大工工事業とは?建設業許可を取るための条件を解説!

大工工事業を営む場合、建設業許可の取得が必要になる工事もあります。そういった際に建設業許可がなければ、仕事を受注できないケースも少なくありません。しかし、小規模で大工工事業をしていて、建設業許可について知識が無いという方も多いのではないでしょうか。
今回は、大工工事業と建設業許可について解説します。今回解説する内容を読めば、建設業許可を取得するメリットや手順について分かります。大工工事業での建設業許可の取得に役立ちますので、ぜひ最後までご覧ください。

大工工事業とは?

大工工事業は、建築物の建設において不可欠な役割を果たします。大工工事業は、主に木材の加工や取り付けを行い、建物や設備の構造部分を築く工事です。
大工工事業には、型枠工事や造作工事など、様々な専門技術が含まれます。また、大工工事を請け負う際には、建設業の許可が必要です。この業界に従事する場合、技術と知識の両面で高い能力を求められます。各工事の特性を理解することで、適切な施工を行うことや安全かつ効率的な施工にもつながります。

大工工事業の具体例

大工工事業には、建築物の骨格となるさまざまな工事が含まれます。たとえば、支柱や外壁の設置といった工事があり、これらは建物の基本構造をつくるのに重要な作業です。
型枠工事では、コンクリート建造物に必要な木製の枠を作成し、コンクリートを適切に流し込みます。造作工事は天井や棚、階段などを取り付け、建物の機能性と美観を高めます。これらの工事は、大工工事業の範疇に含まれ、専門的な技術と熟練を要する作業です。

請負金額500万円以上の大工工事は建設業許可が必須!

大工工事業では、500万円を超える工事を請け負う場合、建設業許可が必要です。また、元請業者が下請業者に4,000万円以上の工事を発注する際も、特定建設業の許可が必要となるため、注意が必要です。
こういった規則は、大工工事の安全性と信頼性を確保するために重要であり、業界全体の水準を高める役割を担っています。したがって、大工工事を行う事業者は、定められた基準を遵守し、適切な許可を取得しなければいけません。

こちらの記事では、建設業許可の請負金額について解説しています。

建設業許可 500万円建設業許可が必要な請負金額は500万円?計算方法の注意点も解説

建築工事業の建設業許可がある=大工工事業もOKではない!

建築工事業の建設業許可を持つことで、大工工事を無制限に請け負えると誤解する方もいます。しかしその認識は正しくありません。実際には、建築工事業の許可は「建築一式工事」に限定されています。
新築などの建築一式工事ではなく、大工工事を主な内容とする場合、大工工事業としての別途の許可が必要となります。なぜなら各業種の専門性を確保し、建築物の品質を保つことが重要だからです。したがって、大工工事を行う際は、建築工事業の許可だけでなく大工工事業の許可が必要です。

大工工事業の建設業許可を取得するための6つの要件

大工工事業の建設業許可を取得するためには、次の6つの要件を満たさなければいけません。

  • 専任技術者が在籍している
  • 経営業務の管理責任者が在籍している
  • 財産的基礎を有している
  • 誠実性がある
  • 欠格要件に該当しない
  • 社会保険へ加入している

それぞれの要件を詳しく見ていきましょう。

専任技術者が在籍している

大工工事業の建設業許可を取得するためには、専任技術者が在籍していなければいけません。在籍が必要な専任技術者の要件や、建設業の種類によって異なります。ここからは、一般建設業と特定建設業で、在籍が必要な専任技術者の要件を解説します。それぞれの要件の違いを把握し、参考にしてください。

【一般建設業】専任技術者の要件

一般建設業で専任技術者を置く際、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 指定学科修了者で、高校卒業後5年以上もしくは大学卒業後3年以上の実務の経験を有する者
  • 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、高校卒業後5年以上もしくは大学卒業後3年以上の実務経験を有し、それぞれ在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとの指定学科を修めている者
  • 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
  • 国家資格者
  • 複数業種に係る実務経験を有する者

以上の要件は、業務の質と安全性を保証するために重要です。

特定建設業で取得する場合の専任技術者の要件

特定建設業の専任技術者の要件は、以下の通りです。

  • 業種に応じた国家資格を持つ者
  • 指導監督的実務経験を有する者

指導監督的実務経験は、建設工事の設計、施工の全般で現場主任や現場監督として工事の技術面を総合的に指導監督した経験を指します。 実務経験で申請する場合、一般建設業の要件を満たしていることが前提となります。

経営業務の管理責任者が在籍している

大工工事業の建設業許可を取得するためには、経営業務管理責任者が常勤している必要があります。経営業務管理責任者は、大工工事業での5年以上の役員経験か他業種での6年以上の役員経験が必要です。または大工工事業での5年以上の個人事業主経験でも構いません。
他業種での個人事業主経験が6年以上、経営補佐の経験が6年以上ある場合も適格となります。他業種での経験は、建設業許可の有無にかかわらず認められます。法人であれば役員1人、個人事業主であれば本人または使用人が上記の条件のいずれかを満たしていれば、建設業許可の取得が可能です。

財産的基礎を有している

大工工事業の建設業許可を取得するためには、財産的基礎が重要です。財産的基礎とは、建設業者が事業を継続できるだけの財務力を意味します。財産的基礎が求められる理由は、高額な工事を安全に請け負うためです。契約後の準備金不足による資金繰りの問題や倒産を防ぐため、財務面での安定性が不可欠です。
具体的には一般建設業では自己資本500万円以上、特定建設業では自己資本金4000万円以上が必要になります。

