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建設業で個人事業主として働いている方のなかには、建設業許可を持っておらず、取得を検討している方もいるのではないでしょうか?
建設業許可の取得は、メリットが大きい反面、手続きや費用などの負担も発生します。
この記事では、建設業許可取得の具体的なメリットや取得の注意点、必要な書類などについて解説します。ぜひ検討の際に参考にしてみてはいかがでしょうか。
個人事業主でも建設業許可は取得できる?
建設業許可は個人事業主でも取得できるのかを疑問に思っている方もいるのではないでしょうか?結論、個人事業主でも建設業許可は取得可能です。
建設業許可を取ることで、受注できる工事の幅が広がったり、個人としての信用が増したりと様々なメリットがあります。
まだ建設業許可を取得していない個人事業主の方は、建設業許可の取得を検討するとよいでしょう。
建設業許可とは何かについてや申請手順についてはこちらの記事で解説しています。
建設業許可とは?取得するための要件や申請手順などを詳しく解説建設業許可を取得する際の個人事業主と法人の違い
各領域の責任者 | |
---|---|
個人事業主 | 1名で担当 |
法人 | 複数名で担当可能 |
建設業許可を個人で取得する場合と法人で取得する場合にはいくつかの違いがあります。ここでは、建設業許可取得に関する、個人事業主と法人の違いをみていきます。
まずは、経営業務の管理者や専任技術者の役割に関してです。個人事業主は原則として一人であるため、すべての役割を個人でこなす必要があります。
それに対し法人は、それぞれの有資格者で役割分担ができます。ただ、役割を担っている人が退職や転勤をする場合、許可の条件が途切れないように配慮する必要があります。
建設業許可を個人事業主で取得する際の条件
建設業許可を個人事業主で取得するにはいくつかの条件があります。これらの条件を満たせなければ建設業許可の取得はできません。
建設業許可を取得するための要件には、以下の5項目があります。ここではそれぞれの要件について解説していきます。
- 経営業務の管理責任者がいること
- 専任技術者がいること
- 誠実性があること
- 財産的基礎があること
- 欠格要件に該当しないこと
経営業務の管理責任者がいること
経営管理責任者とは、営業所において営業取引上の対外的責任を負う人のことです。建設業での経営業務について一定期間の経験がある人が経営管理責任者になれます。
建設業の経営は他の産業の経営とは特徴が大きくことなります。建設業の経営業務について一定期間の経験のある人が最低でも1人は必要であると判断されたため、この要件が定められました。
個人事業主として経営業務の管理責任者になるための例には以下のようなものがあります。
1.建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。
建設工事29業種のうち、これから建設業許可を取得しようとする業種について1.の経験がある場合、経営業務の管理責任者になれます。
個人事業主としての経営業務の経験だけでなく、個人事業以外での経験も使用できます。
例えば、該当業種の建設業許可を取得している会社で取締役として2年勤務し、その後独立して個人事業主として3年勤務している場合も経営業務の管理責任者になれます。
その場合、取締役として2年勤務していたことの証明も必要となります。登記簿謄本や建設業許可通知書のコピーなどを用意しておくとよいでしょう。
2.建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者であること。
法人や組織の代表だけではなく、経営業務の管理責任者に準ずる地位を持っていた方でも6年以上の経験がある場合は、要件を満たせます。
経営業務の管理責任者に準ずる地位とは、具体的にいうと、支店長や営業所長など、営業取引上で対外的に責任を有する地位についで、職制上の地位についている方のことを指します。
こちらも、個人事業主としての経験に加え、法人の社員としての勤務経験を使用できます。
専任技術者がいること
専任技術者とは、営業所に常勤し業務に対して知識や経験を持つ人のことです。建設業の業務を実施するにあたって必要な専門的知識や経験が求められます。
個人事業主が専任技術者になる場合、以下の要件を満たす必要があります。専任技術者の要件は、一般建設業と特定建設業とで異なります。
一般建設業での専任技術者の要件
- 規定の国家資格などを取得していること
- 十年以上の実務経験を有すること
