工事台帳とは?作成目的や記載項目・注意点などをわかりやすく解説

工事台帳

工事台帳は、建設工事の過程を記録して、原価を計算するための重要な書類です。工事の進捗状況や使用資材、作業員など、工事に関する様々な項目を記録します。

しかし、大量な書類の管理や予算の算出など、やるべき作業が多くて混乱する担当者もいるでしょう。

本記事では、工事台帳の作成目的や作り方、注意点を徹底解説します。最後まで読めば、工事台帳の基本が理解できるので、正しく情報を整理して適切な工事台帳を作成できます。

工事台帳とは

工事台帳とは、建設工事の原価管理に欠かせない帳簿です。工事ごとの取引内容を詳しく記録して原価を集計することで、以下3つの役割を果たします。

  • 工事原価の明確化:原価項目ごとに金額を記録するので工事全体の原価がわかる
  • 経営判断の材料:工事実績を分析して将来の工事原価を予測できる
  • 税務申告の書類:労災保険の申告や税務調査に使用できる

正確な工事台帳を作成することで、工事原価を正しく把握して経営判断にも活用できます。

工事台帳は、工事ごとに作成して、資材購入や外注費発生などの取引が発生するたびに、台帳に記録していきます。工事完了後は、台帳をファイリングして保管しましょう。

工事台帳の作成目的

工事台帳は、建設業における原価管理と経営判断の基盤となる重要な帳簿です。具体的には、収支や利益率を把握したり、工事の原価や支出金を算出できたりと様々な目的があります。工事台帳の作成目的を項目別に解説します。

工事ごとの収支や利益率を把握する

工事台帳を使って、工事ごとの収支や利益率を把握できます。収支や利益率は、各工事の経営状況の分析に必要です。詳細な条件を抜きにした場合の、収支や利益率の算出方法は以下の通りです。

  1. 工事請負契約書に基づいて請負金額を算出
  2. 材料費や労務費、外注費などの原価を算出
  3. 売上から原価を引いて支出を算出
  4. 収益を売上で割って利益率を算出

利益率の高い工事が分かるので、今後そのような工事を積極的に受注するための判断材料にもなります。

完成工事原価を算出する

工事台帳に記録した情報から、完成工事原価を算出できます。完成工事原価とは、工事完了までに発生した費用の合計です。以下の原価項目が含まれます。

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 経費

それぞれ請求書や給与明細書などに基づいて原価を算出します。算出した完成工事原価と売上を比較することで、工事の粗利が分かり、収益性を分析できます。

未成工事支出金を算出する

工事台帳から、未成工事支出金を算出できます。未成工事支出金とは、未完成の工事で発生した費用です。完成工事原価と同じく、材料費・労務費・外注費・経費から未成工事支出金を算出します。

未成工事支出金が分かることで、工事の進捗度に応じて発生した原価を算出して、当期の費用として計上できます。貸借対照表上では「未成工事支出金」として資産計上されており、資産の過大計上を防ぐための重要な項目です。決算をまたぐ長期工事でも、原価を工事完成まで繰り延べせずに、当期の期間損益を正しく割り出せます。

経営事項審査に提出する必要がある

経営事項審査は、国や都道府県、市町村などの行政府が発注者である「公共工事」を受ける場合に必要な審査です。建設業者の経営規模や財務状況を評価して、審査に通過すれば公共工事の競争入札に参加できます。

工事台帳を提出して評価されるのは一般的に以下の項目です。

  • 売上高・資本金・負債額・工事施工実績
  • 工事の種類ごとの完成工事高
  • 技術職員名簿
  • 安全管理体制
  • 労務管理体制
  • 環境マネジメントシステムの運用状況

確認項目は都道府県によって多少異なりますが、共通して上記のような情報が確認されます。必要書類を正しく整理し、現場の最新情報を常に確認しておきましょう。

税務調査の調査官によい印象を与えられる

正確に作成された工事台帳は、税務調査の調査官によい印象を与えられます。税務調査で会社の経理状況を正確に把握していると、調査の円滑化にも貢献できます。

税務調査において、工事台帳の作成には以下の内容に留意しておきましょう。

  • 工事ごとに発注者名や請負金額、契約日、完成日などを明確にする
  • 材料費や労務費外注費、経費を漏れなく保管する
  • 請求書や領収書の情報を正確にまとめる
  • 過去から最新まで工事台帳を保管しておく

建設業は工事の規模が大きく、受注金額が数億円単位になる場合もあります。高額受注が多いと税務調査の対象になりやすいとも考えられており、調査に備えておいて損はありません。

工事台帳の記載項目

工事台帳には、建設工事に関する様々な情報を入力します。その中でも工事原価に関する費用は重要です。工事原価を正しく算出するためには、材料費・労務費・外注費・経費の4つの項目を適切に記録しましょう。それぞれの記載項目について解説します。

