解体工事の前後に必要な手続きとは?申請方法や注意点などを解説

解体工事 手続き

解体工事を行う際には単に建物を壊すだけでなく、事前と事後に様々な手続きを行う必要があります。それらの手続きを怠ったり、漏れがあったりすると、法的なトラブルに巻き込まれる可能性があります。

この記事では、解体工事の前後に必要な手続きとその方法、注意点などについて詳しく説明していきます。

解体工事に必要な手続き

建物を解体する際には、多くの場合、法令に基づく様々な手続きが義務付けられています。中には規模や用途によっては手続きが免除される例外的なケースもありますが、一般的な住宅やビルなどの解体工事を行う際は、確実に手続きが求められます。手続きを怠ったり、手順を誤ったりすると、重い罰則を受けるリスクもあるため、発注者として十分な理解と対応が不可欠です。

手続きが不要な場合

例外的に解体工事の手続きが不要とされるケースもあります。建物の規模が小さかったり用途が軽微である場合は、許可申請や届出が免除されることがあります。具体的には以下のようなケースが想定されます。

  • 一定の小規模な床面積以下の建物
  • 建物としての構造を持たない簡易な仮設建築物
  • 物置や車庫などの軽量な付属建物

しかし、こうした例外の場合でも、建物の立地場所によっては手続きが求められる可能性があります。例えば、道路に面した建物では道路使用許可が必要になるなど、状況次第で手続きが変わってくるためです。

手続きを怠れば、法令違反となり、重い罰則を受ける恐れがあることを認識しておきましょう。手順を理解し、手続きを確実に行うことが、安全で適切な解体工事を行う上での大前提となるのです。

解体工事の前に行う手続き

解体工事に着手する前に済ませておかなければならない主な手続きは、以下の通りです。

  • 役所に解体工事届け出を提出する
  • 警察署に道路使用許可申請と道路占用許可申請を申請する
  • ライフラインを停止する
  • 近隣へ解体工事の説明を行う
  • アスベスト対象の場合は特定粉じん排出等作業の実施の届出を行う
  • 家具や家電など私物を処分する

順に解説します。

役所に解体工事届け出を提出する

解体工事を開始するには、まず所轄の役所(市区町村の建築主事など)に対して解体工事届を提出する必要があります。解体工事届には、工事場所や解体する建物の内容、工事の期間、解体業者名などを記入します。

建物の規模によっては工事計画書の添付も求められます。届出から起算して一定の日数(通常7日間〜30日間程度)が経過すれば、解体工事を開始できるようになります。

警察署に道路使用許可申請と道路占用許可申請を申請する

解体工事では建物の外側にも足場を組んだり、廃棄物の集積所を設置したりする必要があります。道路上の一部を使用したり、占有したりする場合には、事前に警察署に道路使用許可申請と道路占有許可申請を行わなければなりません。安全対策や交通規制の内容を示す図面なども求められます。

ライフラインを停止する

建物に電気やガス、水道などが供給されている場合は、解体工事に先立ってライフラインを全て停止する手続きが欠かせません。各ライフライン会社に連絡を入れ、停止の日程調整や使用量の精算などを済ませる必要があります。

近隣へ解体工事の説明を行う

解体工事では騒音や振動、粉塵の発生が避けられません。周辺住民への影響が想定されるため、事前に近隣への説明会を開くなどして理解を求めることが大切です。欠かした場合、近隣トラブルに発展する恐れがあります。

アスベスト対象の場合は特定粉じん排出等作業の実施の届出を行う

解体対象の建物にアスベストが使用されている可能性がある場合は、特定の手続きが別途必要になります。アスベストは人体に有害な物質のため、大気中に排出しないよう細心の注意が求められます。対象となる建物では、事前に主務大臣に「特定粉じん排出等作業の実施の届出」を提出しなければなりません。

家具や家電など私物を処分する

解体工事を円滑に進めるには、建物内に残されている家具や家電、私物を全て処分しておく必要があります。事前に片付けないと、解体工事の妨げになったり、工事業者側で余分な手間を掛けなければならなくなるためです。ごみの収集日に合わせて出すなど、計画的に家具家電の処分を済ませましょう。

