土木工事業で使える補助金・助成金8選!メリットや申請条件について解説

近年の土木工事業を取り巻く経営環境は厳しい状況です。労働者の高齢化や慢性化する人手不足などに加えて、政府が推進する働き方改革やインボイス制度導入など各種制度改革への対応も必要になり、事業者にのしかかる課題も増大しています。さらに新型コロナウィルス感染症の影響が現在も尾を引いており、売上高減少や需要の冷え込みは回復の兆しが見えてきません。

政府は、この状況下で継続的に事業を推進している企業・法人を対象とした数々の補助金・助成金制度を制定しています。新規事業開拓やIT導入、雇用の促進など幅広い用途に活用できる柔軟な制度です。

そこで今回は土木事業主が対象になる助成金・補助金に的を絞って、制度を活用するための申請条件やメリットについて徹底的に解説します。ぜひ参考にしてみてください。

土木工事業で補助金・助成金を活用するメリット

政府が主管している補助金・助成金は、経営環境の状況をリカバリーする目的だけではありません。包括的に土木工事業を下支えするために広範囲に活用できるように設定されているのが大きな特徴です。

慢性的な人手不足や人材育成に資するものや、業務効率を改善し生産効率を向上させるためのIT関連導入資金や設備投資への支援、賃金引き上げに対する支援などもカバーしています。効率良く活用すれば長年抱えていた課題にも対応できる場合もあるでしょう。

補助金と助成金はそれぞれに異なる特徴があるので十分理解して申請することが肝要です。

1:補助金を活用するメリット

補助金の一番のメリットは、助成金に比べて制度の種類が多岐にわたっていることです。そのため幅広い用途に活用できます。業種や業態に限らずさまざまな企業で活用できるのが補助金の特徴です。

支援を受けられる金額が助成金よりも高額であるという特徴もあります。使用目的や申請条件によっても変わってきますが、支援額は数百万円から大きいもので億単位の支援まで受けられます。

補助の対象範囲が広いことも補助金の特徴です。本来補助金とは、新規事業の創成や雇用の安定化などに関して民間企業を広く支援する目的で設定されました。そのため補助金の対象企業を広範囲に定める傾向があります。

2:助成金を活用するメリット

助成金の大きなメリットは、通年申請できる案件が多いことです。補助金は予算や支給件数が決められているので短期間で募集を締め切る案件が多いのですが、助成金は原則通年申請が可能なものが多く、申請忘れなどのリスクを減らせます。

助成金を受ける確率が高いのもメリットの一つです。制度の中には要件を満たせばほぼ確実に助成が受けられるものもあります。また、労働者の雇用や人材育成を目的とした制度が多いのも助成金の特徴です。人材訓練の経費や訓練に参加した労働者の賃金の一部を補填するものもあります。

土木工事業におすすめの補助金・助成金8選

土木工事業におすすめの補助金や助成金をご紹介します。一般的に広く中小企業等が活用できるものの中で土木工事業にも適応できる制度を選抜しました。

ここで紹介する8種類の補助金・助成金は、事業計画や経営計画にそって長期的に事業を持続させるために必要な費用を補填するもの、人手不足を解消するために側面から支援するものに絞り込んでいます。長期にわたる新型コロナウィルス感染症の影響や、インボイス制度など直面する制度改変への対応なども考慮しました。ぜひ参考にしてみてください。

1:事業再構築補助金

事業再構築補助金は、事業再編や新分野への事業展開、業態・業種転換など、ドラスティックな事業構築に支援される補助金です。通常枠に加えて賃金引き上げやIT導入に対する支援など6類枠が設定されています。

必須申請要件は、日本に本社を有する中小企業等および中堅企業であること、補助対象経費が証拠書類等で本事業のものと明確に区分できることおよび本事業の経営計画が策定されていることです。

1:通常枠

新事業展開や業種転換など、事業の拡大に挑戦する中小企業等を対象に支援する補助金です。補助金額は従業員数により異なり、従業員20名以下で100万円から最高2,000万円まで、従業員が101人以上で最高8,000万円と高額の補助が受けられます。

