建設業の個人事業主が加入するべき社会保険は?話題になっている理由や未加入のリスクも解説!

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社会保険労務士 佐藤弘樹
社会保険労務士 佐藤弘樹

平成28年に社会保険労務士試験に合格。経理・財務や人事・労務といったバックオフィスシステムを手掛ける会社で16年間の営業経験を積む。その後、北海道札幌市にて「社会保険労務士事務所みらい経営アシスト」を開業し、オンラインでの人事・労務管理に関する相談サービス『どこでも社労士』を提供。「働くすべての人が、豊かで幸せな毎日を送れるように」というミッションを掲げ、企業の労務管理をサポート。豊富な実務経験と専門知識を活かし、クライアント企業の成長に貢献。プライベートでは双子の娘を持つパパの顔も覗かせる。北海道社会保険労務士会会員登録番号:第01180056号。『どこでも社労士』:https://www.dokodemo-sr.com/

建設業では社会保険へ未加入の事業者が多いことが問題視されています。それを受けて国土交通省では、社会保険に関する対策が推進されています。

社会保険に未加入の場合、自社の社会的評価や信用が下がる可能性もあるため、会社としても考えるべき問題のひとつです。

そこで本記事では、建設業の社会保険への未加入が話題になっている理由をはじめ、未加入であることのデメリット、建設業に多い個人事業主が社会保険へ加入する方法について解説します。

建設業の社会保険未加入が話題になっている理由

社会保険とは、一般的に、労災保険、雇用保険、健康保険、介護保険、年金保険の5つの制度を指します。加入義務があるにも関わらず、建設業では多くの事業者が社会保険未加入です。建設業は個人事業主が多いことが大きな要因の1つと考えられています。

そこで、国土交通省は建設業で社会保険未加入の事業者を減らすため、社会保険加入を促すための対策を講じています。

このようなことから現在、建設業の社会保険未加入問題が取りざたされているのです。上述した2つの理由について、以下で詳しく解説していきます。

社会保険の未加入が問題視されている

国土交通省が建設業に社会保険未加入事業者が多いことを懸念している理由は、社会保険未加入が建設業界の人手不足を後押ししていると考えたためです。会社で働く従業員を守るための社会保険に加入していないと、若手の人材や優秀な人材が建設業に集まりにくい要因となり得ます。

そのため、国土交通省では、社会保険の管轄元である厚生労働省と連携して、未加入事業者への対策を強化しています。

具体的な対策としては、以下のとおりです。

  • 元請業者および下請け業者の社会保険未加入を確認した場合、建設業担当部局へ通報する
  • 元請業者は、入札公告を伴う工事において、社会保険に加入していない業者と下請け契約を締結することを禁止する
  • 公共工事の入札に必要な「経営事項審査」の項目に、社会保険加入の有無を設ける
  • 下請け業者へ社会保険加入を指導することを、元請業者に対して通達

建設業は個人事業主が多い

建設業では、個人事業主が広く活躍していることが特徴です。会社に雇用されるのではなく、元請業者と直接契約して仕事を請け負う働き方をする、いわゆる「一人親方」が建設業では広く活躍しています。

個人事業主として働く大工やとび、左官などの一人親方が多いのは、建設業が元請けから下請け、さらに孫請けへと仕事を発注する多重構造となっているためです。このような仕組みのなかでは、一般的な会社のように労務管理を一元化することが難しく、未加入業者が多いという課題につながっています。

なお、個人事業主の場合、国民健康保険および国民年金への加入が義務付けられています。建設業の個人事業主については、建設業界独自で「全国建設工事業国民健康保険組合」といった保険制度が設けられています。建設国保に加入すると、一般的なものよりも保険料が安くなるケースがあるので確認しておくとよいでしょう。

建設業の個人事業主が加入するべき社会保険についてはこちらでより詳しく解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

建設業の個人事業主が加入するべき社会保険は?話題になっている理由や未加入のリスクも解説!

建設業の個人事業主が社会保険に加入しないことによるリスク

建設業の個人事業主が社会保険に加入しないことには、いくつかのリスクがあります。

社会保険未加入の場合、病気やケガをしたときに負担が大きいといった費用の問題がまず挙げられます。

ところが、社会保険未加入によるリスクは、医療費に関する問題だけではなく、仕事の受注や採用など会社運営に関わる問題にもつながります。また場合によっては罰則が課されることもあるので、注意が必要です。

ここでは、建設業の個人事業主が社会保険に加入しないリスクを4つ解説します。

仕事が受注しにくくなる

社会保険の未加入業者は、仕事が受注しにくくなる可能性があります。前述したとおり、入札公告を伴う工事で一次下請け契約ができなくなったり、公共工事の入札で不利になったりするためです。

