工事進行基準と収益認識基準の違いは?収益認識基準が導入されたことによる影響についても解説

建設業の会計や実務に従事する皆様は、日々の業務の中で「工事進行基準」と「収益認識基準」の適用を考えることが多いのではないでしょうか。これらの基準は似て非なるもので、適切に使い分けることが求められます。
しかし収益認識基準の導入により、多くの企業が経理処理や業績評価の方法に変更を迫られる状況となりました。今回は、工事進行基準と収益認識基準の違いと、収益認識基準導入後の影響について詳しく解説します。

工事進行基準と収益認識基準の違いは?

工事進行基準と収益認識基準の間には、収益認識のポイントに関して明確な違いが存在します。しかしそれぞれの違いを把握しきれず、使いこなせていないという方も少なくありません。
ここからは、工事進行基準と収益認識基準の違いを詳しく解説します。それぞれの違いを把握しきれていない方は、参考にしてみてください。

工事進行基準

建設業における収益認識基準の導入により、従来の「工事契約に関する会計基準」とその適用指針は廃止されました。この変更のもと、従来の工事進行基準は、「一期間で充足するもの」として位置づけられるようになりました。
従来の工事進行基準は、工事が完了し一つの時点ですべての義務が完了する場合を示しています。
しかし工事の進捗度が確実でないケースで、従来の工事完成基準を適用していた場合は、別の扱いをとらなければなりません。その場合、「原価回収基準」という方法を採用することとなります。こうした基準の扱いの変化により、建設業の収益認識方法はより明確かつ合理的になりました。

収益認識基準

新しい収益認識基準は、売上の認識と財務諸表への反映を新たに定めた基準です。従来の基準は企業会計原則に基づいており、企業間での計上基準に一貫性が欠けていました。こうした問題を克服するため、国際会計基準審議会と米国財務会計基準審議会は2014年に新基準を公表。2018年、日本も公表された新たな基準に沿った、国際的に整合性のある「収益認識に関する会計基準」を制定しました。
旧基準は1949年の企業会計原則に基づくもので、新たな基準の導入で日本企業の売上計上は国際標準に合致しました。2021年4月以降の事業年度から新しい基準が適用され、上場企業は強制、非上場は任意となっています。

原価回収基準とは

原価回収基準は売上や原価、進捗度が未確定の際に、発生した原価と同額の売上を計上できるルールです。売上や原価などが定まっていなくても、売上を計上できるため、工事進行基準より緩い点が特徴です。
特に建設業界において、契約金額や予算が定まる前に工事が開始するケースが少なくありません。そうした状況での売上計上のために、この基準が採用されています。具体的には、「収益(売上高)=原価」という形式となります。総原価や予算が明らかになった時点で、原価回収基準は終了し、工事進行基準へ移行しなければいけません。

収益認識基準が導入されたことによる影響は?

2021年4月から売上の計上方法が変わりました。建設業界における経理の取り組みは、業界特有の状況を考慮しながら進められています。新たな収益認識基準の導入は、建設業界にどういった影響を与えるのかを解説します。

契約の識別

民法上、契約成立は当事者間の合意によって確定されます。しかし建設業界においては、合意のタイミングを一律に定めることが難しいケースも少なくありません。先ほど解説したように、建設工事では金額や工期が未確定でも、計画が固まっている部分の工事を始めることは多々あります。そのため契約内容の明確な合意が欠ける状況でも、工事進捗を基に実質的な契約成立とみなすことは珍しくありません。
商業施設の工事を例に挙げて考えてみましょう。異なる契約相手からのテナント工事でも、内容が一体的であれば単一の履行義務として会計が行われます。しかし一つの契約内で内容が異なる場合、履行義務の評価は分けられることも考慮する必要があります。

履行義務の充足

履行義務の充足においては、その期間が中心的な判断基準となります。具体的には、一定の期間を要する履行義務と、ある時点で完了する履行義務の2つに大別されます。実質的な判断に基づき、一定の期間を要する場合、進捗に応じて売上の計上が可能です。ある時点で完了するケースでは、履行義務が完了した時点で売上が確定されます。このように、履行義務の充足の仕方や期間に応じて適切な会計処理が必要です。適切な判断により、事業の健全性と透明性を維持することが求められます。

工事進行基準と工事完成基準の違い

工事進行基準とは、工事を進めながら工事が終了する期間までに売上や経費を分散して計上する方式です。工事完成基準は請け負った工事が完了し引き渡したところで売上と経費を計上する方式です。
それぞれの違いについてはこちらの記事でも紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
工事進行基準とは?工事完成基準との違いをご紹介!

【まとめ】工事進行基準は処理方法を変えて収益認識基準に引き継がれている!

「工事進行基準」と「収益認識基準」は会計処理の適用基準であり、収益認識のポイントが異なります。収益認識基準の導入により、企業の経理処理や業績評価方法には変更が必要となりました。特に建設業界では、実際の契約や工事進捗に合わせた適切な会計処理が求められています。
2つの基準の違いを把握し、適切な会計処理に取り組みましょう。

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