公共工事とは?民間工事との違いや受注するメリットなどを解説

公共工事とは

建築業に携わる方であれば一度は耳にする公共工事ですが、受注や施工に対してハードルの高さを感じる方も多いのではないでしょうか。そして、公共工事の定義や民間工事との違いに関して正確に知る人は多くありません。今回は公共工事に関する基本的な情報と民間工事との違い、さらに受注するメリット・デメリットについて説明します。

公共工事とは

公共工事に関する情報を、以下の2つに分けて説明します。

  • 公共工事の定義
  • 公共工事の品質確保に関する法律

公共工事の定義

公共工事とは、国や官公庁(都道府県、市区町村など)が発注者となって行う工事の総称です。具体的には、橋や道路やダム、水道などのインフラ工事や、公園などの公共設備、発電所などが対象です。公共性の高い工事がほとんどであり、国民の生活のクオリティの向上や、環境保全などを目的に行われます。

公共工事の品質確保に関する法律

国や自治体の責務を明らかにし、工事の品質を確保するために「公共工事の品質確保に関する法律」が定められています。
その中の三章では入札と契約について詳細にわたり記載されており、特定の業者との癒着による、談合や低価格入札などの問題を抑制する目的があります。また、受注者の能力の審査も義務付けているのです。
参照元:「公共工事の品質確保に関する法律

公共工事に関わる人の待遇

建設業では労働環境や待遇が問題視されていますが、公共工事も例外ではありません。他の業種と比較すると100万円近く低い年間支給額や、年間300時間にも及ぶ労働時間は、建設業が「ブラック」と言われる原因でもあります。これらの状況を改善するために上記の「公共工事の品質確保に関する法律」で、働き方改革への対応についての記載が追記されました。

技術者の育成

建設業界では、職人の高齢化や後継者不足が深刻な問題としてとらえられています。確かな技術をもつ後継者を確保するために「公共工事の品質確保に関する法律」では、入札の際の審査対象に若年層の技術者や技能労働者等の育成や確保の状況も含めています。審査の対象を広げることで、小規模な事業者にも公共工事のチャンスを与え、工事の中で技術者の育成を試みているのです。

民間工事との違い

公共工事と民間工事には、どのような違いがあるのでしょうか。以下の5つの項目に分けて説明します。

  • 発注者
  • 工事内容
  • 契約形態
  • 工期や予算
  • 法的規制

発注者

発注者の定義は、労働安全衛生法によると「注文者のうち、その仕事を他の者から請け負わないで注文している者」のことを指します。民間工事においては施主や事業者ですが、公共工事では国や都道府県、市町村です。また、公共工事は税金で行われるため、競合入札で受注者を決めることが法律で義務付けられています。しかし、民間工事は発注者が自由に決めて問題はありません。

工事内容

民間工事の工事内容に制限はありませんが、公共工事の工事内容は、以下の5種類と定められています。

  1. 建築工事
  2. 土木工事
  3. 電気工事
  4. 管工事
  5. 造園工事

契約形態

公共工事では、「RFP」という提案依頼書を発注者が業者に送付します。その後入札を実施し、落札した業者が剪定されるという流れです。対して民間工事では、前述したように入札は不要で、発注者が自由に受注者を選定できます。

工期や予算

民間工事の規模は、簡易的なリフォームから大規模なマンションや商業施設の建設まで様々です。対して公共工事はインフラに関する工事が多いため、予算が多い大規模な工事になる傾向があります。工期も長いことが多く、数年かけて進めるプロジェクトも珍しくありません。

法的規制

公共工事は民間工事と比較すると、法的な規制が多いという特徴があります。公共工事は建設業法において品質や安全性、さらに環境への配慮までもが義務付けられています。そして、受注者は国土交通省で定めるところによる審査を受けなければなりません。さらに、環境関連法規や労働安全衛生法などの法律により工事の品質が保証されているため、規制が厳しくなる傾向があります。

公共工事の具体例3つ

公共工事と民間工事には、大きな違いがあります。公共工事にはどのようなものがあるのか、以下の3つの具体例を用いて説明しましょう。

  • ダム建設
  • 市民会館や公民館の建設
  • 道路の補修工事

ダム建設

土木工事の代表例に、ダムの建設が挙げられます。ダムの建設は工期は、10年~20年ほどで予算は数千億円にも上る公共工事の中でも大規模な工事です。ダムの工事の発注者は国で、プロジェクトは岩盤や地質、生物環境などの調査からスタートします。

市民会館や公民館の建設

市民会館や公民館の建設は、地方自治体が発注する代表的な公共工事の1つです。築年数が高い建物は耐震性が悪いため、立て直す必要があります。公民館は、各市町村に建設することが定められています。市民の憩いの場として使用されていますが災害時は避難場所の役割も果たすため、安全な状態に保つことは非常に重要なのです。

道路の補修工事

自治体が発注する公共工事の代表例に、道路の補修工事があります。車の通行によってできたひび割れや穴を放置すると、通行しにくい状態になるだけでなく交通事故の原因にもなり得るため非常に危険です。毎年計画的にどの道路の工事を行うか決定し、発注するという特徴があります。

