施工不良が原因のやり直し工事を求められた際の対応や保険などを解説

建築工事において、やり直しを求められるのは決して珍しいことではありません。施工ミスが発生すると、工事の品質や安全性に影響を及ぼし、発注者からの信頼も損なわれてしまいます。

しかし、やり直し工事のすべてが施工不良によるものではなく、施主の主観的な理由によるケースも存在します。そのため、やり直し工事を求められた際には、適切な対応を取ることが大切です。

今回は、施工不良によるやり直し工事について、発生した際の対応や必要な保険について詳しく解説します。施工業者としてどのように対応すればよいのか、また、費用負担の考え方や活用できる保険についても紹介するので参考にしてください。

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やり直し工事とは

建築やリフォーム工事において、施工完了後に修正や再施工が必要になることがあります。このような「やり直し工事」は、大きく分けて「施工不良が原因となるもの」と「施主の主観的な要望によるもの」の2種類に分類できます。

このうち施工不良によるやり直しは、建築基準を満たしていない場合や、契約内容と著しく異なる仕上がりになっている場合に発生します。

一方で、施主の好みや主観的な判断でやり直しを求められることもありますが、こちらはそのすべてに対応する必要はありません。

やり直し工事の要否を判断するには、施工不良かどうかを正しく見極めることが重要です。それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

施工不良によるやり直し工事

やり直し工事のうち施工不良が原因となるものは、工事会社のミスや施工ミスによるものです。例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 設計通りに施工されていない
  • 建築基準法や安全基準を満たしていない
  • 明らかに品質に問題がある(ひび割れ、傾斜、配線ミスなど)
  • 使用した材料が契約と異なっている

このような施工不良がある場合、発注者からやり直しを求められるのは当然のことであり、工事会社が責任を持って対応しなければなりません。

特に、建築基準法や安全性に関わる不具合がある場合は、法的な問題にも発展するおそれがあるため、早急な対処が必要です。

また、施工ミスが発生した場合は、原因を特定し、再発防止策を講じることも大切です。単なるやり直しだけでなく、なぜ施工不良が発生したのかを明確にし、今後の工事に活かすようにしましょう。

施主の心情によるやり直し工事

一方で、施主の主観的な要望によるやり直し工事は、施工不良とは異なります。例えば、以下のようなケースが該当します。
完成したもののイメージが違った
デザインや色合いが思った通りではなかった
契約内容には問題がないが、もっといいアイディアが浮かんだ

このような理由によるやり直しは、施工不良ではなく発注者の主観的な判断によるものなので、工事会社が無条件で対応する義務はありません。つまり、契約通りに工事が行われている場合、追加のやり直し工事を請け負うかどうかは、施工業者の判断によるということになります。

ただし、施主との関係性を重視する場合や、追加費用を請求する形で対応できる場合には、交渉の余地があるでしょう。その際には、事前に書面で変更内容や費用負担について合意を取ることが重要です。

やり直し工事を求められた場合は、まずその原因が施工不良なのか、施主の主観的な要望なのかを正しく見極めた上で、適切に対応するようにしましょう。

施工不良が原因のやり直し工事を求められた際の対応

施工不良が発生してやり直し工事を求められた場合ですが、無闇にやり直しを受け入れるのではなく、適切な対応を行いましょう。特に、施主からの指摘内容を正確に把握し、施工業者としての責任範囲を明確にすることは最重要です。
また、やり直し工事の対応は、まず指摘された箇所の確認から始まり、必要性の検討、施工不良の原因特定、そしてやり直し工事の計画・実施という流れで進めます。
それぞれのステップについて詳しく解説します。

やり直し工事の場所を確認する

やり直し工事を求められた際、まずは施主からの指摘を確認します。具体的にどの部分が問題視されているのかを把握し、施工ミスによるものなのか、施主の主観的な要望によるものなのかを判断しましょう。

この際は、現場を直接確認することが望ましく、可能であれば施主と施工業者が一緒に該当箇所を確認することが大切です。

また、写真を撮影して記録を残し、証拠として活用できるようにしてください。そして、施工内容と契約書、設計図面を照らし合わせ、どの程度の不具合があるのかを正確に把握する必要があります。

