建設業会計とは?特徴や勘定科目・対応方法などを徹底解説!

建設業でも会計業務は必要不可欠です。しかし、建設業は他の業種と受注形態が異なっているので、会計処理にも特殊な点がいくつか存在しています。特に複数の工事を受け持った場合には、より複雑になってしまうのも特徴です。
そこで今回は建設業会計の特徴や対応方法などを紹介していきます。

建設業会計とは?

建設業は工事の受注から竣工・納品まで長期間必要になる、1度に多額のお金が動くという特徴があります。これが建設業会計を複雑にしている理由となっています。会計処理自体は他の業種と同じく企業会計原則がベースですが、建設業ならではの特殊性を考えた会計基準を設けているのが建設業会計なのです。
建設業会計と一般的な会計との大きな違いは、勘定科目の表記が一部異なっている点と、売上高の計上基準が工事進行基準、工事完成基準の2つある点です。

建設業会計の特徴

ここからは建設業会計の特徴について紹介していきます。特徴として挙げられるのは以下の2つです。

  • 原価計算によって金額を算出
  • 工事進行基準と工事完成基準

それぞれについて詳しく紹介していきます。

建設業会計を複雑にしているのは、契約方法が特殊だからだと言えるでしょう。建設業は請負契約になっているため、完成と同時に対価を得る仕組みです。そのため、他の業種とは異なる特殊な会計処理が必要になります。一般的な会計ソフトでは、特殊な会計処理ができない場合があるので、建設業会計に適したクラウド型の会計ソフトが必要不可欠なのです。ただし、全て特殊な会計処理が必要になるわけではありません。必要になるのは、ビルやショッピングモールなどの大きな建物の工事を行ったときが一般的です。

原価計算によって金額を算出

建設業会計の場合、原価計算によって金額を出します。建設を行うためには材料費や加工費が必要です。他にも外注費や労務費などがかかるのですが、これらの費用から建設原価を計算することを原価計算と呼びます。原価計算は製造業でも行われているやり方で、工業簿記上のルールに従って行われているのです。原価計算が使用されているのは、完成工事原価や未成工事支出金の部分となります。

工事進行基準と工事完成基準

建設業会計には工事進行基準と工事完成基準という2つの認識基準があります。
工事進行基準というのは、収益と費用を毎期末ごとに反映させることです。工事の進行途中であっても、損益計算書に反映させる必要があります。
工事完成基準というのは、工事が完成して引き渡しを行ったときに、損益計算書に反映させることです。どちらかを自由に選ぶことができるのですが、工事進行基準が強制適用される場合もあります。

工事進行基準と収益認識基準の関係についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

工事進行基準 収益認識基準工事進行基準と収益認識基準の関係は?収益認識基準が導入されたことによる影響についても解説

建設業会計で使われる勘定科目と仕訳

建設業会計では経理方法が難しいだけではなく、勘定項目も種類が多いので、ややこしくなっています。勘定項目というのは、何にお金を使用したのか、どこから入金されたのかを詳しく記載することです。
ここでは具体的な建設業会計の勘定項目について確認していきます。

完成工事原価

最初に紹介するのは完成工事原価についてです。一般的な会計であれば、売上原価に相当する項目となっています。どのような項目が完成工事原価に相当するのかというと、
・工事に必要な材料の購入費
・職員に支払う給料や手当
・通信費や光熱費
・外注に依頼した際の外注費
・重機や機材などに使用した設備投資
以上です。なお工事を受注するのに使用した費用、管理費などは完成工事原価には含まれないので注意しましょう。

完成工事高

先ほど紹介した完成工事原価とよく似ているのが完成工事高です。完成工事高というのは、一般的な会計の場合には売上高に相当する部分で、工事が完成したときに、その対価として支払われる費用です。売上高とは呼び方こそ異なっていますが、意味は殆ど同じだと思ってよいですし、特に難しい勘定項目でもありません。例えば建物の工事が完了し、その報酬として7000万円が振り込まれたとしましょう。この7000万円分は全て完成工事高となります。

