土木業の「入札」とは?公共工事の入札方法や必要な資格も解説!

国・都道府県や市町村等の行政等が発注する公共工事は、安定的な発注量が期待できる、大規模な工事に携わることができる、信用に繋がる等、民間工事にないメリットが豊富にあるのが魅力です。

しかし、公共工事に入札するのは簡単なことではありません。民間企業が公共工事に参加するためには、「入札」して案件を勝ち取る必要があります。入札に参加するには、参加資格の取得や審査、情報収集や書類作成等が必要です。

また、数ある建設業者の中から落札を勝ち取るためには、入札について理解を深め、適切な準備をすることが大切です。本記事では、公共工事の入札の概要や土木工事の入札に必要な参加資格、入札の流れや仕組みについて詳しく説明します。

土木工事で入札できる「公共工事」とは

公共工事とは、国・都道府県・市町村といった行政府や特殊法人等(※)が発注する建設工事のことをいいます。国民が快適に生活できるように、道路や橋、トンネル等といったインフラ整備を目的としたものが主な工事です。

(※)特殊法人とは?
特殊法人とは、国の政策や社会資本整備等の業務を遂行するために、法律によって設立された法人のことです。具体的には、日本年金機構、沖縄復興開発金融公庫、日本電信電話株式会社等が挙げられます。
(参考:所管府省別特殊法人一覧(令和4年4月1日現在))

土木工事の入札の流れや仕組みを知る前に、まずは公共工事の具体例や市場規模、入札について見ていきましょう。

公共工事の具体例

公共工事の具体的な業務は、国や地方自治体から発注された建設工事等が挙げられます。
そこで、実際にどのような業務が公共工事の対象になるのか、代表的な具体例を見ていきましょう。

【公共工事における建設工事の具体例】
・国が発注するダムの築造業務
・地方自治体が発注する公民館の築造業務
・地方自治体が発注する道路の補修業務

また、建設や土木工事等に関係していても、公共工事の業務に含まれない場合があります。以下のような業務は、公共工事に含まれないため注意が必要です。

【公共工事に含まれないもの】
・設計・監理業務
・建設工事に用いる側溝、管、マンホール等のプレキャスト製品製造
・PFI手法で発注される運営業務(場合による)
・維持管理目的の除草・除雪作業

公共工事の市場規模

国土交通省の「令和4年度(2022年度)建設投資見通し 概要」のデータによると、2022年度の建設投資は66兆9,900億円となる見通しです。東日本大震災の復興需要や東京オリンピック等によって、ここ数年の建設投資は増加傾向にありました。

2022年度の政府投資額は、全体の34%で22兆5,300億円、前年度比は3.7%減となっています。このうち公共工事の投資額は、14兆4,500億円となる見通しです。近年の政府投資額(見込み)は、東京オリンピックが行われた2020年が最も多く、それ以降はわずかに減少傾向にあります。

公共工事の入札とは

公共工事の入札とは、国や地方自治体等の行政府が民間の建設業者に公共工事を発注する調達制度のことです。一般の建設業者が公共工事に参加するためには、この「入札」が必要です。
公共工事は税金を財源としているため、最も安い価格でいい条件を提示した業者が落札されます。入札の種類は一般競争入札、指名競争入札、随時契約の3種類が代表的です。まずは、入札の種類や仕組みについて確認していきましょう。

入札の種類

近年の公共工事の入札は、「一般競争入札」と呼ばれる入札方式が中心です。その他にも「指名競争入札」「随時契約」といった方式もあるため、入札の種類や仕組みについて説明します。

【一般競争入札】
一般競争入札は、発注機関が入札情報を公告して不特定多数の参加者を募り、そのうちより有利な条件を出した企業と契約する方式です。より公平性を保てる方式のため、公共工事の入札は一般競争入札を基本としています。企業の規模や入札経験に関わらず、落札できる可能性があるのがメリットです。
また、参加資格に一定要件が加わる「制限付き一般競争入札」が適用される場合もあります。参加できる地域を制限したり、不良不適格業者を排除したりすることが目的で決定する方式です。

【指名競争入札】
指名競争入札は、発注機関が特定の企業を指名し、その中から有利な条件を出した企業と契約する方式です。一度指名されれば次回以降もスムーズな契約締結ができるのがメリットです。

【随時契約】
随時契約は、競争入札等は行わず、発注業者が任意に決定した特定の事業者を選んで契約する方式です。他社にはない製品や技術を持っている企業や、災害対策や緊急修繕等で競争入札を実施する余裕がないときに適用される場合があります。

公共工事の入札に参加する方法はこちらの記事でより詳しく解説しています。

公共工事の入札に参加するには?必要な資格や入札の流れについて解説!

