住宅業界に将来性はある?現状と課題・とるべき対策などを解説

住宅業界 将来性

少子高齢化や人口減少によって住宅市場の縮小が予測される中、住宅業界に将来性はあるのか、現状の課題や今後の見通しが気になるという方が多いのではないでしょうか。この記事では、住宅業界の現状と課題、将来性、とるべき対策について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

住宅業界とは

住宅業界とは、戸建て住宅やマンションなどの住宅の設計・施工・販売を行う企業の集まりを指します。大きく分けて、ハウスメーカーと工務店の2つの業態があります。

ハウスメーカーは、自社で住宅を設計し、規格化された部材や設備を用いて大量生産を行う企業です。品質管理が徹底されており、顧客の要望に応じて部材を組み合わせて住宅を提供します。また、土地探しから住宅ローンの相談、アフターサービスまでトータルでサポートしてくれるのが特徴です。

一方、工務店は地域密着型の企業が多く、その土地の気候風土に合わせたオーダーメイドの住宅を建てるのが得意としています。施主の要望を細かく汲み取り、自由度の高い設計が可能です。大手ハウスメーカーと比べると小回りが利き、対応の柔軟さという点で優れています。

住宅業界の現状

住宅業界は、少子高齢化や人口減少による市場の縮小、深刻な人手不足、建築資材の高騰など、様々な課題を抱えています。ここでは、住宅業界の現状について詳しく見ていきましょう。

属人化している業務

住宅業界では、顧客管理や工程管理などの業務をエクセルや紙ベースで行っている企業が少なくありません。属人化した業務は、業務効率を大幅に低下させる原因となります。ベテランの職人の技術やノウハウも属人化しがちで、技術継承が課題となっています。

人員の不足

住宅業界では、建設現場の技能労働者を中心に、人手不足が深刻です。若者の建設業離れに歯止めがかからず、採用難が続いています。それに加えて、ベテラン職人の高齢化と引退が進み、技術の継承が困難になっています。

若者の離職

建設業の離職率は、他産業と比較して高い水準にあります。厚生労働省の調査によると、建設業の新卒採用者の3年以内の離職率は、2020年3月卒で41.1%に達しています。全産業平均の31.2%を大きく上回る結果となっており、若手の定着率の低さが際立っています。

建設現場の過酷な労働環境や長時間労働、業界のイメージの悪さなどが、若者の離職の原因と考えられます。日曜日が休みでなかったり、突発的な残業が多かったりと、ワークライフバランスを保ちにくいのが実情です。週休2日制の導入や、労働時間の短縮、キャリアパスの明確化など、魅力ある職場づくりが求められます。

熟練職人の引退

住宅業界では、大工や左官、設備工事など、専門性の高い技能労働者の高齢化が進んでいます。国土交通省の調査では、建設業就業者のうち55歳以上が占める割合は2020年時点で34.5%で、全産業平均の31.6%を上回る高さとなっています。

10年後には、団塊の世代が75歳以上となり、多くのベテラン職人が引退時期を迎えます。問題なのは、若手が不足しているために技術の継承が滞っている点です。型枠大工などの職種では、深刻な担い手不足に陥っており、現場の品質や安全性への影響が懸念されています。

労働者の減少

日本の総人口が減少に転じる中、建設業界の労働力不足は今後さらに深刻化すると予想されています。国土交通省の推計では、2030年度には建設業の労働者数が321万人まで減少する見込みです。

少子高齢化の影響で、若年層の絶対数が減っていることに加え、建設業を敬遠する風潮もあり、新規入職者の確保が難しくなっています。建設キャリアアップシステムの普及など、処遇改善に向けた取り組みが進められていますが、抜本的な解決には至っていません。

資材の不足

近年、アメリカや中国をはじめとする海外での木材需要の高まりにより、日本でも木材や建築資材の供給不足と価格高騰が発生しています。ウッドショックと呼ばれるこの現象は、住宅の建設コストを押し上げ、業界に大きな影響を与えています。

コロナウイルスによる影響

新型コロナウイルスの感染拡大は、住宅業界にも大きな打撃を与えました。外出自粛により住宅展示場への来場者数が減少したほか、サプライチェーンの寸断により資材の調達が滞るなどの影響が出ています。

新築住宅の市場規模の縮小

日本の新設住宅着工戸数は、人口減少と高齢化を背景に長期的な減少傾向にあります。野村総合研究所の予測では、2030年度には70万戸、2040年度には49万戸にまで減少すると見込まれています。新築住宅市場の縮小は避けられない状況です。