誠実性がある

大工工事業の建設業許可を取得する際、誠実性の確認が必要です。許可の要件としての誠実性とは、請負契約の履行において不正や不誠実な行為を行わないことです。誠実性の証明は、過去に契約違反や不正行為を行っていないことによってなされます。
誠実性が求められるのは、法人の役員や営業所の所長、個人事業主など経営上の重要な立場にある人物です。そのため、建設業許可を取得する企業は、不正行為を排除し高い倫理基準を維持することが求められます。

欠格要件に該当しない

大工工事業の建設業許可を取得するには、特定の欠格要件に該当していないことが必須要件です。欠格要件とは、破産手続き中で復権を得ていないことや建設業許可の取消し後5年を経過していないことなどです。また、禁固以上の刑または罰金刑の執行終了後5年未満、暴力団員であった場合5年が経過していなければなりません。
法人の場合、役員や使用人がこれらの条件に該当すると、許可は下りません。

社会保険に加入している

2020年10月の建設業法改正により、建設業許可の取得に社会保険への加入が必須となりました。以前は社会保険への未加入でも許可取得が可能でした。しかし、改正後はこの条件を満たさないと、新規申請や更新申請が受理されません。
既存の事業者も、次回の更新時には必ず加入していなければ更新ができなくなります。2020年10月の建設業法改正は、従業員の福祉向上と建設業界の信頼性強化を目的としています。したがって、建設業者はこれらの保険への加入を確実に行い、法令遵守を徹底しなければいけません。

大工工事業の建設業許可を取得する3つのメリット

ここからは、大工工事業の建設業許可を取得することによる次の3つのメリットを解説します。

  • 公共行事が入札できる
  • 企業の信頼度のアピールに繋がる
  • 大規模な工事を請け負える

それぞれのメリットはどのような効果があるのかを詳しく見ていきましょう。

公共行事が入札できる

大工工事業の建設業許可を取得すると、公共工事の入札参加が可能になります。ただし、入札に参加するためには、建設業許可だけでは不十分です。公共工事の入札プロセスには、建設業許可の取得と、経営事項審査を受けなければいけません。経営事項審査を受けた後、競争入札参加資格の申請を行います。
こうした手続きを経て初めて、公共工事の入札に参加する資格が得られます。このため、公共工事に入札するためには、適切な手続きを踏むことが重要となります。

企業の信頼度のアピールに繋がる

大工工事業の建設業許可を取得すると、企業の信頼度が向上します。なぜなら建設業許可を取得するには、資格や実務経験、資金力などの厳しい条件をクリアする必要があるからです。許可を取得した企業は、これらの条件をクリアし、国や県から正式な認可を受けたことを示しています。
建設業許可を持つ企業とそうでない企業を比較した場合、許可を有する企業が選ばれやすいです。このように、建設業許可はただの証明書以上の価値を持ち、事業展開において信頼と信用の証となります。

大規模な工事を請け負える

大工工事業の建設業許可を取得すると、500万円以上の大規模な工事を請け負うことが可能になります。建設業法では、500万円を超える工事を請け負うには建設業許可が必要です。
これまで許可がなく500万円以上の工事を受注できなかった企業も、取得後はこれらの案件を受注できるようになります。大規模な工事の請負が可能になることは、事業の安定化に寄与し、企業の成長と拡大へと繋がります。このように、建設業許可はより大きなビジネスチャンスをもたらすステップです。

建設業許可申請の手順

ここまで、大工工事業における建設業許可について解説しました。要件などは解説した通りですが、ここからは、建設業許可申請の手順を解説します。大工工事業の建設業許可を申請する手順は次の通りです。

  1. 申請する許可を決める
  2. 許可の要件に自社が適合しているか確認する
  3. 申請に必要な書類を作成し、添付書類を集める
  4. 申請手数料を納入し申請する
  5. 許可を待つ
  6. 建設業許可通知書を受けとる

建設業許可の取得要件が厳しいため、難しいというイメージを持つ方もいます。しかし、申請手続き自体は、特に難しくありません。詳しくはこちらの記事も合わせてご確認ください。
建設業許可申請の流れとは?必要な理由や申請の手順を完全解説!

建設業許可なしで工事を行ったときの罰則や罰金

建設業許可が必要な工事を、許可なしで行った場合は法律違反となるため、罰則や罰金が科されます。そのなかでも無許可で工事を受注した際には「300万円以下の罰金もしくは3年以下の懲役」という最も重い罰則が科されますので注意が必要です。
また、無許可営業によって罰則を受けた場合、その後5年間は欠格事由に該当するため建設業許可を受けられません。このため、建設業を営む際は「うっかり」であっても無許可営業をしないよう細心の注意を払うことが重要です。
以下の記事では、実際に無許可で工事を請負い逮捕された事例なども含め詳しく紹介していますので、必ず目をとおしておきましょう。
建設業許可なしで請負うとバレる?建設業許可なしで行ったときの罰則や罰金などを解説

【まとめ】大工工事業の建設業許可はメリットが大きいので取得しよう!

大工工事業では、建設業許可を取得することに多くのメリットがあります。大きな工事を受注出来れば、売上に寄与することはもちろん大規模工事のノウハウを学べるため、金銭以外のメリットもあります。
しかし、取得の要件は細かく定められているため、取得申請の際は漏らすことなく満たさなければいけません。これから大工工事業で建設業許可の取得を目指す方は、今回解説した内容を参考にしてみてください。

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