建設業で負担になる社会保険の抜け道とは?加入すべき社会保険の種類も紹介!

2020年10月、建設業許可要件に「適切な社会保険への加入」が追加され、社会保険加入が実質的に義務化されました。
現在では加入率が低かった建設業界でも、社会保険加入が進んでいます。しかし、社会保険加入は企業にとって大きな負担です。
事業主の中には、加入しないで良い方法はないか、負担を軽減する方策はないかと考えている方もおられるでしょう。加入するにしてもどの社会保険に加入すればよいか検討も必要です。
そこで今回は建設業界における社会保険加入について、その抜け道や、加入すべき保険の種類について解説していきます。

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建設業で社会保険の加入は必要?

建設業における社会保険加入義務化の背景には、建設業労働者の社会保険加入率の低さがあります。国土交通省の調査でも「建設業労働者の4割が社会保険未加入」とのデータが示されました。また、求職者が企業を選択する要件として、社会保険が整備されていることが挙げられます。
深刻な人材不足を解消するためにも、社会保険加入は必要条件といえるでしょう。
社会保険の種類は、雇用保険、労災保険、医療保険、年金保険などです。
ここでは、それぞれの事業形態での加入要件について説明します。

建設業での保険の種類についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

建設業で必要な保険の種類を解説!想定されるリスクや加入時に知っておきたいポイントについても徹底解説!

個人経営・一人親方の場合

個人事業主の場合、労働者雇用の状態によって要件が変わります。雇用保険、労災保険(元請一括加入)は常用労働者数に限らず加入できます。
ただし、日雇い労働者が加入できる雇用保険は、日雇い雇用保険です。
医療保険は労働者5人以上の場合、健康保険組合や協会けんぽ等へ加入できます。1人から4人の場合は、国民健康保険です。
年金保険は労働者人数で異なり、5人以上の場合は厚生年金保険、1人から4人では国民年金保険です。
また、事業主や一人親方の場合は労災保険に特別加入制度があり、労働者でなくとも一定の要件を満たすことで加入できます。

建設業の個人事業主が加入するべき社会保険についてはこちらでより詳しく解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

建設業の個人事業主が加入するべき社会保険は?話題になっている理由や未加入のリスクも解説!

法人経営の場合

法人経営の場合は就労形態で異なります。
常用労働者は、雇用保険、労災保険(元請一括加入)に加入でき、医療保険は、健康保険組合や協会けんぽ等に加入できます。年金保険として加入できるのは厚生年金保険です。
日雇い労働者は、日雇い雇用保険へ加入できます。労災保険は常用労働者と同じ要件です。医療保険は国民健康保険への加入、年金保険は国民年金保険へ加入できます。
役員等の場合は、雇用保険は対象になりません。労災保険は特別加入で、一定の要件を満たすことが必要です。医療保険は常用労働者と同じく、健康保険組合または協会けんぽ等で、年金保険も厚生年金保険に加入できます。

建設業で必ず加入したい社会保険5つ

社会保険は、社会生活を送るうえで起こりうる様々なリスクに備える保険制度です。病気やケガ、失業や労働災害など、万一の際に制度に応じた金額が給付されます。建設業界でも社会保険加入が実質義務となりました。
加入する際には、個々の保険内容をよく理解することが必要です。
この項目では、建設業者が加入しておきたい5つの社会保険内容について解説します。法人経営や一人親方、個人事業主等の事業形態と照らし合わせて、保険内容を確認しておきましょう。

健康保険

健康保険は、業務外で病気やケガをしたとき等に保障される医療保険です。
建設業労働者が加入する場合は、健康保険組合や協会けんぽ等と国民健康保険があります。主な保障内容は医療費の軽減です。年齢によっても異なりますが、原則3割負担の支払いで治療や薬の処方が受けられます。病院に通院した際、窓口での健康保険証提示が必要です。この場合に残りの7割は、全国健康保険協会や健康保険組合等が負担します。
他に、医療費軽減の助成制度等もあるので、条件に該当するか自治体へ確認しましょう。

厚生年金保険

厚生年金保険は、企業に従事する従業員や公務員が、将来年金として受け取れる公的年金に資する保険です。公的年金には国民年金と厚生年金の2種類があり、20歳以上の国民は全員国民年金保険に加入し、国民年金保険料を支払います。企業に勤務している従業員が支払うのは厚生年金保険料です。厚生年金保険料の中には国民年金保険料も含まれます。建設業の場合、常用労働者は厚生年金に加入しますが、日雇い労働者や親方の多くは国民年金への加入となります。

労災保険(労働者災害補償保険)

