未成工事支出金が粉飾に利用される?仕訳方法や注意点を紹介

建設業界では、請け負った工事が長期になり年度内に完成しないケースがあります。未完成のまま年度末を迎えてしまった場合に、それまでの工事にかかった経費をどう処理するかは悩ましいところです。特に個人事業主や中小企業の経理担当者は頭を悩ませることでしょう。この記事では、未完成のままでもそれまでにかかった経費を計上できる未成工事支出金について解説します。粉飾決算となる事例や注意点についても説明しますので参考にしてください。

なぜ未成工事支出金が存在するのか

未完成工事支出金は、請け負った工事の売上と使った経費を同時に計上するために存在します。工事の開始時と終了時が年度をまたいでしまった場合、各年度ごとに会計処理をすると正確に売上と経費を計上できません。例えば、2年で2000万円の工事を請け負ったとしましょう。未成工事支出金科目を利用しなければ、初年度の会計処理時には経費だけが発生して売上は計上できません。そうなると利益が正確に計算できず、税金計算にも矛盾が生じます。一旦、未成工事支出金科目に計上しておいて、工事完成時に振り替えれば売上と経費が同時に計上できるわけです。

工事進行基準で不正が起こる理由

売上を工事の進捗に合わせて計上する「工事進行基準」を取り入れている企業も多いようです。工事進行基準とは、請け負った工事が完成した場合にかかる原価合計と単年度にかかった原価合計の比率で求められます。例えば、合計原価1億円の工事に対して初年度にかかった経費が1000万円だったとします。この場合比率で初年度の工事の進捗度は全体の10%です。収益合計に進捗度をかけ合わせた金額が利益に計上されます。ここでは原価合計を少なめに計上するという不正が起きないよう注意しないといけません。そもそも、粉飾決算に陥ってしまう原因は、予算達成への圧力が強いという組織的な問題や、公共工事への参入を有利にするため経営事項審査の点数を上げようとするケースが考えられます。そこで外部からは見分けがつきにくい「原価合計」を操作するのです。原価合計を少なめにしておけば、工事の進捗度が高くなり単年度利益が高くなります。

工事進行基準と工事完成基準との違い

工事進行基準とは、工事を進めながら工事が終了する期間までに売上や経費を分散して計上する方式です。一方で工事完成基準は請け負った工事が完了し引き渡したところで売上と経費を計上する方式です。それぞれの詳しい違いや会計処理の方法はこちらで詳しく紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。

工事進行基準とは?工事完成基準との違いをご紹介!

未成工事支出金の仕訳の注意点2選

ここでは、未成工事支出金の仕訳をする際の注意点について2つの事項について詳細に解説します。未成工事支出金は工事が完成した年度に振り替えて計上しますが、そのタイミングを考えなければなりません。また、各年度で未成工事支出金科目に計上する際もいくつか注意が必要です。掛けで仕入れたものをどう扱うかなど、経理上の注意点もいくつかあります。未成工事支出金の目的を十分把握し、工事が完成した年度の会計処理を実行しましょう。

掛けで仕入れた場合の貸方は「買掛金」ではなく「工事未払金」を計上

工事進行に伴い料金後払いで仕入れる場合もあります。その場合の貸方には「工事未払金」として計上するようにしましょう。工事未払金も建設業の会計処理独自の勘定科目です。ただし、工事に関係する未払い金を処理するという意味においては、一般の会計業務で利用される「買掛金」と共通しています。建設業の会計と一般の会計とを対比してみると工事未払金は一般の会計では買掛金と同じ意味です。また、未成工事支出金は一般の会計での仕掛品に対応していると考えましょう。

経費計上は工事完成のタイミングで!

計上した未成工事支出金は、請け負った工事が完成した年度に、工事完成~引き渡しが完了したタイミングで「完成工事原価」として原価合計に振り替えます。未成工事支出金の目的は、会計処理上で工事にかかった経費と売上を対応させることです。したがって、工事が完成して売上が計上できなければ、経費も計上できません。方法としては前述のような「工事完成基準」の他に、各年度の工事の進捗度により計上する「工事進行基準」も使えます。この2つの方法にはそれぞれメリットとデメリットがあるのでどちらの方法が良いのかは判断が難しいところです。ただし、会計処理上はどちらかの方法に統一する必要があります。社内で十分検討してどちらを採用するか決めてください。

未成工事支出金を粉飾決算に利用されることも

未成工事支出金は、会計年度をまたぐ工事を請け負った場合に、売上と経費の不一致を防ぐことを目的とした建設業会計独自の科目です。しかし、経費を繰り越せることを利用して当年度の利益を水増しする粉飾決算に利用されることも少なくありません。ただ、そのような会計処理を続けていくと、会社全体の未成工事支出金の額と、次期に繰り越された売上金の比率が合わなくなります。銀行の担当者は、特に未成工事支出金について厳しくチェックして粉飾決算を見逃しません。粉飾決算はたとえ過失でも罪に問われるので、税理士などと連携して正確な会計処理を心がけましょう。

未成工事支出金の仕訳方法や勘定科目についてはこちらの記事でも詳しく解説しておりますのでぜひ参考にしてみてください。
建設業の未成工事支出金とは?仕訳方法や勘定科目も徹底解説

【まとめ】未成工事支出金を粉飾決算に利用しても銀行には見破られる

建設業の会計には、年度をまたぐ長期の工事を請け負った場合に、当年度に発生した経費を計上する未成工事支出金という科目があります。未成工事支出金は、長期にわたる工事の売上と発生経費の矛盾やミスマッチを防ぐための建設業独自の会計科目です。しかし、発生した経費を次年度以降に繰越せることを利用した粉飾決算に利用されることもあります。銀行では、未成工事支出金を厳しく確認しているので常に正確な会計処理を実行しましょう。

工事進行基準と収益認識基準の違いについてはこちらの記事でより詳しく解説しています。

工事進行基準 収益認識基準工事進行基準と収益認識基準の関係は?収益認識基準が導入されたことによる影響についても解説

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