経営事項審査の点数とは?点数の目安や点数をアップさせるコツをご紹介!

経営審査事項 点数

建設業を経営している方にとって、公共工事を請け負うことは重要なことでしょう。国や地方公共団体が発注する公共工事は、建設業許可業者であることが必要ですが、経営事項審査を必ず受けなければなりません。

経営事項審査申請に関してもわからないという方がいるのではないでしょうか。そこで、今回は経営事項審査の点数の解説と、点数の目安や点数アップのコツなどをご紹介していきます。

経営事項審査とは?

経営事項審査とは、公共工事の入札に参加する建設業者が許可業種ごとに受けなければならない審査です。公共工事への競争入札はどこの建設業者でも参加できるわけではありません。

公共工事を発注する各機関は、競争入札に参加する建設業者を、客観的事項、主観的事項の審査結果を点数化し、順位・ランク付けを行います。この客観的事項の審査が経営事項審査です。

経営事項審査の点数とは?

経営事項審査の点数とは、公共工事を直接請け負うとする建設業者の経営規模・経営状況・技術力的能力とその他の項目の審査結果を数値化したものです。

経営事項審査は全国統一の点数で審査が行われます。地域や業種が異なっていても、点数を算出する方法は同じです。一般建設業、特定建設業、大臣許可、知事許可でも違いはありません。

経営事項審査の総合評点は5つの要素から成り立つ

経営事項審査の総合評点は以下5つの要素から成り立ちます。

  • 経営規模【X1】完成工事高
  • 経営規模【X2】自己資本額と職員人数
  • 技術力【Z】技術職員(有資格者1人2資格まで)の数
  • 経営状況分析【Y】建築業財務諸表の分析
  • その他の評点【W】労働の状況、営業継続年数、若年の技術者育成他

この評点に、それぞれの決まった掛率を掛けて合算することで総合評点を求められます。

総合評点【P】=0.25【X1】+0.15【X2】+0.2【Y】+0.25【Z】+0.15【W】

最高点は2,134点、最低点は-18点です。

経営事項審査の評点

経営事項審査は総合評点Pと呼ばれるもので評価されます。建設業の業種区分ごとに行います。総合評点Pは、会社の経営規模や経営状況などを数値化した【X1・X2・Y・Z・W】の5つの評点に、決まっている掛け率を掛け、合算した値です。ここから各評点について解説していきます。

【X1】完成工事高評点

完成工事高評点【X1】は建設業者の経営規模を表す指標で全体の25%を占める要素のため重要です。建設業許可の28業種別に完成工事高1,000万円未満〜1,000億円以上までの42区分にわけて評点の計算をします。

計算は「完成工事高評点(X1)算出テーブル」に当てはめて評点を出します。算出テーブルを使用した算出式は以下の通りです。

11〜131の値×(建設工事の業種別年間平均完成工事高)/2,000〜20,000,000の値+397〜1,791の値

例えば、許可を受けた建設業に係る建設工事の年間平均完成工事高が1,000万円未満の場合は、以下の算出式となります。

X1=131×(年間平均完成工事高(千円単位))/10,000+397

完成工事高は2年か3年の年間平均で見ていきます。どちらで当てはめるか選択可能ですが、技術力評点(Z)で使用する元受完成工事高評点算出時の平均年数とあわせることが必要です。

参照元:(株)建設業経営情報分析センター

【X2】経営規模評点

経営規模評点【X2】も経営規模を表します。こちらは全体の15%を占める要素です。自己資本額点数(X21)と平均利益額点数(X22)を算出テーブルに当てはめて算出します。

