構造設計一級建築士とは?資格を取得するメリットや勉強法を解説

建築関連の設計に関わる中で、「構造の専門性をもっと高めたい」「構造設計の責任者として活躍したい」と考える人は少なくありません。とくに、地震大国である日本においては、建物の安全性を左右する「構造設計」の役割は非常に大きく、専門性の高い知識と判断力が求められます。

そこで注目されているのが「構造設計一級建築士」という資格です。一級建築士の中でも構造分野に特化したこの資格は、構造計算や耐震設計などの専門知識をもとに、高度な判断を求められる立場です。しかしながら、どのような資格なのか、どうやって取得するのか、そもそも取得するメリットがあるのかなど、疑問をもつかたも多いでしょう。

この記事では、構造設計一級建築士とはどのような資格なのかという基本から、取得するメリット、勉強法、試験対策まで丁寧に解説していきます。

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構造設計一級建築士とは

構造設計一級建築士とは、一級建築士の中でもとくに「構造設計」に特化した知識と経験を有する者に対して与えられる国家資格です。建物の耐震性や安全性に直結する構造計算を含む設計業務を行ううえで、構造設計者としての責任を担います。

この資格は、2005年の構造計算書偽装問題をきっかけに制度化されました。問題の再発防止として、構造設計にかかわる設計者の力量と責任を明確にする必要があり、それを裏づける資格として創設されたのが「構造設計一級建築士」です。これにより、一定規模以上の建築物においては、構造設計一級建築士による確認・署名が義務づけられています。

また、この資格は単に構造の知識を有するだけでなく、設計全体の中で構造が果たす役割を把握し、安全性・合理性・コストなどを総合的に判断できる力が求められます。建築全体の構成を理解したうえで、構造設計の中核を担う存在として、社会的責任も極めて大きいポジションです。

つまり、構造設計一級建築士とは、「構造の専門家」であると同時に、「責任ある設計判断をするリーダー」として認められた建築士だといえるでしょう。構造設計にかかわるキャリアをより確かなものにしたい人にとって、非常に価値のある資格です。

構造設計一級建築士の資格が創設された背景

構造設計一級建築士という資格が制度化された背景には、2005年に発覚した構造計算書偽装問題があります。この事件では、建築物の安全性を確保するために必要な構造計算が偽装され、多くの建物に重大な欠陥があることが明らかになりました。この不祥事により、構造設計に関わる建築士の知識や倫理、そして責任のありかたが社会的に問われることとなったのです。

それまでの制度では、構造設計を専門的に担う技術者の能力を明確に証明する枠組みが存在せず、設計者の技量に大きなばらつきがありました。建築主や審査機関にとっても、その建築士がどれほど信頼できるかを客観的に判断する材料が不足していたのです。

そこで創設されたのが、構造設計一級建築士という資格です。この資格は、構造設計に関する一定以上の実務経験と知識を有する者に与えられ、特定建築物などの重要な構造設計を担うにふさわしい能力と責任を備えた設計者であることを証明するものとなっています。

この制度により、構造設計の透明性と信頼性を高め、建物の安全性をより確実に担保できる体制が整えられました。資格の創設は、業界全体の質を引き上げるとともに、再発防止の強い意思を示す重要な転換点となったのです。

構造設計一級建築士の資格を取得するメリット

構造設計一級建築士の資格は、取得することで専門性だけでなく、社会的な信頼や実務上の責任範囲が大きく広がります。特定建築物などの重要な構造設計において、構造設計一級建築士の関与が法的に求められるケースが増えている今、資格の有無が業務の可否を左右する場面も多くなってきました。

最大のメリットは「設計者としての法的責任を担える立場になる」という点です。構造設計一級建築士として登録されていれば、構造設計図書への署名・押印が可能となり、建築確認申請に必要な書類の信頼性が格段に高まります。これは、単なる構造設計者では担えない法的な責任を、自ら負える立場になれるということです。

また、専門資格をもっていることで、クライアントや設計チームからの評価も向上し、社内でのポジションアップや業務の幅が広がるというメリットもあります。企業によっては、資格手当がついたり、構造設計一級建築士を有することで案件の受注条件を満たすケースもあったりするため、キャリアと収入の両面に好影響を与える資格です。

さらに、建築士法の改正により、大規模な建物の構造設計においては、この資格を持つ者が関与することが「必須」となる場面もあるため、今後ますます活躍の場が広がることが見込まれています。構造設計に真剣に取り組むのであれば、確実に取得しておきたい資格といえるでしょう。

構造設計一級建築士になる方法

構造設計一級建築士になるためには、ただ一級建築士の資格をもっているだけでは不十分です。この資格は、「実務経験を積んだ専門家であること」が前提となっており、段階的なステップを踏んで取得する必要があります。

必要なことは、一級建築士としての登録です。構造設計一級建築士の受講資格には、一級建築士の資格を有していることが絶対条件となっており、設計経験のない建築士は対象になりません。

次に求められるのが、構造設計に関する一定の実務経験です。これは単に構造に関わったというレベルではなく、構造設計の中核業務に従事した経験が求められます。具体的には、以下のような業務が「実務経験」として認められます。

  • 構造計算書の作成
  • 構造図(伏図・軸組図など)の作成
  • 特定建築物の構造安全性に関する設計判断
  • 構造に関する設計打合せへの参加や調整業務

これらの経験を通して、建築物の構造設計を主体的に担ってきたことを証明する必要があります。受講時には、具体的なプロジェクトや業務内容を記載した実務報告書の提出が求められるため、日ごろから記録を残しておくことも大切です。

