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建設業の請求書は、請求方法や項目に業界特有のものが多いため取り扱いには専門的な知識が必要となります。そして、度重なる法改正や勤怠管理など、建設業では現在様々な課題を抱えています。
今回は、請求書作成のツールや記載すべき項目について紹介します。さらに、請求書作成をアシストする原価管理システムの存在や、2023年より導入されるインボイス制度など、DXの波の中の建設業界の請求書作成の基本について、あらゆる角度から解説していきます。
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建設業における請求書とは
建設業の請求書は、建築物の完成を待たず工期の途中で出来高払いという形で発行するという特徴があります。また、引渡しまでに着手金、中間金、最終金と数回に分けて請求書を発行するのも独自の風習と言えるでしょう。
これは建築物の「完成品を見てから購入できない」ということが理由とされています。建築物が完成してから施主の「こんなはずではなかった」という状況を防ぐため、工事の進捗を確認してからその状況を反映させ支払うという意味合いがあるのです。
このように、建設業界における請求書は、料金の請求だけでなく作業工程の経過報告という役割も含まれています。
建設業の請求書にフォーマットはなし
建設業界の請求書には、履歴書のように定められたフォーマットは存在しません。しかし、記載すべき項目は法律で定められているので、これらを盛り込んだものを自分自身で用意する必要があります。
記載すべき項目については後ほど説明します。「自由度が高いために、どのように用意すれば良いか分からない」「分かりやすくするためにはどうするべきか」などの悩みを抱える方のために、おすすめの作成方法について解説していきます。
請求書はデジタル化をおすすめ
ホームセンターやショッピングサイト上には、建築業専用の手書き用の請求書用紙も販売されています。昔ながらの慣れ親しんだ方法である、手書きの請求書がやりやすいという職人の方も多いでしょう。
しかし、手書きの請求書は工程に変更が生じた際の書き直しや、書損処理など手間がかかります。作業の効率化や、建設業界におけるDX 化の流れに乗り遅れないためにも、今後はデジタル上で作成することをお勧めします。
PCスキルに自信がない方でも簡単に請求書を作成できる方法を、以下で3つピックアップしました。
エクセルによる作成
業務用のPCにExcelが搭載されているのであれば、Excelを用いて簡単に請求書が作成できます。自分で表を作成しなくても、インターネット上に無料の請求書用のフォーマットが数多く提供されているので、金額や企業名などを入力するだけで分かりやすい請求書の作成が可能です。
しかし、確定申告の際に請求書データを集計するのにはマクロなどの専門的な知識が必要となります。さらにデスクトップ上に保管している場合はPCが破損したらデータごと全て失われるというリスクも考えられます。
請求書作成システムによる作成
Excelで請求書を作成、発行する際のデメリットをリカバーする形で生まれたのが、請求書作成システムです。クラウド上で請求書を作成、管理するためデータを紛失するリスクがありません。
さらに、オンライン上であればどこでも作成、発行できることや、操作が簡単なため効率化に繋がります。また、二重請求や請求漏れなどの人為的なミスを未然に防げるところも魅力です。
導入の際のコストは発生しますが、データの保管や資料としての活用出来ることを考え、長期的なスパンで見ると大きなメリットがあるでしょう。
ワードによる作成
Wordを搭載しているのであれば、Wordを利用して請求書を作成できます。Excel同様、インターネット上に無料の請求書専用のフォーマットが多く提供されているので、初期費用ゼロで請求書を作成することが可能です。
PC初心者でも操作しやすいソフトですが、Excelと異なり数式が搭載されていないことや、PDFに変換しなければデータが改ざんされるリスクがあります。また、Excel同様、データの紛失や漏洩のリスクに対して対策を考えなければなりません。
請求書に記載すべき項目
建設業の請求書には決まったフォーマットはないので、どの書式や形式を使用しても構いません。しかし、先述したように建設業界の請求書は作業工程の中間報告という意味合いも含むので、請求の根拠となる事実についてはしっかりと記載する必要があります。
一般的な請求書で記載すべき項目は、以下の7つです。ただし受注先が都道府県や市町村などの行政機関である場合は、指定された請求書のフォーマットでの提出を求められる場合もあるので作成前に確認しましょう。
請求相手の宛名
請求書の左上に、請求先の会社名や担当者名を記載しましょう。宛名を正確に書くことで先方の手間を軽減でき、取引がスムーズに進みます。宛名は(株)などの略称を用いず、正式名称を用います。請求先の担当者が指定されていない場合は、会社名もしくは部署名の末尾に「御中」と書きます。担当者が明白な場合は、または「◯◯株式会社〇〇部◯◯様」と記載するのが常識です。「御中」と「様」は併用しないように気を付けてください。
請求番号
