法定福利費を建設業の見積もりに書くときの計算式とは?ざっくり出す方法や記入例を解説

建設業で下請け工事を受注すると、見積書に法定福利費の明示が求められます。

なぜ法定福利費を記載しないといけないのか、疑問を抱いた方もいるのではないでしょうか。

そもそも法定福利費がどういうものか、理解できていない方もいるかもしれません。

本記事では、建設業者のための法定福利費の計算式や、見積書への記載例についてまとめました。

法定福利費の意味やなぜ記入が必要なのかといった、基本的な知識から解説しています。

法定福利費に関する疑問がある方は、ぜひ最後までお読みいただき業務にお役立てください。

法定福利費とは?なぜ必要

法定福利費を簡単に言うと、企業(雇用主)に負担が義務付けられている保険料のことです。

法定福利費の対象となる保険は、以下の6種類です。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険
  • 子ども・子育て拠出金

法定福利費は、全額を事業主が負担する「労災保険」「子ども・子育て拠出金」を除き、事業者負担と従業員負担分があります。

従業員負担分は、給料支払い時などで天引きされるのが一般的です。

事業主負担分は、法定福利費として経費に計上できます。

なお、似た言葉に福利厚生費がありますが、これはまったく別のものです。

法定福利費は、必ず加入しなくてはならない労働者のための保険料ですが、福利厚生費は交通費や接待費など、法で負担が定められていない費用を指します。

混同しないようにしましょう。

建設業で法定福利費の見積書が求められる理由は?

建設業は平成25年、見積書に正確に計算された法定福利費の記入が義務化 されました。

建設業は、休日出勤や人手不足といった、労働環境に関する問題を多数抱えています。

この問題は、現在も改善に向けて国や企業が取り組んでいることでもあります。

その改善策のひとつとして、見積書に福利法定費の記入が義務化されました。

社会保険や労働保険に加入していることを明記させることで、労働環境改善につなげていくための施策 です。

これは現場労働者を雇っている事業者が、健全な運営をしていることを示す証拠でもあります。

法定福利費の計算方法・計算例は?ざっくり出す方法も

見積書に記載する前に、法定福利費を計算しておく必要があります。
建設業では通常、工事ごとに見積書を発行します。

法定福利費も見積書ごとに記入しなくてはならないため、どの見積書にも同じように計算しなければなりません。

そのため、計算方法や計算例、さらにはざっくり計算する方法についても知っておきましょう。

計算手順に従って解説します。

ステップ1:労務費を計算

労務費、つまり一つの工事に直接携わる現場労働者に支払うお金を計算します。

建設業の見積で計算する労務費は、以下の計算式で求められます。

「一日当たりの賃金」×「工事に必要な人数」=「労務費」

このほか、厚生労働省が定めている労務費率を使う方法もあります。

自社が採用している方法を使って計算しましょう。

建設業の労務費計算の方法!重要性や人件費との違いについても解説

ステップ2:法定福利費を計算

労務費が分かると、それをもとに法定福利費が計算できるようになります。

社会保険料は、労働者の賃金に応じて保険料が算出されるので、月額報酬に各保険料率を掛け、さらに事業主負担割合を掛けて計算します。

計算方法は保険料ごとに異なるため、注意が必要です。

以下は、法定福利費の事業者負担分の計算方法を、表で示したものです。

保険料 計算方法
健康保険料 標準報酬月額×健康保険料率×二分の一
厚生年金保険料 標準報酬月額×厚生年金保険料率×二分の一
介護保険料 標準報酬月額×介護保険料率×二分の一
雇用保険料 賃金総額×雇用保険料率×三分の二(建設業)
労災保険料 賃金総額×労災保険料率
子ども・子育て拠出金 標準報酬月額×子ども・子育て拠出金率

法人と個人事業主では保険料が異なる

個人事業主の場合、条件によっては加入が不要な保険もあるため、計算すべき保険料が異なります。

  • 健康保険、介護保険、厚生年金:個人事業主かつ常時従業員を5人以上雇っていない場合は加入は任意
  • 雇用保険:週20時間の労働・契約期間31日以上の条件を満たしている場合は1人から加入が義務づけられる
  • 労災保険:1名でも雇っていれば徴収される
  • 子ども・子育て拠出金:厚生年金に加入する従業員がいれば徴収される

このように、条件により計算すべき保険が変わるため、雇用状況により計算する保険料も変化します。

自社の場合に必要な保険料については、あらかじめ確認しておきましょう。

ステップ3:事業者負担分を記載

法定福利費を計算したら、提出する見積書に事業主負担分のみを記載します。

保険料ごとに事業者負担率が異なるため、注意しましょう。

事業者負担率をまとめると、以下のようになります。

  • 全額の半分:健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料
  • 全額の三分の二:雇用保険料
  • 全額:労災保険料、子ども・子育て拠出金

割合や金額を間違えると、見積もりにも大きく影響します。

誤記入しないよう注意しましょう。

提出前に一度見直すことも大切です。

建設業の法定福利費をざっくり計算する方法は?

