建設業における「決済変更届」とは?リスクや注意点についても解説

決済変更届は、変更があったときにだけ提出すればいいと思いがちです。しかし実は、毎年提出する必要があります。
決済変更届は、建設業許可を取るための重要な手続きの一つなので、適切に提出していないとさまざまなデメリットがあります。
建設業に関わる人の中には、「決済変更届について詳しく知らない」という方も一定数いるでしょう。
本記事では、決済変更届の概要や作成する際の注意点について解説します。
自分で決済変更届を作成しようと考えている方は、特に参考にしてみてください。

建設業における「決済変更届」とは?

多くの建設業者が「決算変更届」という名称から、この書類が決算後に内容が変わった場合にのみ提出が必要な特別なものだと考えがちです。
しかし実際には、「変更」という言葉が使われていますが、これは決算内容や1期分の工事履歴などを建設業法で定められた基準に従ってまとめた、行政庁への年次報告書です。
つまり、建設業許可を受けた業者は、決算が完了したら必ず行政にその内容を報告しなければなりません。
事業年度終了後に税務署への申告を行うことは知っており、税理士に依頼して書類を作成するなどして適切に対応している人は多くいるでしょう。しかし、建設業許可を持つ業者の場合、税務申告が終わった後でも、決算書の情報を含めた年次報告書を行政庁に提出しないといけません。

建設業における決済変更届の期限

決算変更届の締め切りは、事業年度が終了してから4ヶ月です。
建設業を行っている会社や法人の場合は、事業年度終了後の2〜3ヶ月で経費を確定し、税務署への決算申告を行います。
その後、建設業許可に関わる決算変更届(決算報告)は、税務署に提出した申告書を基に作成することになります。
つまり、税務署への決算申告にかかった期間を差し引いた残りの期間が、実際に作成・提出に利用できる期間です。
そのため、4ヶ月あると言っても、前半の2〜3ヶ月は税務申告に使われることになります。
決算変更届の準備をしていない場合、建設業者が実際に変更届に費やせる時間は、おおよそ1ヶ月ほどしか残っていないことになります。
「4ヶ月もあれば、いつか提出すれば大丈夫」と考えると、間に合わない可能性があるので注意しましょう。

建設業における決済変更届が未提出の場合のリスク

この決算変更届(決算報告)について、もし提出に間に合わなかった場合、さまざまなデメリットが発生します。
決算変更届は、本来毎年提出が義務づけられています。そのため、提出しないままにしてしまうのは当然良くありません。
しかし、許可を持つ業者の中には仕事に追われるうちに、知らず知らずのうちに決算変更届の提出を忘れてしまう方が意外にも多いです。
ここでは、決算変更届を提出しなかったときに考えられるデメリットについて解説します。

リスク1:更新手続きが行えなくなる

もし決算変更届を提出しなかった場合、建設業法第50条に基づいて懲役や罰金などの罰則が科されることになります。
ただ、その前に、建設業者にとっては以下のようなデメリットが直接的に生じます。
・建設業許可の更新が受理されない
・業種追加の申請が受理されない
建設業者には、大きな案件が急に持ちかけられ、短期間で業種追加手続きを完了させる必要があることがよくあります。
そうした状況で、決算変更届が何年も提出されていない場合、まず報告書の資料収集から始めなければならなくなります。
契約期限が迫っているのに業種追加手続きを急がなければならない状況で、別の手続きによって余計な時間や手間がかかることになるでしょう。
最悪のケースでは、決算変更届の書類準備が間に合わず業種追加が頓挫し、予定していた工事が受けられない状況が発生することもあり得ます。

リスク2:工事の証明ができない

毎年決算変更届を提出することで、扱っている業種を正確に実施していたことの証明資料になります(ただし、都道府県によって証明できる範囲が異なります)。
例えば将来的に、何らかのトラブルに対処するために自社が特定の業種で業績を上げていたことを立証する必要がある場合、決算変更届を提出していなければ、行政機関には情報が残っておらず、証明する方法がありません。
決算変更届を提出することで、業種や実績の証明が可能となります。
どの業種でどれだけの業績があったかを毎年行政機関に提出することは、建設業者にとって手間やコストがかかりますが、実績を証明できるメリットもあることを忘れずにおいてください。

