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「建設業はなぜ長時間労働が多いの?」
「長時間労働を改善したい!」
などと考えていませんか。
いきなり長時間労働を改善しようとしても、原因がわからなければ難しいですよね。
建設業の長時間労働は、休みが少ないことや人手不足の深刻化、工期の厳しさなど、さまざまな原因があります。
長時間労働は残業代問題にも関連しており、原因を理解しきちんと対策するべきでしょう。
そこでこの記事では、以下の内容を解説します。
- 建設業の長時間労働が多い原因
- 建設業の長時間労働に対する「残業代」の問題点
- 建設業の長時間労働に対する対策
長時間労働の改善は、建設業の働き方改革につながるので、ぜひ最後までご覧ください。
建設業は長時間労働が多い?
産業別労働時間と出勤日数(2022年)
産業 | 総実労働時間(時間) | 所定内労働時間(時間) | 所定外労働時間(時間) | 出勤日数(日) | 1日の労働時間(時間) |
産業全体 | 136.1 | 126 | 10.1 | 17.6 | 7.7 |
建設業 | 163.5 | 149.7 | 13.8 | 20 | 8.2 |
製造業 | 156.6 | 142.2 | 14.4 | 18.8 | 8.3 |
卸売業・小売業 | 130.6 | 123.2 | 7.4 | 17.8 | 7.3 |
(参考元:毎月勤労統計調査 令和4年分結果確報|厚生労働省)
建設業の労働時間は、ほかの産業や産業全体の平均と比べて長く、出勤日数も多いことがわかります。
1日の労働時間はおよそ8.2時間で、残業自体はほとんどないように感じるかもしれません。
しかし、表のデータは事務職や営業職を含めた労働時間です。
建設業のなかでも、現場の技術者や施工管理、設計士など特定の職種は、残業が月20〜30時間を超えることもあります。
建設業の長時間労働が多い原因
ここでは、建設業の長時間労働が多い原因を解説します。
その原因は以下のとおりです。
- 休みが少ない
- 人手不足が深刻
- 工期が厳しい
- 36協定の残業上限が適用されない
一つずつ順番に見ていきましょう。
原因1:休みが少ない
建設業はほかの産業と比べて、週休2日制の導入が遅れており、休日があまりありません。
2020年は、建設業全体で技術者のおよそ4割が、4週4休以下で働いています。
しかし、2015年は4週4休以下で働く人が、およそ7割でした。
それに比べれば、週休2日制の導入が建設業でも着実に進んでいるといえるでしょう。
(参考元:最近の建設業を巡る状況について|国土交通省)
原因2:人手不足が深刻
人手不足の深刻化も、建設業の長時間労働が多い原因の一つです。
建設業の平均就業者数
2018年 | 505万人 |
2019年 | 500万人 |
2020年 | 494万人 |
2021年 | 485万人 |
2022年 | 479万人 |
(参考元:労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約)
上記表を見ると、建設業の就業者数は、年々減少しています。
さらに建設業は、ベテランといわれる55歳以上の方が多数活躍中です。
2020年の建設業で働く人の割合は、55歳以上がおよそ36%、29歳以下がおよそ12%と、55歳以上がかなりの割合を占めています。
今後、ベテランの方々が退職するのに対して、10代や20代の若手はさらに不足していくでしょう。
人手不足が続けば、一人あたりの仕事量がおのずと増えてしまいます。
そして、仕事を終わらせるために残業をする悪循環に陥ってしまうのです。
原因3:工期が厳しい
次に、建設業の長時間労働が多い原因として、工期の厳しさがあります。
建設業は、主に工事の受注で成り立つ業界なので、工期の厳守が基本です。
工期を破れば会社の信用がなくなり、工事を発注されなくなる恐れがあります。
しかし、工期の厳守が必要ななか、建設工事は必ず計画通りに進むとは限りません。
悪天候で工事ができなかったり工事内容が変更になったりなど、想定外の事態で残業をしなければならないことがあります。
また、建設業は決算前や新年度前の12〜3月が繁忙期です。
短期間で数多くの工事をこなすために、残業が必要なこともあるでしょう。
原因4:36協定の残業上限が適用されない
建設業はほかの産業に比べて、人手不足や長時間労働の問題が深刻なことから、現在「36協定」の残業上限が適用されていません。
「36協定」とは、会社が労働者に法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超えて残業させるために、締結・届け出をする労使協定のことです。
そして、その残業にも上限(原則月45時間、年360時間)が設けられています。(特別条項付きの場合は年720時間、複数月平均80時間、月100時間未満)
36協定の残業上限が適用されない建設業は、上限なしの残業が可能。
それにともない長時間労働が増えています。
ただし、建設業も2024年4月1日から36協定の残業上限が適用されます。(災害の復旧・復興の事業は除く)
建設業は、遅くても残業上限の適用前までに、長時間労働を改善するべきでしょう。
2024年4月からの残業規制にともない、建設業の従業員の給料が減る可能性があります。こちらの記事では、2024年問題で給料が減る可能性について解説しています。
建設業界の残業規制(2024年問題)で給料が減る?給料が減る人の特徴も解説!