法定福利費がいくらぐらいになるのか、目安を知りたい方は、まずはざっくりとでも計算してみてください。

「ざっくりとでは意味がない」と思われる方は、細かく計算しましょう。

一般的に以下の計算式で算出します。

「労務費総額」×「社会保険料率」=「法定福利費」

なお、社会保険料率は、都道府県や年度によって異なります。

そのため、法定福利費を計算するときは、必ず自社が加入している団体を確認し、「協会けんぽ」「日本年金機構」「厚生労働省」など各公式サイトで確認しましょう。

【参考】

法定福利費の書き方/記入例は?

法定福利費は、法的な規定としてだけでなく自社の健全性を示す重要な内容です。

見積書に記入する際の方法を覚えておきましょう。

以下の図は、国土交通省が公開している記入例です。

法定福利費の書き方/記入例

引用:国土交通省・法定福利費を内約した見積書の作成手順

必ず同じ書式にする必要はなく、自社の書式でも、法定福利費の内訳が明示されていれば問題ありません。

書き方については、以下のポイントに注意して記入しましょう。

  • 法定福利費は事業主が費用を負担する分のみ記載する
  • 消費税は法定福利費を含めた合計金額で計算する

法定福利費を見積書に記載する際の注意点とは?

法定福利費を見積書に記入する際は、いくつか注意すべき点があります。

記入方法や計算方法とともに、覚えておきましょう。

次は、見積書に法定福利費を記入する際の注意点を解説します。

注意点①各種保険へ未加入の企業は仕事ができない

見積書があっても法定福利費の記載がなければ、元請け業者は仕事を発注できません。

各種保険には必ず加入しましょう。

建設業の見積書に法定福利費の記載が義務化された一番の原因は、各種保険への未加入問題です。

企業が本来加入すべき保険に加入しないまま業務を続けていると、従業員は公的保障を受けられません。

健康保険であれば怪我をしたときに保険が適用されず、厚生年金保険であれば老後に年金を受け取れないなどの問題があります。

多くの企業がこのような状況であり、建設業界全体に否定的なイメージが広がれば従業員が建設業界から離れる可能性が高まります。

建設業界では人材不足が深刻な課題となっているからこそ、職場の改善が大切です。

注意点②下請け企業は必ず法定福利費を見積書に記載が必要

下請け業者が工事の見積書を作成する場合、必ず法定福利費を記載する義務があります。

法定福利費や材料費、労務費などを「請負額」などとして大まかにまとめた見積書を提出することは認められていません。

ざっくりとした金額ではなく、算出された正確な金額を記載しましょう。

また、記載されていない場合や、間違っている場合、仕事を受けられなくなります。

さらに、何度も記載ミスを繰り返していると、元請けからの信頼を失いかねません。

必ず正しい金額を記載してください。

注意点③元請け企業は見積書に法定福利費が記載されているか要確認

元請け業者は、下請け業者の見積書に正しい法定福利費が記載されているかチェックする必要があります。

見積書が提出されたら、その金額に誤りがなく適切なものかを確認しましょう。

法定福利費の記載がない場合や、いいかげんな金額が記入されている場合、加入すべき保険に加入していない業者である可能性が考えられます。

違法な業者を使い、事故などにつながれば自社の評判にも大きく影響するでしょう。

健全な運営をしている下請け業者を選ぶようにしてください。

これにより、法令遵守と労働者の権利保護が確保されます。

法定福利費を見積書に記載する際のよくある質問3選

法定福利費の記載方法を把握していても、実際に見積書を作成しようとすると、「なぜ?」と記載内容について疑問が生じることがよくあります。

次の章では、法定福利費を見積書に記載する際によくある疑問について、回答します。

Q.見積書の様式は受注先や自社の指定のものでなければだめ?

A.法定福利費が正しい内容で明示されていれば、見積書の様式は問われません。

見積書に法定福利費を記載する目的は、保険加入に必要な費用を確保するためです。

元請けなどから標準の見積書が提示されることがありますが、それも記入例の代わりに提示されるものです。

受注先や自社指定でなくても、内容が正しければ問題ありません。

使いやすい、分かりやすいものを使いましょう。

Q.法定福利費も消費税の対象?

A.工事見積書に記載されている法定福利費も、消費税の対象になります。

社会保険料の納付は、基本、消費税の非課税取引になりますが、工事見積書に含まれる法定福利費は、あくまで工事の対価です。

つまり非課税取引ではなく「課税対象取引」になることを念頭に置いておきましょう。

ややこしいですが、混同しないよう注意して計算してください。

Q.下請けに発注する際、見積書には下請けの法定福利費も含めるべき?

A.下請けに工事を発注する際は、その分も含めて計算・記載した見積書を作成してください。

工事の注文者に見積書を請求されるタイミングによっては、下請け企業に発注するか分からないときもあるでしょう。

また、外注費を項目として計上しているわけではないため、実際の金額と異なる可能性があります。

この場合は、自社が作成する見積書そのものに含まれる工賃を基本に法定福利費を算出しましょう。

これにより、下請代金に福利法定費を含められます。

【まとめ】法定福利費の書き方や計算方法を理解して見積書を作ろう!

法定福利費は、企業が従業員の健康や安全を保障し、自社の健全性を示す重要な費用です。

建築業では、見積書への記載が法的に義務付けられているため、特に注意が必要です。

計算方法は事業負担分・保険料率など、事業者ごとにさまざまなルールがあるため、混同しないようにしましょう。

今回ご紹介した方法を参考に、見積書には正しい法定福利費を記載してください。

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