土木工事の入札に必要な費用

土木工事の入札に参加するためには、必要な書類を作成しなければなりません。そのために行政書士の委託費用・資料作成・図面購入費用等がかかるため、以下のような費用が発生します。

  • 行政書士への委託費用
  • 分析機関に支払う調査費用
  • 発注元の図面購入費用

また、入札に必要な書類等を行政書士が代行して作成するサービスがあります。自分で入札申請を行うこともできますが、各自治体ごとに要件等を確認し、それに合った資料を作成することは労力と時間がかかる作業です。

入札に必要な書類の作成は、専門の行政書士に代行してもらうのがおすすめです。以下で行政書士の代行費用の目安についても紹介するので、検討してみてください。

  • 入札参加資格代理申請 25,000円~50,000円程度/件
  • 電子証明書取得 30,000~50,000円程度
  • 建設業許可取得 250,000円~350,000円程度

土木工事の入札に参加するための要件

土木工事の入札に参加するには、以下の4つの参加要件を満たしている必要があります。

  1. 建設業許可
  2. 経営事項審査(経審)
  3. 税金を完納している
  4. 欠格要件に該当していない

土木工事の入札に参加するには、29業種のうち「土木一式工事」の建設業許可が必要です。建設業許可の取得には、経営業務の管理責任者や専任技術者の配置、自己資本が500万円以上であるか等の要件を満たす必要があります。

経営事項審査は、企業の経営状態や規模、技術力等について客観的に審査し、建設業者のランク付けが行われます。経営事項審査後、公共工事の入札に必要な総合評定値通知書の取得が可能です。

税金の未納がないこと、欠格要件に該当しない等、基本的な要件を満たしているかどうかも確認しておきましょう。この4つの要件を満たせば、有資格者名簿の登録申請(入札)ができるようになります。

土木工事の公共工事の見つけ方

土木工事の公共工事を見つけるには、公共工事入札情報公開システムを利用するのがおすすめです。公共工事入札情報公開システムは多数展開されていて、公告・技術資料作成要領・設計図書・開札状況・入札結果等が効率的に閲覧できます。
自社に合った公共工事を見つけるには、参加要件が重要なチェックポイントです。必要な建設業許可が「土木一式工事」であるかどうか、経営規模の基準に合格しているか等を確認しましょう。

土木工事が行われる地域にも注目するといいでしょう。地域の活性化のために、地元企業を優遇する入札案件があります。遠方地域の場合、出張等交通費や移動時間等の負担もあるため、それらを含めて利益が出せるかどうかを判断しましょう。
また、支払いのタイミングが全額後払いの場合もあるため、資金の調達等も判断した上で入札案件を探すのも大切です。

