建設キャリアアップシステム(CCUS)の義務化はいつから?罰則についても解説

みなさんは、「建設キャリアアップシステム」について詳しくご存じでしょうか。建設キャリアアップシステムは、2023年度より利用を義務付けられた制度です。 なぜ義務化されるのか疑問に思っている方や、義務付けられるとどうなるのか不安な方もいらっしゃるかもしれません。

本記事では、建設キャリアアップシステムの概要、義務化の背景、登録方法などを解説します。ぜひ本記事を参考に、建設キャリアアップシステムに登録しましょう。

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは

「建設キャリアアップシステム」は、建設技能者の就業実績や資格、保険加入状況などを登録し、技術・経験の適切な評価、工事品質向上につなげるシステムです。

建設キャリアアップシステムは、英語訳の「Construction Career Up System」の頭文字を取り、「CCUS」とも呼ばれます。国土交通省が主導し、建設業振興基金が主体となって2019年4月に運用が開始されました。

建設キャリアアップシステムに登録した技術者には、「キャリアアップカード」というカードが発行されます。このカードを利用することで、就業履歴の蓄積や技能レベルの明確化が可能となります。

このような仕組みで技能者の処遇改善、雇用・育成を推進することで、若手が安心して働き続けられる環境づくりを目指しています。

参照:建設市場整備:建設キャリアアップシステムポータル – 国土交通省

建設キャリアアップシステム(CCUS)の義務化はいつから?

国土交通省は、2023年度に建設キャリアアップシステムの登録義務化を実施しました。 技能者が建設キャリアアップシステムを利用する際には、本人情報や保有資格、社会保険加入状況などの登録が必要です。

登録すると、建設キャリアアップカードが発行され、現場に設置されているカードリーダーでの読み取りによって就業履歴が記録されます。

2023年から建設キャリアアップシステムが原則義務化

2020年から建退共の電子申請試行が始まり、2021年から本格実施されました。2023年度に、民間工事も含めて電子申請への完全移行とされています。

また、2020年10月の建設業法改正により、施工体制台帳への作業員名簿の添付が義務付けられました。作業員名簿の義務化に併せて、労働者が現場に入場する際の社会保険加入状況の確認では、建設キャリアアップシステムを用いることが原則化されました。

国直轄工事では、建設キャリアアップシステム活用義務化モデル工事が実施され、2023年度内に、地方公共団体や民間も含めたあらゆる工事における完全実施を行うとされています。

登録しなかった場合、罰則等はある?

2024年2月現在では、建設キャリアアップシステムに登録しなくても、罰則はありません。 ただし、工事現場では建設キャリアアップシステム用カードリーダーが設置され、CCUSへの加入が義務化された公共工事をすでに実施しています。

今後、キャリアアップカードがないと現場に入場できなくなる可能性もあります。 マイナンバーカードとの連携により、安全衛生法における資格者証、技能講習の修了証、保険加入状況などをキャリアアップカードに一体化することも計画されています。

【2024年最新】建設キャリアアップの現在の利用状況

国土交通省の公表によると、全国の建設業技能者数約300万人に対し、約4割の136万人以上が建設キャリアアップシステムに登録しています。事業者の登録数は、25万社以上です。(2024年1月末時点)

毎月の就業履歴登録数も増加傾向にあり、2023年8月には、累積の就業履歴登録数が1億件を突破しました。2023年9月には、42道府県が企業評価の導入を表明し、他の都道府県も導入検討中です。

企業評価が導入されている自治体では、工事成績評定や総合評価、入札参加時などで加点されます。

参照:建設キャリアアップシステムの利用状況

建設キャリアアップシステム(CCUS)のメリット・デメリット

ここからは、建設キャリアアップシステムに登録するメリットとデメリットを解説します。登録する際にこれらを把握し、システムを有効活用しましょう。

メリット

建設キャリアアップシステムに登録することには、以下のようなメリットがあります。

  • これまでの経歴や職能が正当に評価される
  • スキルアップが分かりやすくなる
  • 建退共(建設業退職金制度)の手続きが効率化される

スキルが正当に評価される

建設キャリアアップシステムにより、建設業従事者がこれまでに就業した履歴が記録されます。経歴や保有資格などを一元管理できるため、明確にスキルを提示できるようになります。 その結果、自身の経験が正当に評価されます。

