工事仕様書とは?目的や種類・作成するときの注意点などを解説

工事仕様書とは

工事を進めるうえで、様々な設計図書が作成されます。そこに含まれる工事仕様書には2つの種類があります。工事仕様書は種類ごとに記載内容や作成の目的が異なります。作成の意図をきちんと理解し、適切に作成することで、工事の品質を保ったり、事務処理の効率化を図ったりできます。工事仕様書について、目的や種類を詳しく解説します。

工事仕様書とは

工事仕様書とは、工事の方法や必要な材料、作業の手順など設計図には記載がない内容を文章でまとめたものを指します。工事仕様書は見積の作成にも使用されます。そのため記載されている内容は正確に、かつ誰にでも分かりやすい内容である必要があるのです。

工事仕様書の目的

工事仕様書によって、工事の品質を保つことに繋がります。建設業者や職人によって工事の品質がバラバラでは、トラブルが起きる恐れもあります。工事の品質を一定に保つために、工事の手順や内容を記載し、標準的な仕様書として工事仕様書が機能しているのです。

また、工事仕様書は設計図書としても使用できます。通常であれば使用する材料や機材、工法に合わせて様々な設計図書を作成する必要があります。しかし、工事仕様書を設計図書に適用する旨を記載することで、設計図書として扱えます。そのため、設計図書の作成が不要となり、作業負担が減り、業務の効率化にも繋がります。

工事仕様書と設計書の違い

設計書は、大きく分けて4区分で構成されています。

  1. 設計概要
  2. 工事費の内訳
  3. 内訳書
  4. 単価表

設計書の作成で、工事に必要な材料費や人件費を算出できます。工事仕様書は、設計書に記載の内容をより細かくまとめたものです。工事内容ごとに誰が見ても分かりやすいように、箇条書きにする必要があります。

工事仕様書の種類

工事仕様書には標準仕様書と特記仕様書の2種類があります。それぞれ記載されている内容に違いがあります。

標準仕様書

標準仕様書には、建物の構造や工事の範囲、必要な材料と設備が記載されています。国土交通省が公表している公共建築工事標準仕様書を略して標準仕様書と呼ばれることもあります。

国土交通省が公表している公共建築工事標準仕様書の内容に合わせて作成されることが一般的です。国土交通省の公共建築工事標準仕様書は内容が3年に1度に改定されるため、変更内容を都度確認しながら作成する必要があります。

引用:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建設工事編)令和4年版

特記仕様書

施工にあたって技術的に気を付けるポイントや、材料の品質や仕様など、工事の品質を保つための情報が記載されているのが特記仕様書です。標準仕様書には工事全体に関する内容が記載されていますが、特記仕様書にはより工事の内容を詳しく説明した内容が記載されているのです。

図面や標準仕様書と特記仕様書の記載内容に相違がある場合は、特記仕様書に記載の内容を優先して工事を進める必要があります。もしも、特記仕様書の作成が必要ない場合は、「公共建築工事標準仕様による」という旨を記載しましょう。標準仕様書の内容を参考に、工事が進められます。

公共工事における標準仕様書の種類

県や国などが発注する公共工事では、通常の民間工事と比べて守るべきルールが細かく設定されています。そのため、標準仕様書に関しても工事の内容に合わせて適用される仕様書が異なります。公共工事を受注する予定がある場合は、事前に内容を確認しておきましょう。

公共建築工事標準仕様書

「公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書」で発注された公共の新築建築工事を対象に、工事の方法や仕様する機材、材料などの標準的な仕様がまとめられているのが公共建築工事標準仕様書です。工事請負契約の際に、契約図書としても使用されます。

公共建築工事標準仕様書は、業種ごとに3種類に分けられます。

  • 建築工事編
  • 電気設備工事編
  • 機械設備工事編

また、文部科学省から依頼される公共工事でも、原則として「国土交通省の建築工事標準仕様書」に則って工事が進められます。ただし、学校などの文教施設の工事に関しては、状況に合わせて

  • 文部科学省建築工事標準仕様書(特記基準)
  • 文部科学省電気設備工事標準仕様書(特記基準)
  • 文部科学省機械設備工事標準仕様書(特記基準)

の仕様書が追加されます。

公共建築改修工事標準仕様書

「公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書」で発注される公共建築改修工事では、公共建築改修工事標準仕様書が使用されます。改修工事に必要な材料や機材、工事の方法などの標準的な仕様がまとめられているものです。工事の内容に合わせて、以下の3種類があります。

  • 建築工事編
  • 電気設備工事編
  • 機械設備工事編

また、公共建築工事標準仕様書と同様、文部科学省より依頼される公共工事に関しては、

  • 文部科学省建築改修工事標準仕様書(特記基準)