また国土交通省では「社会保険未加入の事業者と契約するべきではない」「未加入の作業員を現場へ入場させるべきではない」といった見解を示しています。建設業において社会保険未加入であることは、今後死活問題になる可能性があるため、早急な対応が必要です。

追徴金や罰金が発生する

社会保険に未加入だと確認された場合、追徴金や罰金が発生する可能性があります。追徴金が課される可能性があるのは、社会保険事務所による調査で、加入義務のある事業所が社会保険未加入だと発覚した場合などです。

最大で、2年間分の社会保険料が追徴金として課される可能性があります。さらにそれが悪質だとみなされた場合には、6ヵ月以下の懲役あるいは50万円以下の罰金を科されることがあり、会社として大きなダメージとなり得ます。

求人採用が難しくなる

求人採用が困難になることも、社会保険未加入のリスクのひとつです。

社会保険未加入の事業者は、基本的にハローワークで求人票を受け付けてもらえません。さらに、社会保険へ加入するようにと指導を受けることになります。

たとえハローワーク経由で採用を行わない場合でも、社会保険未加入の事業者では、採用活動自体も不利になります。社会保険未加入の事業者だと会社のイメージが下がり、若手の人材や優秀な人材を集めることが困難になるためです。

医療費の負担額が高額になる

医療費の負担が高額になるケースがあることも、社会保険未加入によるリスクです。

勤務先が社会保険に未加入であり、かつ個人で国民健康保険や国民年金を支払っていない場合は、医療費が全額自己負担になります。病気やケガをしたときに費用負担を気にして必要な治療が受けられないとなると、健全な生活を維持することが困難です。

さらに年金についても、公的年金未加入の期間が長いほど、年金受給額が少額になります。年金を受け取れない場合もあるなど、将来の生活に影響を及ぼす可能性があります。

建設業の個人事業主が加入するべき社会保険

ここまで、社会保険加入の必要性を述べてきましたが、建設業の個人事業主とその従業員はどの社会保険に加入するべきなのでしょうか。

結論からいうと、一人親方である個人事業主はご自身で国民健康保険・国民年金に加入します。一方で従業員は、労災保険・雇用保険に加え従業員数が5人以上なら健康保険・厚生年金に加入し、5人未満なら原則として国民健康保険・国民年金に加入する形となります。

ここでは、建設業の個人事業主とその従業員が加入すべき社会保険について解説します。

常時雇用する労働者が5人以上の場合

建設業では、法人の場合と、個人経営の事業所で常時使用する従業員が5人以上の場合には、労災保険・雇用保険への加入に加え、従業員を健康保険・厚生年金に加入させることが義務付けられています。

そのため、正社員は当然加入しなければなりません。また、パートなど労働日数や時間が少ない場合も、1週間の労働時間および1か月の労働日数が正社員の3/4以上であれば、健康保険・厚生年金へ加入する必要があります。

常時雇用する労働者が5人未満の場合

常時雇用する従業員が5人未満の場合、労災保険・雇用保険への加入は必須ですが、健康保険・厚生年金への加入は必須ではありません。医療保険は原則として「国民健康保険」に、年金保険は「国民年金」に加入することになります。

ただし、従業員が5人未満の事業所でも任意で適用申請を行えば、健康保険・厚生年金に加入することができます。任意適用の手続きを行うことで、福利厚生を充実させることができ、求人募集の際のアピールポイントとなります。

ここで注意すべき点が1つあります。それは、たとえ従業員が5人以上の場合でも、もしくは、任意適用の手続きを行って健康保険・厚生年金に加入できるようになった場合でも、それは従業員に対してのものであり、一人親方である個人事業主ご自身は、健康保険・厚生年金に加入することができないということです。

健康保険・厚生年金はあくまで従業員のためのものであり、個人事業主ご自身は、医療保険は「国民健康保険」に、年金保険は「国民年金」に加入することになります。

【まとめ】建設業の個人事業主が社会保険に加入する方法を要チェック!デメリットも多いので必ず加入しましょう

建設業で社会保険未加入の事業所が多いことが問題視されています。その背景には、建設業で一人親方と呼ばれる個人事業主が広く活躍していることが挙げられます。

社会保険に加入しているか否かは、建設業の経営に大きく影響するため、加入を検討することが必要です。国土交通省では社会保険未加入の建設業への対策を講じており、未加入であることは、今後さらに経営において不利になる可能性が高まります。

今回解説した未加入のリスクをふまえて、社会保険への加入を検討されてはいかがでしょうか。建設業の個人事業主が社会保険に加入するための要件や方法について、確認しておくことも重要です。

建設業の社会保険の抜け道や加入すべき社会保険の種類についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

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