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通常、会計業務は1年間の業績や純損失などを計上します。しかし、建設業の工事は1年以上かかる場合もあり、決算期に間に合わないケースがあります。そこで建設業には建設業会計と呼ばれる特別な会計方法があります。今回は建設業会計で使われる勘定科目についてまとめました。また労務費と外注費との関係についても掲載しているので、参考にしてください。
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建設業には建設業会計に定められた独自の方法が存在
建設業には、通常の企業では使われない「建設業会計」という専門的な会計処理が存在します。一般的な企業では取引先とやり取りする場合、数カ月で完了するケースが多いです。しかし、建設業では一般企業と違い、工事が完了するまで数カ月から1年以上と長い年月がかかります。一般の会計処理とは違うため、通常の会計方法とは異なる「建設業会計」という名称で処理が行われます。また、勘定科目も建設業会計専門の科目があり、処理方法や名前がしっかりと決められています。
建設業で使われる仕訳
一般的な会計と建設業の会計は違います。建設業会計で簿記に使用する勘定科目を紹介します。勘定科目の意味や仕訳についてまとめているので、参考にしてください。
完成工事未収入金
「完成工事未収入金」とは、売掛金にあたる勘定科目です。建設工事そのものは完成していますが、請負ったときの資金がまだ回収されていないときに使われる仕訳項目です。入金される日にちが翌期以降になる場合に使用されます。当期に工事が終了して、元請けに引き渡したあと、売上高に計上します。
仕訳は借方(左)「完成工事未収入金」/貸方(右)「完成工事高」です。
翌期に入金された場合は、借方「現金預金」/貸方「完成工事未収入金」の仕訳に変更されます。
未成工事支出金
「未成工事支出金」とは、仕掛品にあたる勘定科目です。建設工事そのものは完成していませんが、前もって費用を計上するときに使う仕訳項目です。未成工事支出金は翌期に売上計上されるのを見越して使います。未成工事支出金が発生したときに費用で計上すると、経費が当期に計算されて、売上と経費がごちゃごちゃになってしまいます。そのため、決算するときは未成工事支出金という形で仮の勘定科目を使います。
翌期に引き渡す工事の経費が当期に発生した場合は、借方「未成工事支出金」/貸方「現金預金」になります。
翌期に工事が完了して経費計上した場合は、借方「材料費」/貸方「未成工事支出金」の仕訳に変更されます。
未成工事支出金とは何かについてはこちらの記事で確認できます。ぜひこちらもご確認ください。
工事未払金
「工事未払金」は買掛金にあたる勘定科目です。工事費の未払いのことを意味し、工事が終了しても費用の支払いが終わっていないときに使う勘定科目です。労務費、材料費、外注費など工事に直接使った費用を工事未払金に計上します。通常の会計処理で使われる未払金は、販売費および一般管理費として処理されます。
工事には直接関わらない費用のときに使います。工事未払金と未払金は同じに見えますが違うので気をつけましょう。
決算する際、建設工事に使われた費用が支払われていないときは借方「材料費」/貸方「工事未払金」計上です。
翌期に現金預金で支払った場合は借方「工事未払金」/貸方「現金預金」で仕訳をします。
未成工事受入金
「未成工事受入金」は前受金にあたる勘定科目で、工事完成前に請け負った代金のことを指します。当期に契約が成立した証拠としてもらう手付金を未成工事受入金として処理します。そして、翌期に完成して引き渡す際に未成工事受入金を相殺します。ただし、翌期に完成して引き渡す予定がない工事の場合は、未成工事受入金として計上できないので注意しましょう。
当期に未成工事受入金を現金で受け取ったときは借方「現金預金」/貸方「未成工事受入金」になります。
翌期に工事が完成して所有権を引き渡した場合は、完成工事未収金が勘定科目に増えるので、
借方「完成工事未収入金」「未成工事受入金」/貸方「完成工事高」となります。
