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今回はインボイス制度の導入が、一人親方に与える影響ついて解説します。制度の変更をひと言でいうと「これまで消費税納税のことを考える必要のなかった小規模事業者も、納税業者になるか否か決断する必要がある。それぞれ、メリット・デメリットがある。」ということです。これが2023年10月から開始されますので、事前の準備も必要です。
この記事では「制度の概要」「与える影響」「具体的な作業」などについて説明していきます。
(注)この制度は世論の大きな反対意見もあり、当初公表時と比べ制度設計が変更されている部分もあります。したがって読者の皆さんも、最新情報を確認して決断なさってください。
<この記事は、2023年2月の情報に基づいて執筆されています。>
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インボイス制度とは?
インボイス制度とは、「現在発行している請求書に『登録番号や税率・税額』を記載」して「適格請求書(インボイス)」として発行する制度です。そして登録番号を取得するためには、これまで消費税の「免税業者」であったとしても「課税業者」への変更を余儀なくされます。つまり、消費税の納税が毎年必要になり、事業年度翌年の3月31日までに税務署への納税行為を行います(個人事業主の場合)。
インボイス制度とは?
インボイス制度を、詳しくみていきます。
2023年10月1日から、消費税のルールが新しくなります。新しいルールの下、税務署長に申請をして登録を受けた事業者だけが、その登録番号を記載して発行できる請求書等※をインボイスと呼びます。
※請求書以外にも、納品書、領収書、レシートなども含まれます。
インボイスの記載事項は、以下のとおりです。現在発行している請求書に加えて必要になる事項には【新】と記載しています。
・インボイス発行事業者の氏名(名称)
・登録番号【新】
・取引年月日
・取引内容
・軽減税率の対象品目である場合は、その旨【新】
・税率ごとに区分して合計した金額と税率【新】
・税率ごと消費税額【新】
・相手方の名前
消費税の仕組みをおさらいしよう
消費税の仕組みについて、Q&A方式でおさらいします。
Q1:消費税ってなに?
A1:消費税とは、商品を買ったり、サービスを受けたりしたときにかかる税金です。
(参考:所得税や法人税は「もうけ」にかかる税金です。)
Q2:消費税は誰が納めるの?
A2:消費税を負担するのは消費者、納めるのは事業者です。
(参考:小規模な事業者は、消費税を納める義務が免除されています。これを「免税事業者」と言います。それ以外の事業者は「課税事業者」です。)
Q3:自分が免税事業者かどうか、どうすれば分かるの?
A3:簡単にいうと、前々事業年度の売上高が1,000万円以下なら免税事業者です。
Q4:消費税の納付税額は、どうやって計算するの?
A4:「売上にかかる消費税額(受取消費税)」-「仕入・経費に関する消費税額(支払消費税)」で計算します。制度変更後は、登録番号記載のインボイス分のみが「仕入から税額控除」できます。
インボイス制度が大工や一人親方に与える影響は?
さて、制度の概要をおさらいしました。次は「制度変更が与える影響」ですが、なぜ世論は大反対しているのでしょうか。その理由を含め、順にみていきます。
仕事の依頼がこなくなるかもしれない?
以下のケースで、あなたはまだ(インボイスを発行できない)免税業者の場合です。
あなた(建築の一人親方)がA社から「窓枠交換工事」を請け負い、代金11万円(うち消費税1万円)の「登録番号のない請求書」を発行します。このときA社では、消費税額計算にあたり(前記Q4参照)あなたに支払う消費税1万円を控除できません。つまり、A社が支払う消費税納税額が1万円増加します。
A社ではこのような事態を避けるために、「免税業者には仕事を発注しない」と決断するかもしれません。つまり免税業者は仕事が減る(あるいはなくなる)可能性があります。
(注)仕入税額控除の経過措置があり、当面のあいだ一定の割合で、免税業者からの仕入れも控除できます。
請求書を変更しなければならない?
請求書に新しく記載しなければならない項目は前述のとおりですが、注意しなければならないのは食品など軽減税率商品を扱う場合です。通常税率(10%)商品と軽減税率(8%)商品をそれぞれ合計して、税率ごとの合計値を表示しなければなりません。扱いが少ないうちは手計算でも対応できるのかもしれませんが、スーパーなど軽減税率商品を大量に扱う業種ではシステム対応が必要です。
ちなみに、インボイスの必要項目が網羅されていれば、手書きの請求書でも認められます。
消費税が上がる?