その結果、施主の指摘が施工不良に該当する場合は、速やかに原因を究明し、適切な対応策を検討することが重要です。

やり直し工事の必要性を検討する

指摘された箇所の確認が終わったら、やり直し工事が本当に必要かどうかを慎重に判断します。すべての指摘に対して無条件でやり直しを行うのではなく、施工不良によるものなのか、許容範囲内の仕上がりなのかを見極めることが大切です。

具体的には、施工ミスによるものか、施主の主観によるものかを分けて考えます。建築基準や契約内容に違反している場合は、施工業者の責任でやり直しが必要ですが、施主の好みや個人的な感覚による指摘であれば、やり直しに応じる義務はありません。

また、やり直し工事を行う場合には、追加費用が発生するのかどうか、誰が負担するのかについても明確にしておく必要があります。

施工不良の原因を特定する

やり直し工事が必要と判断された場合は、その原因を特定することが大切です。これは、施工不良の原因が明確にならないままやり直しをしても、同じ問題が再発するおそれがあるためです。

原因の特定には、施工中の記録や作業工程を振り返り、どこに問題があったのかを分析しましょう。考えられる原因としては、以下のようなものがあります。

  • 設計ミスや計画段階での不備
  • 作業員の技術的な問題や確認不足
  • 使用材料の品質不良
  • 環境要因(天候や施工環境など)

原因を特定した上で、同じ問題が起こらないように対策を講じることが大切です。

やり直し工事を連絡・実施する

やり直し工事が必要だと判断された場合、速やかに施主へその旨を説明し、合意を得て工事の計画を立てましょう。この際、工事のスケジュールや方法を明確にし、施主に説明した上で実施に移ることが大切です。

また、工事の詳細や修正内容を文書化し、施主と合意を取ることが望ましいです。そして、やり直し工事の完了後には、施主に確認してもらい、問題が解決されたことを正式に報告します。

このように、やり直し工事を進めるためには、施主との円滑なコミュニケーションが欠かせません。説明不足によるトラブルを避けるためにも、契約内容や施工基準に沿った対応を心がけましょう。

施工不良が原因のやり直し工事が発生した際の対応

施工不良が原因でやり直し工事が発生した場合、迅速かつ適切な対応が必要です。そのまま放置すると、施主とのトラブルに発展するだけでなく、施工業者の信用問題にも関わるでしょう。

やり直し工事を求められた際には、まず施工不良の有無を確認し、必要に応じて工事を実施するかどうかを判断します。施主との交渉や、費用負担の明確化も重要なポイントです。また、判断が難しい場合は、専門家に相談しながら対応を進めるといいでしょう。

ここでは、やり直し工事を実施する際の具体的な手順や、施主との話し合いの進め方、専門家の活用について解説します。

やり直し工事を行う

施工不良が明らかであり、やり直し工事が必要と判断された場合は、速やかに対応しましょう。瑕疵(かし)が発生しているにもかかわらず適切な対応を怠ると、施主との信頼関係が損なわれるだけでなく、法的な責任を問われるおそれもあります。

やり直し工事を行う際には、以下の点を意識することが大切です。

  • 施工不良の具体的な内容を把握し、施主に明確に説明する
  • やり直し工事の範囲と方法を決定する
  • スケジュールを調整し、可能な限り早急に対応する

また、やり直し工事の実施後には、施主とともに最終確認を行い、問題の解決を記録に残すことも重要です。

判断に迷った場合は専門家に相談する

やり直し工事が本当に必要なのか、責任の所在がどこにあるのかなど、判断に迷うケースもあるでしょう。そのような場合は、施工業者だけで判断せず、専門家の意見を求めることが大切です。

特に、施主との意見が食い違い、トラブルに発展しそうな場合は、建築問題に詳しい弁護士や建築士に相談することで、適切な対応策を見出せる可能性があります。
専門家に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • 法的な観点から、施工業者としての責任範囲を明確にできる
  • 契約内容に基づいた適切な対応が取れる
  • 施主との交渉をスムーズに進められる

やり直し工事の実施前に、慎重な判断が必要になった場合は、早めに専門家の意見を仰ぐことをおすすめします。

施主と話し合う

施工不良によるやり直し工事を進める際、施主との話し合いは不可欠です。施工業者としての対応範囲を明確にするのはもちろん、施主の要望を理解することで、トラブルを未然に防げるのです。やり直し工事に関する誤解や認識のズレを解消し、双方が納得できる形で進められるように努めましょう。

