インボイス制度で一人親方が廃業の危機といわれる理由や対策を解説!

令和5年よりスタートしたインボイス制度によって、一人親方の立場が危うくなるという話を聞いたことはありませんか。一人親方をはじめとする個人事業主から批判の声も多いインボイス制度ですが「仕組みが良く分からない」「登録すべきか悩んでいる」という方も少なくないでしょう。今回はインボイス制度の概要と、一人親方が取るべき対策について解説します。

インボイス制度とは

インボイス制度は、取引によって発生した消費税率と税額を把握するための制度です。インボイス制度について、以下の2つに分けて説明します。

  • インボイス制度の概要
  • 消費税の仕組み

インボイス制度の概要

インボイス制度は別名「適格請求書等保存方式」と言います。従来は、売上高1,000万円以下の事業者には納税義務がありませんでした。しかし、インボイス制度の施行により「消費税を受領した一人親方が消費税を納めてない場合、元請けが消費税を納める」という仕組みに変わり、国が定めた適格請求書(インボイス)の使用が義務づけられました。

消費税の仕組み

インボイス制度によって大きく変わるのは、仕入れ額控除についてです。仕入れ税額控除とは従来「自社の売上の消費税額から仕入れ等にかかった消費税額を差し引いた分を納税すること」でした。しかし、インボイス制度導入後は、仕入税額控除するためにインボイスに登録し、適格請求書発行事業者になることが義務付けられました。

インボイスに登録しなければ、仕入れ額の消費税も自分で負担しなければならなくなったのです。

インボイス制度で一人親方が廃業の危機といわれる理由

インボイス制度は、一人親方をはじめとする個人事業主の消費税の納税について定めた制度です。なぜ、インボイス制度の施行によってひとり親が危機にさらされているのでしょうか。以下の2つのケースに分けて理由を説明します。

  • 免税業者のままでいる場合
  • インボイス発行事業者となる場合

免税業者のままでいる場合

課税売上高が1,000万円以下の免税業者として仕事を続けていく場合、もし取引相手も免税事業者の場合は、影響は大きくないでしょう。しかし、取引相手が売上高1,000万円以上の課税事業者の場合は下記のリスクが考えられます。

  • 仕事の量が減る可能性がある
  • 取引額の値引き交渉をされる可能性がある

仕事の量が減る可能性がある

インボイス制度では免税事業者が支払わない消費税分を課税事業者が負担する仕組みになっています。つまり、免税事業者である一人親方に仕事を発注する場合は、課税事業者である元請けが消費税分損する仕組みになっているのです。そうなると、「発注するなら、消費税を負担しなくてよい課税事業者を選ぼう」と考えられ、免税事業者に仕事が回ってこないことも想定されます。

取引額の値引き交渉をされる可能性がある

インボイス制度に登録しない場合、請求額から消費税分を値引きして取引額を交渉する可能性があります。つまり「課税事業者である元請けが消費税を支払わなければならないのだから、その額を取引額からあらかじめ引いておこう」という考えです。法律上インボイス制度を利用した値下げの強要は禁止されていますが、このようなケースは横行していくことも考えられています。

一人親方同士で仕事を依頼することが難しくなる

消費税負担を避けるために、インボイス制度で売上高が1,000万円を超える適格事業者になった一人親方は、適格事業者同士で取引を行うことが予想されます。そうなると売上高1,000万円以下の免税事業者である一人親方は、必然的に免税事業者同士で取引することになるでしょう。その結果、取引先が免税されている消費税の支払いを被ることになるため、一人親方同士の横のつながりの確保が難しくなるのです。

インボイス発行事業者となる場合

インボイス発行事業者となる場合、取引による悪影響はあまり懸念されません。しかし、以下の2点について懸念する必要があるでしょう。

  • 消費税の負担が増加する
  • 請求書の内容が複雑になり手間がかかる

消費税の負担が増加する

収益や受注金額に大きな影響は考えられませんが、消費税負担額が増えるため手元に残る金額が減るリスクはあるでしょう。負担額の割合によっては生活が苦しくなる、あるいは廃業になる可能性もゼロではありません。また、インボイス制度にならった経理方法や、請求書などの管理を行なわなければならないため、事務コストが増えると考えられます。

請求書の内容が複雑になり手間がかかる

インボイス制度にならった経理処理を行うため、事務作業が煩雑になることが予想されます。例えば、インボイス制度だと1つの適格請求書につき8%、10%それぞれの税率ごとに1回の端数処理を行うというルールが適用されます。また、発行したインボイスには7年間の保管義務が課されるため、保管場所の確保やルールを事務所内で徹底しなければなりません。