自己資本額点数(X21)の算出テーブル平均利益額点数(X22)の算出テーブルに当てはめ、算出した数字を下記の計算式に当てはめます。

経営規模評点(X2)=(自己資本額点数(X21)+平均利益額点数(X22))/2

平均利益額の値は利払前税引前償却前利益の2期の平均値です。利払前税引前償却前利益の算出式は以下の通りです。

利払前税引前償却前利益=営業利益+減価償却実施額

参照元:(株)建設業経営情報分析センター

【Y】経営状況評点

経営状況評点【Y】は会社の経営状況を表し、全体の20%を占めています。経営状況評点は4つの指標について2つずつ、計8つの指標から成り立ち、この8つを算出します。

指標「負債抵抗力」が、純支払利息比率(Y1)・負債回転期間(Y2)です。指標「収益性・効率性」は、総資本売上純利益率(Y3)・売上高経常利益率(Y4)になります。指標「財務健全性」は、自己資本対固定資産比率(Y5)・自己資本比率(Y6)です。指標「絶対的力量」については、営業キャッシュフロー(絶対額)(Y7)・利益剰余金(絶対額)(Y8)になります。

指標記号経営状況分析の指標算出式単位下限値~上限値
負債抵抗力X1純支払利息比率(支払利息-受取利息配当金)/売上高×100%-0.3~5.1
X2負債回転期間負債合計/(売上高÷12)ヶ月0.9~18
収益性・効率性X3総資本売上総利益率売上総利益/総資本(2期平均)×100%6.5~63.6
X4売上高経常利益率経常利益/売上高×100%-8.5~5.1
財務健全性X5自己資本対固定資産比率自己資本/固定資産×100%-76.5~350
X6自己資本比率自己資本/総資本×100%-68.6~68.5
絶対的力量X7営業キャッシュフロー(絶対額)営業キャッシュフロー(二期平均)/1億億円-10~15
X8利益剰余金(絶対額)利益剰余金/1億億円-3~100

Y1からY8までを経営状況点数(A)を出すための式に当てはめます。経営状況点数(A)の算出式は以下の通りです。

経営状況点数A=-0.4650×X1–0.0508×X2+0.0264×X3+0.0277×X4+0.0011×X5+0.0089×X6+0.0818×X7+0.0172×X8+0.1906

次に(A)を、経営状況評点【Y】を算出する式に当てはめます。経営状況評点【Y】の算出式は以下の通りです。

経営状況評点Y=167.3×A(経営状況点数)+583

計算には建設業財務諸表が必要です。一般的な財務諸表と内容が異なっているため、注意しましょう。

参照元:(株)建設業経営情報分析センター

【Z】技術力評点

技術力評点【Z】は全体の25%を占めている技術力を審査する評点です。技術職員が持っている資格の種類、資格者数によって評点が違います。技術職員数評点(Z1)と元請完工高評点(Z2)からなる技術力評点はそれぞれの算出テーブルに当てはめますが、技術者の数値を先に求める必要があります。

技術職員の数値は資格区分に基づいて算出します。ただし、1人の職員について申請できる建設業種類は2つまでとなりますので注意してください。技術職員の数値を求める算出式は以下の通りです。

評点技術職員区分
G16点1級管理受講者  一級監理技術者資格者証を保有かつ講習受講者
G25点1級技術者    一級技術者であってG1以外の者
G34点監理技術者補佐 監理技術者を補佐する資格を有する者

(主任技術者となる資格を有し、一級技術士補である者、等)

G43点基幹技能者   登録基幹技能者講習の修了者

能力評価基準によりレベル4と判定された者

G52点2級技能者    国家資格2級・1級を有する者 等

能力評価基準によりレベル3と判定された者

G61点その他技術者  実務経験を有する2級技能者

実務経験による主任技術者等

また、元請完成工事高評点(Z2)については完成工事高評点【X1】の算出時に選択した平均年数と同じになります。技術職員数評点と元請完工高評点の算出テーブルにあわせて技術力評点【Z】を算出します。

技術力評点Z=((技術職員数点数Z1×4)+元請完工高点数Z2)/5

参照元:(株)建設業経営情報分析センター

【W】その他の評点

その他の評点【W】として社会性等評点があります。こちらは全体の15%です。これまでご説明してきた評点以外の審査される項目です。

また、審査基準日が令和5年8月14日以降から算出式が変更となりました。令和5年8月14日以降から「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況(W1-⑩)」評価を追加し、以下の算出式を用いて、その他の評点【W】を算出します。