2:大規模賃金引き上げ枠

従業員を数多く雇用して継続的に賃上げを行い、生産性向上に取り組む中小企業等の事業再構築を支援します。要件として従業員数が101人以上必要ですが、補助金額は8,000万円超から1億円と高額です。

3:回復再生応援枠

新型コロナウィルスの影響で事業状況が厳しい事業者、再生に取り組む中小企業等を支援します。補助金額は100万円から1,500万円です。従業員数に条件はありませんが金額は従業員数によって増減します。

4:最低賃金枠枠

最低賃金引上げの原資確保が困難で特に状況の厳しい中小企業等を支援します。補助金額は100万円から1,500万円です。従業員数に条件はありませんが金額は従業員数によって増減します。

5:グリーン成長枠

グリーン成長戦略14分野の課題を解決するための技術研究や人材育成に資する資金を支援します。補助金額は100万円から1億円です。事業により金額に幅がありますが高額の補助が受けられます。

6:緊急対策枠

原油価格や物価の高騰などの予想できない経済変化で影響を受けた中小企業等に対する支援です。金額は100万円から4,000万円で従業員数によって異なります。従業員数に条件はありません。

2:IT導入補助金

IT導入補助金は企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるために補助する支援金です。通常枠の他にセキュリティ対策、デジタル基盤導入枠の3種類があります。

1:通常枠

中小企業等が業務効率や生産性向上のために導入するIT費用を支援するものです。A類型とB類型がありそれぞれ補助金額が変わります。

A類型は6分類された業務プロセス(顧客管理、決済資金回収、調達、会計、総務、業種固有ツール)のうち1プロセス以上を担うツールの導入が条件です。B類型は前述したプロセスの4プロセス以上を担うツールの導入が条件になっています。補助金額はA類型で30万円から150万円、B類型は150万円から450万円です。

2:セキュリティ対策推進枠

セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃により事業継続が困難になる事態を回避し、供給制約や生産性向上を阻害するリスクを低減するために支援する補助金です。

独立行政法人情報処理推進機構が公表している「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービスを受けることが条件です。金額は5万円から100万円で補助率は1/2以内となっています。

3:デジタル化基盤導入枠

デジタル化基盤導入枠は、生産性向上をめざす中小企業等を支援するとともにインボイス制度導入を見据えて企業間取引のデジタル化を強固にする補助金で、通常枠よりも優先的に支援されます。

機能分類で、会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上を有するツールを導入することが条件です。補助金額は5万円から350万円で、導入するツールの機能数によって補助金額が変わります。

3:小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、各事業者が今後直面する各種制度変更に対応するため、持続的な経営計画に基づいて販路開拓や業務効率向上に取り組む小規模事業者等を支援します。常時使用する従業員数が20名以下の小規模事業者であることが条件です。

補助金は取り組みに関連する経費の一部を補助するもので、通常の補助金上限額は50万円です。他に、特別枠が設定されていて、成長分配強化枠、新陳代謝枠、インボイス枠に分類されます。

1:特別枠 成長分配枠

積極的に賃上げを行い従業員に成果を分配する意欲的な事業者に支援するもので、地域最低賃金に対して+30円以上の賃上げが行われた場合上限額が200万円まで引き上げられます。

2:特別枠 新陳代謝枠

新規事業に意欲的に取り組む事業者を支援する枠組みです。具体的には事業拡大によって新事業を創業した場合や、補助事業の後継者を育成し継承した場合などに補助上限額が200万円まで引き上げられます。

3:特別枠 インボイス枠

免税事業者から適格請求書発行事業者への転換に伴う事業環境の変化に対応した事業者を支援する枠組みです。適格請求書発行事業者に登録した事業者に対し、補助上限額を100万円に引き上げます。

4:ものづくり補助金(一般型)