建設業の長時間労働に対する「残業代」の問題点
建設業は、長時間労働に関連して、残業代にも問題点があります。
その問題点は以下のとおりです。
- 36協定の間違った解釈によって残業代が支払われない
- 都合よく「管理監督者」にされて残業代が支払われない
- 移動時間が残業として加味されない
こちらも一つずつ解説するので、ぜひ参考にしてください。
問題点1:36協定の間違った解釈によって残業代が支払われない
前述したとおり、現在建設業は、36協定の残業上限が適用されていません。
その36協定に対して、なかには残業上限がないから残業代を支払わなくてよいと、間違った解釈をしている会社があります。
あくまで36協定は、残業時間に関する労使協定であり、残業代を支払わなくてよいわけではありません。
残業代(割増賃金)の支払い義務は、労働基準法できっちり定められています。
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
時間外手当・残業手当 | 時間外労働(月60時間以下) | 25%以上 |
時間外労働(月60時間超) | 50%以上 | |
休日手当 | 法定休日(週1日)に働いたとき | 35%以上 |
深夜手当 | 22~5時までの間に働いたとき | 25%以上 |
(参考元:労働基準法 – 割増賃金編 「残業手当」 「休日手当」)
残業代は、通常の賃金から割り増しされた金額が支払われます。
さらに、各条件が重複するときの割増率は、各割増率を足した率なので、計算間違いがないように注意しましょう。
(例:時間外労働かつ深夜労働の場合は、25%+25%=50%の割増率が適用)
問題点2:都合よく「管理監督者」にされて残業代が支払われない
建設業では、建設現場を管理する職種「施工管理」「現場監督」を「管理監督者」として扱い、残業代を支払わないことがあります。
「管理監督者」とは、労働基準法第41条2号で定める「事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者」のことです。
労働時間の決定やその他の労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働基準法の規制を受けません。
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
(引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索)
管理監督者になる人は、会社の立場や権限を踏まえて判断されます。
建設業で働く施工管理や現場監督が、すべて管理監督者に該当するわけではありません。
管理監督者と施工管理、現場監督を混同しないよう注意しましょう。
問題点3:移動時間が残業として加味されない
最後の残業代の問題は、移動時間が残業として加味されないことです。
建設業は、建設現場の作業時間のみを労働時間とし、現場への移動時間を含めないことがあります。
しかし、工具の積み込みや片付け、移動中の打ち合わせなど、実質的に業務を行っている場合は、移動時間も労働時間とみなされる可能性があります。
ただし、移動時間すべてが労働時間に含まれるわけではないようです。
場合によって変わるため、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。
建設業の長時間労働に対する対策
ここでは、建設業の長時間労働に対する対策を解説します。
- 工期設定を見直す
- 施工管理システムを導入する
これらの対策を実践して、長時間労働を改善しましょう。
対策1:工期設定を見直す
長時間労働の改善には、工期設定の見直しが大切です。
2020年10月に施行された改正建設業法では、著しく短い工期による工事の発注・受注を禁止しています。
発注者は、建設工事で働く人の休日や資材・機材の調達期間、天候などを考慮し、無理のない工期を提示しなければなりません。
受注者も、短期工事をアピールして無理に工事を受注しないよう注意するべきでしょう。
また、施工内容が不明確だと、工事のやり直しや計画変更で長時間労働につながる恐れがあります。
施工前の現場調査や打ち合わせを入念に行い、施工内容を明確にしておきましょう。
対策2:施工管理システムを導入する
最後に、長時間労働の対策として、施工管理システムの導入があります。
施工管理システムを導入すれば、スマートフォンやタブレットを使って、日報や現場全体の進捗を会社に戻ることなく確認できます。
また、現場の写真をリアルタイムで共有可能です。
管理部門とのやりとりもスムーズに行えるでしょう。
施工管理システムの導入は、現場の技術者や管理者の手間が減り、業務の効率化や長時間労働・休日出勤の防止につながります。
【まとめ】建設業が長時間になる原因は工期設定や人手不足による!対策についても要チェック!
建設業の長時間労働は、厳しい工期設定や深刻な人手不足などが原因です。
さらに、36協定の残業上限に関する間違った解釈などが、残業代が支払われない問題にもつながっています。
36協定の残業上限は、2024年4月1日から建設業にも適用されるため、長時間労働は早急に改善するべきでしょう。
長時間労働は、工期設定の見直しや施工管理システムの導入で改善が期待できます。
ぜひ、長時間労働を改善して、建設業の働き方改革を目指してみてください。
建設業の2025年問題についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
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