建築業界のICT化とは?ICT施工の問題点や導入事例を紹介

皆さんは「ICT」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?ICTとはコミュニケーション、情報通信技術の総称です。近年では医療や教育といった様々な分野での活用は勿論のこと、建設業でのICT活用事例も増えてきています。そこで今回は建設業におけるICT化について、メリット・デメリットを合わせてご紹介していきます。

ICTとは

そもそもICTとは何でしょうか?ICTは”Information and Communication Technology”の略称で、コミュニケーション・情報通信技術を意味しています。ITがコンピュータやネットワークのインフラ技術そのものを指すのに対して、ICTはこれらを用いたアプリや情報通信技術の活用術を意味しています。

ICTの目的

建設業がICTを活用する目的は工事におけるあらゆる工程の簡略化です。一例を挙げると、ドローンなどを活用した測量、ICT建機を用いた工事などがこれに該当します。ICTを活用することで従来では時間を要していた作業の効率化を図ることができます。また本来であれば熟練技術者の腕を要する細やかな作業も、ICT機器や建機の導入によってカバーすることが可能です。人手不足の建築業界において、作業時間と属人的要素の双方をカバーできるものがICT施工なのです。

建築業界にICT化が求められる背景

建築業界が特にICT化を必要としている背景には、建築業界が抱える深刻な人材不足など様々な要因があります。2021年の東京オリンピック開催以降、建設需要は多少の落ち着きを見せてはいるものの、依然として建築業界は人手不足に悩まされています。続いて建設業がICT化を求められている背景を詳しくご紹介していきます。

3Kのイメージを払拭したい

建設業には昔からいわゆる「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージがついてしまっており、近年の様々な企業努力に反していまだこの3Kイメージを払拭できていない現状があります。働き方改革という言葉に代表されるように、職場の総合的な環境の良さが重視される現代では、労働環境が改善されなければ若者は進んで入社してくれないでしょう。

止まらない人手不足

建築業界は現在人手不足です。2022年時点での国内建設業従事者は、479万人とピーク時からの減少が止まりません。また労働人口の減少と相まって建築業界の最大の懸念点となっていることは、若手就業者の減少です。データを見ると、2022年における建設業の29歳以下の割合は11.7%であるのに対して、他の産業の平均は16.4%あり、5%もの違いがあります。労働力の主力を担っている中高年層が退職した後に、深刻な労働力不足が予想されています。
参考: https://www.nikkenren.com/publication/handbook/chart6-4/index.html

生産性が悪い

事業のIT化、ICT化が標語として掲げられて久しく経ち、様々な業界でICTの導入が進んできました。国土交通省が推進していることもあって、建設業でもICTの導入が進められていますが、本来想定されていたような効果は発揮されていません。このような現状の背景には建設業独特の事情があります。建設業界は元請と下請という多重重層構造が依然として根強く、工法や作業法を自由に決められないケースが多いのです。また、建設業界の事業者の大部分は中小企業であるため、ICT機材の導入が円滑に進んでいないという現状があります。

ICT施工が人材不足をどう解消するか

ICT施工はどのように建設・建築業界の人材不足を解消するのでしょうか?続けて具体例を確認しながらICT施工がどのように人材不足解消に役立つのかをご紹介していきます。

熟練した技術がなくても施工が可能に

ICT施工を導入することの最大のメリットの一つは、熟練技術者の技術を代替できることです。現在の建設業を支えているのは主に中高年層であり、なかでも熟達した技能を持つ労働者は替えが効かない人材であると言えます。例えば重機の細やかな作業一つをとっても、現在の熟練工が退職する5〜10年後には、技術を伝承する若者不足のため、現場での作業困難が予想されます。しかしICT施工はこのような熟練技術の代替ツールとなるため、熟練工不足の問題を解決可能です。

作業時間が短縮される

以下のようなICT施工を取り入れることによって、現場における作業時間の短縮が可能です。

  • 測量
    ICT機器を測量に導入することで従来のTS(トータルステーション)を用いた方法よりもすばやく測量し、点群データの取得が可能です。ドローンやレーザースキャナなどを用いることでこの測量が可能となります。
  • 設計
    工事の設計段階にもICT施工を採り入れることが可能です。測量で取得した三次元データを元に三次元設計データを作成します。
  • 施工
    三次元設計データに対応しているICT建機を用いることで、効率的な作業が可能となります。ICT建機は大別して二種類あります。MC(マシンコントロール)は測量データを元にICT建機が半自動的に作業を行うやり方です。一方でMG(マシンガイダンス)はリアルタイムでデータ解析を行いながら、建機の操縦は人間が行う方法です。

これらICT施工を導入することで、人力では手間と時間がかかる作業を効率よく行えるのです。

建築業界におけるICT化すべき3つのポイント

ここまではICT施工の現場における具体例をご紹介してきましたが、その他にもICT化可能なポイントは数多くあります。続けて建築業界におけるICT化すべきポイントを3つに絞ってご紹介していきます。

安全・健康管理

建設現場は安全管理が問われる現場です。従業員の健康や安全管理もまたICTを導入することで効率化可能です。人間の手によってカバーできない部分をICTツールに代替してもらうことで現場の安全確保が可能となります。また、ICTツールで危険予知にも活用できるため、危険な状態になると通知やアラームが作動するといった活用もできます。