解体工事の後に行う手続き

解体工事の後に行う、主な手続きは以下の通りです。

  • 建物滅失登記を行う
  • 工事の終了後に水道の停止を行う

工事が無事に完了したら、忘れずに手続きを行いましょう。

建物滅失登記を行う

建物が解体されたら、法務局に対して建物滅失登記を行う必要があります。建物滅失登記とは、建物がなくなったことを公的に証明する登記のことです。

この登記を行わないと、建物は法的に存在し続けることになります。固定資産税の課税対象にもなり続けるため、必ず建物滅失登記を済ませましょう。

建物の相続人が建物滅失登記申請を行う場合

建物の所有者が亡くなった後、相続人が解体工事を行った場合は、建物滅失登記の申請を相続人全員の承諾を得た上で行う必要があります。相続人の中に申請に反対する人がいるケースでは、一定の手続きを経なければなりません。

状況に応じて家屋滅失届を行う

建物が全壊した場合、家屋課税台帳への家屋滅失届が必要になる場合があります。市区町村の窓口に確認し、必要であれば適切に届け出ます。

状況に応じて土地滅失登記を行う

すでに土地に建物が存在しない状態で解体工事を行った場合は、建物の滅失登記に加えて、法務局で土地の滅失登記も行わなければなりません。

工事の終了後に水道の停止を行う

建物を解体した後、敷地内に水道メーターなどが残っていれば、残りの水道使用料の精算と水道の完全な停止手続きを行う必要があります。水道局に連絡し、水道メーターの撤去などの手続きを済ませましょう。

解体工事の手続きに必要な費用を抑える方法

解体工事には様々な申請や手続きが伴いますが、それぞれに費用も掛かります。
可能な範囲で費用の抑制を図るには、以下の方法があります。

  • 道路使用許可申請と道路占用許可申請を自分で行う
  • 建物滅失登記申請を自分で行う

自分で最低限の手続きを済ませることで、解体工事関連の費用全体を抑制することができるのです。

道路使用許可申請と道路占用許可申請を自分で行う

警察署への道路使用許可申請や道路占有許可申請について、解体業者に代行を依頼すると手数料が上乗せされます。申請書類の作成から提出まで自分で行えば、その分の費用を抑えられます。

ただし、申請書類の記載内容や申請の手順を確実に理解しておく必要があります。手順を誤ると申請が不備になり、再度の手続きが必要になるなどのリスクがあります。申請を自分で行う場合は、十分に手順や記入方法を把握しておきましょう。

建物滅失登記申請を自分で行う

解体業者や不動産業者に建物滅失登記の申請を依頼すると、手数料が上乗せされてしまいます。建物滅失登記申請は、申請書類の作成と管轄の法務局への持参申請のみで完了するため、自分で全ての手続きを行えば、数万円程度の費用を抑えられます。

手続きの手順や必要書類さえ理解していれば、特に難しいことはありません。ただし、建物の相続に関わる建物滅失登記は手続きが複雑なため、専門家に依頼するのが無難でしょう。

解体工事の手続きや届出書類の提出を怠った場合の罰則

解体工事における手続き漏れや届出書類の提出がなされなかった場合、発注者や解体業者には重い罰則が課される可能性があります。建築基準法に基づく解体工事届の提出がなされなかった場合、罰金の刑が科せられることがあります。一般的には10万円以下の罰金刑に処されますが、悪質な場合には懲役刑にもなりかねません。

また、道路使用許可や道路占有許可がなく、無断で道路を使用したり占有したりした場合は、道路交通法違反となり、3カ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金刑が言い渡されます。粉じん発生の可能性のある場合に、特定粉じん排出等作業の届出を怠れば、大気汚染防止法違反で200万円以下の罰金刑となる可能性もあります。

相続によって解体工事を行うときの手続き手順

建物を相続した後に、解体工事を実施したい場合、通常の解体工事と手続きが若干異なりますので留意が必要です。この場合の具体的な手続き手順は以下の通りです。
1.登記簿謄本で建物の名義人を確認する
2.建物の抵当権を確認する
3.建物の法定相続人で解体について話し合う
4.解体工事を行う
5.解体工事後に建物滅失登記をする

相続の場合、建物の所有者や相続人の確認、合意形成などの手順が加わるため、通常より手続きが複雑になります。分譲マンションなど区分所有建物の場合はさらに手順が煩雑になるため、先の検討が必要でしょう。