その他評点W=(担い手の育成及び確保に関する取組の状況(W1)+営業継続点数(W2)+防災協定点数(W3)+法令遵守点数(W4)+建設業経理点数(W5)+研究開発点数(W6)+建設機械保有点数(W7)+国又は国際標準化機構が定めた規格による登録状況(W8))×(1,750/200)
記号項目評点(最大)
W1建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況

①雇用保険の加入状況

②健康保険の加入状況

③厚生年金保険の加入状況

④建退共の加入状況

⑤退職一時金もしくは企業年金制度の導入

⑥ 法廷外労災制度の加入状況

⑦若齢技術者及び技能者の育成及び確保の状況

⑧知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況

⑨ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況

⑩建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況

(77)

-40

-40

-40

15

15

15

2

10

5

5

W2建設業の営業年数60
W3防災活動への貢献の状況20
W4法令順守の状況-30
W5建設業の経理の状況30
W6研究開発の状況25
W7建設機械の保有状況15
W8国又は国際標準化機構が定めた規格による登録状況10

参照元:国土交通省 建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況(新設)

参照元:国土交通省 経営事項審査の主な改正事項

参照元:(株)建設業経営情報分析センター

経営事項審査点数の目安

総合評点【P】が1000点以上、経営状況分析【Y】が700点以上あれば、大きな工事に参加できるようになるでしょう。この点数は経営事項審査点数の目安となります。

総合評点【P】は重要ですが、経営状況分析【Y】が最も大事な評点となっているのではないでしょうか。経営状況分析【Y】の評点が低いと常に借金をしている体質になってしまい、公共工事を受けるにも敬遠されてしまう可能性があります。取引銀行にも言えることでしょう。

経営状況分析【Y】の評点目安としては、500点以下になってしまうと敬遠される要素になるため注意が必要です。

経営事項審査の点数をアップさせる方法

ここからは経営事項審査を行う際、それぞれの評点をアップさせる方法を解説いたします。各評点は「算出テーブル」によって計算されてしまいますが、ポイントをいくつか抑えることで大幅な点数アップも期待できるでしょう。順番に解説していきますので参考にしてください。

【X点】完成工事高の計上の仕方を工夫する

一般的に完成工事高は工事が完了後に収益として計上する「工事完成基準」という会計方式を用いている会社が多いです。そうなると工事途中の発注や経費について工事完了しなければ計上されず、赤字になる可能性もあります。

また、工事が完了しなければ収益の計上はありません。完成工事高を計上するには「工事進行基準」という会計方式を用いて完成工事高を計上します。工事進行基準は工事進行中に状況に応じて完成工事高を計上できる方法です。完成工事高を高く計上することが可能ですが、審査年度のタイミングを考える必要がありますので注意しましょう。

さらに注意してほしい点が、完成工事高をあげるために利益がない工事や赤字工事を受注することです。完成工事高【X1】は高い数字になるでしょう。しかし、財務内容が悪化してしまう可能性があり、【Y】の数字が低くなってしまう恐れがあります。よく考えて受注するようにしましょう。

【Y点】資本金を増やす

【Y点】は経営状況の評点となるため、点数をアップする大きなポイントと言えるでしょう。資本金を可能な限り増やすことは、自己資本対固定資産比率(X5)・自己資本比率(X6)の評点が改善されます。資本金を増資する方法や係る費用についてはしっかりと検討したうえで行う必要があるでしょう。

【Y点】借入金や固定資産を減らす

単純に負債を減らすことで、負債回転期間(X2)や総資本売上総利益率(X3)の評点が改善します。特に負債額や純資本額を減らす、短期借入金などの流動負債の返済は点数改善につながるでしょう。

また、固定資産を減らすことも財務健全性の自己資本対固定資産比率(X5)を減らせます。重機など高額な建設機械はリースを活用する方法があります。返済、リースどちらに関しても銀行や税理士などに相談したうえで、会社の状況をみながら検討しましょう。

