「工事成績評定」とは?高得点を取得するメリットやポイントを解説

公共工事で一般的となっている工事成績評定は、工事発注者が竣工時に出来栄えや技術提案などの項目を総合的にチェックする評価制度です。
工事の技術品質面の出来栄えなどが発注者の視点で判断されるので、高得点を取得すると入札にも有利になります。また、工事の品質も向上し、受注業者の技術力・品質力も高いレベルに維持できるでしょう。
今回は、工事成績評定の高得点取得に必要なポイントや高得点を維持することによるメリットなどを解説していきます。

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「工事成績評定」とは?

工事成績評定とは、請負金額が500万円以上の公共工事において、発注者が竣工時に100点満点で工事の成績評定を実施する制度です。
評価内容は大きく分けて3つのカテゴリーに分かれています。
最初は施工体制です。総合的な施工体制や技術者の配置が適切であったかなどを確認します。
2つめは施工状況です。施工・工程の管理状況や関係機関との対応状況、安全対策が適切かなどをチェックします。
最後は出来形および出来栄えで、出来形が測定基準を満たしているか、品質関連の試験結果が基準を満たしているかなどを確認します。
更に、多角的に公共工事を評定する目的で、受注者の技術力や創意工夫、地域への貢献度、法令遵守等が加えられました。

工事成績評定の役割

工事成績評定には公共工事の入札と契約の適正化を維持し、工事の出来栄えや品質向上の役割があります。
平成12年に法制化された「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(通称:適化法)の施行に伴い、全国的に「総合評価方式」での入札が試行され「工事成績評定」が取り入れられました。
その後施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(通称:品確法)にも対応するため、評価項目が見直され、安全対策などが重視されて現在の評定制度になりました。
工事成績評定で受注者が高得点を取得し続けることで、入札・契約の適正化や工事の品質水準が維持されるのです。

工事成績評定の点数目安

全国的に見ると工事成績評定の平均点はおよそ70点です。評定の目安としては75点以上が一般的ですが、最近は80点以上の取得率も増えてきました。
成績判断の採点表は、100点満点中65点を基準にして加点や減点をする仕組みになっています。
何の問題もなく工事が終了すれば70点を取得することは可能です。さらに、提出する書類に漏れが無ければ75点以上の取得も現実味を帯びてきます。
高得点といわれるのは80点を超える得点です。85点以上で最優秀工事になります。
最近の評価状況も踏まえ、今後の評定では80点以上を目指すとよいでしょう。
なお、得点は発注者によって上下します。比較する場合は同じ自治体内かつ同業種で比べるようにしましょう。

工事成績評定の仕組み

工事成績評定で高得点を取得するにはその仕組みを熟知しておくことが重要です。
評価は主任監督員、総括監督員、技術検査員が工事成績評定実施要領に沿って行うので実施要領の内容についても十分把握しておく必要があります。
また、工事成績評定は100点満点で評価されます。点数配分を理解してどの項目に力を入れる必要があるか確認しておきましょう。
ここでは工事成績評定実施要領について押さえておくべきポイントと高得点を取得するメリットを紹介します。

高得点を取得するメリット

工事成績評定で高得点を取得すると公共工事の入札時に有利になるメリットがあります。
平成21年度から、公共工事の落札者を決める時に入札価格だけでなく価格以外の要素を総合的に判断して決定する「総合評価落札方式」が導入されました。
総合評価項目には工事の品質や工期短縮、新技術・新工法の採用やトータルコストの削減、自然環境保護や省資源化などが含まれています。
これらを総合的に評価するのが工事成績評定です。これらの項目で高得点を取得し維持できれば、総合評価落札方式による入札が有利になります。

工期短縮の効果的な方法についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

工期短縮工期短縮の効果的な方法とは?実際の事例や注意点も紹介

実施要領

工事成績評定で高得点を取得するためには工事成績評定実施要領を熟知しておくことも必要です。
実施要領には工事成績評定項目がカテゴリー別に細分化され、800項目もの膨大なチェック項目が記載されています。実施要領の中でフォーマット化されている細目別評定点採点表では、各カテゴリーの点数配分の中で、品質及び施工管理の配分が高くなっています。
工事成績評定で高得点を狙うなら、点数比率配分の高い「品質・施工管理」に注力すると良いでしょう。

工事成績評定で高得点を維持するためのポイント

工事成績評定に基づく公共工事の一般的な評価水準は、取得した点数によってAからEまでの5段階にランク分けされています。
最も優秀なAランクに位置づけされるには、工事成績評定における得点80点以上が必要です。
工事成績評定Aランクを維持すれば、優良工事を安定して供給できる優良事業者となり、公共工事の入札に有利な立場を持続できます。
ここではAランクの80点以上を取得し維持するためのポイントを7項目に分けて解説します。