労災保険は、労働者が業務上の事故や通勤中の災害等に遭ったとき、労働者本人やその遺族に保険金が給付される制度です。
労災保険は、事業主が労働者を雇用する場合、事業形態に関わらず加入しなければなりません。ここで注意すべきは、建設業の就労形態に多い一人親方や、法人、個人事業主などの事業者です。
事業者は「雇用される労働者」ではないので、一般的な労災保険には加入できません。事業者や一人親方でも現場作業の危険度は同じです。
その場合は、国が特別に認める「特別加入制度」を利用しましょう。一定の要件を満たせば労災保険に加入できるので、事業者や一人親方でも万一の時に保障されます。

雇用保険

雇用保険は、労働者が失業したとき、以降の生活を保障するための保険です。
労働者を雇用する場合には、強制的に加入しなければなりません。失業以外でも、高齢になって賃金が一定額以下に減額された場合や、出産育児・家族の介護等で休業した場合も給付対象です。
建設業は危険な作業を伴うので、ケガ等で休業を余儀なくされる場合もあります。雇用保険に加入していると、けがや疾病で15日以上休業したときにも一定額が支給されます。
加入対象は雇用されている労働者に限定されるので、事業者や一人親方は加入できません。

介護保険

介護保険制度は、社会全体で要介護者の支援を行う目的で2000年に創設されました。被保険者が介護要と認定されたときに、特定の介護サービスを受けられる制度です。
40歳以上になると全員に加入義務が生じ、健康保険料と合わせて介護保険料を支払います。受けられるサービスは、自宅で受けられる訪問介護や福祉設備の貸与、デイサービスや養護老人ホームなどの施設利用費の補助です。
保険料は健康保険と同様、労働者と事業主が1/2ずつ支払います。

建設業で社会保険に加入したら経営が危ない?

建設業界では、社会保険の加入が実質義務化されたことで、その費用をどう賄うかが課題になってきました。仕事単価の他に社会保険料を補填して支払う発注者もいますが、多くは、受注業者が決められた単価内で、社会保険費用を捻出しなければなりません。
社会保険費用が事業運営に負担をもたらし、経営に影響する企業も出てきました。一方、職人や若い労働者は、社会保険制度が充実している企業を求めています。
建設業界の慢性的な人材不足を解消するためにも、社会保険の導入は避けられない状況なのです。

建設業で負担が大きい社会保険の抜け道は?

現在では社会保険の抜け道はありません。以前は、個人事業主や一人親方は社会保険への加入義務がありませんでした。しかし、平成29年度以降、国土交通省の通達で「社会保険加入証」がない下請け企業は現場に入れなくなりました。
ますます社会保険費用が重くのしかかる業者に対して、国が助成金を制度化しています。目的は、社会保険加入の促進と人材の確保育成です。公的助成金を有効に活用し、優秀な人材確保と安定した経営の両方を達成しましょう。

建設業で社会保険に入っても売上は上がる

社会保険費用の負担が厳しい建設業界でも、業績を上げている企業があります。若くて有能な人材が求めるのは、安定して職人として働ける職場です。この志向に対応し、社会保険も含めた新しい制度を導入すれば、人材も確保できます。もちろん、今まで一緒に頑張って働いてきた職人への、新制度導入の道義付けも怠ってはなりません。
社会保険や福利厚生が成り立たない単価設定の建設業界では、こうした新制度への転換に踏み切る勇気と実行力が必要です。

建設業の社会保険について無料相談できる窓口

社会保険について不安や疑問点がある場合、社会保険労務士に無料で相談できます。各都道府県の社労士会が相談窓口を置いている場合、無料相談が可能です。

社会保険労務士は、労働・社会保険問題の専門家です。また、費用はかかりますが、建設事業者が開催している安全大会、安全衛生大会、総会などで、社会保険労務士が講演や個別相談会を催してくれます。どの保険に加入すればいいのか、保険料はいくらかかるのかなどの不安や疑問がある人は、相談してみましょう。

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建設業で社会保険に入るときは抜け道を探さずに、会社の売上や経営をしっかり見直そう!

建設業の事業主にとって、社会保険に加入することは大きな負担になります。そのため、事業者の中には、社会保険に入らずにすむ抜け道を探される方も多いでしょう。しかし、現状では社会保険加入が実質義務化され、建設現場に入るにも「社会保険加入証」が必要になっています。
今や、個人事業主や一人親方でも、社会保険加入回避の道はありません。とはいえ、業界では社会保険料や福利厚生資金が含まれない単価設定が大多数です。経営を維持するためには、制度を抜本から見直す必要があります。もしも社会保険未加入の状態なら、前向きに社会保険含めた新制度を構築して、業績向上を狙いましょう。国が制度化した助成金や補助金を活用したり、専門家に相談するのも一つの手段です。

建設業で適用される保険の種類や、保険に加入すべき理由や加入時に知っておきたいポイントについてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

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