- 高校・大学等の指定学科を卒業し、一定年数の実務経験を有すること
特定建設業での専任技術者の要件
- 規定の国家資格を持っている
- 一般建設業の要件を満たしたうえで、指導監督的実務経験があること
誠実性があること
経営や取引に対して、誠実性があることも条件となります。
建設業許可の規定によると、「許可申請者が請負契約などに関して不正や不誠実な行為をすることが明らかな場合、建設業許可を取得できない」とされています。
具体的には、詐欺や横領、請負契約に違反する行為などは「不正な行為」または「不誠実な行為」とされます。
それらを行ったことにより、免許等の取消処分や営業の停止等の処分を受けて5年を経過しない事業者は、「誠実性のない者」として取り扱われます。
財産的基礎があること
建設業では、受注する金額が大きいとともに、支払う金額も大きくなります。その状態で経営を維持できるだけの財産的基礎が必要です。
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力があること
- (直前5年間に建設業許可を受けて継続して営業した実績があり、かつ、現在、建設業許可を有していること。)
欠格要件に該当しないこと
個人事業主が明らかに建設業を営む上で不適切な状況とされる場合は、建設業許可は受けられません。欠格事由の一例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 破産者で復権を得ないもの
- 建設業許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
- 暴力団員
建設業許可を個人事業主で取得するのに必要な書類
建設業許可の申請をする際は、必要書類を集める必要があります。さきほど、「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」の条件を説明しましたが、その裏付けとなる資料を集めることになります。
経営業務の管理責任者になるために必要な書類
まずは、5年の他法人の取締役経験がある場合です。このときは、履歴全部事項証明書を法務局で発行してもらえばいいでしょう。執行役員や補佐する立場だった場合は、その会社に依頼して「勤務証明書」などを作成してもらいます。
問題は、個人事業として業務開始してから5年経過しており、それを証明する場合です。具体的には、その年数分の確定申告書のコピー(税務署受付印のあるもの)に加え、その間の工事契約書や注文書と請書のセットなどを揃えます。
専任技術者になるために必要な書類
専任技術者になるための要件は、一般建設業か特定建設業かで異なりました。それにともない、必要な書類についてもそれぞれ異なっています。
それぞれの場合に分けて解説していきます。
一般建設業の場合
一般建設業の専任技術者になるための要件は以下のような要件でした。
- 規定の国家資格などを取得していること
- 十年以上の実務経験を有すること
- 高校・大学等の指定学科を卒業し、一定年数の実務経験を有すること
申請をする際は、これらを証明できるような書類が必要です。例えば、以下のような書類がを用意するとよいでしょう。
- 国家試験の合格証明書
- 実務経験期間が分かる工事請負契約書
- 注文書、請求書、入金記録がわかる通帳
- 指定学科を卒業したことがわかる証明書
特定建設業の場合
特定建設業の専任技術者になるための要件は以下の通りです。
- 規定の国家資格を持っている
- 一般建設業の要件を満たしたうえで、指導監督的実務経験があること
これらの要件を証明するための書類が必要となります。書類には以下のようなものが必要となる場合があります。
- 国家資格の合格証明書
- 指導監督的実務経験証明書に記載した工事の請負契約書、注文書、請求書
- 施工体系図や施工体制台帳など
建設業許可を個人事業主で取得するメリット
個人事業主が建設業許可を取得するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?個人事業主が建設業許可を取得するメリットをご紹介します。
- 請負金額500万円以上の工事を受注できる
- 信用度が上がる
- 会社設立が不要
- 経費が少ない
500万円以上の工事を受注できる
建設業許可を取得ことの一番のメリットは受注金額500万円以上の工事を受注できるようになることでしょう。
