建退共とCCUSのデータ連携とは?一括作業方式で行う手順も解説

建設業でのキャリアアップを支援するためのシステム「CCUS」は、あらゆる形で労働者の人生に貢献しています。建退共(退職金制度)との連携もその1つで、適切かつスムーズな支給を実現しています。

一方で、建退共とCCUSのデータ連携にはさまざまな課題があり、建設会社は現状の課題を把握したうえで、労働者が安心してキャリアを積める環境を整えなければなりません。

今回は、建退共とCCUSの課題やデータ連携の方法などについて、わかりやすく解説します。

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建退共の実情

令和6年3月末現在で、建退共の共済契約者数は174万6,473社、被共済者は212万2,814人となっています。そのなかで、CCUSに建退共の情報を登録しているのは約45万人ほどとなり、これは全体の3割程度の数値です。共済者の約20%にとどまっているため、現状は建退共とCCUSの連携による恩恵を得られていない人が多いと言えるでしょう。

さらに、建退共の充当方式の傾向は変わらないままで、掛け金納付の約90%が手帳を利用しての証紙充当を選択し、残り10%が電子申請を行っています。「証紙貼付方式になれているから」という理由で、電子申請を避ける人が多いです。

建設会社からしても、元請け会社や協力会社すべてが足並みを揃えて電子化を進めることは難しく、結果的に従来の方法に頼らざるを得ない状況があると考えられます。

建退共の電子申請とは

建退共の電子申請とは、退職金ポイント(電子掛金)による掛金納付を可能とするシステムです。退職金ポイントは事前に事業者がペイジーもしくは口座振替で購入し、原則月単位で就労実績に応じた掛金を納付する仕組みになっています。

就業履歴をCCUSポータルとデータ連携することで、掛金充当に活用可能です。電子化によって従来の「証紙貼付方式」からシステムが切り替わり、作業の省略や効率化につながると期待されます。

建退共とCCUSのデータ連携とは

建退共とCCUSのデータ連携における基本的な仕組みを把握していないと、建設会社は環境整備など具体的な行動に移るのが難しくなるでしょう。

そこで以下では、建退共とCCUSのデータ連携における3つの方式について解説します。

一括作業方式

「一括作業方式」とは、元請事業者もしくは元請事業者と一次事業者が、一括して対応する方式です。

2022年8月より供用が始まった制度であり、CCUSから就業履歴などをダウンロードして、 就労実績報告作成ツールを使って作成した就労実績を用いて建退共の掛金納付を可能とします。

下請個別作業方式

「下請個別作業方式」とは、下請事業者がCCUSに蓄積された就業履歴を、個々にダウンロードして、就労実績報告作成ツールを使って上位事業者に就労実績を報告する方式です。

個々の下請事業者から元請事業者に就労実績が集まるため、一括して建退共の掛金納付が可能となります。

R方式

「R方式」とは、元請事業者が何らかの理由によってCCUSに登録されていない就業履歴がある場合に、建退共の電子申請で作成した就労実績を使って登録を行う機能です。

例えば、現場にカードリーダーが設置されていないケースや、就業時の認証漏れなどによって、就業履歴がCCUSに登録されない可能性があります。

【工事契約締結後】建退共とCCUSのデータ連携を一括作業方式で行う手順

建退共とCCUSのデータ連携を、工事契約締結後に一括作業方式で行う際には、基本となる手順があります。

以下では、工事契約締結後に建退共とCCUSのデータ連携を一括作業方式で実施する基本的な流れ・手順について解説します。

1.就労ツールをダウンロード・初期設定する

建退共とCCUSのデータ連携を行うには、まず「建退共ホームページ」にアクセスして就労ツールをダウンロードします。その際にはWindows10以上のOSが必要になるため、事前のアップグレードは必須です。

「電子申請方式について」から「就労実績報告作成ツール」を選択し、「就労実績ツールをダウンロード」を押下します。ツールが封入されているZIPファイルを開いたら、「共済契約者番号」を入力してダウンロードを開始します。

利用方法の選択と会社情報登録を行うために、「新規登録を始める」から「元請・一次下請作業方式版を利用する」を選び、共済契約者番号やCCUS事業者IDなど必要項目を入力します。