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が今後直面する各種制度変更に対応するため、革新的サービスや試作品の開発、生産プロセスの改善で生産性を向上させた場合の設備投資等を支援するものです。一般型とグローバル展開型に分類されます。

3年から5年の事業計画を策定し従業員に表明していることが条件です。事業計画には、事業者全体の付加価値額年平均3%増加、給与総支給額年平均1.5%増加、最低賃金が地域水準+30円である等が含まれなければなりません。

1:一般型

中小企業事業者等が取り組んだ「革新的サービス・新製品」開発や「生産プロセス・サービス提供方法」改善に伴う設備投資等を支援する場合の補助金制度です。補助金額は回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠などのカテゴリーによって異なる場合がありますが750万円から2,000万円となっています。

2:グローバル展開型

中小企業事業者等が海外への事業拡大や強化のための「革新的サービス・新製品」開発や「生産プロセス・サービス提供方法」改善に伴う設備投資等を実施した場合に支援する補助金制度で、補助金額は3,000万円です。

5:業務改善助成金

業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者が機械設備や人材育成・教育訓練・コンサルティングの導入等で生産性向上を実現した場合に助成金が支給される制度で、設備等の投資金額の一部が助成されます。

助成金支給条件は、前述した設備等の投資を行うことと、生産性向上により当該事業場内の最低賃金(事業場最低賃金)を引き上げることです。

助成金上限額は事業場最低賃金引き上げ額と引き上げ労働者数によって決まり、引き上げ額20円から90円の間で5つのコースに分類されています。最高金額は90円コースの450万円です。

6:トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)

トライアル雇用助成金は、建設(土木・建築)事業者対象の助成金制度です。トライアル雇用開始時点で35歳未満の若年労働者や女性労働者を一定期間試行雇用した中小建設(土木・建築等)事業主に助成されます。

助成額は一人当たり4万円/月で最長3カ月分です。

支給対象は建設(土木・建築)事業主で、雇用保険に加入している必要があります。また一人親方や家族で運営している事業者は対象になりません。

トライアル雇用対象者は工事現場での現場作業または施工管理に従事する労働者です。設計・経理・測量・営業に従事している場合は対象になりません。

7:建設事業主等助成金(人材確保等支援助成金)

人材確保等支援助成金は、主に若年層労働者の建設(土木・建築)業への就職と雇用の定着を図るために助成される制度です。

支給対象は中小建設土木事業主で構成する団体で、建設キャリアアップシステム等普及促進コース、若年者および女性に魅力ある職場づくり事業コース、作業員宿舎など設置女性コースの3コースに分類されています。

助成金額は団体の規模によって異なり、全国団体で3,000万円、都道府県団体は2,000万円、地域団体は1,000万円です。

8:建設事業主助成金(人材開発支援助成金)

人材開発支援助成金は建設(土木・建築)労働者のスキルアップを目的とした職業訓練の一部を助成する制度です。

2つのカテゴリーに分類されていて、建設労働者認定訓練コースと建設労働者技能実習コースがあります。

認定訓練コースは、認定職業訓練または指導員訓練のうち建設に関連する訓練を実施した場合に支給され、助成金額は対象経費の1/6と賃金助成一人当たり3,800円/日です。

技能実習コースは、若年労働者の育成や熟練技能の維持向上の為にキャリアに応じた技能実習を行った場合に支給され、助成金額は20人以下の場合経費の3/4と賃金助成一人当たり8,550円/日となります。

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土木工事業界は今後も深刻な労働者不足が今後も予想されます。近い将来建設ロボットなどの導入も現実のものとなるでしょう。

また、新型コロナウィルス感染症による事業への影響は今後も一定期間継続すると考えられており、事業環境は予断を許さない状況が続くと思われます。

今回取り上げた補助金・助成金は事業環境を改善し持続するために必要なものばかりです。対象範囲も多岐に渡っていますので、メリットや申請要件に対する理解を深め有効に活用すれば事業経営の一助となるでしょう。

現状を乗り切り円滑な事業経営を継続するために政府主管の制度を有効に活用しましょう。