リスク3:信用が悪化する

決算変更届を提出しないことで生じる間接的なデメリットの一つは、自社の実績証明を他の企業(取引相手)に示せないことです。
毎年、決算変更届をきちんと行政機関に提出している建設業者は、取引相手がその業務状況を確認するために行政機関で閲覧請求を行うことで、一定の情報を得ることができます。
しかし、もし決算変更届を怠っていた場合、行政機関で業務状況の確認ができません。その結果、管理が不十分な業者と見られかねません。
・建設業者の情報が行政機関で確認できること
・下請け業者に仕事を発注する際、元請け業者が行政機関の情報をもとに信頼性を判断するケースがあること
この2つの点に関して、不都合が起こる可能性があることは覚えておきましょう。

建設業における決済変更届に必要な書類

決済変更届で必要な書類は、一般的に以下の13点です。
使用人数と建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表、定款は変更があったときのみ必要となります。
・変更届出書
・工事経歴書
・直前3年の各事業年度の工事施工金額
・財務諸表:貸借対照表
・財務諸表:損益計算書、完成工事原価報告書
・財務諸表:株主資本等変動計算書
・財務諸表:注記表
・財務諸表:付属明細表
・事業報告書
・納税証明書
・使用人数
・建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表
・定款
上記は東京都の例で、他の地域や最新情報等は行政庁や行政書士に確認しましょう。

建設業で決済変更届を作成する際の注意点

決算変更届は、専門家に委託することなく自分で作成しても問題ありません。
業務の間を縫って、コツコツ進められれば本年度事業終了後の4ヶ月以内に提出することも可能です。
しかし、専門家以外の人が作成すると思わぬミスをしてしまう可能性が高いです。
ここでは、自分で決済変更届を作成する際に注意するべきポイントを3つ解説します。
決済変更届をきちんと提出できないと、さまざまなデメリットがあるので最後にチェックしておきましょう。

注意点1:提出期限の厳守

決算変更届は毎年提出が義務付けられているので、必ず提出しないといけません。
一方で一部の人々は、5年ごとの建設業許可の更新期限にまとめて提出すれば大丈夫だと思っているかもしれません。
しかし、決算変更届の提出を怠ると、懲役刑や罰金などの罰則が適用される場合があります。他にも前述した通り、さまざまなデメリットも発生します。
突然罰則が科されることは稀ですが、100%罰則を受けない保証はないので毎年提出するように心がけましょう。

注意点2:工事履歴書の作成方法

工事経歴書は、事業者としての実績を示すことができる文書です。作成方法が不適切だと、会社の実績を適切に伝えることができません。
そのため工事履歴書には業種の分類を正確に行い、技術者の配置を正確に記録することが重要です。
また、工事履歴書は定期的に更新して、過去の記録とともに整理して保管しておきましょう。
情報を定期的に更新し、過去の記録を整理して保管しておくことで、必要に応じて過去の実績を確認しやすくなります。

工事経歴書の書き方についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

工事経歴書の書き方は2通りある?工事経歴書を作成するときの注意点や準備などを徹底解説!

注意点3:財産要件

特定建設業者は、一般建設業者に比べて厳格な財産要件を満たす必要があります。
決算変更届を提出するたびに、その要件が満たされていることを確認しなければいけません。
もし財産要件を満たせないと判断される場合、増資などの対策を講じて要件を満たすようにする必要があります。
特定建設業者の要件を満たせなくなった場合、一般建設業者として建設業許可を改めて取得することになります。
以上が決算変更届を作成する上で、注意するべき3つのポイントです。

【まとめ】建設業における決済変更届は必ず提出しましょう!リスクや注意点についても要チェック

建設業における決算変更届は、自社の実績をアピールするためにも重要な役割を果たします。
「変更」という名前がついているので、変更があった際に提出すればいい書類と思われがちです。
しかし実際は、毎年度提出する必要がある書類です。提出を怠ると、本記事で解説したデメリットを被る可能性があります。
自分で作成する際は、提出期限・工事履歴書・財産要件等のポイントに注意して作ってください。
安全に正確に書類を提出するのであれば、専門家の力も借りましょう。