建設業の労務費計算の方法!重要性や人件費との違いについても解説

建築物が完成するまでの工事価格を算出する積算は、建設工事費を決定する上で非常に重要な作業です。積算で計上される工事の原価を完成工事原価と言い、工事の純利益を正確に算出する上で正確に表示することが求められています。完成工事原価は、材料費・外注費・経費、そして労務費の4つから成り立っています。今回はその中で労務費について、重要性から計算方法、ソフトの使用法まであらゆる面から徹底的に解説していきましょう。

建設業における労務費の重要性

労務費とは、現場で施工にあたる職人に支払う賃金や手当のことを指します。適切な工事原価を提示するために、労務費の管理は非常に重要とされてきました。そして近年、建設業界では労働環境の問題の改善のために、厚生労働省主導の元様々な方向からメスが入っており、法改正が行われています。その中で、労務費の管理を今まで以上に慎重に行わせようという流れが生まれた背景について、以下で4つに分けて詳しく解説していきましょう。

残業時間の上限規制

建設業界は競争の激化や人手不足が原因の長時間労働が問題視されています。2022年度の調査では建設業の平均的な月の労働時間は、全産業の中で最も長い月167.1時間でした。この労働環境の抜本的な改革のため改正労働基準法で、2024年までに36協定の適用が義務付けられることになりました。改正後は時間外労働は原則として月45時間・年360時間までに限定され、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなります。

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見積もりの精度

労務費を明確に記載することは、精度の高い見積りに繋がります。労務費の計算が曖昧だと完成工事原価が正確に定まらないので、見積と実際の完成工事高に相違が生まれる可能性があります。そうなると、実際の請求額が異なり、利益率が下がる恐れもあるのです。労務費を把握し正確な見積書を出すことで、現場の労働者の適切な賃金の支払いに繋がり、結果として自社にとってもメリットになります。また、元請け企業に取っても法定福利費が正確に記載された見積書は、正確な支出が把握できるという利点があります。

労働環境の改善

労務費の把握は、社内の労働環境の改善にも繋がります。先ほども述べたように、建築業界では長時間労働が問題視されています。ひと月当たりの労働時間は全産業の平均と比較すると30時間も多いのです。実際の社員の労働時間を正確に割り出し可視化することで、残業時間が正確に把握でき是正すべき範囲が明確になるのです。適切な労働時間はストレスの軽減になり、社員の健康やモチベーションアップに繋がるため、結果としては企業にプラスに働くでしょう。

健全な経営体制

労務費の把握は、経営という面から考えても非常に重要です。建設業では、原価において労務費は大半の割合を占めており、当然のことながら原価率にも大きく影響しています。社員の労働時間の無駄を削減し適切な範囲に収め、労務費を抑えることは企業の利益率のアップにも繋がります。建設業界は度重なる法改正で経営体制に透明性があることが今まで以上に求められているのです。労務費の見直しは、経営体制を整える第一歩と考えられています。

建設業の労務費の計算方法

先述したように労務費とは、現場の作業員に支払う工賃を指しています。労務費というと毎月の給料のことと考えるかもしれませんが、それだけではなく計算・管理する上で5つに分類されています。正確に労務費を計算し原価管理や利益率の確保に役立てるためには、まずそれぞれの費用が何を指すのかについて理解する必要があります。労務費を構成する5つの意味と、それぞれが指す具体的な費用について、以下でより詳しく解説していきましょう。

建設業の労務費内訳

先ほども述べたように建設業で労務費は、工事施工に直接関わる職人に支払う工賃を指します。そして企業が社員に支払う工賃は、作業に対する対価だけではなく、各種手当や保険なども含まれているのです。そして、労務費を適切に管理するにはそれぞれの意味合いをしっかりと理解する必要があります。建設業において労務費は以下の5つに分類できます。
・賃金
・雑給
・賞与
・退職給付金
・法定福利費
それぞれの意味や計算する上での注意点について、以下で説明していきます。

賃金

賃金とは、企業が労働者に対して労働に対する対価として支払う金額です。賃金は、企業活動の費用、従業員の生活費、労働の対価という3つの要素があると言われています。本来は現金で支払うことが原則とされていますが、法律で認められる場合現物支給となるケースもあります。建設業においては、現場で工事にあたっている直接雇用の職人に対して支払う給料を意味します。作業した分に対する純粋な報酬という認識で考えて良いでしょう。

