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工事見積書の作成は、施工業者にとって悩みの種です。大きな工事であれば項目が多くなり、何十ページも記載しないといけません。万が一、入力もれがあればトラブルに発展する恐れがあります。
このような悩みを解決するため、本記事では工事見積書の役割と構成、注意点を解説します。見積書の効率的な書き方・作成方法も紹介するので、ミスなく見積書を作成するためにも、最後まで読んでみてください。
正確な内容と適正価格を提示して、発注者と業者が納得できる工事見積書を作成できるようになります。
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工事見積書の役割
工事見積書は、発注者と請負業者の間で工事内容や金額、料金を明確にして、合意するための書類です。様々なトラブルを未然に防ぐ重要な役割を担っています。
顧客に対する業者の専門性や実力、誠実さをアピールして信頼を得るためにも工事見積書は必要です。役割について詳しく解説します。
トラブルを防止する
工事見積書は、工事内容や金額を明確に示すことで、発注者と請負業者の間でトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。
建設業界では、長年の付き合いから口約束による工事の請負が発生する場合があります。そのまま着工すれば、後から認識の違いによるトラブル発生の可能性が高いです。
適切な見積書の作成は、発注者と請負業者の双方の信頼関係を築くために不可欠です。小さな工事でも必ず見積書を作成し、工事単価や工事の範囲、条件について詳細を記載して、双方の合意事項を見積書で文書に残しておきましょう。
工事の条件を明確化できる
工事見積書には、以下のような条件が記載されています。
- 見積金額
- 工事の範囲
- 使用する資機材
- 作業日数
- 人員配置
- 納期(開始日・完了予定日)
- 支払条件
- 保証内容
詳細を文書化すると、発注者と請負業者の双方が工事内容を明確に共有できます。社内外への説明時にもわかりやすく提示できるので、上司・部下・事務方も見積書を見るだけで内容を理解できます。
納期や予算に問題なく、条件通り進められるか確認できる重要な書類です。
顧客からの信頼を得られる
工事見積書を適切に作成すると、顧客である施主・取引先との信頼関係を構築できます。
業界の経験や専門性を示して、適切な相場を提示するのが見積書です。顧客は見積書によって「どの作業がどこまで対応可能で、いくらかかるのか」が理解できます。作業に使用する資機材の費用も詳しく明記されるので安心です。
工事見積書は、顧客が最初に目を通す重要書類であり、業者の実力と誠実性がわかる書類です。見積書の内容によって、顧客は業者を信頼して施工を依頼できます。
工事見積書の書き方
工事見積書は、発注者と請負業者の双方で工事内容や金額、条件などを確認するための重要な書類です。お互いの認識違いをなくすため、正しい内容を正確に伝えます。
そこで、見積書表紙と見積書内訳、見積条件書のそれぞれに記載すべき項目と書き方を解説します。発注者の理解と信頼を得る見積書を作るために、ぜひ参考にしてください。
見積表紙
見積表紙には、以下の情報を記載します。
- タイトル
- 工事名称
- 合計金額
- 請負業者・発注者の会社名や住所、連絡先
- 担当者名
- 見積書の発行日
- 見積書の有効期限
- 工期
- 支払条件
- 法定福利費
表紙に上記の基本情報を記載することで、この見積書が何の工事か一目で理解できます。見積書とその他の納品書や請求書などを紐づけする際も作業がスムーズになります。
見積表紙に記載する項目を詳しく解説します。
タイトル
この書類が見積書であるとわかるように、書類の一番上にタイトルを記載し
ます。例えば、以下のようなタイトルです。
- 御見積書
- 見積書
- 概算見積書
- ○○工事見積書
見積書のタイトルは簡潔でわかりやすいものがよいです。
見積番号
見積番号は、業者が発行する見積書を管理するための番号です。見積書は何度も発行する場合があるので、発行順に古いのか新しいのか理解できると便利です。
一般的には、年度や発行日、発行した順の連番などを組み合わせて、社内でわかりやすくしておきます。「見積番号○○の書類を確認して」などの社内のやり取りが円滑に進みます。社外でも「見積番号○○について聞きたい」という問い合わせがあった際に探しやすいです。
見積番号は、社内・社外でも管理用として役立つ必要な情報です。
宛先
見積書の宛先は、発注者の会社名や部署名、担当名を正確に記載します。会社なら「御中」として、個人なら「様」をつけます。「株式会社」は「(株)」と省略せずに記載しましょう。例えば、以下のように記載します。
- 株式会社○○御中
- ○○ ○○様
- 株式会社○○ 山田 一郎 様
会社名のあとに担当者名が入る場合は、担当者の名前のあとに「様」をつけてください。「御中」は不要です。
見積金額
見積書の見積金額は一番重要なので大きくはっきりと明記します。改ざんされないように、金額の最後には「-」を記載しましょう。
