施工体系図とは?施工体系図の記入例や書き方について紹介!

施工体系図

建設工事は複数の人が役割分担をして作業を行います。しかも複数の会社で1つの建設物を完成させることも頻繁にあります。多くの人が関係している建設現場では、誰がどのような作業をしているのかがわかりにくくなります。

誰がどんな作業をしているのか、第三者が見てもわかりやすく書き出したものが施工体系図です。

今回は施工体系図とは何なのか、どのようにして書くのかを解説していきます。最後まで読めば、施工体系図の書き方や重要性もわかるでしょう。

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施工体系図とは?

施工体系図とは、誰がどのような作業を担当しているのかを書き記したものになります。担当者の氏名だけではなく、役職も記載する必要があります。施工体系図は元請け会社が作成しなければいけません。

施工体系図を作成する目的は主に以下の3点です。

  • 下請業者も含め、全ての工事関係者が建設工事の施工体制を把握するため
  • 建設工事の施工に対する責任と工事現場における役割分担を明確にするため
  • 技術者が適正に配置されているか確認するため

なかには施工体系図の作成が義務付けられている工事もあります。民間工事と公共工事で異なっている部分があるので、分けて解説します。

施工体系図の作成義務について

施工体系図の作成義務は民間工事であれば請負金額によって決まります。下請け契約が4000万円以上ある建設工事では、施工体系図を必ず作成しなければいけません。

ちなみに公共工事の場合には、金額に関係なく直接工事を請け負ったら施工体系図の作成が義務化されます。

民間工事の場合

民間工事では、下請契約の総額が4500万円以上である場合に、施工体系図の作成をしなければいけません。建設工事一式の場合は、総額が7000万円以上のときに作成義務が発生します。

施工体系図は書き終わったら終了ではありません。工事に携わる人が見やすい位置に施工体系図を掲げる必要があります。これは建設業法で定められているので、必ず実行しなければいけません。

また、工事が終わったら、作成した施工体系図を10年間保管する義務があります。

公共工事の場合

公共工事で発注者から直接工事を請け負った場合、必ず施工体系図を作成しなければいけません。公共工事は民間工事とは異なり、直接工事を請け負うのが一般的です。したがって、全ての公共工事で施工体系図の作成義務があると考えておきましょう。

民間工事では工事関係者がすぐに確認しやすい場所に施工体系図を掲げる必要がありました。しかし、公共工事では工事関係者だけではなく、公衆からも見やすい場所に掲げなければいけません。

施工体系図の掲示場所と掲示方法

施工体系図は、作成しただけで義務を果たしているわけではありません。作成したら必ず提示する必要があります。作成した施工体系図の提示場所は、民間工事であれば作業員が見やすい場所になります。

公共工事の場合には、作業員だけではなく公衆にも見える場所に掲示しないといけません。掲示の方法としては、専用のケースに入れる方法や掲示板に貼り付ける方法が一般的です。

また、下請け業者に変更が発生した場合は、即座に新たな施工体系図を作って掲げ直す必要があります。

施工体系図の保管期間

施工体系図は、工事が終了したら掲示した物を取り外して問題はありません。しかし、工事の際に掲示した施工体系図は、工事が終了してから10年間保管する必要があります。

建設業法施行規則第26条第5項により、施工体系図の保管を決められているためです。さらに、建設工事の依頼があった営業所ごとに保管する必要があります。ただし、10年を超えたら保管義務がなくなるので、処分しても問題ありません。

施工体系図の記入例・書き方

施工体系図を書こうと思っても、初めてだとよくわからないことがあります。そこで施工体系図の書き方や、どのように記入すればよいのかを説明していきます。

引用元:https://www.kkr.mlit.go.jp/kensei/kensetugyo/pdf/14.pdf

左側部分

施工体系図はたくさん記入しなければいけない項目があります。まずは左側部分にある各項目を説明していきます。

発注者名

左側の1番上の段には、発注者名と書かれている段があります。この欄には発注者名を記入します。発注者というのは、建設工事をしてほしいと建設業者に伝え、作業をお願いする会社や組織のことです。

例えば公共工事の依頼を都道府県や市区町村から受けたとします。この場合は都道府県や市区町村が発注者となります。そのため、公共工事の依頼を受けたのであれば、依頼をしてきた都道府県や市区町村の名前を発注者名のところに記載するのです。