「消費税が上がる」というより、「あらたな消費税納税義務が生じる」というのが正しい表現です。これまでは免税業者として、受け取った消費税を納税する義務は免除されていました。これからは納税するのですから、金銭的な負担は増えます。
「これはある意味『益税』だから、今まで支払ってこなかったのがおかしい」という論調もみられます。以下に、それを否定する見解を引用しておきます。
・免税事業者制度は、消費税導入の際、国が「小規模事業者の納税事務負担等に配慮」したもの(国税庁)⇒したがって、今になって「益税」というのはおかしい。
・「消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者との関係で負うものではない」(東京地裁1990.3.26)
事務作業が増える?
課税業者になった場合、まずは消費税の申告納税にまつわる諸作業が発生します。
さらにその納税額を算出するためには、「すべての売上額・消費税」と「すべての仕入払いおよび経費払い・消費税」を計算する必要があります。これは、結構煩雑な作業になることが予想されます。特に、すべてを一人でやる「一人親方」には、かなりの負担増です。
一人親方がインボイス制度に対応するために必要なこと
さてここまで、インボイス発行業者になる(=課税業者になる)ことの、仕組みとデメリットについて説明してきました。
この章では「課税業者になる」と決断した場合の、手続きについて説明します。
2023年3月31日まで!課税事業者or免税事業者のどちらで活用するか決める
免税業者のままの時は手続きは必要ありませんが、課税事業者になる場合は「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署あてに提出します。
その登録申請書の提出時期について、最近、変更がなされています。
<変更前>
申請書をR5.3.31までに提出すること。それ以降の提出は、「提出が困難であった事情」を記載すること。
<変更後>
申請書をR5.3.31までに提出すること。以上。
一見、条件が厳しくなったようにみえますが、さにあらず。これまでは4月以降に申請した場合は「よっぽどの理由がないと受け付けない」という風にも読めたのですが、それがなくなったのです。つまり実質的には、3月末の提出期限にこだわらなくても良くなったということです。
10月開始に間に合わせたい場合は、以下の時期までに提出すれば間に合うと思われます。
・書面提出:8月中旬
・e-TAX提出:9月上旬
簡易課税制度の導入を考える
消費税の納付税額計算は、前述のとおりたいへんな手間がかかるのですが、激変緩和措置として「簡易課税制度」が導入されています。違いは以下のとおりです。
<原則>
「売上に係る消費税額」-「仕入・経費に係る消費税額」=消費税の納付税額
<簡易課税>
「売上に係る消費税額」-{「売上に係る消費税額」×「みなし仕入れ率」}=消費税の納付税額
ちなみに、建設業のみなし仕入れ率は70%です。
簡易課税を採用する場合は、税務署に「簡易課税制度選択届出書」を提出します。
インボイス対応の請求書を準備する
登録番号が通知されたら、インボイス対応の請求書を準備しましょう。ちなみに登録番号は「T+13桁の数字」になっています。法人の場合は法人番号、個人の場合はランダムに定められます。
一番簡単な方法は、現在の請求書をそのまま使うことです。そして必要項目として「登録番号」(ゴム印を準備すればいいでしょう)、税率ごと合計値(手書きでもOKです)を付加します。
一人親方がインボイス制度導入で気をつけるポイント
ここまでの情報で、いよいよ自身が「課税事業者」になるか「免税事業者」のままで行くのか、決断をします。それぞれの場合の特徴を、以下に述べます。
課税事業者になった場合
「課税事業者になる」を選択すると、「売上の維持」というメリットと、「消費税納付の発生」というデメリットが発生します。メリット・デメリットを総合して、どの程度の減益になるのか試算して、今後の経営計画を立てる必要があります。
免税事業者になった場合
「免税業者のまま」を選択した場合は、発注先との取引が今後どうなるかを確認する必要があります。場合によっては、消費税分の値引きを求められるかもしれません。
国は「インボイスを発行しないことを理由に値引きを要求することは『独禁法の優越的地位の乱用』や『下請法における買いたたき』に該当する可能性がある」と警告していますが、実態としては発生するのでしょう。自分の身は、自分で守る必要があります。
インボイス制度は一人親方にも関係あり!2023年3月末までに対策をしよう
ここまで、最近何かと話題の「インボイス制度」についてまとめてみました。リード文でも述べましたが、制度がまだ不安定で変更されるケースも考えられます。該当する読者の皆さんは、情報収集のアンテナを高くして、自分に有利な方法を選択しましょう。