土木業界の今後の動向とは?業界の課題や向いている人の特徴もご紹介!

土木業と聞けば、肉体労働をイメージする方が多いでしょう。土地の整地や道路の舗装など、キツイ、汚れる仕事だと考えてしまいます。もちろん、そういったこともありますが、実際の土木業界にはさまざまな仕事があります。

ここでは土木の仕事内容や今後の動向、また、土木業界に向いている人の特徴もあわせてご紹介します。

土木業界とは

自然災害防止や災害によって被害を受けた場合の復旧工事、インフラ整備を目的とした公共的な建造物の工事などをするのが土木業界です。道路や橋の新設、整備、維持なども土木工事になります。

土木工事に多いのが、国や県、自治体から依頼される公共事業です。この事業は一般的にゼネコンと言われる総合建設業者が元請け業者になり、下請け業者に仕事を発注します。元請け業者が工事を細分化し、それぞれの作業別に下請けの専門工事業者に割り当てて工事を完成させます。

土木業界の工事の種類

土木業界は、生活に関わるインフラ整備に関係することが主な仕事です。インフラとは「インフラストラクチャー」を略し、下部構造という言葉を意味します。

インフラ整備とは、道路や線路、水道、空港、河川、土地の整備など生活に大切で重要な役割のあるものを整備する仕事です。では、実際にどのような工事があるのか、種類についてご紹介していきます。

ダム工事

ダム工事は、豪雨や台風などの自然水害や土砂災害、また雨が降らない場合の水不足に対しても大きな役割があるでしょう。ダム工事にも種類があり、ダム建設工事、砂防ダム工事、貯水池工事の3つに分かれています。

とくに砂防ダム工事は山間で発生する可能性がある土石流を阻止する場合におこなわれます。上流から流れ出る土砂を一旦受け止めるための場所を造って、下流に流れる土砂を調節できるような工事です。

橋梁工事

海や河川、谷などで分けられてしまった地域をつなぐためにおこなうのが橋梁工事です。人、車の移動を可能にすることで地域産業を支えます。

橋梁工事はコンクリート構造物での橋台工事、PC(プレストレストコンクリート)橋梁工事、PCロックシェード橋梁工事、橋脚工事などの種類に分類されています。具体的にはPC橋梁工事の場合、コンクリートに圧縮力を与え耐久力を上げた鋼材を使って橋梁を作る工事のことを指します。

水道関連工事

私たちの生活に欠かせない水道に関する工事も土木工事のひとつです。水道関連工事は公共事業が多く、公道の下などにある下水道の配管工事や上水道管埋設工事、下水処理場の敷地造成工事などが当てはまります。

また一般水道工事の開削工事、小口径推進工事もあります。水道は人々の生活には必要不可欠なもののため重要です。

道路工事

道路は、人や車が移動する場合に利用します。穴があいていたり、でこぼこした道路だと、歩行や運転時に注意が必要になり、街の景観イメージにも影響があるでしょう。

道路工事には、道路修繕工事、道路改良工事、道路構造物工事、道路開設工事という種類があります。段差をなくすバリアフリーや狭い道などの道路を整備する工事は道路改良工事にあたります。また、老朽化した道路や標識、ガードレールなどの交換、メンテナンスなどは道路修繕工事です。

トンネル工事

トンネル工事の工法は標準的に3つに分けられます。山岳工法、シールド工法、TBM(トンネル・ボーリング・マシン)工法となります。山岳工法は、機械や人の力などによって岩盤などを掘りトンネルを造る工法です。

地盤を直接掘り進めることで、障害物の発生や地質の変化に対応しやすいのが特徴です。シールド工法は、シールドマシンを利用してトンネルを堀り、セグメントというパネルを用いて造る工法のことを指します。

地下水がある場所や砂、粘土などさまざまな地質でも安全にトンネルを掘ることが可能です。TBM工法は、堅い地盤を掘削できるTBMという機械を使います。例えば山地部にトンネルを造る場合はこの工法になります。

シールド工法と同様、トンネルを掘った直後にセグメントを用いてトンネルの壁を造っていきます。

空港建設工事

土木工事のなかには空港建設工事もあります。空港を建設するには用地測量と設計をおこなわなければなりません。また、陸上の空港か、海上の空港かどちらの空港を建設するのかで工事の内容も大きく変わってきます。

