工事安全衛生計画書とは?記載項目や作成する手順・注意点などを解説

工事安全衛生計画書

工事現場を安全に保つために必要なグリーンファイルの中の1つに「工事安全衛生計画書」があります。現場の仕事はリスクが高いので、安全や衛生を適切に管理することはとても重要です。今回は工事安全衛生計画書の概要や、記載項目、作成手順や作成するメリットまで徹底的に解説します。

工事安全衛生計画書とは

工事安全衛生計画書とは、作業現場に予想される事故やトラブルのリスクを抑え、安全に工事を進行するための行動や心がけを証明する書類です。安全への意識を作業員間で共有することで、現場の危機管理への意識を高める効果が期待できます。また、二次、三次と下請けがいる場合も、一次下請けがまとめて作成します。工事安全計画書について、以下の2つに分け詳細を説明しましょう。

  • 安全衛生計画書との違い
  • フォーマット

安全衛生計画書との違い

安全衛生計画と工事安全衛生計画書に記載する内容はほとんど変わりません。しかし、使用するフォーマットが異なります。安全衛生計画書は「参考様式」というフォーマットを利用するのに対し、安全衛生計画書は「全建統一様式」という全国建設業協会が定めた全国共通のフォーマットを使用します。

フォーマット

前述したように、工事安全衛生計画書は、基本的に全国建設業界が定めた「全建統一様式第6号」のフォーマットを利用します。しかし、元請け企業が独自のフォーマットを用意している場合は、そのフォーマットを使用しましょう。

工事安全衛生計画書の記載項目

工事安全衛生計画書は基本的に全建統一様式を使用しますが、元請け企業が指定するフォーマットでも記載すべき項目は基本的に変わりません。各項目の書き方や注意点について、以下で8つに分けて説明します。

工事安全衛生方針

施工する工事の現場で、安全と衛生を確保するための基本的な指針のことを、工事安全方針と言います。工事の内容に適し、自社の理念にも沿った方針をなるべく端的に記入します。

例えば、「事故発生のない現場にする」「規則と労働安全衛生法の遵守」など、基本的かつ重要な事項を書きましょう。

工事安全衛生目標

前述した工事安全衛生方針を守り、トラブルを回避するために取り組むべき行動を工事安全衛生目標欄に記入しましょう。

例えば「ヘルメット着用率100%を目指す」「工具の事前点検を徹底し、事故ゼロを目指す」「高所作業時は100%安全帯を身に着ける」など、客観的に目標の達成度が分かるように具体的な数値を用いて記入しましょう。

工種・工種別工事期間

工種とは「工事種別」の略称です。工程の中から、例えば「左官工事」「内装仕上げ工事」など、該当する工事の名称をそれぞれ記入しましょう。
工種別工事期間とは、工種に必要な期間のことで月単位で記入します。各工種に係る期間は、「⇔」で表していきます。
参考:国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)

資機材・保護具・資格の区分/その種類

工事現場で使用する資機材、保護具や資格について主要な事項を記載します。各記入欄に記載する項目の例は以下の通りです。

  • 主な使用機器設備 高所作業車、クレーンなど
  • 主な使用機器・工具 溶接機、ラチェット、ウェルダーなど
  • 主な使用資材 単管、合板など
  • 使用保護具 安全靴、ハーネス、ヘルメットなど
  • 有資格者・配置予定者 移動式クレーンの運転免許者など

日常の安全衛生活動

工事の期間中に従業員が取り組む活動を、箇条書きで記載します。例えば、「朝礼や終礼での安全への呼びかけ」「災害防止対策の話し合い」「現地KY活動」「指さし確認」など、行える活動を単語で羅列していきます。

危険性又は有害性の特定

工事を進める中で予想される危険性を記載していきます。作業区分欄には危険が予測される工事の内容を、予測される災害欄には想定される事故やトラブルを記入しましょう。例えば、「鉄骨の荷下ろし」に対して「トラックの荷台から鉄骨が転落する」など、場所や資材についてなるべく具体的に書くと良いでしょう。

リスクの見積り

先ほど想定した危険性や有害性のリスクがどれほどかを、「可能性」「重大性」「見積もり」「リスクレベル」の4項目に分けて記載します。

  • 可能性(度合) 危険が起こる可能性を、「1:ほとんどない」「2:可能性がある」「3:極めて高い」の3つの数値のいずれかで表現する。
  • 重大性(重篤度) 予想される危険の重大性を「1:軽微(不休災害)」「2:重大(休業災害)」「3:極めて重大(死亡・障害)のいずれかで表現する。
  • 見積もり 「可能性(度合)」と「重大性 (重篤度)」の数値の合計数を2~6の数値で表現。数字が高いほど危険性が高い。
  • リスクレベル 「見積もり」の数字をもとに、予測される危険への対策優先度を1~5の数字で表現する。