構造設計一級建築士になるには、実力と経験の積み重ねが欠かせません。すでに構造設計に携わっている人は、自身の業務内容が資格取得の条件に当てはまるかを確認しながら、次のステップに備えるようにしましょう。

構造設計一級建築士の資格を取得する方法

構造設計一級建築士の資格を取得するためには、まず講習の受講資格を満たしたうえで講義を受け、修了考査に合格する必要があります。構造設計のプロフェッショナルとしての能力と責任を証明するこの資格は、制度全体が実務に根ざした内容で構成されています。

そのため、日々の業務経験をふまえて知識を積み重ねることが、合格への重要なステップになるでしょう。

ここでは、受講資格、講義・試験の内容、そして修了率という3つの観点から、取得の流れを詳しく解説します。

受講資格

講習を受けるためには、まず「一級建築士」として登録されていることが前提です。そのうえで、5年以上にわたり構造設計に関する実務経験を積んでいなくてはなりません。対象となる業務には、構造設計そのもののほか、以下のような業務も含まれます。

  • 構造に関する工事監理業務
  • 建築確認申請における構造審査またはその補助
  • 構造計算適合性判定またはその補助

なお、補助業務のみを経験した場合でも、平成25年9月までに従事していたものに限り、実務経験として認められます。平成25年10月以降に携わった補助業務は、対象外となる点に注意が必要です。

講義・修了考査

講習は、2日間の講義と1日の修了考査で構成されています。講義では、構造設計総論、構造関係法令、法適合確認、耐震診断・補強、構造設計各論など、実務に直結する内容を幅広く学びます。

修了考査は、4肢択一と記述式の組み合わせで行われ、以下の2分野に分かれて出題されます。

  • 法適合確認に関する法規分野
  • 建築物の構造設計に関する専門分野

これらの内容を踏まえた設問に対し、的確な答えが求められます。単なる暗記ではなく、実務経験を活かした思考力や判断力が問われる試験です。

修了率

修了考査の難易度は高めですが、一定の実務経験を積んだ建築士を対象としているため、合格率は比較的安定しています。令和7年1月時点のデータでは、累計で11,704名が修了しており、毎年多数の建築士が新たに資格を取得しています。

また、講習修了者には「構造設計一級建築士」としての登録が認められ、特定建築物の構造設計に関わる業務で法的な責任を担えるようになります。修了率は年によって変動がありますが、しっかり対策すれば十分に合格を目指せる制度となっています。

構造設計一級建築士の資格試験対策

構造設計一級建築士の修了考査は、構造設計に関する幅広い知識と、法令や実務への深い理解が求められる実践的な内容です。

そのため、単に講義を受けるだけではなく、自主的な学習と対策が合格への鍵になるでしょう。とくに、講義で使用されるテキストの内容を正確に理解し、自分の苦手分野を明確にして補強しながら、過去問演習を通して実戦力を高めることが大切です。

ここでは、効果的な試験対策として重要な3つの取り組みを紹介します。

テキストを読み込む

講義で使用される「建築物の構造関係技術基準解説書」や公式テキストは、修了考査の出題範囲を網羅しており、試験対策における中心的な教材です。とくに、法規や構造計算、耐震性の確保にかかわる部分は重点的に出題されるため、繰り返し読み込んで理解を深めておく必要があります。

また、講習中に講師が強調した箇所や具体的な設計事例の扱いかたなどは、出題されやすいため、メモやマーキングを活用しながら復習しておきましょう。知識として覚えるだけでなく、実務にどう活かすかという視点で読み進めることが、合格への近道になります。

苦手な分野を克服する

修了考査では、幅広い分野から出題されるため、得意な領域だけで戦うのは危険です。とくに、力学、法適合確認、材料特性などは苦手意識をもちやすい分野ですが、得点配分が高く合否を分ける要因にもなりやすいテーマです。

まずは模擬問題や演習を通じて、自分が苦手とする単元を洗い出しましょう。そのうえで、該当箇所をテキストで重点的に学習し、理解があいまいな部分を繰り返し復習することが大切です。苦手を放置せず、確実に克服する姿勢が、安定した得点力を生み出します。

過去問を解く

過去問題は、修了考査の傾向を知り、実際の試験形式に慣れるうえで欠かせない教材です。過去数年分の問題を通して、どの分野からどのように問われるのかを分析し、自分の理解度をチェックしましょう。

また、時間を測って本番同様の形式で解く練習を積むことで、制限時間内に解答をまとめる力も養えます。記述問題では、どの程度まで具体的に書くべきか、専門用語の使いかたは適切かなど、実際に書いてみないと分からない感覚をつかむことも重要です。

過去問演習は、合格ラインを確実に超えるための土台となる学習です。繰り返し取り組み、弱点の把握と克服につなげていきましょう。

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【まとめ】構造設計一級建築士の資格は今後注目度が増す可能性が高い!難易度が上がる前に取得しよう

構造設計一級建築士は、建築物の安全性や構造的信頼性を担保するために必要不可欠な資格であり、社会的責任の大きな設計業務を担う専門家として高く評価されています。構造計算や法適合確認など、高度な知識と判断力が求められる一方で、資格取得者は業務の幅が大きく広がり、キャリア面でも待遇面でも有利な立場を築けます。

資格取得のためには、実務経験や講習・修了考査といったハードルがありますが、それだけに取得後の信頼性と価値は非常に高いものとなります。今後、構造設計の品質と透明性に対する社会的ニーズはさらに高まると予想され、資格保有者の活躍の場も広がっていくでしょう。

制度や難易度が変化する前に、早めに対策をはじめて資格取得を目指すことが、将来のキャリア形成において大きな一歩になります。

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