建設業の営業利益とは?目安や計算方法・高める方法などを解説

建設業に従事している人や事業を展開している人の中には、自社の営業利益が上がらないことに悩んでいる人も多いでしょう。売上げは上がっているのに利益が伸びない建設会社も数多く存在します。

今回は、建設業における営業利益に着目しました。建設業の営業利益の実態や平均利益率の目安、営業利益率の計算方法について詳細に説明します。

他にも営業利益が低い原因や営業利益率を高める方法についても解説しますので参考にしてください。

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建設業の営業利益とは

最初に建設業の営業利益について掘り下げてみましょう。ここでは営業利益に関係する項目として次の2項目を取り上げました。

  • 営業利益が大切な理由
  • 経営事項審査に影響する営業利益

以下、各項目について詳細に説明します。

営業利益が大切な理由

建設業において営業利益が大切な理由は、営業利益が会社の本業全体の収益性を示す指標になるからです。営業利益は以下の表で表せます。

営業利益=売上げ総利益-販売費・一般管理費

売上総利益とは建設会社が請け負った工事の利益の合計です。販売費や一般管理費は直接工事に関係しない本社事務費や役員報酬、営業経費などの合計を示します。計算式で表される営業利益は本業全体の純粋な利益です。

営業利益が高水準な会社には安定した収益性があります。資金調達の際に会社の収益性をはかる基準は営業利益です。営業利益は安定した会社経営を維持するためにも大切な指標といえます。

経営事項審査に影響する

営業利益の水準が高く収益性が安定しているとみなされると会社が経営事項審査(以下経審)を受ける際に有利になります。

経審とは国や地方公共団体から公共事業を直接受注する際に必ず受けなければならない審査です。経審は点数制で経営状況分析評価点と経営規模等評価点の合計で決まります。

経営規模等評価は自己資本と平均利益額で算出され、平均利益額に関係するのが営業利益です。営業利益が高いと経営規模等評価点が高くなるので経審の点数評価に有利です。

建設業の営業利益率

この項目では、建設業の営業利益率について詳細に分析した内容を解説します。分析のカテゴリーは以下の3点です。

  • 建設業における営業利益率の目安
  • 大企業と中小企業との比較
  • 他の業界との比較

以下、詳細に説明します。

建設業の目安は4%

建設業情報管理センターや日本建設業連合会が行った調査データをもとに建設業の売上高利益率の推移を確認しました。

データによると建設業における2018年から2022年までの営業利益率は3.5%から4%、総利益率は20%から23%前後で推移しています。調査結果から建設業における利益率の目安は4%(売上高営業利益率)と25%(売上高総利益率)と考えられるでしょう。

「総利益率が25%を超えているか」「営業利益率が4%を超えているか」が会社経営の判断材料になります。なお、総利益率の計算式は下記です。

  • 売上高総利益(円)=売上高(工事完成高)-工事原価(直接的生産コスト)
  • 売上高総利益率(%)=売上高総利益/売上高(工事完成高)×100

大企業と中小企業との比較

前述した営業利益率の推移は、資本金1000万円未満の中小企業も含めたものです。大手企業と中小企業では利益率が異なります。大手企業だけを抜き出して前述したデータと比較してみました。

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
大手企業平均(上場40社平均) 7.3% 7.0% 6.3% 4.6% 3.9%
大手・中小を含む全体平均 4.4% 4.3% 4.3% 3.9% 4.0%