請求書番号とは、いわゆる通し番号で主に右上に記載されています。社内での管理や確認の際や、取引先から請求書に関する確認があった際にスムーズに対応するためにも記載する必要があります。
特に取引回数が多い取引先の請求書の一連には、通し番号をつけておくと管理が容易になり、やり取りも円滑に進むようになります。
発行年月日は定義上は請求書を発行した日を記載しますが、先方の都合に合わせた日付を記載することが一般的です。
請求日
請求書には、基本的に請求日を記載します。請求日は、締め日など先方の都合に合わせた日付を記載することが一般的です。請求日は、事前に請求先へ確認しましょう。
また、請求日が記載されていない請求書は、架空取引の疑いをかけられる可能性もあります。不正を疑われないためにも、請求日はきちんと記載しましょう。
発行者の情報
誰からの請求かという発行者情報も重要な情報です。こちらは題目の右下に記載するのが一般的です。こちらには、発行者(請求者)の氏名や名称、住所、連絡先を分かりやすく記載し、正式な文書であることを証明するために、企業名の上から社判を捺印します。
社判は、請求書の偽造を防ぐ役割も果たすので手書き、PC作成に関わらず必ず押印しましょう。社判の代わりに、担当者やその上司の印鑑を捺印するケースも良く見受けられます。
請求金額
請求金額とは小計額に消費税分をかけた、実際に請求先に求める金額を指します。
また、一人親方が元請けに対して雇用契約上、事務処理を依頼している場合は源泉徴収が発生し所得税分が徴収されるケースも見受けられます。その場合は、小計と消費税の合計から源泉徴収分を差し引いた金額が請求金額です。
そして、数字は一般的な表記の「1,000」や「300,000」と同様、3桁ごとにコンマを入れましょう。単位の記載は「¥」「円」どちらでも、問題ありません。
取引内容
請求書の中で最も重要なのが、この取引内容です。一般的には納品した品目と品番、数量と単位と単価、そして合計金額を記載します。項目によって数量は「一式」として記載する場合もありますが、取引品目は細かく明記しなければ相手に伝わらないので注意が必要です。
こちらを細かく明記することで、請求先との認識のずれがないかを確認するという意図も含まれているからです。金額は税抜き表記となります。値引きがある場合は「ー」「△」「▲」などを使って明示します。
小計・消費税・合計
小計とは、請求書上の各取引内容の金額を合計した消費税を足す前の合算金額のことを指します。消費税は、標準税率が対象(10%)か、軽減税率が対象(8%)かを、区別しましょう。請求対象がどちらであるか、明記することが大切です。
また、小計、消費税、合計金額を分けて記載しておくと、双方にとって内訳が分かりやすくなります。
振込先
請求金額を振り込んでもらうための銀行口座を記載します。こちらに誤りがあると正常に入金ができず先方が困惑するだけでなく、会計処理上支障が出ることもあるので細心の注意を払って記載する必要があります。記載すべき項目は、金融機関名・支店名・口座番号・口座名義です。
必須ではありませんが併せて金融機関コードや支店コードを併記しておくと、親切な印象を与えられるだけではなく誤入金のリスクを防げます。口座名義はカタカナで記載するのが一般的です。
支払期限
支払期限は、いつまでに代金を支払うか、双方で取り決めた支払期日を記載します。一般的には「月末締めで翌月末、または翌々月末支払い」といったケースが多いです。
なお「下請代金支払遅延等防止法」では、支払期日を物品やサービスを受領してから60日以内としています。代金の支払遅延を防止するためにも、支払い期限は毎回記載しましょう。
備考
請求書の備考欄には、請求金額を振り込んでもらうための補足事項を記載します。
まず、代金の振込手数料は誰が負担するのかを記載しましょう。特に指定がない場合は支払う側が手数料を持つのが一般的ですが、「恐れ入りますが振込手数料はご負担下さい」と一筆添えると丁寧な印象を与えます。また、「お振込み期限:○○年○○月○○日」というように、希望の振込み依頼日を指定するか、入金の期限も明確に記載しておきましょう。後のトラブルを未然に防げます。
インボイスに対応する場合の記載事項
インボイス制度は、正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれます。2023年10月1日より始まった制度で、仕入額税控除に関する法律です。
具体的には、記載条件を満たしたインボイスと言われる請求書を発行、保存することで、買い手(仕入側)が仕入税額控除を受けることができるというものです。インボイスに対応する場合の請求書は、下記の項目も記載する必要があります。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称・通知書に記載されている登録番号
- 項目ごとの取引年月日
- 取引内容・軽減税率対象である場合はその旨を表記
- 税率ごとに合計した対価の額および適用税率
- 税率ごとに区別した消費税額
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
上記の項目を記載した請求書を発行後、保存も必要です。保存期間は、交付した日または提供した課税期間の末日の翌日より2月を経過した日から原則7年間です。
