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会社の利益率を上げるためには、経営コストを削減する必要があります。建設業での経営コストの削減方法と聞いて、材料費や人件費の削減を最初に思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。確かに大きくコストを削減できるポイントではありますが、やみくもに材料費と人件費を抑えると、会社の倒産につながるおそれがあります。そのため、慎重な検討が必要です。
しかし建設業のコストを削減する方法は、それだけではありません。まずは建設業ではどれだけの経営コストがかかっているのかみていきましょう。
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建設業で経営コストにかかる目安
建設業の経営コストは、材料費や人件費などが9割以上を占めています。国土交通省が公表している建設業での営業利益率は、資本金が1億円未満の小企業の場合1~3%前後、資本金が1億~10億円未満の中企業では2~4%前後で推移しています。例えば、売上高が年間1億円の中企業の場合、営業利益は2,000~4,000万円の計算です。
参考:国土交通省「建設業を取り巻く主な情勢」
建設業でコスト削減が重視される理由
建設業は材料費や人件費などのコストが9割以上を占めているため、上手く削減ができれば大きく利益を伸ばせます。また、近年原油などのエネルギーや木材などの建築資材の価格が高騰しています。
併せて、人件費などの労務単価も年々上昇していることから、利益確保のためのコスト削減が重要とされています。一般財団法人の建設物価調査会によると、2024年2月の建築資材物価は、4年前の2020年と比べて32%も上昇しているのです。
参考:建設物価調査会
建設業がコスト削減を始める前に見直すポイント
コストを削減するには、現在どのような支出があるのかを把握し、問題点を見つける必要があります。見直す際は項目ごとに分けて行うと、問題点を見つけやすいです。コスト削減に向けて見直す項目やそれぞれのポイントについてみていきましょう。
予算
各予算ごとに項目を分けることで、前年や業種の相場と見比べた際に、問題点を洗い出しやすくなります。基本予算と実行予算では、予算の内容が異なります。そのため2つに分けて見直しを行うことがおすすめです。
基本予算
基本予算とは、会社単位での1年間の予算を指します。実行予算は現場ごとの予算です。経営方針や経営計画に基づいて基本予算は決められます。基本予算に含まれる予算は以下の通りです。
- 完成工事髙予算
- 営業費予算
- 材料予算
- 労務費予算
- 外注費予算
- 工事経費予算
- 広告費予算
- 研究開発費予算
- 一般管理費予算
実行予算
基本予算とは違い、実行予算は工事ごとの予算です。実行予算の主な項目は以下の通りです。
- 材料費
- 労務費
- 外注費
- 保険料
- その他経費
実行予算の見直しをする際には、支出ごとに細分化がおすすめです。
工事原価
実際の工事で必要になった支出は工事原価に分類されます。主な項目は実行予算と同じですが、工事原価は既に支払ったものだけをまとめたものです。
建設業は現場によって工事を完了するために何年もかかる場合があります。そのため工事原価は2種類に分けられます。
- 完成工事原価:年度中の会計に計上できる原価
- 未成工事支出金:翌年度以降に繰越す原価
それぞれの項目を相場や自社の前年度の金額と比較することで、削減可能なコストが見えてくるでしょう。
材料費
工事の際にさまざまな材料を仕入れる必要があります。そのため、材料費の見直しで大きくコストを削減できる可能性があるのです。しかしコスト削減のために材料の品質を下げることはやめましょう。材料費の削減には、より安い価格で購入可能な仕入れ先を探したり、材料を直接仕入れたりする方法があります。
材料の費用は、材料の原価と流通コストで決まります。流通コストは場合によっては原価よりも高いことがあります。そのため、中間業者を使わずにメーカーから直接仕入れることで、大きくコストを削減できる可能性があるのです。
しかし、メーカーと直接やりとりすることで、今までの支払い方法や発注方法では注文ができなくなる場合もあります。業務の手間が追加で発生するデメリットもあるため、慎重に検討しましょう。
各種保険
現在加入している保険内容を正確に把握していない場合、見直すことで大幅にコストを削減できる可能性があります。とくに保険について大手代理店にまかせっきりの場合は要注意です。建設業は業種ごとに補償内容が大きく変わります。そのため代理店が紹介してくれる保険プランでは、必要のない補償内容が加わっている可能性があるのです。
現在加入している保険の補償内容を見直し、不要な内容に関しては契約を見直しましょう。
建設業のコスト削減方法
建設業でのコスト削減のための具体的な方法についてご紹介します。どの削減方法も注意点があるため、慎重に検討しましょう。
固定費を優先的に削減する
毎月、もしくは毎年など定期的に一定額を支払う必要がある固定費は、見直しによりコストの削減ができれば継続的に効果を得ることができます。固定費を見直すことで、年間の支出を押さえることが可能です。変動する費用も見直す必要はありますが、コスト削減の効果は一時的です。ここでは見直しにおすすめの固定費の項目を紹介します。
人件費
人件費は建設業に限らず、固定費の大きな割合を占めています。人件費の」削減ができれば大きくコストカットが可能です。しかし、社員や役員の給与や賞与のカットは離職につながるリスクがあります。業界の平均値と比較し、慎重に行いましょう。
地代家賃