ここでは、やり直し工事を施主と話し合う際の具体的な進め方について解説していきます。交渉をスムーズに行うために、やり直し工事の内容を明確にする方法と、合意事項を書面に残す重要性を詳しく見ていきましょう。

やり直し工事内容を話し合う

やり直し工事を行う場合、まず施主と工事の詳細について話し合うことが大切です。施主がどのような点に不満を抱いているのかを正確に把握し、施工業者としてどの範囲まで対応できるのかを説明することで、認識のズレを防ぎましょう。

話し合いの際には、以下の点を明確にする必要があります。

  • 施工不良の具体的な内容
  • やり直し工事の方法と範囲
  • 工事にかかる期間とスケジュール
  • 費用負担の明確化(追加費用の有無など)

施主の要望が合理的なものであればできる限り対応することが望ましいですが、契約内容を超える変更要求には慎重に対応しなければなりません。特に、施主の主観的な理由によるやり直し工事の場合は、追加費用が発生する可能性があるため、事前にしっかりと説明を行いましょう。

また、話し合いの際には、感情的な対立を避けるためにも、冷静かつ論理的な対応を心がけることが重要です。施主が納得する形で進めることで、信頼関係を維持しながら円滑にやり直し工事の実施ができます。

やり直し工事内容を書面に明記する

施主との話し合いがまとまったら、やり直し工事の内容を正式な書面に残しましょう。口頭での合意だけでは、後になって「言った・言わない」のトラブルにつながるおそれがあるため、契約書や覚書として記録に残すことが大切です。

書面には、以下の内容を明記する必要があります。

  • やり直し工事の対象箇所
  • 修正・再施工の具体的な方法
  • 工事の完了予定日とスケジュール
  • 施工業者・施主それぞれの責任範囲
  • 費用負担の取り決め(追加費用の有無など)

また、書面には施主と施工業者ともに署名・捺印をし、正式な合意書として取り交わすことをおすすめします。こうすることで、万が一トラブルが発生した際にも、書面をもとに冷静に対処できるようになるでしょう。

さらに、工事の進行中に施主から新たな要望が出た場合も、書面で合意を取り直すことが大切です。その都度記録を残すことで、後々のトラブルを最小限に抑えられます。

このように、やり直し工事の際には、施主との円滑な交渉と明確な記録を徹底することが、スムーズな対応の鍵となるでしょう。

施工不良でやり直し工事が発生した際の費用負担

施工不良によるやり直し工事が発生した場合、費用負担をどこが負うのかも重要な問題になります。工事の不具合が施工業者の責任によるものか、下請け業者の施工ミスによるものかによって、費用負担の考え方が異なります。

また、下請け業者に対して一方的に費用を請求することは、法律上問題となるおそれがあるため、慎重な対応が必要です。

ここでは、下請け業者に費用負担を求められるケースと、請求する際の注意点について詳しく解説していきます。

下請け業者に費用負担を請求できるケース

施工不良の原因が明確に下請け業者にある場合、元請け業者はやり直し工事にかかる費用を請求することが可能です。ただし、下請け業者がすべての施工不良に対して責任を負うわけではなく、工事の責任分岐を明確にした上で判断する必要があります。

下請け業者に費用負担を求められるケースとしては、以下のような状況が挙げられます。

  • 下請け業者の施工ミスが原因で発生した不具合
  • 契約上、下請け業者の責任範囲と明記されている事項に該当する場合
  • 適切な施工指示を受けていたにもかかわらず、下請け業者の判断で工事を変更し、不具合が発生した場合

一方で、元請け業者の管理不足が原因である場合や、施工不良の責任が明確でない場合には、下請け業者に一方的な負担を求めることはできません。特に、設計ミスや元請け業者の指示ミスによる不具合は元請け業者の責任となるため、下請け業者に請求することはできないのです。

費用負担をめぐるトラブルを防ぐためには、契約時に責任の範囲を明確に定めておくことが重要です。施工契約の内容を事前に確認し、双方の責任分担を明確にした上で、やり直し工事を進めるようにしましょう。