陸上に建設する場合は、用地造成工事から舗装工事や建設工事をし、海上に建設する場合は、護岸工事、埋立造成工事をおこないます。

河川工事

河川工事も土木工事のひとつです。河川改修工事、河川構造物工事、河川を整備する河川工事などです。

国土交通省が令和2年4月に実施した調査では、日本には河川法の適用、準用を受けた河川が約3万5000以上あり、この河川の水害防止のために河川工事がおこなわれているのです。

また、水底の土砂などを取り除くための海岸工事と呼ばれている工事も河川工事に含まれます。

土地区画工事

公園や道路、下水道などの街を作るための工事も土木工事です。土地区画工事には、土地区画整理工事、大規模な宅地造成工事、土地造成工事があります。

とくに土地区画整理工事は地域の人々の生活環境を改善するために役立っている工事と言えるでしょう。

土木業界の現状と課題

土木業界は需要が見込まれるため、比較的安定した業界です。

しかし、さまざまな課題も抱えているのが現状です。とくに人材の高齢化や人手不足は大きな問題となっています。また、地方や地域によって課題が異なります。ここからは土木業界の現状や今後の課題について解説していきます。

人材の高齢化が進んでいる

現在の日本は少子高齢化が進んでいるため、さまざまな業種において若い人材を確保することが難しくなっています。

土木業界においては慢性的に人材不足となっているため、とくに高齢化が進んでいるといっていいでしょう。2015年時点に国土交通省が作成したデータでは土木・建築に携わる就業者の約34%が55歳以上を超えており、この現状のままでは30%以上の人材が2025年に定年や引退を迎えてしまいます。

このことから土木業界は人材の高齢化が課題と言えるでしょう。

人材不足

土木業界は慢性的な人手不足と言われています。高齢化の問題もありますが、若い人材の就職率が低く、職に就いたとしても離職者が多いことが理由です。

土木業界に対して、良いイメージを持てなかったり、仕事に対して魅力を感じられないというのが主な原因となります。低い賃金や長時間労働、他の職種に比べて福利厚生が充実していないなども人手不足の原因となっているでしょう。

地方の土木業の廃業が増えている

公共事業の発注は関東などの都心部に比べて地方では少ない傾向にあります。これは地方の土木業にとっては厳しい状況と言えます。

また、人材の高齢化が進むと受注したくても対応が出来ず、売上げも減少し経営が苦しくなります。中小企業の多くは地方にあるため、受注の減少や人手不足、高齢化という理由などで廃業する企業が増えていることも課題のひとつです。

インフラ整備が進むく

高度成長期以後に建設されたのがインフラ設備です。老朽化の現状と将来の予測では今後20年間で建設後50年以上になる施設の割合が急激に高くなる恐れがあると国土交通省の調査でわかっています。

インフラ設備の老朽化は整備を急がなくてはなりません。しかし、人材不足ということで整備に手が回らなくなることが心配されています。とくに、道路橋や河川管理施設などは2033年に建設してから50年経ってしまう設備の割合が約60%以上になることが予測されています。都心部でも、地方でも地域のインフラ整備は重要な工事です。

土木業界の今後の動向は?

現在は東京オリンピックが終了したため工事ラッシュが減少しています。また、新型コロナウイルスの影響によっても土木業界は受注が減少、または工事の一時中断などで影響を受けているのが現状です。

しかし、台風や地震、水害などの自然災害によって復旧工事の受注は増加しています。さらにインフラ設備の老朽化によって整備の受注もあり、業界全体の需要は多くなっています。今後も大きな計画があり、需要は増加傾向にあると見込まれます。

ICT・AIシステム開発で人材不足問題解決

土木業界は、人手不足、人材不足といった課題を抱えています。負担の大きい作業が多いというのが原因とも言われています。最近ではICT・AIを施工現場に取り入れることで、作業効率化を図り人手不足を解消する動きがあります。

活用例としてはドローンを用いての3次元測量や建設機械の自動運転化、施工ではパターンをAIに選ばせるなどが挙げられます。さまざまなシステムの開発で人材不足の解決策となり、今後の活用が大きく期待されるでしょう。