参考:株式会社野村総合研究所サイト|2040年度の新設住宅着工戸数は49万戸に減少、2040年の既存住宅流通量は20万戸に増加する見通し

住宅業界の課題

住宅業界は、前述の通り様々な課題を抱えています。ここでは、業界の主要な課題について詳しく解説します。

若者離れ

建設業界の高齢化と若者不足は、喫緊の課題となっています。国土交通省の調査によると、2020年の建設業就業者のうち29歳以下の割合はわずか10.4%にとどまっています。全産業平均の16.1%と比べて、若年層の割合が極端に低いのが特徴です。

建設業のイメージの悪さが、若者離れの大きな要因と考えられます。3K(きつい、汚い、危険)に加え、不規則な就業時間や転勤の多さ、昇進の遅さなどが、建設業を敬遠する理由として挙げられています。

また、建設現場の閉鎖的な雰囲気や上下関係の厳しさなども、若者の就業意欲を削ぐ要因となっているようです。若者の建設業離れに歯止めをかけるためには、週休2日制の導入や残業時間の削減、有給休暇の取得促進など、働きやすい職場環境の整備が求められます。

参考:国土交通省|建設業を巡る現状と課題

インボイス制度

2023年10月から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が導入されます。適格請求書発行事業者(課税事業者)のみが発行できる適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件となり、免税事業者からの仕入れでは控除できなくなります。

住宅業界では、大工や左官、電気工事など、多くの専門工事業者が免税事業者として事業を営んでいるのが実情です。インボイス制度の導入により、これらの事業者との取引が見直される可能性があります。

適格請求書を発行できない免税事業者からの仕入れは、税額控除ができなくなるため、外注コストの増加につながります。住宅メーカーや工務店などは、適格請求書を発行できる課税事業者への発注にシフトせざるを得なくなるでしょう。一方、免税事業者は、取引先を失うリスクを抱えることになります。

対応策として、免税事業者の課税事業者化が考えられます。課税事業者になれば、適格請求書を発行でき、取引を継続できます。業界団体などが中心となって、制度の周知や課税事業者化のサポートなどに取り組むことが求められています。

残業時間の上限制限

長時間労働の是正は、建設業界の大きな課題となっています。2024年4月からは、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されます。原則として月45時間、年360時間を超えて時間外労働を行うことができなくなります。

建設業界では工期に追われるあまり、長時間労働が常態化しているのが実情です。日建連の調査では、建設技能者の1日の平均労働時間は9時間23分、1か月の平均残業時間は42時間にも上ります。全産業平均と比べて、労働時間が突出して長いことがわかります。

長時間労働は、労働者の健康を損なうだけでなく、生産性の低下や事故のリスク増大など、様々な弊害をもたらします。若者の建設業離れの要因にもなっており、抜本的な改善が急務です。働き方改革を進め、魅力ある職場環境を整備することが、人材確保のカギを握るでしょう。

顧客の知識の向上

近年、住宅に関する情報が溢れるようになり、顧客の知識レベルが向上しています。住宅展示場に訪れる顧客の中には、インターネットで入念に情報収集し、専門的な知識を持つ人も少なくありません。

住宅性能表示制度や長期優良住宅、ZEHなど、住宅に関する制度や基準も複雑化しており、営業担当者の知識不足が露呈するリスクが高まっています。顧客に的確なアドバイスができなければ、信頼を失いかねません。

また、工務店などの中小企業では社長自らが営業に当たるケースも多く、トラブル対応などで現場に駆り出されがちです。営業に専念できず、顧客へのフォローが手薄になる恐れがあります。

営業担当者のスキルアップが急務と言えます。専門家とのタイアップも有効な手段です。住宅ローンのアドバイザーや建築士といった各分野の専門家と連携し、顧客の疑問や不安に応えられる体制を整備することが求められます。

住宅業界の将来性

住宅業界は課題が山積みである一方、将来性のある分野も存在します。ここでは、今後の住宅業界の動向と可能性について考えていきます。

リフォーム市場の需要拡大

新設住宅着工戸数が減少する一方、住宅リフォーム市場は堅調に推移すると予想されています。既存住宅の性能向上や高齢者のバリアフリー化など、リフォームのニーズは高まっています。矢野経済研究所の調査では、2030年までリフォーム市場は拡大すると見込まれており、将来性が期待できると言えるでしょう。

省エネ住宅が増加

脱炭素社会の実現に向けて、省エネルギー性能の高い住宅への関心が高まっています。特に注目されているのが、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)です。2025年には新築住宅の省エネ基準への適合が義務化され、2030年にはZEHが標準になると予想されます。