国土交通省の建設業許可の説明では、【建設工事の完成を請け負うことを営業するには、その工事が公共工事であるか民間工事であるかを問わず、建設業法第3条に基づき建設業の許可を受けなければなりません。ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合には、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいこととされています。】とされています。
ここで軽微な工事とは、500万円(税込)未満の工事をいいます。逆にいうと、建設業許可がなければ、500万円(税込)以上の工事を請け負うことはできません。
建設業許可を取得することで、今まで受注できなかった工事を受注できるため、仕事の幅が広がります。
建設業許可が必要な請負金額の詳細についてはこちらの記事で解説しています。
建設業許可が必要な請負金額は500万円?計算方法の注意点も解説信用度が上がる
建設業許可を取得すると大きな工事を請け負うことができるため、会社の信用度が上がります。建設業許可を取得した場合、許可番号を名刺に表示することもできます。
また最近は、「ずっと取引してきた元請けから、これまで言われたことがなかったのに、突然、建設業許可を取得しないと今後、取引できないと通告された」というケースが増えてきています。
確かに法的には必須ではないものの、発注者の立場に立つと、許可を受けている業者は「経営面、技術面、管理体制面」で一定の信用があると判断できるのです。
会社設立が不要
個人事業主のまま建設業許可を取得するため、会社設立にかかる作業や費用がかからないことがメリットです。
法人を設立すると、煩雑な手続きを対応する必要があり、専門の司法書士等に依頼する場合は、手数料が必要になってしまいます。個人事業主の場合は、そのような手間を省けるためことがメリットとなります。
会社設立の手続き概要は、以下のとおりです。
- 会社の基本事項(商号、事業内容、資本金、発起人、事業年度など)を決める
- 基本事項を元に定款を作成して公証人の認証を受ける
- 出資金(資本金)の払い込みをする
- 会社設立登記の申請をする
必要となる経費が少ない
建設業で業務を行うなかで「必要となる経費が少ない」こともメリットとしてあげられます。
法人では従業員の人数にかかわらず、社会保険(健康保険と厚生年金保険)への加入が義務付けられます。そして、その保険料の半額は会社が負担します。
個人事業主の場合は、従業員が4名以下でいる限り、社会保険料の事業主負担は発生しません。
建設業許可を個人で取得するデメリット
メリットの多い建設業許可ですが、取得する際にはいくつかのデメリットも存在します。デメリットも確認したうえで許可の取得を進めるとよいでしょう。
仕事を取れない可能性がある
法人ではなく個人事業主として建設業許可を取得することで、仕事が取れなくなる可能性があります。
仕事を発注する際に法人のみに発注する元請け会社もあります。そのため、建設業許可を取得したとしても、個人事業主であるために仕事を取れない可能性もあります。
建設業許可を法人で取得するか個人事業主で取得するかの選択には、注意する必要があるでしょう。
取得費用がかかる
建設業許可を取得する際は以下の費用がかかります。
- 知事許可で取得する場合:9万円
- 大臣許可で取得する場合:15万円
自身で建設業許可の取得をする場合は9~15万円程度の費用で済みますが、自身での手続きが難しい場合、行政書士に依頼することが一般的です。
その場合、司法書士への報酬が10万円~20万円ほど必要となります。建設業許可取得の際にかかる費用は事前に確認しておきましょう。
決算報告書の提出が必要になる
建設業許可を取得した場合、毎年決算報告書の提出が必要になります。この報告は、事業年度の終了後4ヶ月以内に行います。また、建設業許可の更新手続きを5年ごとに行う必要もあります。
また、これらの手続きを怠った場合、罰金など罰則の対象になる可能性があります。これらの手続きを士業に依頼する場合は、それに対する報酬を支払う必要もあるため、それにともなうコストがかかってしまいます。
建設業許可の維持に対してコストがかかってしまうこともデメリットとして挙げられるでしょう。
【まとめ】建設業許可を取得することで様々なメリットあり!要件や必要書類も要チェック
ここまで、個人事業主が建設業許可を取得する方法などについて、解説してきました。手続きはかなり手間がかかりそうです。
しかし、その受けるメリットも大きく、昨今はコンプライアンスの観点から、下請け業者には「建設業資格が必須ではない規模の工事でも資格を求める」ケースも増えてきています。資格がないと、実質的に下請けから排除されます。
今後、建設業界で生き残るためには、建設業許可の資格が必須のものになりつつあります。皆さんも、取得に前向きに取り組んでみませんか。