建設業では若者離れが当たり前?若者離れを防ぐ対策も紹介!

建設業の3Kイメージや少子高齢化の影響で、建設業界は慢性的な人手不足が続いています。

特に建築業の若手離れは顕著に現れています。しかし、どうしてそこまで若者が建築業から離れていくのでしょうか。

若手不足は人が足りないという問題だけではなく、技術継承や伝統継承に大きな影響を与えます。

本記事では、建築業の若者離れの原因とその対策について解説します。建築業に就職を考えている若者や人手不足に悩まされている企業は、参考にしてみてください。

【最新】建設業の人手不足の現状について

まずは、2024年5月に公表された「建設労働需給調査結果」より、建設業の人手不足の現状について確認しましょう。

画像引用元:建設労働需給調査結果(令和6年5月調査)

この調査では、型わく工(土木)・型わく工(建築)・左官・とび工・鉄筋工(土木)・鉄筋工(建築)・電工・配管工の8職種を対象としています。

全国における8職種の過不足は、5月は0.4%の不足、前月(4月)は1.1%の不足となり、前月と比べ0.7ポイント不足幅が縮小していますが、依然としてすべての職種で不足しています。

この人手不足の大きな原因は建設需要の拡大です。2023年8月に国交省により発表された「令和5年度(2023年度)建設投資見通し概要」によれば、2015年度以降、建設投資額は年々増加傾向にあり、今後も増加していくことが考えられます。

さらに、2025年問題もあります。2025年問題とは、いわゆる団塊世代が75歳以上の後期高齢者に達することで起こる、極端な少子化と超高齢化です。この問題により、建設業ではベテラン世代が一気に退職すると心配されています。

建設業での若者離れの現状

建設業での若者離れの原因や対策について考える前に、建設業での若者離れの現状について解説していきます。

建設業に従事している人の年齢構成は以前と比べてどのようになっているのでしょうか?

建設業就業者の高齢化率の推移

まずは、建設業就業者の高齢化率推移について解説していきます。

平成9年のピーク時には、29歳以下の割合が22%でした。その後29歳以下の割合は減少していき、令和3年の段階で29歳以下の割合は12%となっています。

業界別での29歳以下の就業者の割合平成9年令和3年
建設業24%12.0%
全産業21%16.6%

全産業で29歳以下の就業者割合は減少しているものの、建設業は特に高齢化率が高い業界となっています。

高齢化率が高くなってしまっているため、これまで蓄積されていた技術の承継ができなくなってしまうことが大きな課題となっていきます。

年齢別の建設技能者数

次に、年齢別の建設技能者数の現状について解説していきます。

現状、60歳以上の建設技能者数は79.5万人となっており、全体の約25.7%となります。そして、この年代の技能者は10年後には大半が引退することが見込まれています。

反対に29歳以下の建設技能者数は37.2万人で、全体の12.0%となっています。そして、これからの建設業を支えるのはこの世代です。この世代の技能者数の向上と育成は建設業として対応するべき課題です。

建設業の3年以内離職率

これからの建設業界を支えていく世代である若者離れは深刻です。就職者数も年々減少しており、建設業の労働力不足は数値にも表れています。

若者離れが進んでいる建設業界の現状について、データから分かる数値も確認しましょう。

ここでは、以下の数値を見ていきます。

  • 高校卒の3年以内離職率
  • 大卒の3年以内離職率

高校卒の3年以内離職率

令和5年に厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、令和2年3月に高校を卒業した建設業就業者のうち、3年以内の離職率は42.4%です。約5人に2人は離職していることとなります。

また、全産業の離職率は37.0%です。全産業と比較しても、建設業界の離職率が高い水準であることが分かります。

大卒の3年以内離職率

大学卒の3年以内離職率も、令和5年に厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況」から確認しましょう。