材料費

工事台帳の材料費には、資材の購入費用を記録します。工事現場に搬入されるたび、納品書を保管して作業日報に以下の情報を記録していきます。

  • 材料の種類:木材・鉄筋・コンクリートなど
  • 数量:資材ごとの納品数量
  • 単価:運搬費を含む資材の単価
  • 購入先:業者名と購入日

材料費は工事原価の大部分を占めるので、使用した資材の管理を徹底して正確に記録しましょう。

労務費

工事台帳に記録する労務費は、建設工事の従業員に支払う人件費です。各種手当や交通費も含まれます。労働者の種別と人数、労働時間、単価に基づいて計算されます。

工事に従事していれば正社員やアルバイトなどの雇用形態は関係ありません。ただし、工事に直接従事していない事務員や下請業者は労務費ではないので注意してください。雇用契約にない下請業者は外注費となり、現場事務所の事務員は経費となります。

外注費

工事台帳に記録する外注費は、工事内容を部分的に外部の専門業者に発注した際の費用です。工事台帳には、外注先の業者名や作業範囲、外注金額、期間などを記録します。

具体的には、電気工事や空調工事、衛生工事などの設備工事を外注業者に依頼します。追加工事や設計変更に伴う外注増減、検査不合格に伴う手直し費用など、外注費が変動する要因は多いので注意してください。外注の発注から検査完了まで徹底した管理が必要です。

経費

工事台帳に記録する経費は、建設工事で発生する材料費・労務費・外注費以外の付帯費用です。例えば、以下のような項目が費用となります。

  • 機材のリース・レンタル費用
  • 現場事務所の光熱費・通信費
  • 工事現場への出張旅費・宿泊費
  • 工事に関連する保険料
  • 現場の消耗品費・修繕費
  • 事務員の給与
  • 事務用品購入費

細かな費用が多いので、見落としのないように計上して原価への反映を徹底しましょう。

工事台帳の作成方法

工事台帳を作成するために、エクセルや専用ソフトを使用します。エクセルは社内で作成方法をカスタマイズしやすいです。専用ソフトは、入力項目や集計機能があらかじめ導入されているので使用しやすいです。どちらもメリットがあるので、両方の特徴を踏まえて自社に最適な手段を検討しましょう。

エクセル

エクセルで工事台帳を作成する場合、社内で書式を作成して、工事ごとに内容を記入します。データの集計や計算式の設定は自由にカスタマイズできます。別途導入コストがかからず、節約できるのはメリットです。

デメリットは、工事件数が増えると、エクセルのファイル管理が難しくなったり、入力ミスや計算ミスが発生しやすかったりする点です。複数人での情報共有や同時編集が困難であり、編集履歴を正確に追えないという不自由さもあります。デメリットを踏まえた上で、エクセルを使用するか検討してください。

専用のソフト

工事台帳を作成する専用のソフトを使用すると、効率的で確実な工事台帳を作成できます。入力項目や計算式が組み込まれているので、入力ミスを減らし正しく管理できます。複数人で編集し、現場にいる現場監督やリモートワーカーもアクセスできるメリットがあります。バックアップや履歴管理の機能があり、他のシステムと連携できる点も使いやすいです。

デメリットとしては、初期費用や運用費用がかかったり、自社用にカスタマイズが難しかったりする点です。ただ、コストがかかっても安全に、効率的に工事台帳を作成できるので、正確に大量の工事を管理するなら専用ソフトがおすすめです。

工事台帳をエクセルで作成するときの注意点

工事台帳をエクセルで作成するとき、入力ミスや情報共有のしにくさなどの注意点があります。作業効率を高めるために工夫が必要な部分です。エクセルで作成する際の注意点を解説します。

入力するときにミスを起こしやすい

工事台帳をエクセルで入力すると、様々なミスが起こりやすいです。手入力による作業はどうしてもヒューマンエラーが発生します。例えば、以下のようなミスです。

  • 金額や数量の入力ミス
  • 計算式の設定ミス
  • 資材名や作業内容の記述ミス
  • 数式がずれるミス

ミスを防ぐには、入力値の許容範囲を設定し、計算式を別のシートで管理するなどの工夫が必要です。

情報をリアルタイムで共有しにくい

エクセルで作成した工事台帳は、ファイル形式がデータなので、複数人での同時利用が難しいです。情報のリアルタイム共有が難しいことで以下のような問題が発生します。

  • 最新版が分かりづらい
  • 情報共有に時間がかかる
  • 更新履歴を追えない
  • 同時編集できない
  • 二重打ちが起きやすい

このように、エクセルではファイル共有のルール設定や最新版管理に注意が必要です。

属人化を招きやすい

エクセルで作成した工事台帳は、作成者の作業スタイルや癖が反映しやすいです。このことが属人化を招き、他の人が簡単に編集しづらくなります。作成者のスキルに依存してしまい、エクセルの活用に個人差が出ることもデメリットです。

