設備設計一級建築士とは?資格を取得するメリットや試験の概要を解説

建築業界でスキルアップを目指す中で、「設備設計一級建築士」という資格に注目している方も多いのではないでしょうか。とくに、大規模建築物の設計に関わる際には専門性の高い知識と技術が求められるため、設備設計一級建築士の資格は大きな強みとなります。

しかし、この資格について「どのような仕事をするのか」「建築設備士との違いは?」「取得のメリットはあるのか」「試験の内容は難しいのか」など、様々な疑問を抱いている方もいるはずです。

この記事では、設備設計一級建築士とはなにかという基本的な内容から、資格を取得することによって得られるメリット、そして試験の概要や対策方法に至るまで、詳しく紹介していきます。資格取得を目指している方はもちろん、建築設備の分野でキャリアアップを考えている方もぜひ参考にしてください。

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設備設計一級建築士とは

設備設計一級建築士とは、一級建築士の中でも「設備設計」に特化した資格です。建築における設備とは、空調・電気・給排水といった、建物の快適性や安全性にかかわる重要な部分を指します。

とくに大規模な建物では、これらの設備の計画が建物全体の機能性や使いやすさを左右するため、専門知識を持つ設計者の関与が欠かせません。

そうした背景から生まれたのが、「設備設計一級建築士」の資格です。この資格をもつことで、設備の設計を専門的にチェックし、必要に応じて修正を促すなど、建物の完成度を高める役割が担えます。また、建築設備士との違いも明確で、設備設計一級建築士は、設計そのものに対して法的な責任をもてる点が大きな特徴です。

つまり、設備に関する知識だけでなく、設計の責任者として判断を下す立場を担える資格だといえます。設備に強い一級建築士は社会的な信頼も高まるため、建築業界でのキャリアを高めたい人にとって非常に価値のある資格です。

概要と仕事内容

設備設計一級建築士の主な仕事内容は、建築物における設備設計の「確認」業務です。

ここでの確認とは、ほかの設計者が手掛けた設備設計が、法令や性能要件に照らして適切であるかをチェックする重要な工程を意味します。特定建築物とされる大規模な建築物では、法的にこの確認作業を資格者が行うことが義務付けられており、設備設計一級建築士が不可欠な存在となっています。

また、建築主や他の設計関係者との調整も重要な業務のひとつです。建物全体の設計方針に対し、設備面からの意見を反映させ、トータルで機能的な建築が成立するようサポートする役割を果たします。

新設された背景

設備設計一級建築士という資格が新設されたのは、建築物の高層化・複雑化が進む中で、設備設計の重要性が飛躍的に高まったためです。これまでは一級建築士が全体の設計を統括していましたが、技術の進歩と社会的ニーズの変化により、空調・衛生・電気などの専門的な設備分野についても、高度な知識と経験を持つ設計者が必要とされるようになりました。

とくに2006年の建築基準法改正以降、特定建築物では設備設計に関する「確認」が義務化されるなど、法制度上でも設備分野の独立性が強調されるようになっています。そのような背景を受けて、設備設計一級建築士の資格制度が誕生し、法的な責任を負う設計者としての役割が明確に位置づけられました。

建築設備士との違い

設備設計一級建築士と混同されやすいのが建築設備士ですが、両者は大きく役割が異なります。建築設備士は、設備設計に関する助言や補佐をする立場にあり、設計内容そのものに対する最終的な責任は負いません。

一方、設備設計一級建築士は、確認業務を含めた設備設計全体に対して法的責任を担う設計者として位置づけられています。

この違いは、業務の範囲と責任の重さに直結しています。建築設備士が設備に精通した「アドバイザー」的な立場なのに対し、設備設計一級建築士は法制度に基づく「判断者」としての役割をもつ存在です。そのため、資格を取得することでキャリアの幅が大きく広がるとともに、設計チーム内での信頼や評価も高まります。

設備設計一級建築士の資格を取得するメリット

設備設計一級建築士は、取得者が非常に限られている専門性の高い国家資格です。この資格をもつことにより、設備設計における実力と責任を公式に認められ、仕事の幅や信頼性が大きく広がります。とくに大規模な建築物では、法的に設備設計一級建築士の確認が必要とされるケースもあるため、建築プロジェクトに欠かせない人材として重宝されるでしょう。

さらに、社内外での評価が高まることで収入や待遇の向上にもつながり、転職時にも大きなアピールポイントになります。ここでは、設備設計一級建築士の資格を取得することで得られる主なメリットを3つの観点から紹介します。

希少性が高い

設備設計一級建築士は、非常に取得者数の少ない専門資格です。2023年時点での登録者数は全国でも4600人程度にとどまっており、建築士の中でもひと握りの存在です。しかも、この資格は一級建築士としての経験と設備設計の実績がなければ受験すらできないため、高い専門性が求められます。