土木工事の公共工事へ入札する流れ

土木工事の入札に参加するには、資格取得や審査の準備、情報収集や資料集め等、やるべきことがたくさんあります。

土木工事の入札を考えている方は、入札する資格審査から施工までの流れや仕組みについて把握しておきましょう。公共工事に入札する大まかな流れは、以下の通りです。

  1. 資格審査(建設業許可の取得・経営事項審査等)
  2. 入札・契約
  3. 施工

ここからは、国土交通省の「公共工事の入札契約制度の概要」の資料を基に、土木工事の公共工事へ入札する流れについて詳しく紹介します。

1:資格審査

土木工事の公共工事に入札するには、まず資格審査が必要です。資格審査の流れは、以下の順番の通りです。

1 建設業許可の取得 29種類の建設業許可のうち、入札に必要なもの(土木一式工事等)を取得します。建設業許可の取得には、経営業務管理責任者・専任技術者の要件等の資格や経験が必要です。
2 経営事項審査 経営事項審査は、経営規模等についての審査です。申請書と指定された財務諸表等の添付書類を提出して審査を受けます。経審を受けると、公共工事の入札に必要な総合評定値通知書を取得できます。
3 競争参加資格審査申請 競争参加資格審査申請は、国や自治体等、発注者が指定した様式で作成します。郵送やインターネット方式等提出方法があります。発注する機関によって必要な書類が違うため、時前に必要書類について確認が必要です。
4 企業のランク付け(有資格者名簿に登録) 経営事項審査の総合点数に基づいて上位の企業からランク付けが行われ、そのランクが有資格者名簿に登録される仕組みとなります。

2:入札・契約

次に、入札・契約の流れについて見ていきましょう。以下で「一般競争入札」「工事希望型指名競争入札」「通常指名競争入札」に分けて簡単に流れを紹介します。

【一般競争入札】

  1. 入札案件を探す
  2. 建設業許可の取得
  3. 入札参加資格確認申請書の提出
  4. 通知
  5. 入札書の提出
  6. 契約

「入札参加資格確認申請書」は、地域・地区ごとに提出します。必要な資料等は地域によって違うので、あらかじめ確認をしておきましょう。

【工事希望型指名競争入札】

  1. 案件登録
  2. 発注者による提出依頼書の発行
  3. 提出依頼書・技術資料の提出
  4. 技術審査・通知
  5. 指名業者の選定・通知
  6. 入札書の提出
  7. 契約

工事希望型指名競争入札は、発注者が入札参加資格者名簿の中から指名業者を選定します。発注者側から提出依頼書が発行された場合、技術提案書等の資料の提出が必要です。それを基に審査され、指名業者に選定されれば入札する流れとなります。

【通常指名競争入札】

  1. 有資格者登録
  2. 指名業者の選定・通知
  3. 入札書の提出
  4. 契約

通常指名競争入札は、発注者があらかじめ定めた資格基準で入札参加資格者名簿の中から指名企業を選定します。上記の工事希望型指名競争の技術審査等を省く流れとなります。

3:施工

次に、公共工事契約後の施工の流れについて簡単に説明します。

  1. 施工計画書の作成
  2. 施工
  3. 工事監督・検査(発注者)
  4. 工事完成図書・添付書類の提出
  5. 発注者による検査竣工
  6. 竣工
  7. 工事成績評定

契約を適切に遂行するために、発注者側が現場を監督・検査することが義務付けられています。工事成績評定は必須ではありませんが、適性な履行や選定の適正化に役立つため実施が求められています。

土木業の公共工事の落札者の決め方

土木業の公共工事の落札者の決め方は、一般的には「落札価格」です。ここで注意したいのが、落札価格は発注者が定める予定価格の制限範囲内で設定しなければならないということです。ただ安い落札価格を付けても、契約内容を適切に履行できない可能性があると判断されてしまいます。

そのため、契約内容の適切な履行が確保できると判断した「最低制限価格」を予想し、その価格以上の最も安い価格で入札することが落札されるポイントです。

ただし、最低制限価格を下回る入札があった場合、その価格で適正な履行を確保できるか調査した上で落札者を決める「低入札価格調査」という制度があります。

その他にも技術面も考慮された「総合評価落札方式」もあります。公告の段階で評価項目と指標をあらかじめ定め、評価値による客観的な判定で企業を選定する方式です。構成・透明な評価ができる方式ですが、総合評価を行う技術者が不足しているため、あまり採用されないのが現状です。

【まとめ】土木業で公共工事に入札して受注を獲得しましょう!参加資格についても要チェック!

本記事で紹介したように、土木業で公共工事に入札するのは簡単ではありません。専門家の力を借りながら、自社が参加資格を満たしているか、必要な書類が揃っているのか等を確認しましょう。

また、土木工事の公共工事は、膨大な数の案件があります。原則は一般競争入札といわれていますが、中規小模の工事等は制限付き一般競争入札や指名競争入札等で地元企業が選出されている場合も多いです。

今後、土木業で公共工事への参加・受注を目指す方は、こうした自治体の案件や一般競争入札で受注を獲得しましょう。

入札談合が当たり前とされる理由はこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

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