令和2年3月に大学を卒業した建設業就業者のうち、3年以内の離職率は30.1%です。

また、全産業の離職率は32.3%です。大卒の場合、建設業の離職率は特別高い水準とはいえません。

しかし、平成31年度の28.6から確認しても離職率は上昇傾向にあります。

このようなデータから見ても、建設業の若者離れは深刻です。このまま進むと、建設業の将来の担い手を確保できない恐れもあります。

建設業での若者離れが当たり前とされる理由

日本の総人口は、2008年に1億2,808万人をピークに減少傾向にあり、高齢者の割合も世界でも最も高く、29.1%に達しています。

少子高齢化の影響もあって、建設業界では人材不足が深刻化しています。
建設業界全体における55歳以上の就業者の割合は約36%で、一方で29歳以下の若手就業者は約12%と、就業者の高齢化や若者離れが進行しています。

若者離れが進行している原因は、建築業特有の労働形態や賃金形態などです。ここでは、若者離れが当たり前とされる理由について解説します。

労働環境が悪いイメージがある

建設業界は昔から、きつい、汚い、危険と言われてきた業界です。そのため、他の産業と比べて、まだまだ3Kなイメージがついているのは事実です。さらに、以下のような悪いイメージを持っている若者も少なくありません。

  • 肉体労働がキツそう
  • 上下関係が厳しそう
  • ブラック労働
  • ガラが悪い

建設業界も改善に向けて努力していますが、近年では仕事内容よりもワークライフバランスを重視する若者が増えています。そのため、他の業界に比べて労働環境が悪いイメージは、若者離れが進行する原因の1つとなっています。

休日が少ない

建設業は長時間労働が一般的で週休2日制を採用している企業が少ないため、若者の離職率が高まっています。

建設工事全体のうち、4週4休以下の就業形態が約4割であり、週休2日制を導入している企業はおよそ2割しかありません。

この業界において休日が少ない理由のひとつは、多重下請け構造です。この構造により、業務が下請け企業へ流れるほど中間マージンが発生し、下層の企業ほど受け取る利益が少なくなります。

下請け企業が利益を得るためには、厳しいスケジュールに対応する必要があります。工期が長くなるとコストも上昇するため、下請けの零細企業や小規模事業者にとっては厳しいでしょう。

労働時間が長い

建設業は労働時間が比較的長く、このことが若者から敬遠される理由のひとつです。

厚生労働省の調査によると、建設業の月間労働時間は165.3時間で、他の産業に比べて30時間以上も多いとされています。

近年、長時間労働や違法な残業が問題視され、働き方改革関連法が施行され、時間外労働の罰則付き上限規制が始まりました。

かつては特別条項付き36協定により、法定時間を超えた労働が認められ、実質的に無制限の残業が認められていた時代もありましたが、現在は上限規制が設けられ、時間外労働に上限が設けられるようになりました。

建設業界も2024年4月から上限規制の対象となるため、労働環境の改善が求められています。

収入が不安定

建設業において若者離れが進んでいる原因のひとつに、不安定な雇用形態もあげられます。

建設業界には、現場作業を主体とする業務が多く、天候不順により作業が中止になるケースもあります。

東京商工リサーチによる調査では、建設業に従事する労働者の31.6%が日給月払い制を採用しており、不安定な雇用形態で働いている人が3割以上にも及ぶことがわかっています。

例えば、左官工が担当する外壁の漆喰仕上げや土間コンクリートの金鏝仕上げなどは、天候不順により作業が中止になることがあります。資金力の乏しい零細企業や小規模事業者では、休業手当を支給することができず、休日扱いにする場合があるため、不安定な雇用形態が長期化することがあります。

このような現場の有無や天候により収入が左右される状況は、若者にとって将来のライフプランを考える上で大きな不安要因となる可能性があります。

人間関係

建設業界だけでなく、どの業界でも、先輩たちの趣味や話が理解できず、職場で孤立してしまうことがあります。とくに高齢者が多い建設業界では、若者と趣味が合わないことが多く、孤立することが起こることがあります。

このような場合、年長者が若手に寄り添うことはもちろん大切ですが、最も有効な手段は、同世代の複数人を同時期に採用することです。

しかし、採用が難しい時代に複数の新人を採用することは容易ではありません。そこで、面接時に人柄を見極め、教育係として性格が合いそうな先輩をつけることで、まずは相談できる相手をつくり、その後会社になじんでもらうことが現実的な対策方法といえます。