複数の作成者がいる場合は、書式やレイアウトが統一されず、より混乱を招く場合もあります。データの一貫性が失われ、正確な工事台帳を作成できません。作成時のルール策定やテンプレート統一化が求められます。

工事台帳を専用のソフトで作成するメリット

工事台帳を専用のソフトで作成すると様々なメリットに期待できます。入力ミスの防止や工事データの一元管理、人件費の削減などです。エクセルに比べると専用ソフトの恩恵が大きいと分かります。工事台帳を専用ソフトで作成するメリットを詳しく解説します。

入力ミスなどを防止できる

工事台帳を専用ソフトで作成すると、入力ミスやデータの不一致を防止できます。入力項目や入力ルールが設定されていて、ミスチェックや自動補正機能もあるので手入力によるミスを最小限に抑えられます。エラー値や無効な値があればすぐに分かり、人為的なミスを防げるのがメリットです。

工事データを一括管理できる

工事台帳を専用ソフトで作成すると、複数の工事データを一括管理できます。大きな工事から小さな工事まで進行状況を一覧で把握し、各工事のデータ集計や分析も可能です。

また、専用ソフトなら工事データをクラウド上に保管できるので、本社・事務所・現場などの複数の端末からアクセスできます。担当者に確認しなくても、工事費や進捗状況を把握できるので、指示出しや経費管理が簡単になることがメリットです。

人件費を削減できる

工事台帳を専用ソフトで作成すると、工事台帳の管理に関わる人件費の削減にもつながります。専用ソフトがあれば、作業手順が簡素化されて、作成にかかる時間を短縮できます。入力ミス・計算ミスが起きにくくなることで修正時間も減り、全体的に作業効率が上がるのがメリットです。

専用ソフトの一元管理により、様々な作業が効率化され、残業や休日出勤がなくなり、人件費削減の効果が高まります。

工事台帳の注意点

工事台帳は、建設業法で作成が義務付けられている書類です。発注者の検査や監査があれば提出する必要があります。そのため、工事台帳は法令で定められた一定期間保存しないといけません。

大企業から小規模業者まで、高額受注から少額受注まで、基本的にすべての工事で工事台帳が必要です。工事台帳の注意点を詳しく解説します。

工事台帳は保存期間が定められている

工事台帳は、建設業法施行規則第28条の「帳簿及び図書の保存期間」により保存期間が定められています。保存期間中は、発注者や監査官、税務調査の求めに応じていつでも工事台帳を提出できる状態にしておきましょう。詳しい保存期間と対象の書類を解説します。

5年間保存の書類

工事台帳において、5年間保存が定められている対象書類は以下の通りです。

  • 営業所の代表者に関する書類
  • 建設工事の請負契約に関する書類
  • 下請契約に関する書類
  • 総勘定元帳や売掛・買掛金元帳、経費帳などの書類

営業所の代表者は数年で入れ替わることが多いので、過去の代表者が分かるように管理してください。

10年間保存の書類

工事台帳において、10年間保存が定められている対象書類は以下の通りです。

  • 発注者から直接請負した新築住宅建設に関わる書類
  • 完成図書
  • 発注者との打ち合わせ記録
  • 施工体制図

電子化されたデータも同じ期間の保管が必要なので、バックアップして永続的に保存しましょう。

工事台帳は小規模事業者でも作成する必要がある

工事台帳の作成義務は、建設業の許可を得ていて、下請契約を締結する事業者に課せられています。小規模事業者でも下請契約があれば工事台帳の作成が必要です。また、公共工事を請け負う場合は、経営事項審査を受けるので、その際も工事台帳の情報が重要となります。

規模の大小を問わず、建設工事を請け負う事業者は工事台帳を作成しておくと安心です。監査や税務調査でも提出が必要となる可能性があります。

工事台帳は金額に関わらず作成する必要がある

工事台帳は、工事の金額に関わらず作成する必要があります。下請契約があれば、その金額に関わらず工事台帳を作成しましょう。また、公共工事の場合は工事台帳の写しを発注者に提出する義務もあります。

 

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【まとめ】工事台帳は工事原価の算出や経営事項審査などに必要な書類!きちんと作成・管理しよう

本記事では、工事台帳の記載項目や作成方法、作成にあたっての注意点を解説しました。工事台帳は、原価を正確に算出できる重要な書類です。公共工事の受注に必要な経営事項審査や、税務調査などでも工事台帳が必要となります。

工事台帳の管理は専用ソフトが望ましいです。工事の進捗状況を確認したり、正確な情報をミスなく入力できたりとメリットが多く、業務効率化にも貢献します。

工事の情報を正しく台帳に記載し、定められた期間を保存して、いつでも提出できる完ぺきな工事台帳を作成しましょう。

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