雑給

雑給とは、パートタイム労働者やアルバイトなどの臨時従業員に対して支払う給与や諸手当を指します。建設業においては、日雇いとして1日限定で働く職人や、期間工に支払う給与も社員に支払う給与と区別して管理するため、雑給として計上します。雑給でも、日雇い月雇いを問わず、源泉徴収の計算が必要になるので注意しましょう。その際、会社が負担した従業員の立替金等で、実質的に従業員が負担すべきものは給与扱いとして換算されます。

賞与

賞与と言うと、ボーナスのことと考える人が多いかもしれません。しかし賞与とは、固定給が支払われている労働者に対し、定期給与とは別に支給する給与全般のことを指します。建設業の労務費における賞与は、直接工事現場で施工にかかわる従業員のボーナスだけではなく、扶養手当、通勤手当、家賃補助などの各種手当全般のことを言います。通勤手当は賃金に含まれると考える経営者の方もいますが、賞与に計上するよう注意しましょう。

退職給付金

一定の期間勤務した従業員が退職する際に支払う金額を、退職給付金と言います。本来、企業は現場で働く作業員の退職の日に備えて、退職給付金を日々積み立てておきます。しかし退職金を支払えない中小企業の場合、建設業退職金共済制度を利用するケースも見受けられます。その場合、退職給付金は独立行政法人勤労者退職金共済機構から本人に直接支払われます。退職一時金だけではなく、確定給付企業年金、厚生年金基金なども退職給付金に該当します。

法定福利費

法定福利費とは、企業が福利厚生として支払うべきと法律で義務化されている保険関係の金額です。
・健康保険料
・介護保険料
・厚生年金保険料
・子ども・子育て拠出金
・労働者災害補償保険料
・雇用保険料
が法定福利費に該当します。長い間建設業界では現場作業員に対して法定福利費を支払わない企業が多いことが近年問題視されていました。そのため近年では元請け企業から見積書に法定福利費の記載を求められるケースも増えています。

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人件費との違いは?

労務費は良く人件費と混同されますが、意味は異なります。労務費は、現場の作業員という直接製造にかかわる範囲に限定された給与や手当を指します。工賃と表現するケースも多く見受けられます。対して人件費は現場作業員だけに限定されない、労働を提供したすべての部門の人員に支払われる給与・手当を指します。つまり、労務費は人件費の一部なのです。また、労務費は製造原価に含んで算出される必要があり、会計処理も異なるため注意しましょう。

建設業の労務費の種類

労務費は費用が製品の生産に直接関わる作業に支払うか否かという視点で、「直接労務費」と「間接労務費」の2種類に分類されています。直接労務費は、現場での作業に対して支払われる対価としての報酬を指します。対して、間接労務費は直接労務費として計上されない全ての労務費の総称を意味します。それぞれに該当する費用は具体的にどのようなものなのかなどより詳しい説明と、計算するための式について以下で解説していきましょう。

直接労務費

直接労務費は、現場で作業している職人に対して支払う賃金のことです。労務費の内訳の中では、現場の直接雇用の社員に支払う賃金と現場の臨時作業員に支払う雑費が直接労務費に該当します。賃金を直接作業時間で割ることで賃率を割り出してから、工事が完了するまでにかかった時間とかけて直接労務費を割り出します。計算式にすると
・賃率=直接工の賃金÷直接作業時間
・直接労務費=賃率×施工完了までの時間
となります。移動時間などは間接労務費に該当するので、計上しないように注意してください。

間接労務費

先ほども述べたように直接労務費に該当しない労務費を間接労務費と言います。賞与、退職給付金、法定福利費などが該当しますが、これら以外にも現場監督や事務職員に支払う賃金や、休業手当、機械のメンテナンスなどの現場作業員の間接作業にかかわる賃金も間接労務費として計上する必要があります。また、運搬作業員や修理工など、間接的に現場に関わった人を「間接工」と呼ぶこともあります。間接労務費は
間接労務費=労務費-直接労務費
の計算式で算出されます。

建設業の労務費計算に必要な「労務費率」とは?