ポイント1:品質と施工管理に注力する

工事成績評定で高得点を取得するためには、評定項目の中で点数配分比率の高い「品質・施工管理」に特に力を入れる必要があります。
評定点採点表では両者を合わせると30%を超える配分です。発注者の持つ優れた管理能力や品質技術力を存分に発揮し高い水準を追求しましょう。
綿密な施工計画や安全対策の立案と確実な実行など、出来て当然と思われる項目は抜け目なく完璧に仕上げ、その上で品質と施工管理に注力することが高得点取得への近道です。

ポイント2:結果を分析して改善する

工事成績評定で低い点数に終わった場合でも、今後につなげるために結果の分析を入念に行いましょう。同じミスを繰り返さないことも重要なポイントです。
まず、評定結果が適切か否かを判断するために、事前に自己評価をしておきましょう。
結果が判明したら自己評価と照らし合わせ、評価されなかった点を浮き彫りにします。
評定の低かった内容を再認識し次回に備えて確実に改善しましょう。
また、評定の詳細を知りたいときは書面で説明要求できます。その結果を元に更に分析を深めることも可能です。

ポイント3:バックアップ体制の構築

工事成績評定の対応を担当者個人に任せないで、会社全体でバックアップ体制を構築することも、80点以上の高得点を維持するためには大事なポイントです。
評定項目を個人で網羅するには限界があります。過去に提出した書類が誰でも閲覧できるように整理したり、会社のデータベースに全社共有ホルダーを構築して情報の共有を図るのも一つの手段です。
人的ミスや担当者配置換えなどにも備え、会社全体でしっかりフォロー体制を整えましょう。

ポイント4:ホウレンソウを徹底する

個々人の管理能力や品質技術力が高くても、また全社的なバックアップ体制を構築できたとしても、基本的な報告・連絡・相談の連携が取れてないと事業場内で効率良く業務を運営できません。組織内の連携が十分でないと1つの問題がいつの間にか取り返しのつかない大問題に進展することもあります。
工事が竣工するまでには非常に多くの人々が関わるので、現場における日頃のホウ(報告)レン(連絡)ソウ(相談)が重要です。
小さな問題点でも情報の共有を図り、誰でも状況が把握できるように徹底しましょう。

ポイント5:お客様とのこまめにやりとりする

工事の進行状況や課題など、お客様と頻繁に連絡を取り情報を共有することは重要なポイントです。工事成績評定においても発注者の要求を確実に実現することが高評価につながります。
発注者と受注者の解釈のズレが原因で、仕上がりに相違が起こるなどは避けなければなりません。会議の前に施工状況を両者の目で確認したり、書類を頻繁に提出するなど、発注者とはこまめにコミュニケーションをとりましょう。積極的に連絡を取り合うことで、お客様の要求を実現する優良な工事となります。

ポイント6:近隣住民との関係を良好に

工事を施工する上で近隣住民の理解を得て良好な関係を築くことは非常に重要です。
工事で騒音が発生したり、交通渋滞や道路規制などで地域の住民の方々に不利益が生じることで直接苦情を受けることもあります。
このような環境の中で工事を進めるために、工事内容を理解してもらえるようなチラシを持って挨拶回りをしたり、作業の時間や日程を調整するなどの細かい配慮が必要です。
特に公共工事は税負担されている住民こそが真の顧客と考えましょう。

ポイント7:創意工夫

普通の施工管理では高評価は望めません。高得点を取得し維持するためには、事業者の創意工夫が必要です。
熱中症予防のために避暑設備を導入することや、新しい技術開発の講習会を開催するなど、品質技術のレベルアップや安全対策につながるアイデアを積極的に登用しましょう。品質・工程・原価・安全・環境の項目の中で会社の強みがあればそれを生かすのもひとつの手段です。
事業者のレベルアップと工事の質を上げるための創意工夫をアピールすることは評定での高評価につながります。

土木工事での創意工夫の事例についてはこちらの記事で解説しています。

土木工事における創意工夫とは?点数をあげるポイントや優秀事例も紹介!土木工事における創意工夫とは?点数をあげるポイントや優秀事例も紹介!

【まとめ】工事成績評定は80点キープを目指しましょう!高得点維持のポイントについても要チェック

工事成績評定で80点以上の高得点を取得し維持することは、公共工事の入札を有利に導くだけでなく、事業者の技術品質能力や管理能力を向上させる効果があります。
高評価を獲得し維持するためのポイントは以下の7つです。

1、施工計画は綿密に立案し確実に実行する。
2、工事成績評定の結果を分析して改善点を明確にし今後に備える。
3、個々の担当任せにせず会社全体でバックアップ体制を構築する。
4、社内のホウレンソウを綿密にし連携を深める。
5、発注者とのコミュニケーションを深め積極的にコンタクトを取る。
6、近隣住民に手厚く配慮し円滑な関係を築く
7、高得点を狙うために創意工夫を提案する。

重要ポイントをしっかり押さえ、工事成績評定で高得点を維持し、レベルの高い工事を安定して供給できる優良事業者を目指しましょう。

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