ】一人親方でも安全書類をしっかりと準備しよう

一人親方が提出しなければならない安全書類の種類や、書き方を解説しました。
提出しなければならない書類の種類が多く、どれも書き方がややこしいと感じるかもしれません。特に再下請負通知書は企業向けのフォーマットが採用されているため、書き方に迷うことが多いでしょう。しかし、どれも現場の安全管理に役立つ書類であり、元請だけでなく自身にとっても重要なものです。
再下請負通知書や契約書といった書類を作成する際は、ぜひこの記事で解説した内容を思い出して役立ててください。

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