大手企業の営業利益率平均(5年間)は5.8%でした。全体平均より高い値で推移しています。

大手企業は多重下請け構造で大規模なプロジェクトの工事が可能なので売上げ高も高い水準を保つことが可能です。

中小企業では人材不足から請け負う工事の売上高が低いため営業利益率に格差が出ていると考えられます。

ほかの業界との比較

建設業以外の業界にも目を向けてみました。建設業と他の業界との営業利益率比較データが下表です。

建設業 製造業 小売業 卸売業
2020年 4.3% 3.5% 2.8% 2.0%
2021年 3.9% 5.6% 3.0% 2.7%

上表を見ると2021年において建設業と比較すると製造業の営業利益率が高くなっています。他の小売業や卸売業では建設業より低めです。

データで示すとおり、一概に建設業界の営業利益率が低いとはいえません。業界による大きな違いはないといえます。

建設業の営業利益率の計算方法

建設業における営業利益率の計算式は以下のとおりです。

  • 営業利益 (円)=売上高-工事原価-販売費-一般管理費
  • 営業利益率(%)=営業利益/売上高×100
売上高 工事完成高とも呼ばれ完成した工事の売上げや収益をいう
工事原価 建築にかかる費用(材料費・労務費・外注費・その他経費の総額)
販売費 販売管理費や営業経費とも呼ばれる販売にかかる費用の総額
一般管理費 工事原価に含まれない企業の経営や維持を目的とした経費の総額

営業利益率は売上げ総利益率の計算(売上げから工事原価のみを差し引く)とは異なり、販売費や一般管理費など全般的な経費も差し引いて計算します。

売上に対する原価の比率だけではなく営業などにかかる経費比率の把握も可能です。

建設業の企業別営業利益ランキング

建設業の営業利益を企業別にランキング方式で解説します。ここでは企業規模別に次のカテゴリーに分けました。なお、ランキングは2024年3月期決算におけるデータです。

  • スーパーゼネコンの営業利益ランキング
  • 準大手ゼネコンの営業利益ランキング
  • 中堅ゼネコンの営業利益ランキング

以下、表形式でランキングを説明します。

スーパーゼネコンの営業利益率ランキング

スーパーゼネコン5社の営業利益率を下表にまとめました。

順位 会社名 営業利益率
1 鹿島建設 6.1%
2 大林組 2.7%
3 竹中工務店 2.6%
4 大成建設 0.4%
5 清水建設 -3.2%

スーパーゼネコン5社の中では鹿島建設の営業利益率は6.1%と最も高水準です。第4位の大成建設(0.4%)とは5%以上の営業利益率差があります。

清水建設は期中の大型工事の採算が悪化した関係で初の営業赤字となりました。

なお、スーパーゼネコン5社の平均は1.7%です。

準大手ゼネコンの営業利益率ランキング

準大手ゼネコン10社の営業利益率ランキングは下表です。

順位 会社名 営業利益率
1 前田建設工業 7.3%
2 長谷工コーポレーション 6.9%
3 五洋建設 4.7%
4 西松建設 4.7%
5 安藤ハザマ 4.6%
6 フジタ 3.6%
7 戸田建設 3.1%
8 東急建設 2.2%
9 熊谷組 2.0%
10 三井住友建設 1.0%

準大手ゼネコン10社で最も高水準の営業利益率は前田建設工業(7.3%)です。最も営業利益率の低い三井住友建設(1.0%)とは6%以上の差があります。

10社の平均は4.4%です。ランキングの中では安藤ハザマとフジタの間にボーダーラインがあります。

中堅ゼネコンの営業利益率ランキング

中堅ゼネコン各社の営業利益率ランキングは下表のとおりです。

順位 会社名 営業利益率
1 東洋建設 5.7%
2 東亜建設工業 5.4%
3 奥村組 4.7%
4 飛鳥建設 3.7%
5 銭高組 2.7%
6 淺沼組 1.6%
7 鉄建建設 0.2%
8 大豊建設 -1.3%

中堅ゼネコン8社の中では東洋建設の営業利益率水準が最も高く5.7%でした。水準が最も低いのは大豊建設で-1.3%です。

中堅ゼネコン8社の平均は3.3%で飛鳥建設と銭高組の間にボーダーラインがあります。

建設業の営業利益率が低くなる理由

ゼネコン各社の営業利益率比較でもわかるように会社によって営業利益率が低くなっています。この項目では建設業の営業利益率が低くなる理由について考えてみました。主な要因としては以下3点が挙げられます。