完成工事高
「完成工事高」は売上高にあたる勘定科目で、工事が完了して所有権を引き渡したときに発生する収益のことを指します。建設業では、工事完成基準か工事進行基準かで収益や原価の認識基準が変わってきます。工事完成基準の場合、工事が完成したときに請負金額をすべて完成工事高として処理します。工事が完成するまでに生じた工事原価は、未成工事支出金として計上されます。工事進行基準の場合、工事が完成していなくても工事の進み具合に合わせて完成工事高科目で計上します。
工事完成基準の場合は、借方「完成工事未収入金」/貸方「完成工事高」になります。
工事進行基準を採用した当期計上で翌期完成の場合、当期の仕訳は借方「完成工事未収入金」/貸方「完成工事高」です。
翌期の仕訳は借方「完成工事未収入金」/貸方「完成工事高」になります。
建設業において、労務費を外注費に置き換えるメリット5つ
一般的な原価計算では材料費、労務費、経費に分けられます。しかし、建設業の場合、労務費を外注費に置き換えることが可能です。外注費に置き換えた際のメリットを5つ紹介します。
1.人材不足解消
外注費の項目を使うと人材不足が解消できます。自分の会社では難しい業務や今の従業員ではどうしてもできない作業などをほかの会社に外注します。そうすることで受注する業務の幅を広げることが可能です。また、自社の仕事量を減らしたいときには、外注費で計上するのがおすすめです。外注費を上手に活用すると人材不足が解消でき、効率よく業務がこなせるので困っている建設業者は検討してみてください。
2.従業員を少なく保つ
労務費を外注費に置き換えると、少ない従業員で業務を行うことができます。今まで行っていた仕事をほかの会社に委託することで、新しく従業員を雇う必要がなくなります。また、従業員に余裕が生まれ、社内の重要な業務に向き合う時間が増えます。毎月必ず行う作業、しきりに起こる業務などを外注に置き換えると、従業員の作業内容が減り時間に余裕が生まれるでしょう。そうすると普段の追われがちな業務が減り、経営方針、業務効率化、重要な業務内容の見直しなどに考えが集中できるようになります。
3.所得税の源泉徴収が不要
人件費を外注費として支払うと源泉徴収が不要になります。源泉徴収が不要になると事務の業務が減りコスト削減につながります。通常、給与所得で支払いがある場合、会社側が給与所得者に対して源泉徴収を行い、国に納付します。そして、年末調整時には還付金を支給したりと会計処理が必要になります。しかし、外注費として計上している場合は、報酬を相手方に支払うだけなので、源泉徴収の工程がありません。外注費の源泉徴収は支払いを受けた人が確定申告で処理を行います。
4.消費税控除
外注費は課税仕入れになるため、仕入税額控除の対象になります。仕入税額が控除されると、消費税の納税額を抑えられます。自分の会社で直接人を雇って給料支払いにすると、消費税法で給与は課税に含まれないため、仕入税額控除にはなりません。しかし、ほかの会社に外注費として仕事を依頼した場合は、課税仕入れとして計上できるため、仕入税額控除としての処理が可能になります。仕入税額控除になると消費税申告のときに税金が抑えられます。
5.社会保険が不要
外注費は直接雇用ではないので、社会保険料の支払いがありません。一般的に直接雇用になった従業員には会社側から社会保険料が発生します。社会保険料は会社側と従業員両方で半分ずつ支払っているため、かなりの金額です。しかし、外注費の場合は社会保険料の支払いが不要なので、経費削減が期待できます。また、雇用保険についても社会保険と同じで、直接雇用の従業員の場合、雇用保険の加入と一部の費用を会社側が負担します。こちらも社会保険料と同様、外注費計上をすると発生しません。
外注費として仕訳をするための判断基準
外注費を計上すると経費削減ができるメリットがあります。しかし、外注費と給料を比べるとどちらが良いのかは一概には言えません。給与支払いと外注費とでは処理も違ってくるため、しっかり知識を身につけましょう。
作業に対しての報酬かどうか
