積算における共通仮設費とは?内訳や計算方法をわかりやすく解説

共通仮設費とは

建設工事の積算業務には建物に直接関係のない費用も計上しなければなりません。工事を安全に進めるための費用や事前準備の費用なども必要です。共通仮設費も積算に含まれる費用ですが、共通仮設費とはなにか、計算はどうするのかと悩む方もいるでしょう。そこで今回は積算における共通仮設費とはどのような費用なのか、内訳や内容、計算方法をわかりやすく解説します。

積算における共通仮設費とは

建設業の工事には、建物を建てるために必要な仮設工事があります。足場や養生などの設置や撤去費用といった施工工事に直接関わりのある「直接仮設費」と、仮設事務所や仮設トイレなど工事に直接関係はないが必要となる「共通仮設費」です。共通仮設費とは、施工工事を行うために準備する設備や施設にかかる費用を指します。工事が完了すると設備や施設は撤去されますが、工事全体の積算には含まれる費用です。工事の種類や規模によって金額は異なりますが、コスト管理の面で重要な位置にあると考えてよいでしょう。

共通費との違い

積算する費用の中には共通費という項目があります。共通費には「一般管理費」「現場管理費」「共通仮設費」の3つがあり、どれも工事に間接的に必要とされています。一般管理費は仮設事務所など間接的な部門で働く職員の給与や事務所の費用など、現場管理費は建設工事の工事管理に必要な費用です。共通費は、工事全体にかかわる費用の総称のこと、共通仮設費はその一部です。

共通仮設費の内訳

建設工事に必要な共通仮設費について、8つの内訳と具体的な費用の内容を解説します。1つずつ見ていきましょう。

準備費

準備費とは、建設工事を安全でスムーズに行うために必要な費用です。工事に入る前の準備や完了後の撤去などに使われます。具体的には、工事が行われる土地の調査・整地・測量・伐採や除草などの費用です。また、使用する機械などの運搬費用、建設廃棄物等の搬出・処分費も含まれます。

仮設建物費

仮設建物費は、工事現場に仮設の建物を設置する費用や維持費、完了後の撤去費用です。仮設の建物とは、現場事務所や倉庫、作業員の休憩所・宿舎、トイレ・シャワー室等が挙げられ、現場監督や作業員が使用する施設や設備です。仮設建物は工事完了後には撤去されてしまうため、リース会社を利用することが一般的とされています。費用を抑えたいと安い仮設建物にすると地震や火事などに弱く崩壊の恐れもあるため、強度や防火性などを考えたものを選ぶとよいでしょう。

工事施設費

工事施設費は、工事をスムーズに行い第三者の安全を守るための設備に必要な費用です。具体的には、敷地の仮囲い、歩道構台、工事用道路、場内通信設備、足場などの設置や維持、撤去などが挙げられます。

環境安全費

環境安全費は、現場で働く作業員の安全や現場の環境保護に関する費用です。作業員だけではなく、一般の方々にも危険がないように配慮するために必要な費用です。安全標識費や落下物対策費、安全用具費、振動対策費、騒音対策費、粉じん対策費、消防設備などの設置費が具体的な内容です。また、隣接物への養生費、安全管理のための要員配置費用が挙げられます。

動力用水光熱費

動力用水光熱費は、工事に使用するための電気設備や給排水設備でエネルギー利用にかかる費用です。工事用電気料金、水道料金、ガス料金、その他機械の燃料やガス代などが挙げられます。

屋外整理清掃費

屋外整理清掃費は、工事現場の清掃などにかかる費用です。工事中における工事現場周辺のゴミ清掃や処分費、草刈り費などがあり、そのほか廃材処分費用や冬季間の除雪費用も挙げられます。工事現場に置かれる脱着式コンテナにかかる費用も該当します。

機械器具費

機械器具費は、工事に使用されるクレーンや機械器具など工事のために必要な機械器具のレンタルや維持管理のための費用です。測量機器・クレーンなど重機のレンタル費、小型機械のレンタル費、建設機械の購入費、乗用車を除く車両などが挙げられます。