見積金額が税込・税抜はわかるように「表示金額には消費税〇〇%が含まれます。」などのコメントを入れておきます。
見積金額は、1回目から値引きされて確定する場合が多いです。資機材や人件費、純利益を踏まえて業者に適切な利益が出る見積金額を提示しましょう。
発行日
見積書の発行日は右上に記載します。見積番号も右上に記載することが多いです。発行日を明確にすると、見積再提出の際に順番に管理しやすくなります。
さらに、見積書に記載する有効期限の起算日にもなるので発行日は重要です。管理者の判断で発行日を翌日にずらす場合もあるので、社内連携して発行日を明確にしましょう。
工事名
見積書の目立つ部分に工事名を記載します。どのような工事なのか明確にわかる工事名にしてください。業者と発注者がすぐにわかる工事名が理想です。例えば、以下のような工事名です。
- ○○マンション西棟 新築工事
- ○○市○○ビル増設工事
- ○○工場A棟 改修工事
どの建物のどの部分をどのように工事するのか、明確な工事名を設定しましょう。
工事場所
見積書には工事する場所を、住所または固有名詞で記載します。新築工事で住所が確定していない場合は地番を使用します。
- ○○市○○区○○丁目1-2
- ○○小学校 2階
- ○○市300番地
- ○○マンション5階502号室
どこで工事するのか、土地勘がなくても調べてすぐにわかるように詳しく場所を記載しましょう。
工期・受け渡し方法・支払条件
見積書には、工期や受け渡し方法、支払条件も詳細に記載します。記載方法は以下を参考にしてください。
- 工期:着工日と完了予定日を明記する
- 受け渡し方法:現地渡し・運送業者渡しなどを明記する
- 支払時期:着手金・分割払い・完了時などいつ支払するか明記する
- 支払方法:締め日・支払日と現金・振込などの支払方法を明記する
とくに、支払方法は重要です。月末締めの翌月末なのか、3か月後支払なのか、入金されるのはいつになるか確認します。業者の運営にも関わるので、遅すぎる支払日であれば交渉しましょう。
見積有効期限
見積書には見積有効期限を設定します。材料費や人件費の変動により、記載された金額が適正ではなくなる可能性があるためです。建設業界では、輸入量の変化や国際的な受給バランスによって、鉄銅・木材・石油製品などの原材料価格が変動しやすいです。
一般的に有効期限は見積発行日から1か月~3カ月が妥当です。期限が失効すれば新たに見積書を見直ししないといけません。
法定福利費
見積書に記載する法定福利費とは、労働者に対して事業者が支払う費用のことです。法律で義務付けられている費用で、近年記載が推奨されるようになりました。具体的には以下の費用が含まれます。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 介護保険
企業が従業員に必要な評定福利費を算出して記載します。社会保険未加入対策を進めて、建設業界を健全に保ち、よい人材を確保するためにも、法定福利費の記載が必要です。
担当者名
見積書に工事の担当者名を明記して、誰が担当しているかわかりやすくします。請負業者が問い合わせ時に担当者名を伝えやすくなり、社内でも誰に確認すればよいか明確にできます。具体的に担当者名は以下の項目を含めて記載するのが一般的です。
- 社名・工事業者名
- 代表者名
- 社印
- 見積作成者の氏名
- 見積作成者の連絡先
見積書は社内で決裁され、社印を押されたものが有効です。担当者名に関する全ての情報が明記されていることを確認し、社印押印して請負業者に提出します。
見積内訳書
見積内訳書には、見積表紙で記載した工事名・工事金額の詳細な内訳を記載します。工事原価を構成する各費用が適正な金額であることを証明しましょう。費用根拠を明確に内訳で説明することで、発注者の理解を得られます。
見積内訳書に記載する内容を解説します。
項目
見積内訳書の項目には、品目や工事の仕様を明記して、どのような工事をどの材料を使って施工するのか記載します。「工事一式」ではなく材料ごとに詳しく記載しないといけません。具体的には以下の項目です。
- 材料費
- 人件費
- 機械の費用
- 運搬費
- 仮説や事務所の準備費
- 現場管理費などの共通費
- 営業経費
詳しい項目があると発注者が工事代金の適正性を確認しやすくなります。理解と信頼にも繋がるので、項目が多くても全く問題ありません。
数量
見積書内訳には、項目ごとに必要な資機材の数量を記載します。材料だけでなく、人員の人数も必要です。具体的には以下のように記載してください。
- 鉄筋:10トン
- コンクリート:100㎡
- とび工:200人工
- クレーンレンタル:30日
数量が過剰に設定されていないかを発注者は確認できます。合理的な数量の設定か確認して、無駄がない見積であることを証明し信頼性を高めます。
単価
見積書の単価は、各作業や材料の費用を記載します。特定の作業や、材料1単位あたりの単価を明確にすることで、発注者は適正な価格設定か確認できます。
例えば、1㎡あたりの塗装費用や1本のパイプの単価など、1単位あたりの費用感がわかります。
