建設業における材料費の勘定科目とは?会計処理の注意点なども解説

建設業 材料費 勘定科目

建設業の会計処理は工期が長期にわたるため、一般企業とは異なる特殊なルールが多数存在します。中でも材料費の扱いは工事原価を適切に計上するうえで極めて重要であり、その会計処理には注意すべき点が多数あります。

直接材料費と間接材料費の区分、間接材料費の工事間按分など、建設業ならではの処理フローとポイントがあるのです。この記事では、建設業における材料費の会計処理の仕組みと具体的な手順、会計処理の注意点について詳しく解説します。ぜひご一読ください。

建設業の会計は特殊

建設業の会計ルールが一般企業と大きく異なるのは、長期間にわたる工事期間が前提となっているためです。数カ月から数年に及ぶ工事が珍しくないため、いつ収益を計上し、いつ原価を認識するかが極めて重要になってきます。

このため、「工事進行基準」と「工事完成基準」という特別な収益認識基準が設けられています。建設業会計は、工事の進行に合わせた期間帰属処理が大きな特徴となっています。

建設業における材料費とは

建設業における材料費とは、建設工事に直接使用する木材、セメントなどの資材の購入費用です。材料費は労務費、外注費、経費と並んで、工事原価を構成する主要な費用項目となります。

工事原価との関係

適切な工事収支の管理には、工事ごとの原価計算が不可欠です。しかし、材料費をはじめとする工事原価の把握が不十分では、正確な原価計算はできません。

工事別の採算は、こうした原価の計上状況に大きく影響を受けます。したがって、材料費を含む工事原価の確実な認識が重要な経営課題となるのです。

材料との違い

材料費は材料の購入費用を指しますが、材料自体の在庫金額とは区別する必要があります。工事現場で使用された材料の金額分のみが原価に計上できるためです。過剰な材料在庫は、原価に算入できません。材料と材料費は経理処理上区別して管理されます。

建設業における材料費の分類

建設業における材料費は、発生形態や作業機能によっていくつかの種類に分類されます。

発生形態による分類

材料費は発生形態により「直接材料費」と「間接材料費」に分けられます。直接材料費は特定の現場で使用された材料の購入費用で、その全額が当該工事の原価に計上されます。

一方、間接材料費は複数の現場で共有されるため、適切な按分計算が必要となります。按分の基準には工事原価比や作業時間比などがあり、工事の実態に合わせて設定する必要があります。

作業機能別分類

一部の企業では、「加工用材料費」「保守用材料費」「事務用材料費」など、材料費の使途に応じた分類を行う場合もあります。分類方法は会社により異なりますが、工事原価に計上すべき材料費と販管費計上分を明確に区分することが大切です。

直接材料費

直接材料費とは、工事現場で実際に使用された木材やセメント、鉄筋などの購入費用を指します。適切な材料の受払管理を行えば、工事ごとに直接材料費の正確な金額が算出できます。

間接材料費

間接材料費とは、複数の建設工事現場で共通して使用された材料の購入費用のことです。例えば、塗料や工具類の購入費がこれに該当します。

間接材料費の配賦方法としては、工事原価比による按分や工事売上高比による按分などが一般的です。作業時間比による配賦を行うケースもあります。どの按分方法を採用するかは各社の実情に応じて異なります。

建設業における材料費の勘定科目

建設業会計では、材料費をいくつかの勘定科目で管理しています。主な勘定科目は以下の通りです。

  • 完成工事原価
  • 未成工事支出金
  • 工事未払金

完成工事原価

完成工事原価は、一般企業の「売上原価」に相当する勘定科目です。材料費をはじめ、労務費、外注費、経費などの工事原価の合計額がここに集約されます。完成工事原価からは、工事の利益率を算出できます。

完成工事原価は、期中は工事ごとに「未成工事支出金」へ工事原価を計上し、工事完了時にまとめて振替えて計算します。建設業では工事が長期にわたるため、このような期中の勘定科目を使用して工事原価の管理を行っています。

