建設業における損益計算書とは?勘定項目や記載するときの注意点を解説

建設業 損益計算書

建設業では、工事の完成までに時間がかかることもあるため、利益や損失の計算方法が他の業種と異なる部分があります。そのため、損益計算書の勘定科目も建設業特有の項目が採用されます。しかし、そういった点について十分に理解できていないと不安になる人も多いのではないでしょうか。今回の記事では建設業における損益計算書について解説します。勘定科目や記載時の注意点を解説しますので、最後まで読んで参考にしてみてください。

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建設業における損益計算書とは

建設業における損益計算書は、建設業法施行規則において、別記様式「第十六号」として様式が定められています。そのため、損益計算書を作成する際は、第十六号様式に則って記載しなければいけません。建設業法における、損益計算書を含む財務諸表は税法上の決算書とは異なります。それぞれの違いを理解した上で建設業法で定めらえた規則に従って損益計算書を作成することが重要です。

建設業における損益計算書の勘定項目

  • ここでは、建設業における損益計算書で採用されている勘定科目を解説します。次の13項目を一般的な業種との違いを含めて解説するので、損益計算書の理解を深める参考にしてください。
  • 売上高
  • 売上原価
  • 純利益
  • 販売費及び一般管理費
  • 営業利益
  • 営業外収益
  • 営業外費用
  • 経常利益
  • 特別利益
  • 特別損失
  • 税引前当期純利益
  • 法人税等
  • 当期純利益

売上高

建設業における損益計算書の「売上高」は、次の2つの項目から構成されています。

  • 完成工事高
  • 兼業事業売上高

完成工事高は、完成した建設工事の売上高を指します。工期が長い工事は、期中出来高相当額として工事進行基準に基づいて計上します。兼業事業売上高は、建設工事と直接関わらない事業の売上高です。例えば、点検や資機材の販売額が兼業事業売上高にあたります。

売上原価

建設業における損益計算書の「売上原価」は、工事に関係する全ての費用が該当します。売上原価には、材料費や労務費、外注費などが含まれます。売上原価は、完成工事高に対する「完成工事原価」と、兼業事業売上高に対する「兼業事業売上原価」に分けなければいけません。工事が完成していない分の原価については、「未完成工事支出金」として次年度に繰り越して計上します。

総利益

建設業における損益計算書の「総利益」は、売上高から売上原価を引いた金額を指します。建設業の場合、完成した工事分と建設工事以外による総利益をそれぞれ計算しなければいけません。計算式としては、以下の通りです。

  • 完成工事総利益 = 完成工事高 – 完成工事原価
  • 兼業事業総利益 = 兼業事業売上高 – 兼業事業売上原価
  • 売上総利益 = 売上高 – 売上原価

なお、計算の結果、マイナスになる場合は「総損失」となります。

販売費及び一般管理費

建設業における損益計算書の「販売費及び一般管理費」は、売上を上げるためにかかった間接的な費用です。工事には直接関係しないものの、建設会社を運営する上で必要な費用が該当します。販売費及び一般管理費には、次の費用が含まれます。

  • 役員報酬
  • 従業員給料手当
  • 退職金
  • 法定福利費
  • 福利厚生費
  • 修繕維持費
  • 事務用品費
  • 通信交通費
  • 動力用水光熱費
  • 調査研究費
  • 広告宣伝費
  • 貸倒引当金繰入額
  • 貸倒損失
  • 交際費
  • 寄付金
  • 地代家賃
  • 減価償却費
  • 開発費償却
  • 租税公課
  • 保険料
  • 雑費

営業利益

建設業における損益計算書の「営業利益」は、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた金額です。売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた結果、マイナスになる場合は、営業損失となります。売上総利益が多額でも、間接費である販売費及び一般管理費が上回る場合、赤字になることを把握しておきましょう。

営業外収益

建設業における損益計算書の「営業外収益」は、本業以外の営業活動によって生じた収益を指します。営業外収益に該当する勘定科目は、次の通りです。

  • 受取利息
  • 有価証券利息
  • 受取配当金
  • 有価証券売却益
  • 雑収入

上に挙げた事例からも分かる通り、何らかの形で得た利息は営業外収益となります。どの勘定科目にも当てはまらない収入は、雑収入として扱われます。

営業外費用

建設業における損益計算書の「営業外費用」は、本業以外の営業活動によって生じた費用を指します。営業外費用に該当する勘定科目は、次の通りです。

  • 支払利息
  • 社債利息
  • 貸倒引当金繰入額
  • 貸倒損失
  • 株式交付費償却
  • 社債発行償却
  • 創立費償却
  • 開業費償却
  • 有価証券売却損
  • 有価証券評価損
  • 雑損失

何らかの形で支払った利息は営業外費用となります。営業外収益と同様に、どの勘定科目にも当てはまらない費用が、雑損失です。

経常利益

建設業における損益計算書の「経常利益」は、営業利益に営業外収益を加えて、営業外費用を差し引いた金額です。計算式としては、以下の通りです。

  • 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用

本業で順調に利益を計上できても、支払う利息が多かったり償却費用が多かったりすると、経常損失となることもあります。そのため、本業で確実に利益を積み上げ、営業外費用は減らしていくことが建設業を営む上で重要です。