この希少性こそが、大規模建築物の設計や確認において設備設計一級建築士の存在価値を際立たせているともいえるでしょう。

実際、設備の設計確認が義務づけられている物件では、この資格がなければ担当できない業務も多く、資格保有者は重宝されています。だからこそ、取得することで建築設計の現場における貴重な戦力として活躍できるのです。

収入アップが期待できる

設備設計一級建築士の資格を取得することで、給与や待遇の向上が期待できます。専門性の高さと責任の重さから、企業側でも資格保有者に対して相応の報酬や役職を用意する傾向があるのです。

とくに、大手ゼネコンや設計事務所では、設備設計一級建築士を有することで対外的な信頼を得られるため、資格取得者の価値は非常に高いといえます。

また、社内での昇進や役割の変化にもつながりやすく、プロジェクトの責任者や設備設計部門のリーダーなど、より裁量の大きなポジションを任されることも珍しくありません。キャリアアップを見据える上で、収入面でも大きな効果がある資格です。

転職する際に有利に働く

転職市場においても、設備設計一級建築士の資格は大きな武器となります。とくに設備設計に力を入れている企業では、「即戦力」としての高い評価を得やすく、書類選考や面接でも有利です。建築関連の資格の中でも希少性が高く、実務経験と能力が裏づけられている点が、採用担当者にとって安心材料になります。

また、資格を取得していることで、自ら希望する分野やプロジェクトに関わる可能性が広がりやすくなります。現職に満足していない方や、より専門性を発揮したいと考えている方にとっても、転職活動を有利に進める大きな後押しとなるでしょう。

設備設計一級建築士になる方法

ほかの建築系資格とは異なり、設備設計一級建築士の資格を取得するためには、段階を踏んだ明確な手順が必要です。まず前提として、一級建築士の資格を保有していることが絶対条件となります。そのうえで、一定年数以上の設備設計に関する実務経験を積み、所定の講習を受講し、最終的に修了考査に合格することで資格を得る流れです。

このプロセスは、ただ知識を詰め込むだけではなく、現場での実践力や総合的な判断力が問われる仕組みになっており、設備設計の専門家としての質を担保する役割も果たしています。それぞれのステップを順に確認していきましょう。

一級建築士として設備設計の経験を重ねる

設備設計一級建築士の資格を取得するには、まず一級建築士としての登録が済んでいる必要があります。そのうえで、一定の期間にわたり設備設計に関する実務経験を積むことが求められます。具体的には、空調・衛生・電気設備などの設計業務に関わり、建物の性能や使い勝手に関する知識と判断力を身につけていくことが必要です。

この経験は、後に受講する講習や修了考査でも大きな意味を持ちます。なぜなら、資格制度全体が「実務経験に基づいた知識の応用力」を重視して設計されているためです。単に年数を満たせばよいのではなく、密度のある業務経験を重ねることが、合格への第一歩となります。

講習会を受講する

実務経験を一定期間積んだ後は、指定された講習会を受講する必要があります。この講習は、設備設計に関する最新の知識や法令、実務上のポイントなどを体系的に学ぶ場として位置づけられており、受講自体が資格取得のための条件のひとつとなっています。

講習は指定機関によって実施され、事前の申込みや受講資格の確認が必要です。内容は専門的かつ実践的であり、試験対策としても非常に重要です。なお、この講習の修了がなければ、最終段階の考査を受けることはできません。

資格を取得する

講習を修了した後、最終的に待ち受けているのが「修了考査」です。この考査は、講習で学んだ内容に加えて、実務経験に基づいた応用力が問われる試験です。設計内容の妥当性や法的知識、設備の安全性に関する判断など、多角的な視点から理解が試されます。

考査は年1回程度の頻度で実施され、これに合格することで正式に設備設計一級建築士として登録されます。ここまでの道のりは決して平坦ではありませんが、そのぶん取得後の信頼性や評価は非常に高く、設計者としてのキャリアにおいて大きな武器となるでしょう。

設備設計一級建築士の資格試験の概要

設備設計一級建築士になるためには、特別な講習と修了考査に合格する必要があります。この資格は単なる筆記試験で終わるものではなく、実務経験や専門知識、そして講習で得た理解力を総合的に試される構成となっているのが特徴です。

受講するには一定の条件を満たしていなければならず、試験範囲も幅広く、実務に直結した内容が中心です。ここでは、資格取得までの試験制度について、受講資格・講習の内容・修了率の3つに分けて紹介します。

受講資格

設備設計一級建築士講習を受講するには、まず「一級建築士としての登録」が前提となります。加えて、一定期間以上の設備設計に関する実務経験が必要です。具体的には、以下のいずれかの条件を満たしていなければ受講できません。

  • 一級建築士として、3年以上にわたり建築設備の設計業務に従事していること
  • または、建築士法に基づく基準で「相当の能力を有する」と認められた者であること

受講申込時には、過去の業務内容や関与した案件などの提出が求められ、実務経験の証明が必要です。単に資格を保有しているだけでは講習に進めないため、事前の準備が重要です。