  • コストが上昇している
  • 売上げを重視している
  • 適切な原価管理が行われていない

以下、詳しく説明しますので参考にしてください。

コストが上昇しているため

建設業で営業利益率が低くなる要因の1つは、建築工事に必要な資材のコスト高騰です。

現在の物価高は建設業界にも深刻な影響を与えています。建築に使う材料をはじめ重機の動力源であるエネルギー資源のコスト上昇も深刻な問題です。

建設業界では見積もりから施工開始まで時間がかかる場合が多く、その間のコスト上昇分は工事原価に反映されません。

建設資材の中には納期が遅れるものもあり、代替品の手配や追加工事の発生などによりコストがかさむ場合もあります。

コスト上昇は営業利益が低くなる重要な要因です。

売上を重視しているため

営業利益率が低くなる要因として売上げ重視の経営方針も挙げられます。

短期的に売上高を確保するために利益が見込めない案件を受注すると高い営業利益が見込めません。売上を重視するあまり、他社との価格競争で利益の薄い現場を受注する場合もあります。

公共工事を入札する際の経営事項審査で「売上高」も評価対象です。そのため、売上げを過度に重視する経営方針の会社も存在します。

売上げ重視の経営方針では短期的な売り上げ増は見込めても長期的な利益確保に結びつきません。

適切な原価管理が行われていないため

適切な原価管理が行われていない点も建設業で営業利益が低くなる要因です。

建設現場では多くの資材や重機を使用します。営業利益を確保するためには資材費や燃料費などの正確な管理が必要です。

工事原価の管理が甘くなると結果的に赤字になりかねません。管理不足になると資材を重複して手配するなどで予想外の出費を招く可能性もあります。人件費も同様です。

管理が甘いと外注費が増加して利益を圧迫します。適切な原価管理は営業利益を確保するためにも重要です。

建設業の営業利益を高める方法

前述した営業利益率が低い要因も視野に入れ、建設業で営業利益を高める方法について考えてみました。ここで取り上げる利益創出の方法は次の3点です。

  • 新たな付加価値を創出する
  • 原価管理をしっかり行う
  • 業務を効率的に行う

以下、項目別に詳しく説明します。

新たな付加価値を創出する

建設業の営業利益を高める方法として新たな付加価値を創出することが挙げられます。

自社の技術や施工方法の付加価値が上がれば工事の単価アップも販売数を増やすことも可能です。

他社にはない自社の強みをアピールしましょう。ホームページやSNSでの積極的な情報発信も効果的です。

工事品質を向上させ、クオリティの高い施工を継続すれば信頼度が増し競合他社より優先して自社を選んでもらえます。

自社の強みを理解し新たな付加価値を創出すれば結果的に営業利益向上に繋がるでしょう。

原価管理をしっかり行う

営業利益を高めるには工事原価の管理をしっかり行うことが大切です。

ずさんな原価管理では自然災害や追加工事の発生など想定外の事象に対応できません。無駄な経費も発生します。

適切な原価管理を行うための方法として原価管理システムツールの活用も効果的です。現在、多くのシステムツールが開発されています。自社に合ったシステムを導入することで資材の適切な管理や労務コストの削減が可能です。

システム導入で施工品質の向上による付加価値向上も望めます。

業務を効率的に行う

建設業の営業利益を増加させる方法として効率的な業務遂行も効果的です。

工事原価の中で労務費がかなりの割合を占めているので人件費の削減は営業利益創出に直結します。

業務効率を向上させる手段としてパソコンやモバイル端末で管理できるITツール活用が有効です。リアルタイムに工事の進捗状況が確認できたり資料作成の時間も軽減できます。

労務の管理や資材管理だけではありません。協力会社と施工状況を共有すれば変更や追加工事の際にも迅速に対応できます。

業務効率の向上は営業利益を高めるための有効な手段です。

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【まとめ】建設業の営業利益率をきちんと把握し経営判断・分析に役立てよう!

建設業において営業利益率を向上させることは会社の収益性や安定した経営のためにも重要です。

会社の経営状態や収益性が良好に推移していれば公共工事の入札の際にも有利にはたらきます。営業利益率を把握することで自社の収益性や経営状況の分析も可能です。

現在では継続するコスト上昇で工事原価が膨らみ営業利益の確保が難しくなっています。営業利益率を目安である4%以上の水準にするためには、工事原価の厳密な管理や自社の付加価値創出が不可欠です。

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