なぜ建設業界において談合が「当たり前」なのか?談合が横行する理由や防止策について解説

建設業界で当たり前になっている「談合」。談合は法律で禁止されているにもかかわらず、なぜ今なお繰り広げられているのでしょうか。

記憶に新しい談合事件と言えば、リニア新幹線建設工事があげられますね。当時件では逮捕者も出ました。

それでもゼロにならないのが「談合」の闇深いところと言えるでしょう。

そこで本記事では

  • 建設業界で談合が発生する理由
  • 建設業界における談合の防止策

について詳しく解説していきます。

建設業界における「談合」とは

建設業界における談合とは、公共事業などの競争入札で価格競争すべき業者同士が、事前に話し合いをして落札業者や落札価格を決めることです。

これを「入札談合」と呼びます。

本来であれば談合せずに入札しなければいけないのですが、利益を得るため、仕事を請けるために入札談合をおこない、相場よりも高い価格で落札されるという仕組みになっているのです。

冒頭でもお伝えしたとおり、近年では、リニア新幹線建設工事に関わった大手ゼネコンによる談合事件が発生しました。

建設業界で談合が当たり前になっていることによる悪影響

先ほど述べたとおり、入札談合では相場よりも高い価格で落札されるという仕組みになっています。
発注元が国や地方公共団体の場合、工事にかかる費用は税金で賄わなければいけません。
要するに、入札談合された金額で工事が進められるということは、税金が無駄に使われていることを意味します。
各建設業者の利益のために税金が無駄に使われている側面があるのです。
そのため、入札談合は法律で禁止されています。

建設業界で談合が発生する理由

入札談合は法律で禁止されているにもかかわらず、なぜ発生してしまうのでしょうか。
そもそも競争入札(複数の契約希望者に契約条件を提示させ、もっとも有利な条件を提示した者と契約すること)には「一般競争入札」と「指名競争入札」の2種類があります。

  • 一般競争入札:どの建設業者でも入札に参加できる
  • 指名競争入札:発注者があらかじめ指定した建設業者のみ入札に参加できる

指名競争入札の場合は、事前に参加する建設会社名が公開されます。

そのため、各会社で結託し、入札談合がおこなわれやすい状況になっているのです。

また、建設業界は仕事量が少ないわりに業者が多く存在するため、互いに仕事を分け合う目的で談合するという仕組みが生まれているのも一つの要因と言えるでしょう。

建設業界で談合が「当たり前」になってしまう理由

数十万円以内の小さな工事の場合は、見積もりを出すのにそこまで時間を要しません。
ですが、ビルや商業施設といった大型工事となると、数億円、数十億円といった大きなお金が動くことになります。
発注者から渡された図面をもとに、積算チームが数量と単価を拾い上げていく。図面には記載されていない作業所の賃料や、足場代なども考慮しなければいけません。
施工チームは、より効率的な工法や手順がないか考える必要があります。
つまり、競争入札で落札されるかどうかに関係なく、莫大な時間と人件費を必要とするのです。
だから、入札談合をおこない、建設業者にとっても無駄がないようにするのが当たり前になっているというわけです。

理由1:「発注者のため」という大義名分

たとえばリニア新幹線建設工事の場合、全工区を1つの建設業者が受注するのではなく、各々が得意な部分だけ選んで入札するというのが自然な流れになります。
しかし、各建設業者が選んだ工区に偏りがあった場合、発注者は工事を進められなくなります。
そのため、どの建設業者がどの工区を担当するかあらかじめ調整、つまり入札談合することにより、発注者が損をしないという大義名分になるのです。
そういった視点でも、入札談合は当たり前になっているのが現状です。

理由2:受注に対する安心感の確保

競争入札をおこなえば、当然、仕事を受注できない業者が出てきます。建設業界にとってはあるあるの話ではないでしょうか。
そうなると、当然ながら売上は安定しないし、下請けや末端業者にもしわ寄せが及ぶ恐れがあります。

そのため

「前回はお宅が受注したので、今回は我が社でお願いします」
「5,000万円で受注すれば利益が確保できるので、お宅は6,000万円で入札してください」

というような談合が繰り広げられるのです。
こうでもしないと、安定した利益が確保できないのが建設業界。建設業者にとって入札談合とは、受注に対する安心感を確保するための一つの手段とも言えるでしょう。

建設業界における談合の防止策

前章では建設業界で談合が「当たり前」になってしまう理由について解説しましたが、税金の無駄遣いという観点からも談合は法律で禁止されています。
そこでこの章では、建設業界における談合の防止策を3つ紹介します。

  • 課徴金減免制度
  • 独占禁止法の改正
  • 入札談合等関与行為防止法

防止策1:課徴金減免制度

1つめの防止策は「課徴金減免制度」です。
課徴金減免制度とは、自社が談合に関与した場合、その旨を公正取引委員会に報告することで課徴金が減免されるという制度のこと。
課徴金減免制度を設けることにより、入札談合の早期発見・早期解明を目的としています。
なお、公正取引委員会の立ち入り検査が始まる前に最初に報告した建設業者は、入札談合により得た不当利益に対して徴収される課徴金が全額免除される仕組みになっています。

防止策2:独占禁止法の改正

2つめの防止策は「独占禁止法の改正」です。
独占禁止法とは、多くの建設業者が自由な競争を通じて事業をおこなえる体制を整えることを目的に1947年7月に施行された法律のこと。この独占禁止法が2019年6月に改正され、各建設業者による調査協力をさらに促すとともに、適切な課徴金を課すことで不当取引を抑制する効果が期待できます。

先ほど解説した課徴金減免制度や、課徴金の算定方法の見直しを図ることにより、一部の建設業者が結託して特定業者を市場から排除することや、高額な価格競争が不当におこなわれないようにしています。

防止策3:入札談合等関与行為防止法

3つめの防止策は「入札談合等関与行為防止法」です。

入札談合等関与行為防止法とは、国や地方公共団体の職員が入札談合への関与を禁止する法律のこと。2003年1月より施行されました。
しかし、入札談合等関与行為防止法が制定された後も、国や地方公共団体の職員が入札談合に関与する事態は減らず、いわゆる「官製談合事件」がたびたび発生しました。

それに伴い2007年3月より、入札談合等関与行為の範囲を広げたり、適用対象となる発注機関を拡大したりと、より厳しく取り締まる内容に改正しました。

【まとめ】建設業界では談合が当たり前になってしまっている!罰則があるので条件に該当しないよう注意しましょう!

本記事では、建設業界の談合について解説しました。

入札談合が当たり前になっているのには、発注者のためや受注に対する安心感を確保するためといった理由もあげられます。
しかし、入札談合はあくまでも不法行為であり、課徴金減免制度、独占禁止法の改正、入札談合等関与行為防止法によって厳しく取り締まられています。
とはいえ、入札談合はなかなか撲滅できません。なぜなら、入札談合により高額な仕事を受注できるメリットがあるからです。入札談合を「必要悪」としているのが現状と言えるのかもしれません。