外注費は作業した内容に対して報酬を支払います。給与支払いの場合は時給、日給、就業時間が決まっており、その時間の対価としてお金が支払われます。外注費の場合は、時間の縛りがなく、業務を行っている人が自分で就業時間を決めることが可能です。また、外注費は仕事をするときに請負契約を結び、作業内容や成果物に対して報酬が支払われるシステムです。時間の縛りがなく自由に作業を行え、業務内容に応じて報酬が支払われるのが外注費です。そして時間の縛りがある業務が給与と判断されます。
代替可能な作業かどうか
外注費には労務提供の代替性が認められています。そのため、外注費は本人に代わってほかの人に業務を提供することが可能です。しかし、1つの会社を専属で外注業務を行っている場合や代替できない仕事をしているなど、会社と従業員が深い関係で業務を行っている場合は、給与とみなされる可能性があります。ほかの人でもできる代替可能な仕事をしている場合は外注費、代替が難しい専門的な業務を行っているときは給与になると覚えておきましょう。
発注者が現場指揮監督を行うかどうか
外注費は一般的に発注した人から現場の指揮は受けません。外注費は請負契約で仕事をしてもらいますが、業務手順、進め方は請負っている人が自由に決められます。一方、会社の従業員のように発注した人から監督、指示、管理などを聞いて仕事を行う場合は、会社と直接雇用されているとみなされるため、給与になる可能性があります。自ら現場指揮監督を行って業務をする場合は外注費、そのほかは給与になると覚えておきましょう。
外注費が給与として認められないようにするためには?
外注費は経費削減につながりますが、税務調査で給与と判断される場合もあります。給与と判断されてしまうと追徴課税が発生する可能性があり、余計に手間がかかります。給与として認められないようにするためには3つの点に注意しましょう。
契約書を取り交わす
外注費として計上するためには、相手方と請負契約書を取り交わすのがおすすめです。請負契約書には依頼を受けた仕事が完成したときに、報酬額が発生することが記載されています。外注費は時間の拘束を設けず、請け負った会社から作業や成果物に応じて報酬が支払われます。直接雇用の場合は、時間での支払いや雇用契約に近い契約を取り交わしたとき、給与として認められます。外注する人との契約書をしっかり確認して取り交わしましょう。
社会保険なども個人負担する
外注費の場合は、業務に使う備品なども仕事を行う人に用意してもらいます。それに加えて交通費や社会保険などの諸費用も個人負担にしましょう。社会保険料、福利厚生費、交通費、そのほかの経費を会社が負担してしまうと、従業員としてみなされることがあります。税務署から外注費ではなく給与と判断される可能性があるので、保険などの諸経費は個人負担がおすすめです。
外注する事業主であること
外注費として計上するためには、相手が事業主であるかも確認しましょう。外注費は業務委託契約や請負契約を結んで業務を行ってもらいます。しかし、契約を結べるのは個人事業主や事業主だけです。また、外注費の場合は、給与とは違い社会保険料などもないので、金銭の負担が少ないです。普通の従業員と同様に仕事をしてもらいますが、契約上は請負契約を結んでいるだけという偽装請負になっている可能性もあります。偽装請負を防ぐためにも、業務を行ってもらう人が事業主かをしっかり確認し、従業員とは違った形式の扱いをしましょう。
また、一人親方の労災保険や建設国保の組合費が経費になるかについてはこちらの記事でも解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
一人親方の労災保険や建設国保の組合費は経費になる?法人化した場合についても解説
【まとめ】外注費として仕訳するときは建築業独自の仕分け方に注意しよう
建設業では一般的な会計業務とは違い、完成工事未収入金、未成工事支出金、工事未払金、未成工事受入金、完成工事高といった専門的な勘定科目があります。また、労務費を外注費に計上することで経費削減にもつながります。ただし、給与所得として認められる場合もあるので、外注費との違いをしっかり確認しておきましょう。
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