薬液注入工法とは?主に使われる4種類や手順・メリットなどを解説

薬液注入工法は、薬液を注入することで地盤を改良する工法です。主に掘削工事の際に安全確保のため使用される工法ですが、
「名前は聞いたことはあるが工事の内容はよく知らない」
という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は薬液注入工法のなかでよく使われる4つの工法と、メリット・デメリットを併せて紹介します。

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薬液注入工法とは

薬液注入工法とは、土を固まらせる薬液を地盤中の注入管に注入する工法です。軟弱な地盤を強化するだけでなく、止水性を上げ水の侵入を防ぐ効果もあります。
砂、礫(つぶて)などの粒子の大きい地盤に適しています。地盤に薬液を注入することで粒子の隙間の空気や水を追い出し、その間に薬液が浸透、固結することで粒子同士がくっつくという仕組みになっています。
土の組織を変化させることなく、地盤を強固なものにできる薬液注入工法は、様々な現場で重宝されています。

薬液注入工法の主な4種類と手順

薬液注入工法のなかで代表的なものは以下の4つです。

  • 二重管ストレーナー工法 単相式
  • 二重管ストレーナー工法 複相式
  • 二重管ダブルパッカー工法
  • 浸透固化処理工法

それぞれの工法について以下で解説します。

二重管ストレーナー工法 単相式

単相式の二重管ストレーナー工法は、二重管ボーリングロッドという注入管を利用する工法の1つです。注入剤には瞬結型のものを使用します。
手順としては、まず所定深度まで削孔したあと、薬液を注入します。

二重管ストレーナー工法単相式はコストを抑えられるだけでなく、全体的に均一な地盤の改良効果が期待できます。また、環境への影響が比較的少ないことも採用するメリットの1つと言われています。

二重管ストレーナー工法 複相式

複相式の二重管ストレーナー工法は、単相式と同様に二重管のボーリングロッドを注入管とする工法の1つです。
使用する薬剤は浸透性の薬液と瞬結型の注入材の2種類です。
手順としては、まず瞬結性の注入材で大きな隙間を埋め、その後浸透性の薬液で粒子間の浸透と注入を図ります。

二重管ストレーナー工法複相式はコストを抑え環境保全も行いながら幅広い地質に対応できるため、近年では単相式より複相式が主流になりつつあります。

二重管ダブルパッカー工法

二重管ダブルパッカー工法は、削孔と注入作業を別に行う工法です。
手順としては、まずケーシングで削孔し注入外管を埋設した後、さらに内管を挿入します。その後二段階に分けて薬液を注入します。
一次注入では地盤を均一化させ、二次注入では溶液型の注入材を使用して薬液を浸透させ地盤改良を行います。

二重管ダブルパッカー工法は、手間とコストがかかるというデメリットはありますが、

  • 高い注入効果が得られる
  • 確実に地盤改良ができる
  • 細かい範囲まで改良できる

というメリットがあります。そのため特に安全性を求められる工事や大型のプロジェクトで用いられる工法です。

浸透固化処理工法

浸透固化処理工法は特殊シリカを浸透注入し液状化を防止する工法です。特殊シリカを用いることで、薬液がゲル化し地盤に粘着力が加わり強化されるのです。

手順は二重管ダブルパッカー工法と手順が似ていますが、削孔後に注入外管を挿入し特殊シリカを浸透注入するという点が異なります。

浸透固化処理工法は液状化対策が必要な場所で重宝される工法ですが、小型の施工機械で注入するため構造物への影響が小さいというメリットもあります。そのため、すでに構造物がある下の工事などでも使用されています。

薬液注入工法5つのメリット

薬液工法を導入するメリットは以下の5つです。

  • 小規模で施工が可能
  • 騒音や振動が少ない
  • 環境への影響が少ない
  • 方向を選ばず施工が可能
  • 経済性・施工性に優れている

それぞれについて以下で詳しく解説します。

小規模で施工が可能

小規模で施工可能なことは、薬液注入工法を採用する大きなメリットの1つです。
薬液注入工法で使用する機械は、注入機器やボーリングマシンなど比較的小規模なものです。そのため、上空に電線のある低空等の場所や、スペースが広く取れない現場でも採用できます。

騒音や振動が少ない

薬液注入工法は、工事による振動や騒音を発生させません。打撃や掘削などの音を発生させず、注入作業のみなので近隣への音の影響を特に配慮する必要がないのは大きなメリットと言えるでしょう。特に現場の近くに住宅街やホテルがある場合には、薬液注入工法は重宝されます。

環境への影響が少ない

前述したように、薬液注入工法は環境への負担が少ないことで知られています。薬液注入工法では、産業廃棄物(温室効果ガス・ダイオキシンなど)が発生しません。そのため、自然環境だけでなく人体への影響も少ないというメリットがあります。

方向を選ばず施工が可能

薬液注入工法は地盤ごとに4つの工法のいずれかを採用し、あらゆる地盤に方向を選ばず対応できます。例えば、360度角度を選ばないので傾斜が急な崖や、垂直な壁でさえも注入可能です。

経済性・施工性に優れている

コストパフォーマンスに優れているのも、薬液注入工法の魅力の1つです。大型の機械を用いる必要もなく、薬液を注入するだけなので機材や人件費のコストを抑えられます。また、薬液を注入し固まるのを待つというシンプルな工程なので、特殊な技術を必要とせず工期が短いのもメリットと言えるでしょう。

薬液注入工法のデメリット

メリットが多い薬液注入工法ですが、薬液がうまく浸透しないと固化しきらず、地盤の品質にムラが発生するかもしれないというリスクがあります。
固化不良は土砂崩れや出水事故につながるため非常にリスクが高いトラブルです。土質によって薬液の浸透具合は異なるので、浸透具合は施工中に見極めなければなりません。

薬液注入工法の注意点

薬液注入工法は、水質に影響を与える可能性があるので注意が必要です。注入に用いるグラウト材は地盤には影響はありませんが、注入箇所の水質を変えてしまう可能性があります。
また、地盤変異などのリスクもゼロではないので、注入の際は水質や圧力をモニタリングしながら慎重に行う必要があります。

【まとめ】薬液注入工法は地盤沈下などに有効!騒音の心配がない点も魅力

薬液注入工法の紹介や、導入するメリットとデメリットを紹介してきました。コストパフォーマンスに優れ環境への影響も少なく、騒音や振動も起こさない薬液注入工法は、現場の安全確保のために様々な現場で用いられています。導入して自社の業務を拡大させるのはいかがでしょうか。

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