工事名称

発注者名の下の段にある工事名称という欄には、どのような工事を行うのかを記載します。これは元請け業者が担当する工事の内容です。

例えばマンションの建設をしてもらいたいという依頼を受けたとしましょう。この場合は建設工事を行うという旨と、マンションの名前を書くようになります。○○マンション建設工事などと書けば問題ありません。

他の工事であっても書き方は一緒です。長い文章で詳しく書くのではなく、できるだけ簡潔に短く書く必要があります。

事業者ID・元請け名

元請け名と書かれた欄には、元請け会社の名前を記入します。会社名を書くのであって、代表者名を書くのではないので注意しましょう。施工体系図によっては、元請け名という欄だけではなく、事業者IDを記入する欄が設けられていることもあります。

事業者の欄があった場合には、建設キャリアップシステムに登録している場合のみ該当するIDを記入します。建設キャリアップシステムに登録していない場合には、事業者IDの欄に何か書く必要はありません。

監督員名

建設現場にはいろいろな役職の人がいます。監督員もその1つなのですが、施工体系図には監督員名を書く欄も存在しています。監督員の名前はフルネームでしっかりと書きましょう。

監督員というのは、施主の立場と言っても過言ではありません。設計や建設作業、契約書や書類のチェックなど、幅広く仕事を行い、労働者に指示をする人です。注文者の代理人とも言われており、工事現場の最高責任者であることから、名前を明記する必要があるのです。

主任技術者名・監理技術者名

建設現場で重要な役職に就いている人の名前は、施工体系図に記さなければいけない場合が多いです。主任技術者や管理技術者も同様になります。主任技術者名と監理技術者名は、記載する欄が一緒になっています。主任技術者はどの建設現場にも配置が必要です。

しかし、請負金額が4500万円を超える場合、主任技術者に代わって管理技術者を配置しなければいけません。4500万円を超える工事なら監理技術者の名前、4500万円以下の工事なら主任技術者の名前を書きましょう。

担当工事内容・専門技術者名

工事の内容によっては、別の専門工事を行わなければいけないこともあります。専門工事を自社で行わなければいけない場合、現場や担当業種ごとに専門技術者を配置しなければいけないのです。

一式工事とは別に、専門工事を自社で行う必要があるのであれば、施工体系図に専門技術者の名前も書かなければいけません。書く内容は専門技術者の名前だけではなく、どのような工事を担当したのかがわかるように、担当工事内容も一緒に記載する必要があります。

総括安全衛生責任者

工事現場には、配置しなければいけない役職の人が多数います。中には条件付きで配置義務が発生する役職も存在します。そして、作業員が50人以上いる場合に配置義務が発生する役職が、総括安全衛星責任者です

ただし、圧気工事や一部の橋梁工事では、30人以上で総括安全衛生管理者を配置しなければいけません。これは労働安全衛生法第15条で定められています。施工体系図にも総括安全衛生管理者の名前を書く欄が設けられているので、フルネームで記載しましょう。

副会長

施工体系図は元請け業者が記載します。そのため、氏名を書く欄には、主に元請け業者で役職に就いている人になります。しかし、一部下請け業者の人の名前を書かなければいけない項目があるのです。それは副会長なのですが、副会長は元請け業者が選出します。

ただし、共同企業体の場合には少し異なっています。共同企業体でなければ、元請け業者が選出した人の個人名を書けば問題ありません。共同企業体であれば、企業体を形成する事業者の名前を書くようにしましょう。

元方安全衛生責任者

施工体系図には総括安全衛生管理者を補佐する立場にある元方安全衛生責任者の名前も書かなければいけません。元方安全衛生責任者は、総括安全衛生管理者が選出します。元方安全衛生責任者の主な仕事内容は、

  • 協議組織の設置や運営
  • 作業の調整や連絡
  • 作業現場の巡視
  • 安全面などの指導や援助
  • 業務を円滑に進めるための指導や計画

などがあります。補佐という立場でも、欠かせない役職であることから、施工体系図に名前をする必要があります。

右側部分

ここまでは施工体系図の左側部分を見てきました。ここからは施工体系図の右側にある項目について見ていきましょう。

工期

工期の欄には、工事が始まる日と終了する日を記入します。工期のところを確認すると、自と書かれている部分と至と書かれている部分があります。自と書かれている欄には、工事が開始される日にちを書きましょう。