建設業の請求書で特に使用される項目
建設業は、一般企業とは異なる独自の用語や習慣がありますが、請求書もその例外ではありません。特殊な用語や単位を用いるケースが幾つか見受けられるため、しっかりと意味を理解したうえで記載しましょう。
また、請求先が他業種の場合には取引内容や請求の明細の文言に専門的な用語を用いる時には、分かりづらい可能性があるので注意しなければなりません。建設業界の請求書内で特に利用する機会の多い特殊な用語を、以下で3つ紹介します。
配管工事費
配管工事費とは、電話の配線や水道管のパイプなどの設置や修理の際の工事費用です。配管工事費は、よく一式という単位を使って記載されます。一般的な工事費の計算方法は工数×単価の積算で出されます。
しかし、配管工事の際は配管のインチダイヤ、インチメーター、配管の重量など、配管材料の価格と配管工の手間の積算で計算するのが一般的です。さらに、公共工事の場合は、公共建設工事標準単価積算基準の標準歩掛りをかけて工事費を計算します。
諸経費
諸経費は建設業以外ではあまり目にすることのない請求書の項目と言えるのではないでしょうか。諸経費とは、材料費、運搬費、作業員の人件費といった直接工事に関わる費用以外の出費、つまり間接費のことを指します。
現場事務所の維持費や事務社員の人件費、足場の設置費用なども一般的には諸経費に含まれますが、企業によって異なるケースも見受けられます。諸経費は、現場監督の数や保険の内容など、工事によって大きく変動しますが、一般的には請求金額の10%前後が目安です。
この記事では、工事見積書の諸経費についてより詳しく解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
工事見積書の諸経費とは?内訳や説明するときのポイントなどを解説
人工費
人工とは、「にんく」と読み、1日仕事を行ったときに発生する人件費を指す用語です。例えば、1人の職人が単独で工事に従事し1日で完成した場合は「1人工」となります。2人で3日間かけて完成した場合は「6人工」となります。
日付 | 工事内容 | 数量 | 単位 | 単価 (税抜) |
消費税 | 小計 (税込) |
---|---|---|---|---|---|---|
2024/02/29 | 人工費(2人×3日間) | 6 | 人工 | 60,000 | 10% | 66,000 |
工事内容欄に人工費と記載し、何人が何日間工事に従事したか、分かるようにしておきましょう。数量は人数×日数の数字を記載し、単位は人工とします。さらに、請求書の備考欄にどの現場にかかった費用か明記しておくと、先方も把握しやすいです。
請求書の送付方法
請求書の送付方法は、大きく分けて2つあります。「郵便で送る方法」と「メールで送付する方法」です。初めて取引をする場合は、双方の業務負担の軽減や、トラブル防止のために、請求書の送付方法を事前に先方へ確認しておきましょう。
郵送で送付する
請求書を郵便で送付する場合は、ビジネスマナー上、送付状を添付すると良いでしょう。書類の送付者と宛先、枚数などの概要を記載することで、トラブルを防ぐ役割を果たします。また、挨拶やメッセージも記入すると良いでしょう。
そして、請求書は「信書」扱いとなります。宅急便やメール便で送ることはできないため、郵送する場合は必ず郵便を利用しましょう。
PDFで送付する
請求書をメールで送付する場合は、メールの件名や本文にて請求書を添付している旨を伝えましょう。さらに、何月分の請求書なのか明記しておくと先方も把握しやすいです。
また、メールで送付する場合は、送付状の添付は必要ありません。PDFで送付する場合が殆どですが、企業によっては原本を郵送してほしいというところもあるので、必要か否か確認しましょう。
請求書作成時に知っておきたい「インボイス制度」とは
インボイス制度とは、売手が買手に対して、正確な消費税等を伝えるものです。軽減税率への対応や不正の防止を目的とした法律ですが、売上1,000万円以下の免税事業者には適応されないため、一人親方に深刻な影響を与えると考えられています。
該当する一人親方は税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者とならなければ、仕入額控除は受けられません。
建設業と一般企業の帳票の違いや保存する期間・管理方法などを解説
【まとめ】建設業の請求書は手書きよりもデジタル化でスムーズに行おう
建設業界では独特の請求書の項目があり、計算方法も特殊なケースがあるため慣れるまで時間がかかるでしょう。しかし、正確で分かりやすい請求書を作成することは取引先との信頼関係の構築の礎となります。昔ながらの手書きの請求書で作成することに問題はありません。
しかし、今後急速に進むDX化やインボイス制度にスムーズに適応するためにも、業務効率化のためにもデジタル化に移行することをお勧めします。まずはウェブ上の無料のフォーマットを利用して、デジタル請求書の作成に踏み出してみましょう。
建設業向け請求書発行システム・アプリおすすめ13選はこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
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