インボイス制度で一人親方ができる対策

インボイス制度が実施される中、一人親方が損益を回避するために以下の対策を取ることをおすすめします。

  • 免税事業者とインボイス発行事業者のメリットを比較する
  • 法人化する
  • 転職して正社員になる

免税事業者とインボイス発行事業者のメリットを比較する

今まで通り免税事業者でいるか、インボイス発行事業者になるかを決めましょう。それぞれのメリットについて以下で解説するので、自身が事業をしていく中でメリットが大きい方を選びましょう。

免税事業者でいる場合

今まで通り免税事業者でいることを選ぶメリットは、複雑なインボイスの登録や請求書の処理が不要なことです。しかし、取引先である元請けに仕入れ額控除を受けられないデメリットが発生するため、取引額や取引自体が見直されるリスクがあります。また、前述したように一人親方同士の取引が困難になる可能性も考えなければなりません。

インボイス発行事業者になる場合

インボイス発行事業者になる一番のメリットは、取引先である元請けが仕入れ額控除を使えるため、既存の取引がそのまま保たれるということです。また、新規の取引をする際にもインボイス登録事業者であるほうが、取引額についての打ち合わせがスムーズに進行する可能性が高くなります。

しかし、消費税額を納付する分、当然利益が減少するというデメリットがあります。また、請求書の発行や端数の計算なども既存の方法から大きく変更しなければなりません。自社の経営を見直しコストを削減する必要がありますし、事務作業が煩雑化するため事務作業員を雇用する必要が出てくるかもしれません。

法人化する

事業を法人化するという選択肢もあります。法人化してもインボイスを登録する必要がありますが、法人化すれば利益の一部を役員報酬として支払い法人所得を減らすなどの減税対策が取れることや、社会的な信用度もアップします。2024年現在では個人事業主が法人化した場合に最長2年間の消費税免税が受けられるという特例があるので、このタイミングで法人化に踏み切るのも良いでしょう。

こちらの記事では、一人親方の法人化についてより詳しく解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

転職して正社員になる

企業に勤め、正社員として働くのも1つの方法です。一人親方の技術や経験、マネジメント能力を望む企業はたくさんあります。正社員になることで安定した仕事量が供給され、社会保障も完備で、さらに社会的な信用も大幅にアップするというメリットがあります。また、煩雑な請求書や見積書発行などの事務作業から解放されるため、実務に専念できスキルもアップしていくでしょう。しかし、一人親方だった時と比較すると勤務時間の自由が利かなくなるというデメリットがあることも考慮する必要があります。

インボイス制度を選んだ一人親方が行う手続き

上記の選択肢の中から免税事業者からインボイス制度へ登録する適格請求書発行事業者になることを選ぶ方は、以下の手続きを行う必要があります。

  • 簡易課税制度を利用する
  • インボイス制度に対応した請求書を準備する

簡易課税制度を利用する

簡易課税制度とは、年間売上額が5,000万円以下の中小零細企業に対して出された、みなし仕入れ率を利用できる特例です。建設業のみなし仕入れ率は70%です。この制度を利用した場合、消費税は以下の数式で計算するため、一般的な計算方法より安くなる可能性があります。
(課税売上高 × 0.1)-(課税売上高 ×0.1×0.7)

インボイス制度に対応した請求書を準備する

インボイス制度に適用した適格請求書を準備しましょう。適格請求書には、従来の記載項目に加え以下の3点を追記しなければなりません。

  • 適用税率
  • インボイス登録番号
  • 税率ごとに区分した消費税額

インボイス制度に適用した適格請求書の書き方についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

請求書【建設業】請求書の書き方や作り方は?適格請求書の場合も解説

インボイス制度で一人親方が廃業する場合の手続き

インボイス制度の影響を受けて、正社員になるなどの選択をして一人親方を廃業する場合には、以下の書類を用意し所定の手続きを行う必要があります。

  • 廃業の届出書
  • 個人事業の開業届出・廃業等届出書
  • 青色申告の取りやめ届出書

【まとめ】インボイス制度で一人親方が廃業する場合はある!状況に合わせて最適な対策を取ろう

インボイス制度は、免税事業者の消費税の仕入れ額控除を元請け負担にするという、売り上げの一人親方に大きな影響を及ぼす制度です。インボイスに登録しなければ元請けから取引額の減額や取引の廃止を求められますし、インボイスに登録すれば消費税を負担する分利益の減少は避けられません。法人化や正社員になるという選択肢も踏まえ、状況に応じた最適な対策を取りましょう。

一人親方が法人化するメリット・デメリット4選と、会社設立の流れについてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

一人親方が法人化するメリットは?デメリットやタイミング、会社設立の流れも紹介

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