一人親方が建退共に加入すると経費になる?

「退職金って必要?」「一人親方でも退職金は貰える?」「建退共って何?」とお悩みの一人親方も多いのではないでしょうか。建設業に従事する一人親方は退職金が貰えないと思っている人もいるかもしれません。しかし将来の生活を考えると、退職金を準備した方が安心できますよね。

今回はそんな一人親方のために「建退共」について紹介します。「建退共」がどんな制度で、どのようなメリットがあるのか、また加入したら経費になるかどうかも詳しく解説しました。ぜひこちらの記事をお読みいただき、建退共の加入を検討する際は参考にしてみてください。

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建退共とは?

そもそも建退共とは何の略でしょうか。建退共は「建設業退職金共済制度」を略したものです。中小企業退職金共済法に基づき、建設業を対象に作られました。建設業に従事する人が働いた日数に応じて掛金を納付し、建設業から離職した際に退職金が支払われる制度です。事業主は日本国内で建設業を営む人であれば元請けや下請けに関わらず契約できます。また加入できる人は対象の事業主で働く従業員なら国籍や職種、日給、月給を問わず加入することが可能です。        

「建退共」は国が運営する退職金制度

「建退共」は国が運営する退職金制度です。建設業は一般的な会社員とは異なり、同じ場所で継続して働くよりも現場や事業所が頻繁に変わる人がほとんどでした。そのため今までは退職金の支給対象からは外れていました。そこで国が建設業全体を対象とした退職金制度を立ち上げました。これが建設業退職金共済制度、つまり「建退共」です。たとえ現場が変わっても、事業主や元請けから共済手帳に証紙を貼付してもらえば、働いた日数に応じて掛金の納付ができます。つまり建退共に加入し、掛金を納めていれば退職金の支給対象になれるのです。

一人親方も「建退共」に加入できる?

この建退共に一人親方も加入できるのでしょうか。結論から言うと、一人親方でも加入が可能です。一人親方の場合、自らが事業主になることもあれば、技能者として雇用されることもあると思います。しかし建退共は元より事業主が加入し、雇用している労働者に対して支払うものです。そのため一人親方の場合、少し加入方法が異なります。この詳細は「一人親方が建退共に加入する方法」の段落で説明しますね。

「建退共」でもらえる退職金はいくら?

建退共に加入すると退職金はいくら貰えるのでしょうか。退職金は掛金を納付した年数に応じて増えます。つまり働いた年数が長ければ長いほど退職金は多くなる仕組みです。令和3年時点の利回り(3.0%)で考えると、退職金は30年で390万、40年は600万円ほどになるでしょう。掛金がそれぞれ30年で230万、40年は310万円ほどだとしても退職金は多く貰えますよね。このように掛けた年数が長いほど返戻率は高く、退職金の額も増えることが分かります。

建退共のメリット・デメリットは?

では建退共に加入するメリット・デメリットは何でしょうか。まずは両方の点を比較してから、加入するかどうか検討してみても良いと思います。ぜひ下記の要素も参考にしてみてください。

建退共のメリット

建退共のメリットには確実に退職金が支払われることと転職しても加入し続けられることがあげられます。それぞれについて詳しく説明していきます。

  • 建退共のメリット①:確実に退職金が支払われる

まず退職金が確実に支払われるメリットがあります。普通の企業と違って、国が設立した制度なので安心される方も多いのではないでしょうか。法律に基づいて作られているので、勤務日数に応じて掛金を納付できます。きちんと納付していれば退職金は必ず支払われるため、将来退職金が貰えるか心配という方にもおすすめです。建退共は少ない掛金で始められ、確実に退職金を受け取れる安心感が良いですよね。加入の手続きも簡単なので始めやすいです。

  • 建退共のメリット②:建築業界内なら転職しても加入し続けられる

建設業界内で転職しても加入し続けられます。事業者ごとではなく建設業全体が対象のため、別の事業所に移ったとしても加入は継続できます。また独立して一人親方になった場合でも、任意組合に加入すれば建退共にも加入が可能です。このように働き方が変わっても退職金の心配はいりません。その分、キャリアを自由に変えられるので柔軟性を持って働きたい方にはおすすめです。

建退共のデメリット

上記であげたように建退共への加入には大きなメリットがありますが、その一方でデメリットもあります。デメリットも把握してから加入を検討するといいでしょう。以下、建退共のデメリットを紹介します。

  • 建退共のデメリット②:受け取れる金額が少なめ

デメリットは受け取れる金額が少なめな点です。掛金の上限が一日320円(令和5年時点)に設定されているので、退職金も少なめになります。また共済手帳に貼る証紙も一人親方の負担であり、経費にはなりません。この辺りは建退共のデメリットと言えるでしょう。

一人親方が建退共に加入する方法は?

前述したように一人親方も建退共に加入することが可能です。一人親方の場合、「任意組合を作る」方法と「建退共に加入している組合に加入する」方法があります。二通りあるので、どちらか加入しやすい方を選んでください。

任意組合を作る

まず一人親方同士で任意組合を結成する方法です。便宜上は事業主として建退共と退職金共済契約を締結すれば、一人親方の組合員を労働者として加入させることができます。また以前から大工組合、左官組合などの組織があれば、その組合を任意組合として締結することも可能です。ただ労働組合の場合、労働組合の名称とは異なる名称で建退共と契約しなければなりません。

建退共に加入している組合に加入する

ただ任意組合を作らなくても、すでに建退共と締結している任意組合に加入することも可能です。建退共の任意組合については、建設業退職金共済事業本部のホームページでも各支部の詳細を確認できます(「本部・支部所在地」建設業退職金共済事業本部)。建退共に加入したい一人親方は新たに任意組合を作るよりも、既存の任意組合に加入した方が手続きが簡単かもしれません。気になる方はお近くの建退共支部まで問い合わせてみてください。

建退共の掛金は経費にできるのか?

建退共の掛金は経費にできるのでしょうか。一般的な会社の場合、労働者の退職金を経費にできます。しかし一人親方の場合、経費にすることはできません。基本的に共済手帳に貼る共済証紙は一人親方が負担します。つまり事業主が自分に掛けたものなので、掛金は経費に計上できません。

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建退共への加入を辞退したい場合は?

もし建退共の加入を辞退したい場合はどのようにすればよいでしょうか。建退共は任意の制度なので法律的には加入しなくても問題ありません。そのため辞退理由としては「建退共以外の退職金制度に加入済である」もしくは「加入の意思がない」ことが挙げられるでしょう。ただ本人自体に問題はなくとも、元請けや発注した事業主によっては加入しない理由を問われるかもしれません。建退共は国が運営している制度のため、公共工事においては加入状況を確認されます。その際に「建退共の辞退届」の提出を求められることがあるので注意してください。

【まとめ】建退共の掛金は経費にできない!ただし掛金は少なめなので加入しておいて損はない!

いかがだったでしょうか。今回は建退共(建設業退職金共済制度)について解説しました。建退共は建設業に従事する人を対象にした退職金制度です。建退共に加入すると、現場や事業所が日々変化する人でも退職金を受け取れるようになりました。一人親方の場合は任意組合を作るか、建退共と締結している任意組合に加入すれば建退共の加入が可能です。一人親方は建退共の掛金は経費にできませんが、働いた年数と納付した掛金に応じて退職金は増えていきます。また国で定められた基準により、退職金は確実に支払われるので安心です。退職後の生活を心配されている方でも、安心して働けるようになると思います。もしこれから建設業で長く働きたいのであれば、建退共の加入をぜひ検討してみてください。