公共工事を受注するメリット

様々な法的規制がある公共工事ですが、受注することで、以下のメリットが期待できます。

  • インフラストック効果を期待できる
  • インフラフロー効果を見込める
  • 社会的な信用度がアップする

インフラストック効果を期待できる

インフラストック効果とは、インフラが整備されることでその地域の安全性や衛星性が高まり、生産性が向上することを指します。例えば道路が整備されれば、アクセスが良くなり人も集まりますし、物流もスムーズになり工場ができる可能性もあります。

インフラフロー効果を見込める

インフラフロー効果とは、公共投資によって生産や雇用、消費といった経済活動が生み出され、短期的に経済全体を拡大する効果です。例えば、公共工事が発生することにより地区内での雇用が生まれ、設計者や責任者のために宿泊業や飲食業にも需要が発生します。雇用の創出は公共工事を行う大きなメリットの1つです。

社会的な信用度がアップする

公共工事を請け負ったという施工実績により、業者の社会的な信用度がアップするという一面もあります。社会的な信用があれば、民間の取引先から受注しやすくなるだけでなく、金融機関からの融資も受けやすくなります。また、公共工事を受けることで経営が安定しやすくなり、優秀な人材も確保しやすくなるのです。

公共工事を受注するデメリット

公共工事を受注するメリットは自治体にとっても業者にとっても大きいですが、デメリットがあることも理解しなければなりません。公共工事を請けることで考えられるデメリットは、以下の2つです。

  • 入札に参加するまでの手続きに手間がかかる
  • 作成・提出する書類が多い

入札に参加するまでの手続きに手間がかかる

公共工事の入札は誰でも参加できるわけではありません。建設業許可を得ており、税金の未納や欠格要件への該当がないことはもちろん、経営事項審査を受けなければなりません。これらの手続きをすべて終えるためには手間や費用が発生するため、入札を断念する業者も多く見受けられます。

作成・提出する書類が多い

入札の要件を満たし無事落札できたとしても、民間工事では求められないような膨大な量の書類の作成と提出が求められます。それぞれの書類の提出期限が定められているため、事務作業が苦手な業者や事務作業員を雇っていない業者にとって、負担に感じるケースが多いようです。

公共工事は下請け業者も請けられる

公共工事を元請けとして受けようとすると、入札前や後に膨大な量の書類作成や手続きを行わなければなりませんが、下請けとして受けるという選択肢もあります。その場合は、建設業許可があれば問題ありません。下請けになると利益率は当然下がりますが、大口契約になるため経営は安定します。公共工事を請けたいけれど元請けとして受けることに躊躇している方は、まずは下請けからスタートすることをおすすめします。

公共工事を受注するまでの流れ

公共工事を受注する際には、以下の流れで行われます。

  1. 建設業許可を取得する
  2. 経営事項審査申請を行う
  3. 入札参加資格審査申請を行う
  4. 入札に参加する

1.建設業許可を取得する

民間工事であれば500万円未満の小規模な工事であれば、建設業許可は必要ありませんが、公共工事では工事の規模を問わず建設業許可が必要になります。工事が1つの都道府県で行われる場合は各都道府県知事への申請で構いませんが、複数の都道府県にまたがって行われる場合は国土交通大臣に申請しなければなりません。その場合、3〜4カ月程度もの時間を要します。時間に余裕をもって申請しましょう。

2.経営事項審査申請を行う

経営事項審査とは公共工事を直接請け負う建設業者が必ず受けなければならない審査です。「経営状況」「経営規模」「技術力」「その他審査項目(社会性等)」の4つの項目で審査を行い、付けられた点数によって発注者が業者をランク付けします。決算終了後に毎年受ける必要があり、結果を出すためには「経営状況分析」「決算変更届」「経営事項審査」の3つの申請を行う必要があります。

3.入札参加資格審査申請を行う

入札参加資格審査申請とは、公共工事における競争入札の際に、契約対象者としてふさわしいかを審査することを指します。そのためには、必要書類を提出して審査を受け、入札参加資格者名簿に登録されなければなりません。入札参加資格の申請は市町村では1年に1度、一般的に10月〜翌年2月頃までの間に行われます。しかし、国や都道府県などでは1年中受付が行われています。

4.入札に参加する

入札参加資格を得て初めて、入札に参加できるようになります。入札方法には指名競争入札と一般競争入札の2種類がありますが、現在ではほとんどの公共工事が一般競争入札で行われています。指名競争入札は公共工事の実績がなければ受けられないので、まずは一般競争入札で受注し、実績を作らなければなりません。

【まとめ】公共工事は法的規制が定められている!受注できれば社会的信用も向上できる

公共工事は受注額が大きく、実績があれば社会的信用も上がり、市町村にも雇用や経済活動を生み出すというメリットがあります。しかし、入札するためには煩雑な手続きをいくつもこなし、審査を受けなければならないというハードルの高さがあるのも事実です。一つ一つの手続きを確認し、スケジュールを調整すれば実務と並行して行うことは可能です。法的規制や資格を確認し、入札にチャレンジしてください。

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