単価が見直しされると工事費用全体の再計算が必要です。下請け業者の提示価格や作業員の人件費を考慮して、最初から適切な単価を記載しましょう。
見積金額
見積内訳書の見積金額は、単価と数量の合計から算出します。各作業の費用や材料費、設備費などをすべて合計して、工事全体の予測費用を明確にします。
大きい工事であれば内訳が100ページ以上になることもあり、ひとつの工程ごとに合計を算出して最後に全体を足して見積金額を出す重要な作業です。
項目と単価はエクセルやDXなどに入力して、見積金額を自動算出することが多いです。
備考
見積書の備考欄には、補足事項や注意点、追加情報などがあれば記載します。工事プロジェクトの変更時の条件や、特殊な材料を使用する際の注意点などです。
見積金額の背景や根拠も追記すると、発注者との信頼関係を築くことにも役立ちます。
見積条件書
見積条件書は、工事範囲や期間、条件などを明記します。発注者や施工業者が工事情報を共有できる重要な書類です。一般的に、以下の項目を記載します。
- 工事名称
- 施工場所
- 工事範囲
- 設計図書
- 施工期間
- 全体工程
- 特殊部分に関する事項
- 材料費、産業廃棄物処理
- 下請間の費用負担区分
- 施工条件
- 引き渡し条件
- 着手金・前払金・出来高払いの支払方法
- 工事延期・変更の際の損害負担の算定方法
- 天災による工期変更の損害負担
- 材料価格返答の工事内容変更
このように、見積条件書は工事内容だけでなく、工事中の損害に関する内容も記載します。業者の過失がなく工期延長や破損があった場合の損害負担は重要です。
見積条件書を詳しく記入することで、後のトラブル防止に繋がります。
工事見積書を作成するときの注意点
工事見積書を作成するときは、注意点を確認しながら進めて正確な書類に仕上げましょう。以下の注意点に目を通してください。
- 記入ミス・計算ミスがないか確認する
- 工事の入力もれがないか確認する
- 見積書を二重チェックする
- PDFやエクセルでデータに保存する
- 消費税に間違いがないか確認する
- 発注者の会社名や担当者名を正確に記入する
工事見積書で、小さな工事がひとつでも抜けていると後から追加工事と見積書が必要となります。計算ミスがあった場合も全体の修正をして再提出しないといけません。
見積書のすべてのページが正しく作成されているか二重チェックしましょう。見積書は書類だけでなく、データで保存して永久的に閲覧できる状態にすると安心です。
工事見積書の作成方法
工事見積書は、エクセルテンプレートや専用の作成ソフトを活用すれば効率的に作成できます。書き方もテンプレの通りに進めるだけなのですぐに覚えられます。
計算式がすでに入っているので、自動計算によって計算ミスがなくなるのもメリットです。それぞれの特徴を紹介します。
エクセル
工事見積書は、エクセルテンプレートで簡単に作成できます。関数が組み込まれているので、テンプレを使用するだけで計算ミスの心配がなくなります。
「工事見積書 エクセル」で検索すると無料でダウンロードできるテンプレがたくさん出てくるので、使いやすいテンプレを選んでみてください。
テンプレには、見積書のほかに契約書や工程表、工事台帳なども含まれることがあり、工事を円滑に進められます。
作成ソフト
工事見積書を作るには、ネット上のクラウドで保存できる作成ソフトを使用する方法もあります。クラウド型なので、パソコンの容量を使うことがなく、パソコンを買い換えたときも問題ありません。
見積から発注まで一元化して管理できるので、業務効率が上がります。作成ソフトの維持費は発生しますが、それ以上にメリットが大きく、業務工程や作業時間の短縮に繋がります。工事をミスなく快適に進めるなら作成ソフトがおすすめです。
工事価格の構成とは?内訳や計算方法などをわかりやすく解説の記事はこちら
工事価格の構成とは?内訳や計算方法などをわかりやすく解説工事見積書の作成はアウトソーシングもおすすめ
工事見積書の作成は、アウトソーシングサービスの利用もおすすめです。
従業員のリソースがひっ迫している場合や、工事見積書の作成に対応できる人材が不足している場合などは、アウトソーシングサービスを活用すると、少ない工数で業務に必要な書類を作成できます。専門的な知識を持っているスタッフが対応するため、スムーズに書類作成を進められます。
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【まとめ】工事見積書の書き方を理解してトラブル防止・信頼獲得に繋げよう!
本記事では、工事見積書の役割や書き方、注意点を徹底解説しました。工事見積書は、業者と発注者の間で工事内容や金額、条件を明確にして、合意を得るための重要な書類です。適切な見積書を作成すれば、トラブルを未然に防いで、施主の信頼も得られます。
社内・社外ともに工事見積書を確認して、健全な工事ができるように進められます。
見積書の入力ミスや記入もれを防ぐためには、エクセルテンプレートや作成ソフトを活用するのがおすすめです。効率よく見積書を作成して工事をスタートさせましょう。
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