一括作業方式で就業履歴等データを取り込むには、支店(支社)コードを「000」に設定する必要があります。1つの就労ツールだけで、で通常版と一括版の機能を同時には使えないため、別途ツールを用意しなければなりません。

2.建退共連携設定を行う

ツールのダウンロードが終わったら、CCUSで建退共連携の設定を行います。元請一括作業方式、および一次下請一括作業方式で建退共と連携する際には、こちらの設定が必須です。

「840_建退共連携」を開いて「10_電子申請現場設定」を表示することで、事業者責任者、第一階層管理者、第二階層管理者、第三階層管理者、現場管理者(管理者権限)を登録可能となります。

「登録」ボタンを押して管理者の登録が完了したら、「10_電子申請現場設定」を押して「電子申請現場設定画面」に移ります。自社が元請事業者である全現場を対象に、検索した内容にマッチするものが「現場一覧」に表示されます。

検索は「現場ID」「現場名」「現場事務所住所」の情報をもとに、確認が可能です。また、検索条件を入力しないで検索することで、「建退共連携を設定していない現場情報」が表示されます。

表示された現場ごとに、「元請一括」「一次一括」のどちらかにチェックを入れて、「決定」を押します。登録が問題なく完了すると、電子申請現場設定の一覧に情報が表示されます。

出力方法などに間違いが合った場合には、「削除」を押してから再度登録が可能です。設定済みの現場データを削除できるのは、元請事業者の事業者責任者・現場設定担当者のみです。

3.現場・契約情報を出力する

上記手順で登録した現場データは、CSVデータで出力可能です。就労ツールで各種作業を行うには、まずデータ出力が必要になります。出力方法は登録した現場の登録内容を確認し、CSV出力を押すことで完了です。

4.就労ツールに現場・契約情報を取り込む

CCUSで出力したファイルは、就労ツールに取り込みます。CSVファイルをドラッグ&ドロップ・ファイル選択で、「CCUS現場・契約情報ファイル取込」から入力します。一括作業方式を使用する際には「現場IDを使う」を押します。一括作業方式の場合には、「工事情報の工事コード」と「現場ID」は同じでなければなりません。

続いて、工事期間の開始日に「工事契約日」を設定します。終了日に関しては空欄でも問題ありません。

締日の欄は一括作業方式を使用する場合、月末に設定します。内容を確認して間違いがなければ、「取込実行」を押して実行します。

5.就労ツールで工事情報ファイルを作成する

就労ツールに入れたCCUS現場・契約情報ファイルは、工事情報ファイルとして電子申請専用サイトに登録しなければなりません。

就労実績報告作成ツールから「電子申請用」を押し、「電子申請ファイルの作成」から「工事情報ファイルの作成」に移行します。

CCUSから取り込んだ現場・契約情報ファイルを選択し、ファイルの保存場所を指定して「作成する」を押します。

6.電子申請専用サイトに送信する

先の手順で作成したファイルは、電子申請専用サイトにアップロードする必要があります。まず建退共ホームページで「電子申請方式について」を押し、「電子申請専用サイト」を選択して別ページに移行します。

利用者IDとパスワードを入力し、工事情報ファイルをアップロードします。このときのログインは、就労ツールからでも可能です。

ファイル送信の流れは、「ファイルを選択する」を選択してファイルを入力し、取込むファイル名が表示されたことを確認したら、「取込開始」を押します。以上で、工事情報の登録作業は完了です。

【原則毎月】建退共とCCUSのデータ連携を一括作業方式で行う手順

建退共とCCUSのデータ連携は、原則毎月実施する必要があります。以下では、一括作業方式で行う際の基本的な手順を解説します。

1.CCUSにて就業履歴情報などのファイルを取り込む

毎月のデータは、CCUSから就業履歴情報等のファイルをダウンロードすることで入手できます。毎月9日までにCCUSに登録された就業履歴は、前月以前のデータとして現場ごとに自動で集計され、翌月10日に「帳票ダウンロード」の場所に格納されます。

ダウンロード方法はCCUSの「910_ダウンロード」から「10_帳票ダウンロード」を選び、連携している現場の帳票を確保します。現場IDや現場名など、各種データの情報を確認し、「ダウンロード」ボタンを押して実行します。