講義・修了考査

講習は、全体で6日間(45時間相当)のカリキュラムで構成されており、内容は座学と演習で構成されています。

主に扱われるテーマは、建築設備に関する法規、設計基準、施工との連携、環境や省エネに関する知識などです。実際の設計現場を意識したケーススタディも含まれており、実務に即した学習となります。

講習の最終日には「修了考査」が実施され、これに合格することが資格取得の条件です。試験内容は講義で扱われた範囲に基づいており、設備の設計意図・安全性・法令適合性などを読み取って評価する問題が出題されます。知識を覚えるだけでなく、実務をふまえた判断力や読解力が試される試験です。

修了率

修了考査の難易度は決して低くありませんが、受講者はある程度の実務経験者に限られるため、合格率(修了率)は比較的高めです。令和5年度のデータによると、修了率は約88%となっており、しっかりと講義を受け、内容を理解していれば十分に合格可能です。

ただし、講義を受けたうえで修了考査に不合格となると、再度講習を受けなければならないケースもあるため、試験対策としての復習や過去問の演習は欠かせません。高い修了率とはいえ、油断せず着実に準備を進めることが大切です。

設備設計一級建築士の資格試験対策

設備設計一級建築士の資格を取得するためには、講習の内容をしっかりと理解し、最終日に行われる修了考査に合格しなくてはなりません。修了考査では、設備設計における知識だけでなく、実務経験に基づいた判断力や総合的な設計力も問われるため、講習前からの準備が非常に重要です。

ここでは、考査対策として効果的な2つの方法をご紹介します。どちらも多くの受講者が実践している基本的な対策法であり、試験の合否に大きく影響を与える重要なステップです。

テキストを読み込む

講習では、指定の公式テキストが配布されます。このテキストは、修了考査の出題範囲を網羅しており、まさに「合格の鍵」となる重要な資料です。内容は、建築設備に関する法律・基準・設計手法・省エネ・安全性など幅広く、実務を踏まえた実践的な知識が詰まっています。

試験対策として最も基本でありながら効果的なのが、このテキストを丁寧に読み込み、理解を深めておくことです。

とくに、講習で解説された箇所や重要ポイントには注目し、講義後にも繰り返し目を通しておくことが合格への近道になるでしょう。単なる暗記ではなく、「なぜその設計が妥当なのか」という思考の流れを掴んでおくことが大切です。

過去問を解く

修了考査は毎年似た構成で出題されており、過去問に取り組むことで出題傾向や問われやすいテーマの把握ができます。とくに、出題形式に慣れるという意味でも、時間を計って過去問を繰り返し解くことは有効です。

問題文の読み取りや記述の仕方、キーワードの使い方など、実践的な力が養えます。

また、過去問を通して、自分が理解できていない分野や苦手なテーマを見つけ出し、テキストに戻って復習するという流れを作ることで、学習効率が飛躍的に高まります。

講習前から準備する人も多く、合格者の多くは過去問演習をしっかりこなしています。地道な取り組みですが、試験突破には欠かせない対策です。

設備設計一級建築士の今後

近年の建築業界では、省エネルギー性能や建物の快適性に対する関心が高まっており、設備設計の重要性はますます増しています。その中で、設備設計一級建築士は、こうしたニーズに応えられる数少ない専門資格として注目を集めています。

実際、建物の高層化や複雑化が進む中で、設備に関する高度な設計力と法的な確認が求められる場面が増えてきました。

とくに、床面積が5,000平方メートルを超える大規模建築物では、設備設計一級建築士による設計確認が義務づけられており、この資格を持つ技術者が現場で果たす役割は極めて大きなものとなっています。

さらに、建築業界では専門人材の不足も進行しており、設備設計の分野でも即戦力となる人材への需要は年々高まっています。こうした背景から、設備設計一級建築士の資格は、今後のキャリア形成においても安定した価値をもち続ける資格として、長期的な将来性が約束されているといえるでしょう。

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【まとめ】設備設計一級建築士はニーズが高い!資格を取得し年収アップを目指そう

設備設計一級建築士は、一級建築士の中でも設備設計に特化した高度な資格であり、大規模建築物の設計確認に欠かせない存在です。専門性が高く、法的責任も伴う立場であることから、業界内での評価や信頼も非常に高いものとなっています。

この資格の大きな魅力は、その希少性と実務能力の証明力です。登録者数が限られていることから、資格を保有しているだけで貴重な人材として扱われ、収入や待遇の面でも優遇されやすくなります。また、転職市場でも大きな強みとなり、キャリアアップを考える上で非常に有利な資格だといえるでしょう。

取得までの道のりは、実務経験・講習・修了考査と段階的ですが、その分だけ価値の高い資格です。今後さらに設備の高性能化や環境対応が求められるなかで、設備設計一級建築士のニーズはますます拡大していくことが予想されます。確かな専門性と信頼を得て、安定したキャリアと収入アップを目指すなら、この資格の取得に挑戦してみる価値は十分あるといえるでしょう。

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