働き方が特殊

建築業は日給×出勤日数で月給が決まります。基本給というのが一般的にはないので、出勤しないと稼げません。そのため、梅雨の時期や台風が多い時期は月給が少なくなってしまいます。

他にも、日によって早朝出勤や夜勤出勤しなければいけなく、働き方がサラリーマンと比べると特殊です。

安定しない収入や雇用形態、特殊な働き方は現代の「安定」を求めている若者にとっては避けられがちです。働き方は職業柄、どうしようもないので若者離れを防ぐためにも、面接の段階で見極めて離職率を下げるしかありません。

建設業界で若者離れを防ぐための対策

若者離れが進行している建築業界ですが、現状では人手不足による労働時間のしわ寄せや生産性の低下に繋がります。

若者離れが深刻化すると技術継承にも影響が出始め、建築の技術が次世代に受け継がれなくなってしまいます。建築業はマンパワーが重要な業界なので、人材が不足してしまうと受けられる仕事も受けられなくなってしまうでしょう。

そこで、人手不足を感じている会社では今すぐにでも若者離れを防ぐ対策が必要です。
ここでは若者離れを防ぐための具体的な施策について、詳しく解説します。
まずはできるところから、若者離れの対策を講じていきましょう。

残業時間の規制

2024年4月より、建設業にも残業時間の上限規制が適用され、違反した事業者は罰則の対象となります。

建設業界内では、「建設業の2024年問題」として注目されており、これを機に古い組織風土や企業文化を脱却し、ワークライフバランスを重視する絶好の機会といえます。

働き方改革を進め、労働環境を改善すれば、「きつい」「危険」「汚い」といった建設業のイメージを払拭し、若者離れを防止することができるかもしれません。

建設業での働き方改革についてはこちらの記事で解説しています。

2024年から始まる建設業の働き方改革とは?国土交通省のガイドラインや現在の動きについても解説!

業務のデジタル化

近年は、働き方改革の推進や新型コロナウイルスの感染拡大などの影響もあり、テレワーク制度が様々な分野で導入されています。

テレワークは、時間や場所に縛られることなく働くことができるため、出産や育児、介護などの事情に合わせたワークスタイルを確立できるとともに、通勤時間の削減やコスト削減にもつながります。

建設業のような現場作業が主体の業界では、テレワーク環境の整備は困難ですが、施工管理や経理業務など、一部の業務については対応可能です。

これらの業務については、テレワークを可として募集することで、多様な人材の確保につながるといえます。他にもドローン技術やDXを取り入れて業務をデジタル化すれば、労働時間に余裕ができるので若者離れも防止できるでしょう。

雇用の安定と給与アップ

建設業界の平均年収は511万円であり、国内全体の平均年収が443万円であることを考慮すると、決して低い金額ではありません。

しかしながら、建設業界は業務の肉体的負荷や作業の危険性が高く、賃金が十分に高いとは言えません。若者離れを防ぐためには、労働に見合った報酬を提供することが必要です。

そのためには、賃金や処遇を見直し、建設業界の財務体制を改善する必要があります。

また、建築業は前述通り日給×出勤日数で月給が決まるため、出勤しないと給料がありません。こういった賃金や雇用形態を見直すことも、若者離れを防ぐ対策となるでしょう。

【まとめ】建設業の若者離れは深刻。すぐに対策をしよう

日本の建築業界は少子高齢化の影響もあり、慢性的な人手不足が深刻な問題として挙げられます。

特に若者離れは進行しており、労働者の高齢化に繋がっています。若者離れの原因は、人間関係・給与・特殊な働き方などさまざまです。

企業は業務のデジタル化や残業時間の縮小、雇用の安定など様々な対策を講じる必要があるでしょう。建築業界に就職を考えている人は現状を再確認し、企業側は求人や内部制度など若者離れを防ぐための対策を早急に行いましょう。

建設業の離職率が高い原因と解決策についてはこちらの記事でも解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

建設業の離職率が高い原因とは?離職につながる原因と9つの解決策