未成工事支出金

未成工事支出金は、完成前の工事について既に発生した材料費等の原価合計額を表す勘定科目です。一般企業の「仕掛品」に相当します。長期保管による劣化や原価の上昇による在庫評価損の発生といったリスクが高まるためです。工事の進捗に合わせて適切に完成工事原価へ振り替える必要があります。

工事未払金

工事未払金は、材料費等の工事原価のうち、現時点で未払いの金額を表す勘定科目です。一般企業の「買掛金」に相当する概念です。決算時に材料費等の実際の支払額と照合することで工事未払金の金額が確定します。

工事未払金が多額になれば、支払資金を確保できずに支払いが滞る可能性があります。工事未払金の発生源となる未払い材料費等の金額を適切に管理するためにも、この勘定科目の残高推移をこまめに確認する必要があります。

建設業会計は一般会計と異なる

建設業会計には、一般企業の会計処理とは異なるルールがあります。主な相違点は以下の通りです。

計上基準

一般企業は出来高基準や検収基準で収益を計上しますが、建設業会計では「工事完成基準」と「工事進行基準」の2つの計上基準があります。工事完成基準は工事が完了した時点で収益を計上し、工事進行基準は工事の進捗度に応じて収益を計上する方式です。

収益の計上基準が異なれば、売上原価としての材料費をいつ認識するかも変わってきます。完成工事高や未成工事支出金への材料費の仕訳タイミングが変わるため、注意が必要です。

原価計算

工事原価には直接原価と間接原価があり、適切に配賦する必要があります。材料費についても、直接材料費は当該工事の原価として全額計上できますが、間接材料費は工事間で適切に按分計算する必要があります。按分の方法によっては、各工事の材料費の金額が変わってくるため、注意が必要です。

勘定科目

建設業会計では「完成工事高」「完成工事未収入金」「工事未払金」など、建設工事特有の勘定科目が使用されています。材料費と関連する勘定科目として、「完成工事原価」「未成工事支出金」「工事未払金」があげられます。一般企業ではこれらの勘定科目は用いられず、材料費はそれぞれ「売上原価」「仕掛品」「買掛金」で管理されています。

収益認識

2021年に収益認識に関する会計基準が改訂され、収益認識のタイミングが「履行義務の充足時」に統一されました。ただし、建設業の長期工事は履行義務の充足が長期にわたるため、工事の進捗に応じて収益を認識する必要があります。未成工事支出金に仕訳された後、完成工事原価に計上されるタイミングがその工事の進捗度によって変わります。

建設業の会計処理の注意点

建設業会計は、収益認識基準の違いによって完成工事高の計上タイミングや仕訳方法が変わります。工事完成基準を採用する場合は未完成工事の原価を先に経費計上できません。また、複数の工事を同時並行で進める場合には、工事現場ごとに区分した仕訳を行うことが必要です。そのため、適切な勘定科目の使い分けと収益認識ルールの十分な理解が欠かせません。

さらに間接材料費の按分方法、未成工事支出金の適正な管理にも気を配る必要があります。長期工事が前提の建設業においては、在庫リスクへの対応も重要になってきます。勘定科目の性質を熟知し、収益認識基準に則った適切な会計処理を心がけることが肝心です。

【まとめ】建設業における材料費の勘定科目について理解を深めよう

建設業の会計処理は、長期にわたる工事が前提となるため、一般企業とはかなり異なる特徴を持っています。中でも材料費をはじめとする原価の適切な計上と費用の期間帰属が大きな課題です。

材料費は直接材料費と間接材料費に分類され、間接材料費については工事間で適切な按分計算を行わなければなりません。また、材料の受払管理を徹底し、工事現場で使用された直接材料費を正確に把握する必要があります。長期工事に伴う在庫リスクの管理や、履行義務充足度に応じた収益認識など、一般企業にはない特有の処理も多数存在します。

建設業会計には独自の特性があり、経理担当者はそれらを十分理解したうえで、適正な原価計算と収益管理を行う必要があります。材料費の認識ミスは工事別原価計算を歪め、受注判断の誤りや粗利の誤認識に直結してしまいます。建設業経営において、材料費を中心とした原価の適切な会計処理は、経営基盤を支えるうえでも極めて重要な要素です。

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