1.登記簿謄本で建物の名義人を確認する

建物の名義人(所有者)を確認するため、法務局から登記簿謄本を取得します。建物は通常、土地とは別の物件として登記されています。生前からの名義人なのか、相続により新たな所有者になったのかを確認しましょう。

2.建物の抵当権を確認する

登記簿謄本から、建物に抵当権が設定されていないかを確認します。建物に抵当権がある場合、解体工事に際して抵当権者の同意を得る必要があり、手続きが複雑になります。

3.建物の法定相続人で解体について話し合う

建物の法定相続人全員で集まり、解体工事の実施について協議します。相続人の一部が反対した場合は、解体工事ができない可能性もあります。また、不動産の共有持分による権利分割作業が必要になるケースもあります。

4.解体工事を行う

話し合いの上で解体が決まれば、解体業者の選定など解体工事の準備に入ります。その他の事前手続きも含め、通常の解体工事と同様の手順を踏みます。

5.解体工事後に建物滅失登記をする

解体工事完了後は、所有者である全ての相続人の同意を得た上で法務局に建物滅失登記の申請を行います。建物滅失登記が済むと、建物は法的に存在しなくなります。

解体工事後の注意点

解体工事完了後も、気を付けなければならない点があります。

  • 固定資産税が増額する場合がある
  • 今後の土地活用を考える
  • 定期的に土地のメンテナンスを行う

固定資産税が増額する場合がある

建物を解体した後は、その土地に建物が存在しないため、固定資産税の算定方法が変わります。中には、解体後に固定資産税が増額する場合もあるので注意が必要です。

固定資産税と都市計画税の計算方法

固定資産税は、土地と建物それぞれで税額が算出され、両者の合計金額がその年度の課税額になります。また、市街化区域内の土地には都市計画税も別途課せられます。

建物があった場合、固定資産税と都市計画税の計算では建物の評価額が反映されるため、その分税額が抑えられていました。しかし、建物がなくなると土地の評価額のみが対象となり、税額が実質的に高くなってしまうのです。

一方、建物の老朽化が著しく、建物の評価がほとんどされていない状況なら、解体によってあまり税額が変わらない場合もあります。

固定資産税が免税になるケース

家屋の滅失後一定期間は固定資産税が免除される例外もあります。建物が老朽化や災害により半壊や全壊した場合、その年の1月1日を基準日として、一定期間は固定資産税が免除されることがあります。

免除期間は以下の通りです。

  • 半壊の場合:3年間免除
  • 全壊の場合:5年間免除

この免除措置が適用されれば、一時的に固定資産税の負担が軽減されます。ただし、この期間を過ぎると更地となった土地の評価に応じて通常の固定資産税が課税されるため、注意が必要です。

今後の土地活用を考える

建物を解体して更地になった場合は、その後の土地活用について検討する必要があります。売却する場合の査定評価や、新たな建物の建築計画など、様々な選択肢が想定されます。

中長期的には更地のままの土地を所有し続けるつもりでいるのであれば、雑草の手入れや防犯対策など、土地の適切なメンテナンスが欠かせません。

定期的に土地のメンテナンスを行う

更地のままの土地を所有し続ける場合は、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。放置してしまうと、雑草が生い茂ったり、不審者の立ち入りなど防犯面でのトラブルにもつながりかねません。

雑草の除去やゴミの撤去、フェンスの補修など、最低限の手入れを定期的に行いましょう。また見回りを行うなどして、不審者への対策にも気を配る必要があります。必要に応じて有人監視のセキュリティ会社に依頼するのも手です。コストがかかりますが、空き地の防犯対策としては確実な手段と言えるでしょう。

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【まとめ】解体工事の手続きを理解しスムーズに建物の取り壊しを行おう

解体工事を行う際には、様々な法的な手続きが伴います。手続き漏れや手順ミスがあると、重い罰則を受けるリスクもあるため、慎重な対応が必要です。

解体前の手続きでは、役所への解体工事届の提出が求められます。場合によっては道路使用許可や近隣住民への説明、アスベストへの対策といった別途の手続きも必要です。

解体後は固定資産税が増額する可能性があるため、今後の土地活用を見据えたメンテナンスも欠かせません。しっかりと手順を理解した上で、スムーズに建物の解体を進めるようにしましょう。

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