オフィスや土場の移転による地代家賃の見直しもおすすめです。上手くいけば大きくコストカットができるでしょう。しかし、オフィスや土場の移転には多額の費用がかかります。また、住所の移転手続きなどの業務も発生します。社員の通勤にも影響が出るため、交通費の見直しも必要です。
光熱費
現在契約しているプランを見直すことで、コストの削減が期待できます。しかし、光熱費のプランは、契約会社によって大きく差があるものではありません。そのため大きなコストの削減にはつながらないでしょう。
広告宣伝費
広告宣伝費を見直すことも、コスト削減に直結します。しかし、広告宣伝費による売上が大きな割合を占めている場合、売上のダウンにつながります。広告代理店などと相談し、適した広告宣伝費を見極めましょう。
外注費
外注費を抑えてなるべく自社で施工をすることで、コストの削減が可能です。自社のリソースを把握し、適切な人員配置を行い、可能な範囲で外注費を抑えましょう。
業務を効率化する
業務の効率化で、人件費や光熱費を抑えることが可能です。無駄な業務がないか確認し、可能な範囲でIT化を行いましょう。建設業でとくに時間がかかる積算見積り業務なども、専用のソフトがあります。自社に必要な機能をもつソフトの導入を検討しましょう。
Webサイト・SNSを活用する
広告宣伝の代わりに、WebサイトやSNSからの集客へ切り替えることで、広告宣伝費を抑えることが可能です。Webサイトを作成し、SEO対策を行うことで、継続的に集客ができます。SNSによる集客は、建設業だけでなく多くの企業が力をいれています。アカウントの作成は無料なので、コストをかけずに取り組めます。
建設業の業態別コスト削減方法
建設業では業種ごとにコストがかかる項目が大きく違います。そのため業種ごとに見直すポイントにも違いがあるのです。
土木工事や公共工事が中心の業態
土木や公共の工事を中心としている場合、下請けとして工事を受注することが多いでしょう。しかし、下請けとして工事を受けると、工事の利益率は低くなります。自社での集客に力をいれ、工事を直接受注することで営業利率を上げられます。
また、賠償責任保険の見直しで、コストを大きく削減できる可能性があります。土木工事や公共工事では、物損事故や第三者へケガをさせてしまうリスクがほかの業種より高いため、賠償責任補償保険への加入はほぼ必須です。しかし現在と同じ補償内容で、コストを抑える保険があるかもしれません。
住宅建設が中心の業態
住宅建設では、材料費の見直しによるコスト削減が有効です。住宅建設ではさまざまな製品や部材が必要です。そのため材料費が大きくコストを占めています。しかし材料費のコスト削減のために、材料の品質を下げた仕入れは、発注者の信頼を損ないます。同じ品質でよりコストを抑えた材料に変更したりなどを検討しましょう。
ほかにも中間業者を使って材料の仕入れを行っている場合、メーカーから直接仕入れることで材料費を安く抑えられます。そのため仕入れルートの見直しも行いましょう。
不動産開発が中心の業態
不動産開発が中心の場合、ほかの業種よりも工事を進めるための手続きなどが煩雑です。そのためDX化やIT化を進めることで、人件費や光熱費を大きく抑えられます。ツールやアプリの導入は、コストがかかることもありますが、国による補助金が適用可能な場合があります。削減できるコストと天秤にかけ、自社に合わせた機能をもつツールの導入を検討しましょう。
建設業でコスト削減するときの注意点
コストの削減には、場合によっては会社の経営に大きく支障が出ることがあります。そのため注意点を把握し、慎重に検討する必要があるのです。
品質低下を防止する
材料費を抑えようと品質の悪い材料や資材の使用は、顧客からの信頼を損ないます。また、人件費を抑えるための手抜き工事も行うべきではありません。建設物は人の暮らしの近くで、長く利用されます。品質の悪い施工で、顧客からの信頼を損ない、いずれ工事の発注がなくなるでしょう。
そのため、コスト削減の見直しの際には工事の品質が低下しないかどうかを、きちんと確認し、実行してください。
人件費の削減にはリスクが伴う
人件費の削減は、大きなコストカットに貢献します。しかし給与や報酬のカットによる離職のリスクがあります。そのため人件費を見直す際には、人員配置が最適であるか、業務の効率化が可能であるかを確認しましょう。
外注するときはインボイス制度への対応を確認する
2023年10月1日より導入されたインボイス制度は、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式です。仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者として、適格請求書を発行する必要があります。工事の外注先がインボイス制度に対応していないと、発注者側は仕入税額控除が適用されません。インボイスに対応している場合と比較すると、発注の度に外注費の10%のコストが必要になります。
大きい現場を外注する場合はもちろんですが、小さい現場でも回数が重なると大きな負担になります。とくに一人親方などの個人事業主に外注する際は、インボイス制度へ対応しているかを確認しましょう。
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建設業でおすすめのコスト削減方法をご紹介しました。会社の経営に問題がない場合でも、コスト削減のために見直しは定期的に行うべきです。しかしコスト削減にはリスクが伴う場合があります。過度なコスト削減は、最悪の場合会社の倒産につながります。注意点を把握し、必要であればコンサルタントへの相談がおすすめです。現状会社のコストを圧迫しているポイントを見極め、適切にコストを削減しましょう。
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