下請業者に一方的な費用負担を請求することは違法

元請け業者が下請け業者に対して施工不良の責任を一方的に押し付け、無償でやり直し工事を求めることは、法律上問題となるおそれがあります。

無償でのやり直しを強要することは、下請法(下請代金支払遅延等防止法)に違反する可能性があり、トラブルに発展するケースもあります。特に以下のようなケースでは、元請け業者側の責任が問われる可能性が高いです。

  • 設計や仕様に不備があり、その通りに施工した結果、不具合が発生した場合
  • 元請け業者の管理不足により、施工ミスが発生した場合
  • 契約書に明記されていない内容を根拠に、やり直し工事の費用負担を求めた場合

施工不良のやり直し工事を行う際には、まず責任の所在を明確にし、適切な対応を取ることが大切です。費用負担を巡るトラブルを避けるためにも、下請け業者との契約内容を事前に確認し、話し合いを通じて解決策を探るようにしましょう。

やり直し工事に適用できる保険

施工不良によるやり直し工事が発生した場合、その費用をどのように補填できるのかを事前に確認しておくようにしましょう。建築業界で利用できる保険は色々ありますが、やり直し工事に適用できるものと、そうでないものがあります。

特に、PL保険(生産物賠償責任保険)は建築業界でも広く利用されている保険ですが、やり直し工事の費用を補償するものではありません。そのため、施工業者がやり直し工事に備える場合は、適切な特約を付帯する必要があるのです。

ここでは、PL保険の適用範囲と、やり直し工事に適用可能な「生産物特約」について詳しく解説します。

PL保険

PL保険(生産物賠償責任保険)は、施工業者が施工した建物や設備が原因で第三者に損害を与えた場合に適用される保険です。しかし、施工不良によるやり直し工事には適用されません。

PL保険は、以下のようなケースで補償対象となります。

  • 施工後に発生した事故や不具合により、第三者がケガをした
  • 建築物の欠陥が原因で、施主や近隣住民の所有物に損害が発生した
  • 設備の不具合によって、火災や水漏れが発生した

一方で、施工不良そのものや、その修正のために発生するやり直し工事の費用はPL保険の補償対象外です。これは、PL保険が施工業者自身のミスを補償するものではなく、あくまで施工物によって生じた「第三者への損害」に対して適用される保険だからです。

そのため、やり直し工事のリスクに備えるには、PL保険だけでは不十分。別途「生産物特約」のような補償を検討する必要があります。

生産物特約

生産物特約は、施工不良によるやり直し工事の費用を補填できる保険の1つです。通常のPL保険では施工ミス自体に対する補償は含まれませんが、生産物特約を付帯することで、施工不良によるやり直し工事の一部費用をカバーできる場合があります。

生産物特約が適用されるケースには、以下のようなものがあります。

  • 施工後に発覚した不具合を修正するためのやり直し工事
  • 使用した材料や設備の不良が原因で、修繕が必要になった場合
  • 施工ミスが原因で発生したトラブルの再工事

ただし、生産物特約が適用されるかどうかは、保険会社や契約内容によって異なるため、加入時に補償範囲を詳しく確認することが大切です。

また、生産物特約でも、故意のミスや重大な過失による施工不良は補償対象外となる場合があるため、保険内容の詳細を把握しておくようにしましょう。

施工業者としては、やり直し工事のリスクに備え、PL保険と生産物特約を組み合わせて加入し、万が一の際に適切な補償を受けられるようにしておくことをおすすめします。

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【まとめ】施工不良が原因で発生したやり直し工事にはきちんと対応しよう!

施工不良によるやり直し工事が発生した場合、迅速かつ適切に対応することが大切です。まずは施主の指摘を確認し、施工不良が実際に発生しているか判断しましょう。やり直しが必要な場合は、施主と話し合い、工事内容や費用負担を明確にすることが重要です。

また、施工不良の責任が下請け業者にある場合でも、一方的に費用負担を求めることは適切ではありません。事前に契約内容を確認し、法的リスクを回避するようにしましょう。やり直し工事のリスクに備えるためには、PL保険だけでなく、生産物特約などの活用も検討するようにしてください。

施工不良のやり直し工事の際にも適切に対応すれば、施主との信頼関係を維持し、今後のトラブルを防ぐことができます。

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