建設業の雇用保険加入は義務?適用除外や保険料率についても解説

建設業 雇用保険

建設業の雇用保険は、従業員一人ひとりに加入手続きが必要です。しかし、保険料率や加入手続きが建設業特有なので迷う部分もあるでしょう。

本記事では、建設業における雇用保険の特徴と保険料率の計算方法、実際の手続き手順まで詳しく解説しています。雇用保険の手続きに悩む時間がなくなるので、ぜひ最後まで読んでみてください。

建設業における雇用保険とは

建設業は、不安定な雇用形態や労働災害における失業のリスクから、雇用保険が重要です。建設業の労働者にとって、雇用保険を含めた社会保険は命綱ともいえます。

雇用保険の特徴や労災保険との違いを解説します。

労災保険との違い

建設業において、労災保険と雇用保険はどちらも重要な社会保険です。違いは、適用範囲にあります。

  • 労災保険:元請業者が加入し、その労働者から下請業者の労働者まで補償
  • 雇用保険:各事業所で適用条件を満たす労働者を加入し保障

保険内容については、労災保険が業務上の災害に備えた保険であり、雇用保険は失業による生活基盤の保護に備えた保険です。

雇用保険の加入は義務

建設業では、2020年10月の建設業法改正により雇用保険への加入が義務付けられています。加入が適用される基準は以下の通りです。

  • 31日以上継続雇用される見込みのある者
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上ある者

つまり、一般的な従業員は強制適用となります。
建設業者は、従業員を雇用する場合に必ず雇用保険の加入手続きをしなければなりません。雇用保険に未加入の場合は、建設業許可がおりずに工事ができません。

また、雇用保険だけでなく、社会保険すべてに加入が必要です。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 労災保険

企業・労働者の未加入が多く、法定福利費を負担しない企業が増えたこともあり法律で義務化されました。

一人親方は厚生年金に加入できるのかについてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

一人親方は厚生年金に加入できない?適用除外になる理由と対策を解説!

建設業で雇用保険に加入しない場合

建設業において雇用保険の加入は建設業法で義務付けられています。しかし、一定の条件を満たす場合は加入義務がありません。

加入しなくてもよい「適用除外」と加入できない「加入不可」について解説します。

適用除外

建設業の雇用保険は加入義務がありますが、一定の条件において適用除外されます。適用除外に該当する者は雇用保険加入が義務付けられていないので、加入していなくても業者は建設業許可の申請が可能です。適用除外の条件は以下の通りです。

  • 65歳に達した日以後新たに雇用される者
  • 1週間の所定労働時間が20時間未満である者
  • 31日以上継続して雇用される見込みがない者
  • 大学や専修学校の学生・生徒等

高齢労働者や学生、日雇い作業員などです。短期工事で日々雇い入れられる場合は、日雇い雇用保険に被保険者が自分で加入する必要があります。

加入不可

建設業の雇用保険に加入できない就労属性は以下の通りです。

  • 事業主
  • 代表者
  • 役員
  • 一人親方

上記の役職は、失業のリスクが低く、賃金についても役員報酬なので雇用保険は認められません。雇用保険は賃金を元に算出されます。会社との従属関係もないので、労働者という括りではありません。

ただし、使用人兼務役員の「使用人」部分は雇用保険に加入できます。例えば「取締役兼工事部長」のような肩書きの場合、工事部長の部分が対象です。

建設業の雇用保険料率の最新情報

建設業における雇用保険料率は、一般の事業と異なります。正確な保険料率を毎年確認して最新の状態にしないといけません。

雇用保険料率の最新情報と実際の計算方法について解説します。

2024年度の雇用保険料率

2024年の建設業の雇用保険料率を表にまとめます。

労働者負担事業主負担事業主負担

(失業等給付・育児休業給付の保険料率)

事業主負担(雇用保険二事業の保険料率)雇用保険料率の合計
建設の事業7/1,00011.5/1,0007/1,0004.5/1,00018.5/1,000
一般の事業