特別利益

建設業における損益計算書の「特別利益」は、該当する会計期間で臨時的に発生した利益を指します。固定資産売却時に得た利益や長期保有している証券の売却益、保険による差益が該当します。また、前期以前の決算書で間違いがあった場合、修正で発生する利益である「前期損益修正益」も特別利益です。特別利益は通常では発生しない勘定科目のため、扱いには注意が必要です。

特別損失

建設業における損益計算書の「特別損失」は、特別利益同様に該当する会計期間で臨時的に発生した損失です。前期以前の決算書の修正の結果、損失が発生した場合「前期損益修正損」として特別損失に計上しなければいけません。また固定資産や長期保有している証券の売却により損失が発生した場合も、特別損失として扱います。災害による損失や損害賠償が発生した際も特別損失に含めなければいけません。

税引前当期純利益

建設業における損益計算書の「税引前当期純利益」は、経常利益に特別利益を加えて、特別損失を差し引いた金額です。計算式としては、以下の通りです。

  • 税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 – 特別損失

経常利益までは順調に利益を積み重ねていても、災害や損害賠償といった特別損失によって税引前当期純損失に傾くことは珍しくありません。しかし、そうした損失は一時的で、蓄えがあれば賄える部分もあります。

法人税等

建設業における損益計算書の「法人税等」は、文字通り支払う税金です。法人税等には、法人税の他に次のような金額が含まれます。

  • 住民税
  • 事業税
  • 法人税等調整額

中でも「法人税等調整額」は、税法の規定と会計処理を調整するための金額です。税法上の利益や費用と会計上の収益や費用が異なる場合、法人税等調整額で調整を行います。

当期純利益

「当期純利益」は、税引前当期純利益から法人税と住民税、事業税を差し引き、法人税等調整額を加えた金額です。計算式としては、以下の通りです。

  • 当期純利益 = 税引前当期純利益 – 法人税 – 住民税 – 事業税 ± 法人税等調整額

当期純利益がプラスだからと言っても、事業そのものが好調とは限りません。なぜなら、特別利益や営業外収益が含まれるからです。そのため、建設業での業績を分析する際は、営業利益に注目しましょう。

損益計算書を記載するときの注意点

建設業において損益計算書を作成する際、いくつか注意点があります。ここでは、その注意点を次の5つに分けて解説します。損益計算書を作成する時は、解説する注意点を踏まえて計算しましょう。

  • 売上高の注意点
  • 売上原価の注意点
  • 販売費及び一般管理費の注意点
  • 営業外収益の注意点
  • その他の注意点

売上高の注意点

建設業で売上高を計算する際は、次の2つの基準のいずれかに沿って計上しなければいけません。

  • 工事完成基準
  • 工事進行基準

工事完成基準では、引き渡しまでが完了した工事の利益と原価を計上します。工事完成基準では、工事に関する全ての利益と減価を計上しているかに注意が必要です。
工事進行基準は、決算日における工事の進行状況に応じて利益と原価を計算する方法です。工事進行基準では、請負金額や原価の見積額に変更がないかに注意しなければいけません。

売上原価の注意点

売上原価を計算する際、工事原価の部分で特に注意が必要です。工事原価は「完成工事原価報告書」に記載されるため、必ず記載金額と一致しなければいけません。売上原価には未完成の工事分も含まれるため、完成した工事分とは分けて計算し、後から合算する必要があります。損益計算書の完成工事原価と完成工事原価報告書の完成工事原価の金額に差があった場合、必ず原因を調査しなければいけません。

販売費及び一般管理費の注意点

先ほど、販売費及び一般管理費を構成する勘定科目をまとめて紹介しました。厳密には販売に関わる交通費や広告宣伝費は販売費に、役員報酬や福利厚生費は一般管理費に分類されます。そのため、それぞれの費用の分け方を正しく把握しておくことをおすすめします。損益計算書に販売費及び一般管理費を記載する際、総額の10分の1を超える勘定科目は科目名の表示が必要です。

営業外収益の注意点

営業外収益を計上する際、販売費及び一般管理費と相殺できる部分はないかを確認しましょう。なぜなら、似たような勘定科目同士で相殺できるケースもあるからです。例えば、販売費及び一般管理費で地代家賃を計上し、営業外収益で受取家賃を計上している場合があります。地代家賃を受取家賃で相殺できれば、営業利益の増加につながります。他にも相殺できるものがないかを確認し、少しでも利益が増やせないかチェックしてみましょう。

その他の注意点

損益計算書を作成する際は、必ず最終的に当期純利益又は当期純損失を計上します。当期純利益や純損失を計上するまでには、総利益や営業利益など数多くの段階を踏まえなければいけません。段階ごとに計上する勘定科目が異なり、ややこしく感じることもあります。しかし、1ヶ所でも記入を誤ってしまうと、全体で見直しを行わなければいけません。そうなれば大変な手間がかかるため、損益計算書を作成する際は、1つ1つの勘定科目を確実に記入しましょう。

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建設業における損益計算書は、他の業種と作成方法が異なります。また、税法と建設業法においても扱いが異なるため、建設業における損益計算書の作成は手間がかかる業務です。しかし、今回解説した内容を把握すれば、損益計算書の作成がスムーズになります。勘定科目の意味や計算の方法を正しく理解し、正確な損益計算書の作成に努めてください。
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