完成工事総利益

建設業会計の勘定項目には、他にも完成工事総利益というのもあります。一般的に粗利益と呼ばれている項目が、完成工事総利益だと考えておくとわかりやすいでしょう。ただし、完成工事総利益と粗利益では勘定項目が異なります。粗利益は売上高から仕入れ高を差し引いた金額となるのに対して、完成工事総利益の場合には、完成工事高から完成工事原価を差し引いた金額となるのです。このように建設業会計では一般的な会計と異なっている部分がたくさんあります。

完成工事未収入金

完成工事未収入金とは、すでに計上されている完成売上高の中で、まだ回収されていない金額のことを指します。売掛金が完成工事未収入金に相当すると考えるとわかりやすいでしょう。建設業でも料金の回収が翌期になってしまうケースがあるので、このような場合には完成工事未収入金として計上するようになります。似たような意味の勘定項目や、1文字違いで異なっている勘定項目があるので、しっかり覚えておかないとミスに繋がってしまうでしょう。

未成工事支出金

建設工事は長期間掛かることが多いため、取り掛かった時期によっては決算をまたいでしまう場合もあるでしょう。

決算をまたいでしまったときには、未成工事支出金として計上するようになります。

未成工事支出金には、以下のような工事関連の経費を全て含みます。

  • 労務費
  • 外注費
  • 経費
  • 材料費

完成工事原価に計上されていない費用は全て未成工事支出金になると覚えておくのがよいでしょう。一般的な会計に言い換えると、仕掛金に相当する項目となります。

未成工事支出金についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。

建設業の未成工事支出金とは?仕訳方法や勘定科目も徹底解説

未成工事受入金

長い期間必要となる建設工事では、工事に必要な代金を顧客から分けて支払ってもらうこともあります。そのため、まだ工事が完成していない状態でお金を受け取ることもあるのですが、この場合は未成工事受入金として計上しないといけません。まだ工事が完成していないのに、全額受け取ることはあまりないでしょうが、金額に関係なく未完成の状態でお金を受け取ったら、全て未成工事受入金となるのです。一般的な会計の前受金と考えておくとよいでしょう。

工事未払金

建設工事を行うためには、いろいろな費用が必要になります。特に材料費や労務費などは必要不可欠ですが、これらの工事原価の中で、まだ支払いが完了していない場合は工事未払金として計上することになります。一般的な会計にも未払金という項目は存在しているので、同じ意味だと思って問題はありません。また、買掛金ともよく似ている項目だと言えるでしょう。ただし、販管費や一般管理費といった経費は、工事未払金に含まれないので注意しないといけません。

完成工事補償引当金

建設業会計には、引当金と呼ばれているものが存在しています。大きく分けると3種類あるのですが、その1つが完成工事補償引当金です。完成工事補償引当金というのは、万が一契約内容と異なっている作業を行ってしまった、必要な作業を忘れていたなど、不適合に対して備える引当金です。建設物は納品したら終わりではなく、長期間問題なく安全に使用できることが重要になります。そのため、製品保証引当金のような感じだと考えるのがわかりやすいでしょう。

工事損失引当金

引当金の中には、工事損失引当金という種類もあります。この工事損失引当金は、建設業会計の中でも難しい部類に入ります。それは将来損失する可能性がある場合に計上される引当金だからです。しかも損失が発生する可能性が高い状態でなければ計上できないようになっているため、より難しくしています。工事損失引当金を計上する場合は、未計上工事収益から未計上工事原価を差し引き、マイナスになってしまう部分が工事損失引当金になると覚えておくとよいでしょう。

環境対策引当金

最近は建設業界でも環境対策をしっかり行うように求められる時代です。そのため、環境対策に対する支出にも備える必要があるのですが、それが環境対策引当金になります。建設工事ではアスベストの撤去が行われることもありますし、ポリ塩化ビフェニルの処分も必要です。しかし、きちんと処分や撤去を行わないと、環境を害してしまうでしょう。きちんと処分をするにはどうしても費用が必要になるので、この部分で環境対策引当金として計上するようになります。