(参考)

6/1,0009.5/1,0006/1,0003.5/1,00015.5/1,000

※厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について」より

表を見てわかるように、建設業の雇用保険料率は一般事業に比べて高く設定されています。受注量の変動による雇用が不安定になりやすく、失業給付を受ける可能性が高いことが理由です。また、建設現場では労災による失業の可能性も高くなります。

雇用保険料率の計算方法と具体例

建設業において雇用保険を適用する場合の具体的な計算方法を紹介します。まず、各負担率は以下の通りです。

  • 労働者負担保険料=賃金総額×労働者負担料率
  • 事業主負担保険料=賃金総額×事業主負担料率

例えば、月給30万円の労働者がいる場合の建設業の雇用保険料は以下の通りです。

  • 労働者=30万円×0.007=2,100円
  • 事業者=30万円×0.0115=3,450円

算出した金額を基に、保険料を労使折半で負担します。雇用保険料率は年度ごとに改定されるので、毎年最新の保険料率を確認して負担額を計算してください。

建設事務員の場合

建設業で働く事務員の雇用保険料率は、建設業の料率と同じです。事務員だけ一般で計算することはありません。

ただし、労災保険の場合は、事務員と現場作業員で労災に遭う可能性が異なるので、保険料率が異なります。
雇用保険は、建設業で働くすべての人の失業率を考慮して設定されているので、現場職員も事務員も変わりません。

建設業の雇用保険の加入方法

建設業は雇用保険の加入が義務付けられているので、従業員を雇った時点で加入手続きが必要です。加入タイミングや必要書類、手続きについて解説するので、処理漏れのないように進めましょう。

加入タイミング

建設業の雇用保険の加入タイミングは、基本的に従業員を雇用した時点です。具体的には以下のパターンです。

  • 新規に建設業を開始したとき:従業員を雇用した時点で加入
  • 新規の従業員を雇うとき:雇用日から翌月10日までに加入

建設業は、営業所や現場がいくつもあり、工期によっては入れ替わりが激しいです。労働者の雇用タイミングも多いですが、遅延しないように雇用保険に加入しましょう。

加入に必要な書類一覧

雇用保険に加入するために必要な書類は、建設業特有の書類も含めてたくさんあります。抜け漏れがないように注意してください。初めて加入する際の必要書類一覧は以下の通りです。

  • 労働保険保険関係成立届(雇用保険用)
  • 労働保険概算保険料申告書(雇用保険用)
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 建設業許可書の写し
  • 登記事項証明書など事業所の所在がわかるもの

2回目以降は、雇用保険被保険者資格取得届と建設業許可書の写し、印鑑証明書などの書類で問題ありません。

ハローワークで雇用保険申請手続き

雇用保険の加入に必要な書類を揃えて、最寄りのハローワークへ足を運びます。労働者全員分をまとめて申請可能です。

建設業は雇用保険の加入だけでなく離職も多いので、離職票を提出するためにもハローワークに行く必要があります。郵送で手続きできる場合もあるので、担当者に確認して効率的に業務を遂行しましょう。

建設業許可申請書に雇用保険番号を記入

建設業許可申請書には雇用保険番号を記載する部分があります。事業所の記載欄に「雇用保険」があるので「労働保険番号」を記載してください。個人の雇用保険番号ではありません。

労働保険番号は、事業所ごとに交付される14桁の番号です。確定保険料申告書や労働保険申請書に記載されています。

業種ごとの建設業雇用保険の適用

建設業における雇用保険は、様々な形態によって適用可否が異なります。個人事業主や高年齢労働者など、個々で適用範囲が変わるので、正しく理解しておきましょう。

建設業に多い形態を挙げて、雇用保険の適用について解説します。

元請と下請(外注)業者の雇用保険

建設業では、元請業者が工事を請け負い、外注の下請業者に部分的に施工を依頼します。しかし、雇用保険は事業所ごとに加入するので、元請と下請は関係ありません。
元請業者・下請業者どちらも、従業員は所属する事業所で雇用保険に加入してください。