スキルアップが分かりやすくなる

キャリアアップカードは従事者の技能レベルによって色が変わります。技能レベルは以下の4種類です。

  • 初級技能者(ホワイト)
  • 中堅技能者(ブルー)
  • 職長レベル(シルバー)
  • 高度マネジメントレベル(ゴールド)

経験を積み重ねることで明確にスキルが評価されるので、自身のスキルアップが明確化されます。

建退共(建設業退職金制度)の手続きが効率化される

これまで、建退共(建設業退職金制度)の掛金は、手帳に証紙を貼り付ける方式で納付しており、これらの紛失や手間のデメリットがありました。 建設キャリアアップシステムによる納付履歴管理の導入で、これらの問題が解消し、手続きの効率化が期待されています。

個人事業主が建退共に加入すると経費になる?についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

一人親方が建退共に加入すると経費になる?

デメリット

建設キャリアアップシステムに登録することには、以下のようなデメリットがあります。

  • 登録手続きに手間がかかる
  • 登録に費用がかかる
  • 登録しなければ入場できない現場が増える

登録手続きに手間がかかる

建設キャリアアップシステム(CCUS)を利用するには、新規で技能者登録を行う必要があります。新規での登録のために手続きの手間がかかってしまうことがデメリットです。 詳しい手続き方法は後述しますが、登録申請は以下の手続きで行います。

  • インターネットでの申請
  • 認定登録機関窓口での申請

登録に費用がかかる

建設キャリアアップシステムへの登録は手間だけでなく、費用もかかってしまいます。費用は以下となります。

申請方法 費用
インターネット 簡略型:2,500円 詳細型:4,900円
認定登録機関窓口 4,900円

登録しなければ入場できない現場が増える

国土交通省の『建設キャリアアップシステム普及・活用に向けた官民施策パッケージ』によると、「令和5年度からは、民間工事も含め、CCUS活用へ完全移行」とされています。 つまり、建設キャリアアップシステムに加入していなければ、工事の受注機会が減ってしまうこととなります。

参照:建設キャリアアップシステム普及・活用に向けた官民施策パッケージ

建設キャリアアップシステム申請の流れ

建設キャリアアップシステムの登録には、事業者登録、現場登録、施工体制の登録、技術者登録が必要です。インターネット、もしくは認定登録機関の窓口で申請可能です。

では、実際に建設キャリアアップシステムに登録するためにはどのような手続きが必要なのでしょうか?ここでは、申請方法を詳しく解説していきます。

インターネットでの申請方法

インターネットでの申請方法は以下の通りです。技能者登録と事業者登録をそれぞれご紹介します。

技能者登録

  1. ホームページから申し込み
  2. 登録料の支払い
  3. 確認・審査
  4. 技能者情報登録完了
  5. 建設キャリアアップカードの受領 技能者ID通知の受領

事業者登録

  1. ホームページから申し込み
  2. 確認・審査
  3. 登録料の支払い
  4. 事業者登録完了
  5. 事業者ID、管理者ID通知の受領

認定登録機関での申請方法

認定登録機関での申請方法は以下の通りです。技能者登録と事業者登録をそれぞれご紹介します。

技能者登録

  1. ホームページから申請書を取り寄せる
  2. 登録申請書を手書きで記入 登録料の支払い 専用封筒に封入
  3. 窓口に提出
  4. 確認・審査
  5. 技能者情報登録完了
  6. 建設キャリアアップカードの受領 技能者ID通知の受領

事業者登録

  1. ホームページから申請書を取り寄せる
  2. 登録申請書を手書きで記入、専門封筒に封入
  3. 窓口に提出
  4. 確認・審査
  5. 登録料の支払い
  6. 事業者情報登録完了
  7. 事業者ID、管理者ID通知の受領

建設キャリアアップシステムの料金

こちらが建設キャリアアップシステムの利用に必要な料金です。それぞれについて詳しく解説していきます。

項目 費用(税込)
技能者登録料 2,500円~4,900円
事業者登録料 0円~2,400,000円
管理者ID利用料 1IDあたり11,400円
現場利用料 1人日・現場あたり10円(税込)