海外事業の展開

国内市場の縮小を見据え、住宅メーカー各社は海外事業の強化を進めています。特に、人口増加と経済発展が見込まれる東南アジアや富裕層の住宅需要が旺盛な北米市場などに注目が集まっています。

住宅業界がとるべき対策

住宅業界が持続的に成長していくためには、前述の課題に真正面から取り組む必要があります。ここでは、住宅業界がとるべき対策について解説します。

働き方改革に取り組む

長時間労働の是正と、建設現場の労働環境改善は、住宅業界の喫緊の課題です。働き方改革に真剣に取り組み、魅力ある職場環境を整備することが求められます。建設キャリアアップシステムの普及など、技能者の処遇改善に向けた取り組みを加速させることが必要です。

建設DX

建設現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することで、生産性の向上と労働時間の削減を図ることができます。例えば、BIMやドローンの活用、書類のペーパーレス化、現場のバーチャル化などが挙げられます。

テレワーク

コロナ禍を契機に、住宅業界でもテレワークの導入が進んでいます。設計や営業業務など、現場に行かなくてもできる仕事を中心にリモートワークを推進することで、ワークライフバランスの改善と人材の確保につながります。

オンライン商談を取り入れる

住宅展示場への来場者数が減少する中で、オンラインでの商談に注目が集まっています。WEB上で住宅のバーチャル見学ができるシステムやオンライン商談専用のスペースを設けるなど、非対面での営業手法の確立が求められます。

事業の幅を広げる

リフォームや不動産仲介、サブスクリプション型のサービスなど、事業の多角化を図ることが重要です。既存顧客とのリレーションを活かしながら、新たな収益の柱を作っていく必要があります。

Web集客に取り組む

住宅購入の検討段階でインターネットを使って情報収集する人が増えています。自社のWEBサイトを充実させたりSNSを活用したりするなど、デジタルマーケティングの強化も不可欠です。

口コミ・紹介促進ツールの活用

住宅業界では口コミや知人からの紹介で購入に至る割合も大きいのが特徴です。その特徴を生かすために、住宅業界に特化した口コミ・紹介促進ツールを取り入れるのも集客に効果的です。例えば、アンバサダークラウドは、オーナー様との接点を増やし、口コミや紹介活動を活性化させるツールです。実際に導入後に、紹介来場者数が前年比の3倍になったという実績もあります。

SNS広告を利用する

instagramやTwitter、FacebookなどのSNS広告を活用することで、潜在顧客にアプローチすることができます。ターゲットとなる顧客層に合わせて、効果的な広告配信を行うことが大切です。

オンラインセミナーを取り入れる

住宅購入に関するオンラインセミナーを開催することで、顧客との接点を増やすことができます。住宅ローンや税制、省エネ住宅など、顧客の関心の高いテーマを取り上げ、自社の強みをアピールしていきましょう。

YouTube動画などで情報を発信する

YouTube動画による情報発信は、顧客との信頼関係を築くのに効果的です。設計のポイントや施工の様子、完成した住宅の特徴など、わかりやすく伝えられるよう心がけましょう。

住宅業界へ就職・転職するときに必要な視点

住宅業界で働きたいと考えている方は、以下の視点を持つことが大切です。

  • 住宅の未来
  • 顧客の真のニーズ
  • 企業の将来性

住宅の未来

IoTやAIの活用、シェアリングエコノミーの浸透など、住まい方は大きく変化しつつあります。これからの住宅に求められる機能や価値を理解し、新しい提案ができる人材が求められます。

顧客の真のニーズ

単に住宅を売るのではなく、顧客の暮らしに寄り添い、真のニーズを掴むことが大切です。コミュニケーション能力を磨き、提案力を高め、顧客満足度への貢献ができるよう意識する必要があります。

企業の将来性

少子高齢化が進む中、すべての住宅メーカーが生き残れるわけではありません。働く企業の経営理念や中長期的なビジョン、新しい取り組みなどをよく見極めることが大切です。

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【まとめ】住宅業界に将来性はある!他社と差別化を図りながら独自性を高めよう

人口減少や働き手不足といった様々な課題に直面していますが、リフォーム市場の拡大や海外事業の可能性といった将来性のある分野も存在するため、将来性はあると言えます。建設DXやオンライン商談の導入、Web集客の強化といった時代に合った変革を進めながら、他社との差別化を図っていくことが重要です。

顧客の潜在ニーズを汲み取り、付加価値の高い住宅を提供し続けられるかが勝負の分かれ目となります。柔軟な発想力とチャレンジ精神を持って独自性を高めていきましょう。

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