労務費率とは、請負金額に対する労務費の割合を指します。労務費率は、建設業では労災保険料の算出などに用いられています。他の産業において労災保険料は「賃金×労災保険料率」の計算式で算出されています。しかし、建設業では下請けが1次、2次と続くため、労働者の賃金を一律に把握できないのでこの計算式では正確な数値が編み出せませんでした。そこで、厚生労働省が建設業界の業種ごとに労務費率を定めました。これらを用いた「賃金総額×労務費率」という計算式で、建設業の労災保険料は算出されているのです。

建設業の労務費計算を効率化する方法

建設業の労務費計算は、非常に複雑と言われています。まず、本来一人親方などの業務委託費は外注費として別計上する必要がありますが、実質的に臨時雇用者と変わらない場合は労務費の雑費とされるなど独特の認識で分類しなければなりません。また、着工から引き渡しまで長期にわたる場合には工事進行基準で収益を分割計上するなどの手間が発生します。計算ミスの防止と効率化のために、以下の2つの方法を用いて労務費を計算することをお勧めします。

方法1:エクセル

工事原価を効果的に管理する方法の1つめにExcelを用いる方法が挙げられます。労務費をはじめとした工事原価の計算は膨大なデータを使用するため、計算ミスのリスクがあります。しかし、Excelの数式やマクロを利用すれば、そのリスクを回避できるだけでなく作業の効率化にも繋がります。Excelや身近なソフトであるために、使用するハードルも低いのではないでしょうか。原価計算にExcelを利用するメリットとデメリットについて、以下で解説します。

エクセルのメリット

Excelを利用するメリットの1つは、導入の際のコストがかからないということでしょう。使い慣れたソフトなので導入しても現場はスムーズに対応できるでしょう。また、Excelを用いたAnyONEなどの企業が開発した原価管理表のテンプレートを無料でダウンロードできるよういなっています。また、関数やマクロが豊富にあるため、知識さえ身につければ自分の使いやすいようにカスタマイズできるのも大きな魅力と言えます。

エクセルのデメリット

Excelを利用するデメリットとしては、工事原価を計算する専用のソフトではないので、対応する範囲に限界が生じることが挙げられます。工事原価の計算を完璧に1つで網羅したいと考える場合は、不足を感じるかもしれません。自分が満足するテンプレートを1から作成する場合は、専門的な知識が求められます。また、オンラインで共有する際にも不都合が生じる可能性があります。さらに、数値や計算式の入力など手入力で行う範囲が広いために、計算ミスが発生するリスクも考えられます。

方法2:専用ソフト

Excelの計算式を用いる際のデメリットをカバーする形で作られたのが、建設業向けの労務管理専用ソフトです。労務管理ソフトは数多く発売されていますが、先ほども述べたように建設業の労務管理は労務費率が用いられるなど特殊なので、専用のソフトを選ぶようにしましょう。専用の労務管理ソフトの導入により、現場が分散する際に困難であった勤怠管理やシフト管理、さらに工数管理までが正しく効率的に行われるようになります。

専用ソフトのメリット

労務費管理専用ソフトを用いる一番のメリットは、使いやすさです。建設業の労務費の計算専用に設計されているため、細かなところまで手が届く仕様になっておりこれ1つで労務管理全てが可能になります。また、アプリ版を用いて現場で従業員自らに入力させれば情報収集は容易になりますし、そのまま情報を他部署や経営陣にも共有できる便利さもあります。クラウド上で情報を一元化することで、どこでも容易に労務費を確認できるようになります。利便性だけではなく、経営を安定させるという面でもメリットはあるでしょう。

専用ソフトのデメリット

労務費管理ソフトを導入する一番のデメリットは、導入、運用していくためのコストにあるでしょう。システムによっては数十万円の初期費用が必要となるケースがあります。また、殆どのシステムでは月額使用料を支払わなければならないのも、長期的な目線で見ると大きな出費になる可能性があります。また、アプリやパソコンに不慣れな年齢層の高い職人に対しては、操作方法を教える研修の場を設けなければならないことも予想されます。

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【まとめ】建設業の労務費計算には専用ソフトがおすすめ!精度の高い計算をしましょう

工事原価を管理していく中で、労務費は最も重要なものの1つです。建設業における労務費は、現場が分散するため管理が難しく、打刻不正などのトラブルが起きることもありました。しかし、専用の労務費管理コストを導入すれば、スマートフォンから勤怠入力ができ、クラウド上で管理ができるため労働者・管理者共にメリットがあります。また、法改正にもスムーズに対応できるのも大きな魅力です。大きな変革の時期を迎えた建設業界の現場の労務費の管理には、専用ソフトが今後欠かせないものになっていくでしょう。

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