一人親方の雇用保険

建設業界では、ある程度経歴を積んで独立する一人親方が多いです。一人親方は個人事業主の扱いなので雇用保険に加入できません。失業した場合の国の補償制度は受けられないと理解しておきましょう。

高年齢雇用の雇用保険

建設業界には、長年培った技術を認められている高年齢の従業員が多いです。60歳を超えても、適用条件を満たせば雇用保険に加入できます。65歳以上は「高年齢被保険者」となります。保険料率は通常通り計算されて負担します。

特定建設業の雇用保険

建設業には、一般建設業と特定建設業があります。

  • 一般建設業:元請として、下請代金が4,500万円を超えない(工事一式の場合は7,000万円を超えない範囲)場合
  • 特定建設業:元請として、下請代金が4,500万円以上(工事一式の場合は7,000万円以上)の場合

一般建設業と特定建設業は下請代金によって上記のように区別されます。しかし、どちらも建設業なので、雇用保険料率に違いはありません。

建設業の雇用保険の未加入問題

建設業界において、雇用保険を含む社会保険の未加入問題は長年に渡り問題視されています。

この問題を解決するために、国土交通省は様々な対策を講じています。
未加入問題の背景と国の対策について解説します。

未加入は公的社会保障が受けられない

建設業で雇用保険に未加入であれば、失業したときの公的社会保障が受けられません。離職した際の給付金が付与されないと、生活保障ができず人権問題に関わります。
毎月の雇用保険料の負担を苦にして加入しない選択をしても、自らの首を絞める行為となります。労働者保護のため、建設業法で雇用保険への加入が義務付けられているので、建設業者も必ず労働者の加入手続きをしましょう。

国土交通省による未加入対策

建設業における社会保険未加入問題は労働者だけの問題ではありません。例えば、以下のような問題が生じます。

  • 建設業の就労環境悪化による若年入職者の減少
  • 技術を若者へ継承困難
  • 建設業に必要な人材確保が困難
  • 保険料負担なしによる低価格入札による不公平感

そこで、国土交通省では事業者単位で加入義務のある業者100%に社会保険の加入義務付けを目指しました。下請ガイドラインでは、社会保険未加入の下請企業を現場に入場させないとしています。

また、建設業者の相談窓口の設置や、安全衛生大会での社会保険未加入問題の講義を行っています。各都道府県との連携を深めて、国を挙げて未加入対策に取り組んでいる状況です。

社会保険について無料相談できる窓口

社会保険について不安や疑問点がある場合、社会保険労務士に無料で相談できます。各都道府県の社労士会が相談窓口を置いている場合、無料相談が可能です。

社会保険労務士は、労働・社会保険問題の専門家です。また、費用はかかりますが、建設事業者が開催している安全大会、安全衛生大会、総会などで、社会保険労務士が講演や個別相談会を催してくれます。どの保険に加入すればいいのか、保険料はいくらかかるのかなどの不安や疑問がある人は、相談してみましょう。おすすめの社労士は1年間無料サービスを提供している「社会保険労務士法人TSC」です。

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建設業の労災保険の特徴とは?種類や計算方法・手続きについて解説の記事はこちら

建設業 労災保険建設業の労災保険の特徴とは?種類や計算方法・手続きについて解説

【まとめ】建設業の雇用保険は労働者の生活安定のために加入必須

本記事では、建設業における雇用保険の重要性や保険料率、雇用保険の加入手順について解説しました。雇用保険は、労災保険とは異なり事業者ごとに労働者の加入手続きが必要です。未加入であれば失業後の生活の悪化だけでなく、建設業界の就労状況の悪化に発展します。

雇用保険料率は、毎年改定されるので、最新情報を正しく入手して適正な保険料を納めましょう。建設業の保険料は様々なリスクを考慮して一般より高く設定されています。その分、業務中の被災による離職がやむを得ない場合でも、一定期間の給付金で生活できます。
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