材料費・労務費・経費

原価計算をするためには、まず原価について知る必要があります。原価とは建設業であれば材料に使用した費用、建設現場で使用した労務費などが当てはまります。これらの費用は工事ごとに分ける必要があり、未成工事支出金か完成工事原価に振り替えなければいけません。例えば従業員に給料として2000万円支払った場合には、労務費に2000万円、現金預金に2000万円となります。工事で材料などを購入するのに5000万円使った場合には、材料費に5000万円、工事未払金に5000万円となります。

消耗品費

先ほど紹介した材料費や労務費などは、工事契約に係る金額です。しかし、建設業会計では工事契約に直接関係していない費用も発生します。その1つが消耗品費なのですが、消耗品費は少額の消耗品に使用した費用と考えてよいでしょう。例えば事務用品や作業用消耗品などが含まれます。ただし、消耗品に明確な定義は存在していません。そこで国税庁の帳簿の記帳のしかたを確認してみると、使用可能期間が1年未満で、10万円以下であると記載されています。

通信費

通信費は会計に携わっていない人でも聞いたことがあると思います。電話代やインターネット料金などが通信費になるので、建設業会計の中でもわかりやすい部類だと言えるでしょう。建設現場でも作業内容や図面の確認などで電話をすることはありますし、会計業務でも電話やインターネットは必須です。建設現場で使用した電話だけではなく、会社全体で使用した電話やインターネットが通信費となります。

広告宣伝費

個人事業主や小規模な企業であれば、広告を利用することは少ないと言えるでしょう。しかし、ある程度規模の大きな企業であれば、広告を利用することもあります。広告は無料で掲載することはできないので、必ず費用が発生します。

会社の規模や個人、法人に関係なく経費として計上が可能です。白色申告であれば収支内訳書、青色申告なら青色申告決算書に広告宣伝費を記載する欄が設けられています。通信費のように直接工事契約に関係のない項目は、一般的な勘定項目となります。

建設業会計に上手く対応する方法

他の業種の会計に比べて、建設業会計は複雑で難しくなっている部分がたくさんあります。そんな建設業会計に対応するためには、

  • 資格を取得し知識をつける
  • 設業会計に対応した会計ソフトを導入する

という方法がおすすめです。以下具体的に紹介していきます。

建設業経理士の取得

最近はたくさんの資格が存在していますが、建設業会計に関する資格もあります。それは建設業経理士という資格です。建設業に特化した資格でもあるので、知識を身につけたいという人にも向いているでしょう。建設業経理士には、4級から1級まで存在しています。民間資格なので、受験をするのに経験年数が一定以上いる、他の資格を所持しているなどの条件も設けられていません。年齢制限もないので、誰でも受験しやすいというのも建設業経理士のメリットです。

建築業経理士1級の試験内容や取得するメリットについてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

建設業経理士1級 メリット建設業経理士1級を取得するメリットを紹介!試験内容なども解説

建設業に対応した会計ソフトを導入する

会計ソフトを導入することで、建設業会計を楽に行うことができます。しかし、会計ソフトは現在たくさんの数が存在しています。最初はどのソフトがよいのか迷ってしまう人もいるでしょう。どのソフトがよいか迷った場合には、クラウド型の会計ソフトをおすすめします。

【まとめ】建設業会計は複雑!勘定科目や会計ソフトなどを導入してしっかり会計処理を行おう

建設業会計は複雑という点について紹介してきましたが、まずは知識を身につけなければいけません。どのような勘定項目があるのか、一般的な会計とはどこが異なっているのかなどです。効率よく勉強するには、建設業経理士の資格を取得するのがよいでしょう。取得すれば仕事をもらうときにも有利になります。また、建設業に適した会計ソフトを導入することで、効率的に作業をすることができるでしょう。会計ソフトを使用すれば、ミスを少なくすることもできます。

工事進行基準がなぜ廃止されたのかについてはこちらの記事で解説しています。

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