情報の管理や共有

社内の様々な情報やデータの伝達・共有もICT化しやすい事柄です。施工に関わる書類や社内書類全般をデータ化して管理することで、これまでは紙やインクにかけていたコスト削減に繋がります。また勤怠管理もスマートフォンなどで管理できれば生産性の向上に繋がります。

人員移動のコスト削減

人の移動に関するコストもまたICT化によって大幅なコスト削減が見込める項目です。建設業はただでさえ現場との往復が多い業種です。相手方との打ち合わせなどはwebミーティングツールを導入することで、交通費や移動にかかる時間の削減が可能となります。

建築業界のICT施工の問題点

ICT施工の導入には数多くのメリットがあります。ここまでご紹介してきたように作業時間と人的コストの削減が主だったメリットですが、当然ながらICT施工を導入するデメリットもまたあります。
ICT施工のデメリットの一つとしては、導入にかかるコストの重さが挙げられます。ICT建機などは基本的に高価であり、すべての事業者が容易に購入できるものではありません。このようなICT機器の導入費用のコスト問題に関しては、国土交通省が補助金を出していますので、そうした補助金をうまく活用するのもよいでしょう。
また、ICT施工が必ずしも全ての現場に適してはいないという点もデメリットの一つです。建設業の現場と一口に言っても様々です。小規模な現場や複雑に入り組み、障害物の多い現場ではドローンやスキャナを十分に活用できません。事業者は主に請け負う工事とその規模がICT施工に適しているかどうかを慎重に判断する必要があります。

建築業界のICTツールの3つの例

続いて建築業界において生産性を高めることができるICTツールを三つご紹介していきます。

カメラによる現場監視システム

建設現場においては安全の確保が何よりも重要です。監視カメラを現場に導入することで、建機による作業などの安全性を高めることができます。またそれだけではなく、現場の進行状態を確認して本部と共有可能な他、工事時間外の防犯にも活用可能です。

タブレット

タブレットは持ち運びが容易なため、あらゆる場所で活用可能なデバイスです。スマートフォンよりも画面サイズが大きいため、社内で共有しているデータや設計図などをどこでも確認することが可能です。使用方法も直感的で比較的わかりやすいため、導入しやすいICTツールです。

テレビ会議システム

テレビ会議システムは、映像と音声を繋ぐことで遠隔地であってもリアルタイムで相手とやり取りが可能です。どのような場所にいる相手ともやり取りが可能であるため、移動にかかるコストと時間を節約可能です。テレビ会議やwebミーティングのアプリはファイルや画像の共有機能を有しているものが多いため、設計図面などを相手方と逐次共有しながら会議を行うことができます。

建築業界で実際にICTを導入した企業の事例

ここまではICTを活用した施工のメリットやツールについてご紹介してきました。そこで続いて実際にICT施工を導入している企業の実践例を幾つかご紹介していきます。

「COLMINA スマート安全帯」(富士通株式会社 Digital Solution事業本部 PLMソリューション事業部)

富士通株式会社が導入しているCOLMINA スマート安全帯は、現場における高所作業員の安全確保に貢献するICTツールです。高所作業は一つのミスが事故に直結します。COLMINA スマート安全帯は作業員がこの安全帯を着用し、スマートフォンを携帯することでフックのかけ忘れなどがあるとアラートなどで作業員に警告を発する仕組みとなっています。

「災害・事故情報共有システム「安全ポータル」」(戸田建設株式会社 本社 安全管理統轄部)

続いてご紹介する災害・事故情報共有システム「安全ポータル」もまた安全確保、労災防止に関するICTツールです。こちらのツールは現場で災害が発生した際に即座に情報共有を図れるだけではなく、事故が起きた場所や原因などをデータベース化して蓄積、共有することで再発防止に取り組むことが可能となります。

「KMS(kajima MeetingSystem)」(鹿島建設株式会社 土木管理本部生産性推進部 ICT・CIM推進室)

三つ目にご紹介するICTツールは鹿島建設株式会社が導入している情報共有システムです。こちらのKMS(kajima MeetingSystem)は、橋梁工事や鉄道軌道建設工事現場の打ち合わせをアナログからデジタルに変えるツールです。従来は作業前の打ち合わせは黒板やホワイトボードを用いて行うのが主流でした。しかしKMSを導入することで、打ち合わせ情報を事前に入力し閲覧することが可能になり、効率化や時間短縮が見込めます。
参照:https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/ict/ranking.html?id=Anker01

こちらの記事では、建設業でIT化をするメリットやツールについて解説しています。

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【まとめ】ICTの導入が建築業界の問題解決の一歩になる!

今回は建築業界におけるICT施工の導入の概要や具体的事例についてご紹介してきました。ICTは建築業界に限らず様々な業界で導入の進む革新的なツールです。建築業界は人手不足が深刻な課題であり、ICTツールやICT施工の導入はこの問題を解決しうる技術の一つとなるでしょう。ICTの導入にはメリットとデメリットの双方があるため、是非今回の記事を参考にしてICT導入を検討してみてください。

建設業界の情報共有システムおすすめ5選はこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

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