その他

その他として、上記7つの項目に当てはまらない費用も計上可能です。具体的には建設に使用する材料や製品の品質管理試験の費用や防災費、地下水対策費などが挙げられます。

共通仮設費の計算方法

次に共通仮設費の計算方法を見ていきましょう。計算には2つの方法があります。費用を積み上げて計算する方法と共通仮設費率を使って計算する方法です。共通仮設費率の計算方法は工事の種類によって異なります。

内訳を1つずつ計算する方法

上記で説明している8つの内訳について個別に費用を算出して1つずつ計算する方法です。項目ごとに費用を計算して合計します。計算方法としてはわかりやすい面がありますが、時間と手間がかかる作業です。

共通仮設費率を使って計算する方法

共通仮設費率とは、過去の実績等に基づく直接工事費に対する比率のことを指します。次に記載するのが共通仮設費率の計算式です。

Krは共通仮設費率(%)、Krの値は小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとします。Exp( )は、指数関数 e( ) を表し、e は、ネイピア数(自然対数の底)を表します。a,b,cは各工種等の個別の定数、Pは直接工事費(千円)、Tは工期(か月)です。

  • Kr=Exp(a + b × Loge P + c × LogeT)

直接工事費(P)の金額や工事の種類によって上限と下限が定められています。共通仮設費率に含まれない内容として、現場環境改善費・工事現場以外の屋外整理清掃費・新たな施策などの試行にある特別な費用があります。また、昇降機設備の計算は別の計算式です。工事の種類ごとの計算方式をご紹介します。

令和5年改定(国土交通省)の共通仮設費率の算定方式です。

新営建築工事
新鋭建築工事の共通仮設工事費率は下記の計算方法です。直接工事費(P)が1,000万円以上50億円の範囲以外の場合は、別途に共通仮設費を定められます。

  • Kr=Exp(3.346-0.282✕loge P+0.625✕loge T)

改修建築工事

改修建築工事の共通仮設工事費率は下記の計算方法です。直接工事費(P)が300万円以上10億円の範囲以外の場合は、別途に共通仮設費を定められます。

  • Kr = Exp(3.962 – 0.315 × loge P + 0.531 × loge T)

新営電気設備工事

新営電気設備工事の共通仮設工事費率は下記の計算方法です。直接工事費(P)が1,000万円以上10億円の範囲以外の場合は別途に共通仮設費を定められます。

  • Kr=Exp( 3.086 – 0.283 × loge P + 0.673 × loge T )

改修電気設備工事
改修電気設備工事の共通仮設工事費率は下記の計算方法です。直接工事費(P)が300万円以上10億円の範囲以外の場合は別途に共通仮設費を定められます。

  • Kr=Exp( 1.751 – 0.119 × loge P + 0.393 × loge T )

新営機械設備工事

新営機械設備工事の共通仮設費率は下記の計算方法です。直接工事費(P)が1,000万円以上10億円の範囲以外の場合は別途に共通仮設費を定められます。

  • Kr=Exp( 2.173 – 0.178 × loge P + 0.481 × loge T )

改修機械設備工事
改修機械設備工事の共通仮設費率は下記の計算方法です。直接工事費(P)が300万円以上10億円の範囲以外の場合は別途に共通仮設費を定められます。

  • Kr=Exp( 2.478 – 0.173 × loge P + 0.383 × loge T )

昇降機設備工事

昇降機設備工事の共通仮設費率は下記の計算方法です。直接工事費(P)が500万円以上5億円の範囲以外の場合は別途に共通仮設費を定められます。

  • Kr=Exp( 4.577 – 0.323 × loge P )

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【まとめ】共通仮設費は工事全体を行うために必要な費用!しっかり理解しよう

ここまで積算における共通仮設費の内訳や内容、計算方法について解説しました。共通仮設費は建設工事において現場で働く作業員や工事を進めるうえの安全性などに欠かせない重要な費用です。工事全体を行うために必要な費用となるため、共通仮設費の費用項目や共通仮設費率の計算方法を知り、しっかりと理解しましょう。本記事が積算業務に携わる方の参考になれば幸いです。

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