の内容に則って工事を進める必要があります。

公共建築木造工事標準仕様書

「公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書」で発注される公共建築木造工事は、公共建築木造工事標準仕様書が使用されます。木造の公共建築工事に使用しても問題のない材料の標準的な仕様が記載されています。

建築物解体工事共通仕様書

「公共工事標準請負契約約款に準拠した契約書」で依頼される建築物の解体工事では、建築物解体工事共通仕様書が適用されます。解体工事の際に使用可能な材料や機材、工事方法、試験内容などの標準的な仕様が記載されています。

公共建築設備工事標準図

公共建築設備工事標準図は、各仕様書とセットで使用します。公共工事の設計図に使用される図(記号)がまとめられています。公共建築設備工事標準図には4種類あり、工事の内容に合わせて内容が変動するため注意が必要です。種類は以下の通りです。

  • 電気設備工事編
  • 機械設備工事編
  • 文部科学省電気設備工事標準図(特記基準)
  • 文部科学省機械設備工事標準図(特記基準)

民間工事における工事仕様書

民間工事の場合でも国土交通省が公表している公共工事標準仕様書が適用されるケースが非常に多いです。民間工事とはいえ、公共工事と同じレベルの品質が要求されるためです。しかし、民間工事向けの工事仕様書として、一般社団法人公共建築協会が民間連合協定工事請負契約約款に適した工事共通仕様書が公表されています。

公共のものと民間のもの、どちらの工事仕様書に則っても問題ないため、工事の内容に合わせて使用しましょう。

工事仕様書の記入項目

工事仕様書には、

  • 工事範囲
  • 工事概要
  • 関係官公庁との事前協議事項
  • 施工上の注意点

の4つを記入する必要があります。工事の内容によって、追加で記載が必要になる項目もありますが、基本的に上記4つは記載が必須です。それぞれの内容についてみていきましょう。

工事範囲

工事範囲には、自社が施工する工事の範囲のみ記載してください。記載方法は個別に範囲を記載する方法と、全体の工事範囲を記載のうえ、対象の範囲のみチェックを付ける2パターンがあります。

工事概要

工事概要には工事の目的や、施工が必要な根拠などを記載しましょう。特記仕様書の記載項目として、大切な項目です。標準仕様書には記載されていない現場特有の内容について、きちんと明記することが大切です。

施工業者についても、記載内容を把握したうえで工事を進める必要があります。そのため誰が見ても分かりやすいように記述しましょう。

関係官公庁との事前協議事項

特記仕様書には標準仕様書には記載しない特別な工法や材料の数が記載される場合があります。工事を始める前に、関係する官公庁と事前協議をし、双方が記載内容を把握する必要があります。協議で決定された内容だけでなく、協議が行われた日時や担当者などを記載してください。

施工上の注意点

施工上の注意点として、重要度の高い情報を記載しましょう。特殊な工法や、工事の指針となる内容を、具体的に分かりやすく記載することがポイントです。設計図書と現地の状況を確認し、設計通りの施工が可能なのかを事前に確認しましょう。もし問題が発生する可能性がある場合は、施工上の注意点として記載が必要です。

その他

どの記載項目にも該当しないが、工事を進めるうえで理解が必要な内容についても、漏れなく記載する必要があります。その他の細目として、特記仕様書に細かく記載しておきましょう。

工事仕様書を作成するときの注意点

工事仕様書は、現場の作業員が内容をきちんと把握し、記載内容に則って作業をします。そのため誰が見ても分かりやすい資料にするために、図や表、箇条書きを使用し、視覚的に記載内容が把握できるようにしましょう。その他工事仕様書を作成するときの注意点は、以下の通りです。

特記仕様書の優先度は高い

工事にあたって、様々な設計図書を作成し、それらを確認する必要があります。設計図書の中で例えば設計図に記載の内容と、特記仕様書に記載の内容で相違がある場合があります。その際は、特記仕様書に記載の内容が優先されます。設計図書の優先順位については、以下の通りです。

  1. 質問回答書
  2. 現場説明書
  3. 特記仕様書
  4. 設計図
  5. 標準仕様書

表記を統一する

作成時に表記のぶれなどがないよう統一することで、より分かりやすい資料となります。テンプレートを用意したり、表記についてあらかじめ決めたりしておくことで、表記を統一することができるでしょう。

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【まとめ】工事仕様書についてよく理解して品質の確保を心がけよう!

工事仕様書は、より工事の品質の安定と、事務処理の効率化をはかるために作成されます。誰が見ても記載されている内容がきちんと理解できるよう、分かりやすい記載が求められます。作成時に役立つテンプレートも数多くあるため、作成の効率化のためにも活用を検討してみましょう。また同じ工事の仕様書でも記載内容にばらつきがある場合があります。それぞれの仕様書の優先度を理解し、適切に工事を進められるようにしましょう。

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