参照:申請: 建設キャリアアップシステム

技能者登録料

技能者登録料は、建設キャリアアップカードの発行に必要となる料金です。

申請方法 費用
インターネット 簡略型:2,500円 詳細型:4,900円
認定登録機関窓口 詳細型のみ:4,900円

簡略型と詳細型の定義は以下となります。

  • 簡略型:技能者の本人情報等を登録
  • 詳細型:技能者の本人情報等を登録に加え、資格、健康診断等の情報を登録

事業者登録料

事業者登録料は、事業者が建設キャリアアップシステムを利用する際に必要な登録料です。登録料は事業者の資本金額をもとに決まります。また、一人親方の場合は無料で登録可能です。

資本金 登録料(税込)
一人親方 0円
500万円未満(個人事業主含む) 6,000円
500万円以上1,000万円未満 12,000円
1,000万円以上2,000万円未満 24,000円
2,000万円以上5,000万円未満 48,000円
5,000万円以上1億円未満 60,000円
1億円以上3億円未満 120,000円
3億円以上10億円未満 240,000円
10億円以上50億円未満 480,000円
50億円以上100億円未満 600,000円
100億円以上500億円未満 1,200,000円
500億円以上 2,400,000円

管理者ID利用料

管理者ID利用料は、事業者が事業者情報を管理するために必要な管理者IDにかかる料金です。この費用は毎年支払う必要があります。

管理者ID 利用料(税込)
1IDあたり 11,400円

現場利用料

現場利用料は、現場・契約情報を登録した事業者が支払う料金です。その現場での技能者就業履歴情報の登録回数に応じて料金が発生します。支払いは一定期間ごとの事後清算となります。

現場利用料 利用料(税込)
1人日・現場あたり 10円

建設キャリアアップシステムが義務化された背景

建設キャリアアップシステムの義務化の背景には、以下の理由があります。

  • 社会保険や年金加入状況を把握するため
  • 建退共の掛金未納を解消、加入促進するため
  • 現場の生産性向上のため

それぞれの内容を解説します。

社会保険や年金加入状況を把握するため

建設キャリアアップシステム義務化の背景には、社会保険や年金加入状況の把握という理由があります。 建設業では、健康保険や厚生年金保険、雇用保険といった社会保険に加入していない現場作業者や、社会保険料を適切に負担しない業者がいることが、長年問題視されています。

社会保険に加入していないと、いざというときに公的な保証を受けられません。建設キャリアアップシステムで保険加入状況を管理することで、保険加入の徹底や確認作業の効率化ができます。

建退共の掛金未納を解消、加入促進するため

建退共(建設業退職金共済制度)の掛金未納の解消、加入の促進も、建設キャリアアップシステムの目的の一つです。 建退共は、現場作業者が退職金を得るための大切な制度です。

しかし、証紙発行の事務作業が煩雑であること、証紙の交付が適切に実施されないケースがあることなどが原因で、掛金の未納が問題になっています。

建設キャリアアップシステムによって管理することで、事務作業の効率化、掛金の納付・充当の徹底が可能となり、加入者促進が期待できます。

現場の生産性向上のため

建設キャリアアップシステムの活用によって、現場の生産性向上も見込まれます。建設キャリアアップシステムの記録によって施工実態の把握・分析をすることが、生産性向上につながります。

また、それぞれ紙で管理されていた保険加入証書や技能講習修了証といった各種書類を、建設キャリアアップシステムに一本化することで、事務の手間を省けるでしょう。保有資格や経験に対する適切な評価が広まれば、技能者のスキルも上がり、生産性の向上も期待できます。

【まとめ】2023年から建設キャリアアップシステム(CCUS)は原則義務化!

建設キャリアアップシステムの概要、義務化の背景、登録方法を解説しました。2023年度に建設キャリアアップシステムの利用の義務化されています。

義務化の背景には、社会保険や年金加入状況の把握、建退共の掛金未納解消・加入促進、建設技能者の能力に応じた賃金支払といった目的があります。 建設キャリアアップシステムが適切に活用されれば、建設業界が抱える問題の多くを解決できるでしょう。

ぜひ本記事を参考にし、建設キャリアアップシステムの活用を始めてみてくださいね。

建設キャリアアップシステムは無駄だったのかについてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

普及に失敗?建設キャリアアップシステム(CCUS)は無駄だったのかについて解説

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