堅調で今後も需要が維持されていく

土木業界は、東日本大震災の復旧工事や東京オリンピック開催にむけた設備の新設、新たなインフラの整備など、公共事業工事の発注が増加の傾向にありました。

オリンピックが終わった現状でも、地震、台風などの自然災害、現在使っている上下水道や橋、道路などのインフラ設備の老朽化にも対応しなければなりません。土木業界は需要が堅調で今後も安定した需要が維持されるでしょう。

新規建設だけでなく維持管理も重要になる

インフラ設備が機能しなくなると日常生活に大きく影響を及ぼし、事故や災害などにつながる可能性があります。維持管理する費用や更新費が不足すると適切な対応が難しくなります。

新規建設需要の増加で維持管理費、更新費の増大が見込まれますが、厳しい財政状況のなか、適切なインフラ整備をおこなうためにも計画的な維持管理が重要となるでしょう。

建設バブルは継続する見込み

建設バブルは、東京オリンピックが終了した今でも継続しています。オリンピックがあったために先延ばしにしていた建設案件や、これから始まる大阪万博、国土強靭計画といった大きなプロジェクトもその一つです。

頻発している台風や水害、地震による自然災害などの復旧工事も需要があるため、建設バブルは継続するでしょう。

土木業界に将来性はある?

ここまでは土木業界の概要や動向についてご紹介しましたが、続いて土木業界の将来性についてご紹介します。

土木業界が主に請け負うダム工事や橋梁工事といったインフラ工事は、人々の生活に欠かせないものであるため需要が途切れることがありません。土木業界の仕事には新規のインフラ事業だけではなく、老朽化したインフラの修理や補修も含まれるため、むしろ需要は増加すると言えるでしょう。

また、確かに土木業界に限らず建設業界全体でICT建機の導入を初めとした事業のDX化が推進されていますが、スキルのある作業員の手が必要な作業があることは事実です。更には人材不足問題に対応するために、土木業界全体で労働環境の改善が急速に進められています。このような点から、土木業界は将来性のある業界であると言えるでしょう。

土木業界に向いている人の特徴3選

土木業界に向いている人とはどのような人でしょうか。肉体労働のイメージが強くありますが、それだけではありません。ここでは土木業界に向いている人の特徴をご紹介します。

体力に自信がある

肉体労働とご紹介しましたが、やはり土木業界で働くには体力が必須条件のひとつとなります。1年を通して屋外で作業することが多く、暑さ、寒さにも対応できる体力が必要です。身体を動かすことが日頃から好きな方、重いものなどを運んだりするため体力に自信がある方、やる気のある方には向いている職業と言えるでしょう。

リーダーシップがある

土木業には現場を統括するリーダーがいます。工事現場は油断すると大きな事故に繋がります。現場リーダーとして職人たちをまとめるだけではなく、注意力も必要になるので難しいと言えますが、統括力が必要とされる仕事になるため、リーダーシップのある方にとっては非常に向いている業界でしょう。

集中力があって丁寧な作業ができる

土木業界の仕事には丁寧な作業を求められることも多くあります。大きな重機を使った細かい作業など、集中力がないとできないことも少なくありません。集中力が切れると事故につながる危険性もあることでしょう。どんな状況においても冷静に周りに左右されず集中力があり、細かい作業や丁寧な作業ができる方が向いています。

土木業界は今後も需要が期待できる!体力・リーダーシップ・集中力がある人におすすめの業界

土木業界は、私たちの生活を支えているインフラ整備をおこなっています。自然災害防止や災害時の復旧工事などそのほとんどが公共事業に携わる仕事です。土木業界で仕事をするうえで大事なことはやはり体力となりますが、それと同時に現場をまとめるリーダーシップも必要です。

また、細かく丁寧な作業を求められる仕事もあるため、集中力も大切となります。最近では土木業界でも女性が働きやすい環境や制度の整備など、さまざまな取り組みをしています。

土木業は万博という日本で行われる大きなイベントにも関わることができ、その成果は目に見えてわかるため、達成感もあるでしょう。将来的にみても仕事がなくなることはなく、ますます需要が増加傾向にある業界と言っていいでしょう。

この記事では、建設業の今後の動向について解説しています。

土木業界の今後の動向とは?業界の課題や向いている人の特徴もご紹介!