至と書かれている欄には、工事が終了する日を書きます。しかし、工事は屋外での作業になります。そのため、悪天候で作業が行えない日が出てくる可能性もあるでしょう。作業が行えなければ工期終了日までに工事が完成しないこともあります。

このような場合には、工期延長届を出さないといけません。

工事内容

工事内容の欄には、きちんとどのような工事を行っているのかわかるように、具体的に書かなければいけません。具体的にとは言っても、長文ではなく簡略化した上で分かりやすく記入する必要があります。

例えば雑居ビル、鉄筋コンクリート造、地上7階、延べ面積 2352m2などです。さらに外壁タイル貼り、屋上ウレタン塗膜防水工事など、作業内容も付け加えておきます。全ての工事内容を記載する必要はありませんが、建物の用途や規模は書いておいた方がよいでしょう。

事業者ID・会社名

下請け業者と元請け業者が契約を結んだ場合、会社名の欄に下請け業者の名前を書く必要があります。しかし、建設業界では元請け業者と契約を結んだ下請け業者が、さらに下請けに仕事を依頼することも珍しくはありません。

そのため、会社名を記入する欄は、一次下請けから四次下請けまで設けられています。最も左の欄にある一次下請けのところに、元請け業者と直接契約を結んだ下請け業者の会社名を書きましょう。

一次下請けがまた別の下請け業者と契約をした場合は、二次下請けの欄に会社名を書くようになります。

安全衛生責任者

建設現場には安全衛生管理者も必要な存在です。そのため、施工体系図にも安全衛生管理者の名前を記載しなければいけません。安全衛生管理者の仕事は、統括安全衛生責任者の補佐が多いと言えるでしょう。

統括安全衛生責任者から連絡を受け、建設工事の関係者に伝えるなどの業務を行います。安全衛生責任者になるための資格というのは存在していません。ただし、安全衛生責任者に選ばれるのは職長や現場代理人、もしくは主任技術者が一般的です。

主任技術者

高度な技術がなければ、安全に使用できる建物を作ることができません。そんな技術面の管理や監督を行う人が主任技術者です。下請け業者に依頼をする場合には、下請け業者に対しての指導や安全管理なども行います。

主任技術者は、全ての工事現場に配置しなければいけません。そのため、施工体系図にも名前を記入する欄が設けられています。ただし、契約額が4000万円以上、一式工事では8000万円以上の工事で、代わりに専任技術者を配置するようになります。

専門技術者・担当工事内容

施工体系図の左側にも専門技術者の名前と担当工事内容を記入する欄が設けられていました。しかし、右側にも同じ項目が設けられています。なぜ同じ項目があるのかというと、専門技術者は現場や担当する業種ごとに配置しなければならないためです。

そのため、下請けに500万円以上の工事を依頼した場合、専門技術者の配置が必要になります。右側の項目にも専門技術者名と担当工事内容を書く欄があるのはそのためです。500万円未満の軽微な工事であれば、専門技術者を配置する必要はありません。

施工体系図はExcelか専用ソフトでの作成がおすすめ

施工体系図はExcelを使って作成する場合が多いです。しかし、施工管理アプリなどのソフトを使うことで、作成から保管まで書類を一括管理できます。

Excelを使っての手入力では起きやすい、ケアレスミスもソフトを使えば防ぐことも可能なので、おすすめです。さらに、情報漏れや見落としもなくなるため、業務の効率化を期待できます。おすすめの施工管理アプリはこちらの記事で紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。

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【まとめ】施工体系図は関係者全員の関係が一目で分かる!

今回は施工体系図の書き方や実際の記入例などについて紹介してきました。建設現場にはいろいろな役職の人がいます。役職の人の名前や工事の内容など、書かなければいけない事柄がたくさんあります。

そのため、最初は難しいと感じる点もあるでしょう。施工体系図の右側と左側で、同じような項目もあります。しかし、要点をきちんと把握しておけば、そこまで難しい内容ではありません。初めて施工体系図を作成するときは、記入例を見ながら書くのがよいでしょう。

 

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