【Y点】受取利息を計上する

受取利息の計上は、純支払利息比率(X1)を改善できる方法です。受取利息を雑収入に計上しているという場合は、支払利息を下げることができません。もったいないことになっています。

正確に受取利息を計上して純支払利息を下げることをおすすめします。また、融資を活用する場合は、なるべく金利の低い融資で支払利息を下げることを意識しましょう。

【Z点】資格保有者を増やす

【Z点】は会社の技術力を評点としています。すぐに評点をあげることが困難でも長期的に対策していくことで評点をあげることは可能です。特に資格保有者を増やすという点は最も効果的と言えるでしょう。

格取得の推進や学費補助、資格保有者に対して手当を設けるなど職員が資格取得を目指せる環境を整備しましょう。

【Z点】管理技術者講習を受講する

技術職員で1級技術者が社内にいる場合、管理技術講習の受講を促しましょう。受講することで管理技術資格者証を保有でき、1級技術者は5点ですが、1日だけの講習で6点の加点になります。受講していない場合はぜひ受けるようにしてください。

【W点】社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険)に加入する

【W点】は審査項目が多いため、評点をあげる方法も多いでしょう。加点される社会保険制度への加入状況が評価されます。一般的に、雇用保険・健康保険・厚生年金保険には加入している会社がほとんどです。万が一加入していないのであれば必ず加入してください。

【W点】建設業退職金共済に加入する

建設業退職金共済は、建設業の事業主が共済契約者となって職員が被共済者となります。建設現場で働く方々の福祉の増進と雇用の安定を図るため、中小企業退職金共済法に基づいて創設され、ほとんどの建設業者が加入しています。加入すると15点と大幅な評点アップができます。

【W点】法定外労災保険に加入する

法定外労災保険とは民間の損害保険会社によって労災の上乗せをする保険です。条件を満たせば認められますが、加入については手続きや契約更新などを行う必要があるため、忘れないようにしましょう。

【W点】退職一時金制度を利用する

退職一時金制度とは現場で働く職員よりは事務所で働く職員が加入すると良いでしょう。1人の職員が建設業退職金共済と退職一時金制度に加入することはできないため、職員を職種で振り分けて、どちらにも加入することで両方の加点が見込めます。

公共工事の入札に参加する方法や資格とは

公共工事は、民間工事ではできないような大規模な工事に携わることができるため、施工実績として会社の信頼度が向上します。さらに、安定した受注量が確約でき、工事代金を現金で受け取れるために未払いのリスクもありません。しかし、公共工事を落札するためには幾つかのステップをクリアしなければなりません。

こちらの記事では公共工事の入札に参加するための手順や落札のコツについて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
公共工事の入札に参加するには?必要な資格や入札の流れについて解説!

「工事成績評定」とは?高得点を獲得するためのポイント

「工事成績評定」とは、工事のプロセスや出来栄えを評価する制度であり、将来のプロジェクトの改善に役立つ重要なものです。点数が高ければ、優良な土木工事業者だと認められ、次の受注につながります。

土木業に携わる方のなかには、「工事成績評定の点数がなかなか上がらない」、「同じ対応をしているはずなのに点数にばらつきがある」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。

こちらの記事では工事成績評定の概要や高い点数を取るためのポイントを解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
土木の公共工事で導入されている「工事成績評定」とは?高得点を獲得するためのポイントを解説

【まとめ】経営事項審査の点数は技術力や経営状況を審査する大切な指数!点数を基準にしてより良い会社を作ろう

今回は経営事項審査についての点数について解説しました。点数は会社の経営規模、技術力、経営状況、その他の項目の5つで評価され、総合評点となります。重要な指標となっているため、点数を基準にしてどの項目で加点ができるか検討してみましょう。

公共工事の入札へむけた経営事項審査を受けるための大切な点数です。申請をおこなう際には十分に検討する必要がありますので、この記事をぜひ参考にしてみてください。

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