リスク低減措置内容の検討

前述した「リスクの見積り」の判定に基づき、リスクを提言するためにとるべき行動を、リスクが高いものから順に記載していきます。例えば、トラックの荷下ろしに対しては「玉掛が終わったら、荷台前あるいは後ろに移動し合図を行う」など、なるべく具体的な行動を記入しましょう。

工事安全衛生計画書を作成する手順

工事を行う中でリスクの高い作業、それに対する対策などを具体的に記入する工事安全衛生計画書は、安全への意識を高める効果があります。作成する際には、以下の3つの手順で行います。

  1. 工事安全衛生方針を設定する
  2. 工事安全衛生目標を設定する
  3. 工事スケジュールを設定する

1.工事安全衛生方針を設定する

企業の中で安全衛生管理に対する基本的な方針を定めます。例えば、「従業員間で声かけを徹底する」「安全衛生管理の法令や規制を遵守する」など、大まかなもので構いません。

工事安全衛生方針が定まったら厚生労働省の規定により、社内外に通知する必要があります。

参考:厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針

2.工事安全衛生目標を設定する

自社の現状や過去の安全管理の体制を分析し、安全衛生の管理を徹底するための課題を明確にし、改善するための目標を設定します。目標は客観的な視点で達成したか分かるように、記載する際は数値を用いてください。

例えば「設備や機械の事前点検率100%を目指す」など、%表記が分かりやすいでしょう。自社の衛生管理の現状が把握できないという方は、厚生労働省のサイトを参考にしてください。

参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト

3.工事スケジュールを設定する

目標を達成するためのスケジュールや実施事項を定めていきます。まず、重点的に取り組みたい施策を定め、そのための実施事項や施策ごとの担当者、スケジュール、留意点などを記入していきます。また、スケジュールを立てるだけでなく見直すための基準になる管理目標や、自己評価するためのスケジュールも立てて、フィードバックを行う体制を整えます。

工事安全衛生計画書を作成するメリット

自社の問題点を洗い出し、課題に対する目標を定め、達成のためのスケジュールを細かくたてる作業は決して簡単ではありません。これらの手間をかけてまで工事安全衛生計画書を作成するメリットを、以下で3つ紹介します。

  • 労災防止に繋がる
  • 安全衛生管理の方針を明確にできる
  • 現場での注意点が明確になる

労災防止に繋がる

高所での作業や危険を伴う機械を用いた作業が多い工事現場は、事故のリスクが高いことで知られています。事故が発生すれば工事は中断しますし、従業員への労災も発生します。しかし、工事安全衛生計画書を作成することで、作業に伴う危険や有毒性を把握でき、安全衛生の意識が高まるでしょう。その結果、労災事故の防止につながると考えられています。

安全衛生管理の方針を明確にできる

文章にして作業員や社外で共有することで、安全衛生管理の方針が明確になるというメリットもあります。「安全第一」と漠然とした目標を掲げるより「この作業のこのリスクにこのような対策で気を付ける」と具体的な方針を記すことで、作業員の安全への意識を高められると考えられます。

現場での注意点が明確になる

工事安全衛生計画書を作成し現場で共有することで、責任者間だけではなく作業員の間で安全衛生管理に対する意識が高まります。安全衛生を達成するためには、現場労働者の意識の向上が不可欠です。計画書にすることで、現場で注意すべき点が明らかになり、リスク管理への意識を向上します。

安全衛生計画の実施に役立つ取り組み

安全衛生計画は、日々同じ取り組みを繰り返すことで確実に実行されます。そのために、安全活動をパターン化し、ルーティーンとして日常の業務に取り組みましょう。

例えば、朝は「朝礼→安全ミーティング→作業開始前点検→安全工程の打ち合わせ」の4つの工程を終えてから必ず作業を開始する、終業後は必ず作業場を点検するなどを習慣化すると良いでしょう。

工事安全衛生計画書の注意点

工事安全計画書を作成することが目的になると、現場間での共有をつい怠りがちです。しかし、安全衛生計画は現場で確認できなければ意味がありません。ミーティングで確認する、休憩所に置き閲覧できる状態にするなどして作業員へ周知を徹底するよう心がけてください。

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【まとめ】工事安全衛生計画書を作り込み労災防止に活用しよう!

工事安全衛生計画書は、想定されるリスクに対する具体的な対策を示した、工事を安全に進めるための方針や目的が書かれた書類です。記入項目が多く、目標や対策も具体的な数値を用いて記載するため作成は簡単ではありません。

しかし、作成することで労災事故の防止や作業員の間の安全への意識の向上の効果があるため、結果としてトラブルのない工事の進行や工期の遵守にもつながるのです。自社の現状や課題をしっかりと把握し、適切な安全衛生計画を立ててください。

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