ダウンロードを決定したZIPファイルは「就業履歴蓄積期間(終了日)」の翌月まで作成され、180日間まで入手可能です。1度削除した帳票は、再ダウンロードできないため注意が必要です。

2.就労ツールに就業履歴情報などのファイルを取り込む

ダウンロードしたファイルは、続いて就労ツールに取り込みます。就労実績報告ツールで、元請事業者がファイル取込するのなら「元請用」を選択します。一次下請事業者がファイルを使う場合には、「一次下請用」を使用します。

CCUSのファイル取込ページにて、取り込むファイルを選択し、内容確認ボタンを押して、確認結果がすべて「OK」になっていることをチェックします。

「フォルダ選択」を押して、取り込むレポートの保存先を決めます。レポートがZIP形式で出力・保存されていることを確認したら、「取込実行」のボタンを押します。

取り込んだ就業履歴情報は、ツールの「(2)選択」から、該当工事に名前を切り替えて、「就労実績報告データ作成・受渡」を選択し、「就労実績報告作成・編集」から就労実績入力(工事別)の画面に移行することで確認可能です。

一次事業者は元請事業者にファイルを提出する

一次下請一括作業方式では、一次事業者がファイル取込後、元請事業者に就労実績ファイルを提出する必要があります。

ツールの「(2)選択」で工事名を変更し、「就労実績報告データ作成・受渡」から「就労実績報告受渡(データ取込・出力)」を経由して、「ファイル出力(直上会社への就労実績提出)」を選択します。その後ファイルの保存先を決定し、「作成する」のボタンを押せば作業は完了です。

元請け事業者は各一次事業者の就労実績ファイルを取り込む

元請け事業者の場合、各一次事業者の就労実績ファイルを取り込んで保管する必要があります。こちらも「(2)選択」で工事名の選択後、「就労実績報告データ作成・受渡」から「就労実績報告受渡(データ取込・出力)」を選び、「ファイルの取込(下請け会社からの就労実績取込)」を押します。

一次下請事業者から提出されているファイルを選択し、内容の確認後に「取込実行」を選択して終了です。

3.就労ツールで就労実績ファイルを作成する

就労ツールで取り込みをしたファイルは、電子申請専用サイトに就労実績ファイルとして登録する必要があります。まずはツールで就労実績ファイルの作成から、取り込んだファイルに格納されている工事情報を選択します。

あとはファイルの保存先を設定して「作成する」を押せば、ファイル作成は完了です。

4.電子申請専用サイトに送信する

最後に出力した就労実績ファイルを、電子申請専用サイトにアップロードをします。アップロードはツールもしくは建退共ホームページから、ログインをして行います。

「就労報告」のタグにある「就労実績報告(申請)」を選び、「登録(ファイル取込)」からファイルを選択し、「取込開始」を押下することで申請作業は終了します。

就労実績の登録を完了させるには、申請から2日営業日後に承認をしなければなりません。

建退共とCCUSのデータ連携の課題

建退共とCCUSのデータ連携においては、作業量の増加が大きな課題となっています。現状、電子決済を行うにはCCUSから必要なデータファイルを入手し、専用ツールで読み取りできるデータに変換し、そこから電子申請の手続きを行わなければなりません。

煩雑な流れになっているため、結果的に従来の証紙貼付方式よりも、作業量が増えて手間がかかるという問題に直面しています。今後はいかにデータ連携の手間を減らし、誰でも使いやすい環境を整備できるかがポイントになると考えられます。

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【まとめ】建退共とCCUSのデータ連携手順を把握しスムーズに手続きしよう

建退共とCCUSのデータ連携は、各種申請を電子化するうえで重要なプロセスとなります。データ連携を行ったことで、労働者はこれまで以上に自身のキャリアを意識して働けるようになり、結果的に建設業界の活性化につながると考えられます。

一方で、建退共とCCUSのデータ連携は作業の煩雑さなど、課題を抱えているのも事実です。建設会社は建退共とCCUSのデータ連携の方法を把握しつつ、今後システムがどのように改善されていくのかチェックしていくことが重要です。

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